消費税の課税事業者・免税事業者の違いと判定方法【図解】
消費税の免税事業者と課税事業者の違いについて、また、判定フローについて、図を使ってわかりやすく解説します。課税売上高…[続きを読む]
事業も軌道に乗ってきて売上も順調に上がっていると、心配になるのは「そろそろ税務調査がくるのでは」ということです。
特に消費税は税率アップや軽減税率の導入が予定されており、何かと話題の税目。
国税庁発表(※1)の税務調査における重点項目にも消費税が挙げられています。
ではまだ税務調査を受けたことのない個人事業主や法人は、税務調査、特に消費税の税務調査について何を知っておくべきでしょうか?
目次
税務調査とは、税金の申告書に誤りが無いかや、申告をしていない人に対して申告義務が本当にないのか等の確認を税務署が行うことです。
「私のところにはまだ調査が来たことがないが、いつ来るのか?」という疑問も出てくると思いますが、それは残念ながら分かりません。「事業開始後◯年目に調査する」や「売上が◯万円以上になったら調査する」等のルールは無いからです。
ただ、よほど悪質な脱税をしていない限り調査の前には1~2週間前に事前連絡が来ますので、その点は安心できるかと思います。
消費税の税務調査といっても、消費税だけを目的にした調査というのは稀です。個人事業主なら所得税と一緒に、法人なら法人税と一緒に調査されます。
消費税は、課税売上高から課税仕入高を差し引いて計算されます。
課税売上高、課税仕入高は国内で事業を展開している個人事業主/法人であれば、申告書の売上・経費と、課税売上高・課税仕入高がイコールの項目が多いです(異なるものもあります)。
そのため、調査を受けて、所得税/法人税で売上計上漏れや計上していた経費を否認された場合、消費税も連動します。所得税/法人税の申告書の修正だけでなく、消費税も修正が必要となります。
所得税/法人税とは関係なく、消費税特有の仕組みを知らなかったことで追徴課税を受ける場合があります。例を3つ挙げます。
消費税の申告義務の判断である「基準期間における課税売上高が1,000万円超」を知らなかったり、誤解していると申告&納税するよう指摘されます。
「基準期間」とは、個人事業者の場合は原則として前々年、法人の場合は原則として前々事業年度のこととなります(特定期間で判断することもあります)。
つまり前々年が基準となるので、資本金が1,000万円未満の法人であれば、事業を始めて1年目2年目は原則として消費税の申告が必要がありません。また、課税売上高が1,000万円を超える年がなければそれ以降も消費税申告の義務がありません。
なので「これまでずっと消費税申告してなかったから、今年もしないで良いだろう」と考えていると、「前々年の課税売上高が1,000万円超えているので、今年は必要です」と税務調査で指摘されかねません。
消費税の申告では、売上や経費が「課税/非課税/免税/不課税」という判断が必要です。
例えば従業員に支払う給与の場合。所得税・法人税では経費として認められますが、消費税では「不課税」となります。
消費税は、課税売上高から課税仕入高を差し引いて計算されますが、「課税仕入高」に不課税である給与は該当しません。
所得税/法人税で経費になっているのだから消費税でも同じと考えていると、消費税の申告誤りとなります。
消費税の申告には、原則課税と簡易課税の2種類の方式があります。基本的には原則課税方式で申告することになりますが、一定の条件を満たし申請をした事業主/法人は簡易課税方式で申告できます。
この簡易課税では「みなし仕入率」を使い、消費税申告を簡単に行えるようしたものです。
業種 | みなし仕入率 | |
---|---|---|
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業 | 80% |
第3種事業 | 製造業等 | 70% |
第4種事業 | その他の事業 | 60% |
第5種事業 | サービス業等 | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
みなし仕入率が大きい事業区分の方が、消費税の納税額は小さくなります。
製造業として申告していたところ、税務調査で小売業だと判断された場合、申告誤りとなり追加で納税が必要です。
それでは、税務調査で申告漏れや誤りを指摘されたらどうなるのでしょうか?
調査を受けた個人事業や法人のうち、どれくらいの割合で申告誤りの指摘を受けるのでしょうか?
国税庁の発表(※2)(※3)によると、法人だと約60%(30,069件のうち18,024件)、個人事業だと約75%(8,254件のうち6,165件)が調査によって誤りを指摘されています。決して低い割合ではありません。
税務調査で調査官から誤りを指摘をされるとどうなるのでしょうか?
まず、消費税の申告が必要だったにも関わらず申告していなかった場合は、確定申告書を出すよう促されます。
申告はしていたがその申告に誤りがあった場合は当初提出していた申告書を修正する申告書を出すように促されます。
正しく計算し直した消費税額を元に、「当初の申告税額との差額」を払う必要があります。当初の申告が無い(調査を受けて初めて申告する)場合は、計算した消費税額全額を払う必要があります。
その他に、罰金の性質を持つ「加算税」、利子の性質を持つ「延滞税」を納める必要があります。加算税や延滞税は、「当初の申告税額との差額」に対して率を掛けて計算します。そのため、定額で〇円という風に決まっていません。
税務調査、特に消費税に関しての基本知識をご説明しました。
以上を踏まえて、いつ来るか分からない税務調査に対して何を準備しておけば良いのでしょうか。
まずは、国税庁が作成している「消費税のあらまし」(※4)というパンフレットを一読しましょう。
(国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。また、税務署に行けば、紙面版が置いてあります。)
コンパクトに消費税の押さえるべきポイントがまとまっています。これを一読し、分からないことがあれば税務署や、申告書の作成を依頼している税理士さんがいればその方に聞いてみましょう。
また、税理士さんに「もしも税務調査の連絡が来たらどうするべきか」も事前に確認しておきましょう。調査への立ち合いはお願いできるのか、またその時の費用はいくらか等知っておくと良いでしょう。
急な税務調査に対して、できる準備はしておくことで、闇雲に不安を持たず日々の業務に集中することができます。
※1 国税庁レポート2018
※2 平成28事務年度法人税等の調査事績の概要
※3 平成28事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について
※4 消費税のあらまし