延滞税や加算税は損金に算入できる?消費税はかかる?

延滞税 加算税

税金の申告や納付は適切に行いたいものですが、やむを得ず期限後の納付や申告になってしまう場合、延滞税や加算税が発生します。

事業をしている方は、延滞税や加算税を損金にできるのか? 消費税区分はどうすればいいのか? など、迷うポイントでもあります。

この記事では、延滞税・加算税の概要と処理方法について詳しく解説します。

1.税金の申告・納付にかかるペナルティとは?

まずは税金の申告や納付が遅れた場合に課されるペナルティの種類とそれぞれの概要を見ていきましょう。

①延滞税

延滞税はその名の通り、税金の延滞に対して課せられるペナルティです。
法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税がかかります。

延滞税の割合は納付期限から「2ヶ月」を境に大きく変わります

  • 納付期限から2ヶ月以内: 7.3%と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合(2024年は2.4%)
  • 納付期限から2ヶ月超: 14.6%と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合(2024年は8.7%)

延滞税 割合

このように、納付期限から2ヶ月を超えると割合が跳ね上がるため、遅れるにしてもできるだけ2ヶ月以内に納付することをおすすめします。

特定基準割合とは銀行の平均利率等を元に決定される割合であり、毎年変わります。
その年分の延滞税を正確に算出したい場合には、その年の割合を調べる必要があります。

延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対して延滞税が課されることはありません。
また、修正申告をした場合の納付期限は「修正申告をした日」となるため、延滞税の計算も申告日から起算される点に注意しましょう。

なお、延滞税の金額が1,000円未満の場合は延滞税は免除されます。

②無申告加算税

無申告加算税は各種税金の申告期限までに申告しなかった場合に課せられるペナルティです。
無申告加算税は「無申告」であることに課せられるので、税金の納付遅れも同時に生じている場合には、別途延滞税もかかります。

無申告加算税は税務調査の通知前と通知後で次のように割合が変わります。

申告期限から事前通知前まで 5%
事前通知後から更生の予知前まで 50万円までは10%
50万円超~300万円以下は15%
300万円超は25%
更生の予知後 50万円までは15%
50万円超~300万円以下は20%
300万円超は30%

※2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(2023年分以降)については、300万超の部分は30%の税率になりました。

事前通知」とは、税務調査の通知のことです。
税金の申告を忘れていると税務調査が入ることがありますが、その連絡をもらった時点で無申告に気付いてあわてて申告しても、その申告は「事前通知後」ということになります。

一方「更正の予知」とは、簡単に言えば税務調査で何らかの経理ミスにより、税額が増えることが指摘されるのでは?と予知できる状況という意味です。

無申告加算税が免除されるケース

次の要件のすべてに該当する場合には、無申告加算税は免除されます。

  • 申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告していること
  • 期限内申告をする意思があったと認められること

なお、「期限内申告をする意思があった」と認められるためには、次の3つの要件を満たしている必要があります。

  • 法定納期限までに税額を全額納付していること
  • 過去5年間で、無申告加算税又は重加算税を課されたことがないこと
  • 無申告加算税の免除の規定の適用を受けていないこと

要するに、「申告期限から1ヶ月以内の自主的な申告」と「納付期限までの税額の納付」をしていることが前提で、なおかつ過去5年の間に無申告加算税を課されたり、無申告加算税を免除されていないことが条件となります。

なお、無申告加算税の金額が5,000円未満の場合も無申告加算税は免除されます。

③過少申告加算税

過少申告加算税は、申告した税額が本来あるべき税額より過少であった場合に課されるペナルティです。
こちらも先ほどの無申告加算税と同様、申告するタイミングによって割合が変わります。

申告期限から
事前通知前まで
なし
事前通知後から
更正の予知前まで
不足税額に対して5%
不足税額が「当初申告税額」と「50万円」の
いずれか多い金額を超えた場合、10%
更正の予知後 不足税額に対して10%
不足税額が「当初申告税額」と「50万円」の
いずれか多い金額を超えた場合、15%

事前通知と更正の予知の概念は、先ほど無申告加算税の項で解説した内容と同じです。
過少申告加算税は税額計算を誤っていた場合に必ず課せられるわけではなく、税務調査の通知前に修正申告をすればペナルティは発生しません。

