送料にも消費税はかかるの? インボイスは必要?

送料 宅配

消費税は商品を買ったときだけでなく、サービスを受けたときにもかかります。ですので、宅配というサービスを受けたときに支払う送料にも消費税は発生します

この記事では、送料に消費税はかかるのか? インボイスは必要なのか? 経理処理にまつわる注意点についてわかりやすく解説します。

1.原則、送料には消費税がかかる

国税庁は消費税について「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や役務の提供などの取引」があったときに課す、としています。

「資産の譲渡」とは商品の販売のことで、「役務の提供」はサービスの提供のことです。
「取引に課される」とは、消費者は商品やサービスの代金を支払うときに消費税を負担しなければならない、という意味です。

したがって、宅配便を利用したときの送料にも、消費税が課せられます。これが原則になります。

「送料無料」の消費税は?

通販サイトでは「送料無料」と記載されていることもありますね。

これは、本当に送料が無料ではなく、商品の代金に送料も含まれていると考えられます。

ですので、送料にも消費税がかかっていて、「商品+送料」の税込み価格が表示されています。

2.送料にはインボイスが必要?

インボイス制度では、課税事業者が消費税を控除するために、適格請求書-インボイスが必要です。
(消費者、免税事業者、簡易課税事業者の方には、関係ない話です。)

送料も課税仕入れですので、インボイスが必要です。

一般的には、購入者が送料だけ別途支払うことは少なく、商品価格と一緒に、販売者に対して支払いますので、販売者から購入商品に対するインボイスを発行してもらいます

着払い、代引きなどで、送料を購入者が支払うときは、運送業者から送料に対するインボイスを発行してもらいます。

1万円未満の少額特例

1回の取引が税込み1万円未満であれば「少額特例」で、インボイスを省略できます。インボイスがなくても帳簿に必要事項を記入するだけで、消費税を控除できます。

ただし、2年前の課税売上1億円以下、期間は2023年10月から2029年9月までという条件があります。

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送料込みの場合

送料込みの場合は、商品+送料の税込み価格が1万円未満なら、少額特例を利用できます。

請求書に、本体価格と送料が別々に記載されていたとしても、1回の取引になります。

送料を別途支払う場合

着払い、代引きなどで、送料を別途支払う場合は、送料の税込み価格が1万円未満なら、少額特例を利用できます。

大型商品の送料など、特殊なケース以外は、1万円未満ですので対象になるでしょう。

3.消費税の二重請求に要注意!

商品の販売会社が間違って、税込み送料にさらに消費税をかけてしまうことがあるので、消費者は注意してください。

販売会社が顧客に「税別商品価格+税込送料」に消費税をかけた金額を請求することがあるのです。販売会社の請求担当者が「税別商品価格もコスト、税込送料もコスト」と考え、この2つのコストに消費税をかけてしまったと想像できます。

これは単純ミスですが、意外に多く起きています。
「税別商品価格」に消費税をかけて請求することは問題ありませんが、「税込送料」に消費税をかけることは不当です。顧客はその分の消費税を負担する必要はありません。

4.送料を預かっている場合は課税されない

送料に消費税がかからない例外は、事業者が顧客から送料を預かっているときです。このケースの経理処置は注意しなければなりません。

ここからは、一般消費者には直接関与しない話題にはなりますが、ただ知っておくと消費税の仕組みを深く理解できるようになります。

仮受金で処理する

商品を販売している会社が、宅配業者に依頼して商品を顧客の自宅に配送したとします。このとき販売会社は、顧客から次の代金を受け取ります。

  • 商品の税込代金+送料の税込代金

「送料無料」とうたっている場合でも、商品の税込代金に送料の税込代金も含まれていると解釈されます。

販売会社は、宅配業者に送料を支払わなければなりません。したがって販売会社は、次の代金を宅配業者に支払います。

  • 送料の税込代金

このとき販売会社側では、「宅配業者に支払った送料の税込代金」を消費税の課税対象にしません。なぜなら、「宅配業者に支払った送料の税込代金」は「顧客から受け取った送料の税込代金」と相殺されるからです。

販売会社側cは「顧客から受け取った送料の税込代金」を仮受金として処理し、「宅配業者に支払う送料の税込代金」を仮受金から支払う処理をするのです。

このときの販売会社は、消費税に関与していません。「(消費)税込代金」を受けたり支払ったりしていますが、それは名称に「消費税」と付いているだけで、経理処理としては仮受金の受け取りと仮受金の支払いだけしか行っていないのです。

国税庁の見解

送料に関する仮受金のルールは、国税庁が「消費税法基本通達 第10章第1節16(10-1-16)」で定めているルールです。そこには次のように記されています。

消費税法基本通達 第10章第1節16(10-1-16)
<別途収受する配送料等>
事業者が、課税資産の譲渡等に係る相手先から、他の者に委託する配送等に係る料金を課税資産の譲渡の対価の額と明確に区分して収受し、当該料金を預り金又は仮受金等として処理している場合の、当該料金は、当該事業者における課税資産の譲渡等の対価の額に含めないものとして差し支えない。

「課税資産の譲渡等の対価の額に含めない」とは、消費税の課税対象としない、という意味です。

5.免税業者が消費税を請求しない場合

もうひとつ、送料に消費税が含まれていないケースがあります。

それは、販売業者が消費税の免税業者の場合です。事業者は原則、消費税を納税しなければなりませんが、年間売上高が1,000万円以下の事業者は納税義務が免除されています。
免税業者は、顧客から消費税として預かったお金であっても納税する必要はなく、自身の売上にしてよいのです。

このことから、免税業者が、顧客に商品や送料の消費税を請求しないことがあります。「消費税を受け取らない」と表明すれば、実質的な値下げになるからです。

しかし、本来、送料には消費税がかかりますので、課税事業者である顧客側から見ると、消費税が含まれているとみなして経理処理します
間違って「送料非課税」で処理してしまうと、税額控除ができず、会社が損することになるので注意してください。

まとめ

送料と消費税の関係についてみてきました。

送料には、原則、消費税がかかり、課税仕入れにするにはインボイスが必要です。1万円未満の取引であれば少額特例でインボイスは不要です。

ただ、宅配業者を手配して、顧客から送料を預かっている場合は、消費税の課税対象の取引にはならないので注意してください。

一般消費者も、ネット通販などで商品を買うときは請求ミスが発生している可能性がゼロではないので、可能であれば送料の消費税が適正に計算されているかチェックすると良いでしょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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