以前は税務調査通知後の修正申告でも過少申告加算税は免除されていたので勘違いされている方も多いと思いますが、平成28年の税制改正によって税務調査の事前通知後に行われた修正申告にも過少申告加算税5%が課されることとなりました。

なお、過少申告加算税の金額が5,000円未満の場合には過少申告加算税は免除されます。

④不納付加算税

不納付加算税は、源泉所得税を納付期限内に支払わなかった場合に課されるペナルティです。
不納付加算税の割合は次のとおり定められています。

税務署の指摘前に自主的に納付した場合 5%
税務署からの指摘を受けて納付した場合 10%

源泉所得税の納付が遅れると、不納付加算税とともに延滞税も発生することになります。
ただし、次の要件に該当する場合には不納付加算税は免除されます。

  • 法定納期限から1ヶ月以内の納付で、かつ過去1年間納付の遅延をしたことがないこと
  • 法定納期限から1ヶ月以内の納付で、かつ初めての源泉所得税の納付であること

加えて、不納付加算税の金額が5,000円未満の場合にも不納付加算税は免除されます。

⑤重加算税

重加算税は他の加算税とは意味合いが異なり、事実の仮装隠ぺいなど、悪質な行為を行ったことが発覚した場合に課されるペナルティです。
当然ながら、割合も他の加算税と比べて高く設定されています。

意図的な過少申告の場合 過少申告加算税の代わりに35%
意図的な無申告の場合 無申告加算税の代わりに40%

このように重度のペナルティが課せられるだけでなく、「事実を仮装・隠ぺいした会社」として税務署から目をつけられることにも繋がる可能性があります。
経理処理は適正に行うことを心がけましょう。

なお、他の加算税と同様に、重加算税の金額が5,000円未満の場合には重加算税は免除されます。

短期間に繰り返し無申告又は仮想隠ぺいを行った場合

意図的に無申告や仮装・隠ぺいを繰り返すことを防止するため、平成28年税制改正で対抗措置が規定されました。

過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された者が、再度無申告加算税または重加算税を課された場合、無申告加算税・重加算税がそれぞれ10%アップすることとなります。
この規定は平成29年1月1日以降に納税期限が到来するものに適用されます。

かなりの負担増となりますので、故意の仮装・隠ぺいをしないことはもちろん、うっかり申告漏れなどのミスを犯さないように注意しましょう。

2.延滞税・加算税は損金にできる?

国税や地方税の延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税は損金算入することができません
これらはペナルティとして課せられたものですので、損金算入できないのも当然と言えます。

一方、利子税と「地方税の納期限の延長に係る延滞金」は損金算入が認められています
利子税と地方税の納期限の延長に係る延滞金は、どちらも延納や申告期限の延長が認められた際に生じるものです。
したがって延滞税のようなペナルティとしての性質はなく、利息と同様の性格を有しているため、損金算入が認められているのです。

なお、税金ではありませんが、交通違反金等の罰金や科料、その他各種課徴金や延滞金なども損金算入できません。
ただし、社会保険料の延滞金は損金算入できることとなっています。

3.延滞税・加算税の仕訳例と申告書の加算処理

延滞税や各種加算税は「租税公課」で費用処理します。

仕訳例:延滞税3,000円を支払った

借方 貸方
租税公課 3,000円 現金 3,000円

「損金算入されないのに経費計上するの?」と感じた方もいると思いますが、延滞税や加算税のうち経費計上した金額は、法人税の申告書上で「加算」の処理をすることにより、損金から除かれることとなります。

計上箇所は次の通りです。

  • 別表4…(5欄「損金経理をした附帯税(利子税を除く。)、加算金、延滞金(延納分を除く。)及び過怠税」による加算・流出)
  • 別表5(2)…(「その他」→「損金不算入のもの」)

各別表の欄に租税公課に計上した延滞税・加算税の金額を計上すればOKです。

このように延滞税や加算税の支払いをした場合、決算時にその金額を申告書に記載しなければなりません。
うっかり忘れないためにも、仕訳時に帳簿に損金不算入の延滞税・加算税の支払いである旨をしっかり書いておきましょう。

4.延滞税・加算税の消費税区分は?

延滞税・加算税の種類にかかわらず、これらの支払はすべて不課税取引(対象外)に区分されます。

延滞税に限らず、税金の支払いは対価性がないため、消費税の計算の対象にはなりません。
これはその他の税金の支払い時も同様に処理していることと思いますので、イメージしやすいかと思います。

5.延滞税・加算税の計算方法

最後に、延滞税と加算税の計算方法を具体例を挙げて解説します。

(1)延滞税計算の具体例

まずは申告期限までに申告は済ませており、税金の納付のみが遅れた場合を考えてみましょう。

税金の納付が1ヶ月遅れた場合

税金の納付遅れが2ヶ月以内であるため、2.4%の割合が適用されます。

例①:税額が200,000円、納付期限が3月15日の場合
200,000円×2.4%×31日÷365日=407円(端数切り捨て)→(延滞税免除)

このケースでは、延滞税が1,000円未満のため、延滞税は発生しません。

例②:税額が500,000円、納付期限が3月15日の場合
500,000円×2.4%×31日÷365日=1,019円(端数切り捨て)→延滞税1,000円(100円未満切り捨て)

このケースでは、延滞税が1,000円以上となるため延滞税が生じます。
なお、延滞税は100円未満切捨てである点に留意してください。

税金の納付が3ヶ月遅れた場合

税金の納付遅れが2ヶ月を超えるため、2ヶ月間は2.4%の割合が、2ヶ月を超える部分には8.7%の割合が適用されます。

例:税額が200,000円、納付期限が3月15日の場合
2ヶ月以内:200,000円×2.4%×61日÷365日=802円(端数切り捨て)
2ヶ月超 :200,000円×8.7%×31日÷365日=1,477円(端数切り捨て)
合計  :802円+1,477円=2,279円→延滞税2,200円(100円未満切り捨て)

このように、2ヶ月を境に別々の割合によって計算します。

(2)申告と納付がどちらも遅れた場合の具体例

申告と納付がどちらも遅れた場合、延滞税に加えて無申告加算税が課されることとなります。
なお、申告は税務調査の事前通知前に行ったものとして計算します。

申告と納付がそれぞれ3ヶ月遅れた場合

例:税額が500,000円、納付期限が3月15日の場合

【延滞税の計算】

2ヶ月以内:500,000円×2.4%×61日÷365日=2,005円(端数切り捨て)
2ヶ月超 :500,000円×8.7%×31日÷365日=3,694円(端数切り捨て)
合計  :2,005円+3,694円=5,699円→延滞税5,600円(100円未満切り捨て)

【無申告加算税の計算】

500,000円×5%=25,000円

なお、このケースでは税務調査の事前通知前に申告したものとしたため、一律税率は5%となりますが、事前通知後には税額によって割合が変わる点を忘れないようにしましょう。

延滞税計算ツール

国税の延滞税を計算するツールがありますので、ご自由にご利用ください。地方税の延滞金も計算できます。

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まとめ

この記事では延滞税と加算税の概要と仕訳、消費税区分など一通り解説してきました。
最後に延滞税と加算税を表にまとめておきます。

ペナルティ 内容 割合
①延滞税 納付期限から2ヶ月以内 2.4%
(2022年)
納付期限から2ヶ月超 8.7%
(2022年)
②無申告加算税 申告期限から事前通知前まで 5%
事前通知後から
更生の予知前まで
50万円まで 10%
50万円超 15%
更生の予知後 50万円まで 15%
50万円超 20%
③過少申告加算税 申告期限から事前通知前まで なし
事前通知後から
更正の予知前まで
原則 5%
不足税額が
「当初申告税額」と「50万円」の
いずれか多い金額を超えた場合
10%
更正の予知後 原則 10%
不足税額が
「当初申告税額」と「50万円」の
いずれか多い金額を超えた場合
15%
④不納付加算税 税務署の指摘前に自主的に納付した場合 5%
税務署からの指摘を受けて納付した場合 10%
⑤重加算税 意図的な過少申告の場合 35%
意図的な無申告の場合 40%

必ずしも覚える必要はありませんので、このような種類のペナルティがあることを知っておき、必要に応じてこの表を参照してください。

延滞税や加算税とは無縁であることが理想なのは言うまでもありませんが、やむを得ないケースもあるでしょう。
そんな時のために最低限の知識は身につけておきましょう。

参考

相続税・贈与税については、姉妹サイトに特化した記事がありますので、ご覧ください。

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服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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