税理士の業務内容、試験、人柄など

1.税理士とは、どんな人たち?

(1)身近な税金の専門家

弁護士」ならおそらく誰でも知っているでしょう。
とても難しいと言われる司法試験に合格した法律の専門家で、困った時や裁判で助けて(弁護して)くれる人という感じです。テレビドラマでもよく登場しますし、裁判で相手を打ち負かす姿は見ていてカッコイイですよね。(かつて、フジテレビで「リーガルハイ」という、法廷での弁護士同士の対決をテーマにしたドラマが放送されました。)

では、「税理士」はいかがでしょうか。「」とついているので、税金に関する専門家というのはわかりますが、具体的に何をしている人たちなのか、ピンとこない人が多いのではないかと思います。

それもそのはず、会社勤めのサラリーマンや、家で家事をしている主婦(夫)の場合、税理士にお世話になることがほとんどないからです。
さらに、税理士を主人公にしたドラマというのも聞いたことがありません。弁護士と比べて税理士の仕事はどちらかというと地味な仕事だからです。

でも、実は、税理士は私たちの生活上、なくてはならない存在で、弁護士よりもずっと身近な人たちです

(2)年齢構成と人数

2025年7月末現在、登録している税理士は、全国で約81,525人います。過去数十年は、毎年、500~600人くらいずつ増加してきましたが、2023年から2025年にかけては、登録者数の増加は鈍化しています。

その理由ですが、一時期、受験者数が減少していたことと(2020年を底に少しずつ回復中)、高齢の税理士が引退、または死亡で廃業していることが原因と考えられます。

2014年(平成26年)に行われた第6回税理士実態調査報告のデータを基に世代別で見ると、20歳代が0.6%、30歳代が10.3%、40歳代が17.1%、50歳代が17.8%、60歳代が30.1%、70歳代が13.3%、80歳以上が10.4%となっていて、60歳以上の税理士は半分を超えています。

税理士には定年がなく、80歳以上が1割というのもすごいですし、中には100歳以上の税理士もいます。日本の人口と同じかそれ以上に超高齢化が進んでいるといえます。

高齢者が多いということは、逆にいえば、人生経験が長く、世の中をよく見たアドバイスをしていただけますし、これから相続の対策をする年配の世代の方には、同世代が多くお付き合いしやすい専門家ともいえるでしょう。

(3)年収

税理士の働き方としては、小規模の個人事務所に所属する(雇われる)、大手税理士法人に所属する(雇われる)、独立して事務所を経営するなど、いろいろなパターンがあり、一概に年収が決まるではありません。

統計データでは、年収500万円未満の税理士が全体の4分の1とそれなりに多い一方で、年収1億円以上稼いでいる税理士が全体の4%おり、だいぶ開きがあります。

民間の平均(約450万円強)よりはやや年収が高いといったところでしょうか。

2.業務内容

(1)独占業務

税理士の仕事は大きく分けて簡単に書くと次の3つです。

  • 税務相談: 税金に関する相談にのってくれます。税金だけでなく、身近なお金に関する相談にものってくれます。
  • 税務書類の作成: 税金の申告に必要な書類を代わりに作成して申告を行います。主に、個人だと所得税の確定申告、法人だと法人税・消費税の申告を代わりにやってくれます。
  • 税務代理: 税務署関連の対応を代わりにしてくれます。たとえば、税務調査での立ち会い。

これらの仕事は、税理士の資格を持っている人しか行ってはいけないと法律(税理士法)で決められています。

(2)相続税理士の仕事内容

まず①税務相談で、相続税とはどんなものか、どうしたら納める税金を減らせるかなどアドバイスしてくれます。
そして実際に申告が必要になったら、②税務書類の作成で、相続税の申告書を作成して税務署に申告してくれます。
最後、もし税務署から調査にこられたら、③税務代理で、代わりに税務署への回答をしてくれます。

相続の場合、一生に何度あるかないかですが、フリーランスや個人事業をしている人だと、毎年の確定申告で税理士にお願いしている人も多いと思います。税金の申告と関係なくても、家の住宅ローンや子供の学費のことなど、身近なお金の相談にものってくれます。

最近では高齢化に伴って成年後見を必要とする人も増えていますので、後見人になって被成年後見人の財産管理をすることもあります。

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3.税理士資格の取得方法

(1)税理士試験

弁護士になるには司法試験に合格しなければならないように、税理士になるためには税理士試験に合格しなければなりません。試験合格後、税理士として登録することで、はじめて税理士になります。(弁護士、公認会計士は登録すれば税理士になれます。)

税理士試験はとても難しい試験です。試験科目は複数に分かれていて、それぞれの科目で一度合格すればずっと有効になりますが、税理士になるためには、最終的に5科目合格しなければなりません。

5科目のうち、次の2科目は必修科目です。

  • 簿記論
  • 財務諸表論

また、次の科目は、どちらか一つが必須の、必修選択科目です。

  • 所得税法
  • 法人税法

そして、下記の科目は、選択科目です。このうち、2科目合格すれば大丈夫です(上記の必修選択科目を2つ合格した場合は、下記のどれか1科目合格でOK)。

  • 相続税法
  • 消費税法、または、酒税法
  • 国税徴収法
  • 住民税、または、事業税
  • 固定資産税

2024年(令和6年)の税理士試験結果では、受験者が34,757人で、科目別の合格率は平均16.6%ですが、5科目すべてに合格した人は578人と、60人に1人くらいの割合です。2024年(令和6年)の司法試験の合格者は1,752人ですので、税理士試験の合格者はその約半分以下と少ないです。

実際のところ、税理士全体の中で、税理士試験に合格して登録した人の割合は半分以下です。それでは、他に誰が税理士になっているのでしょうか?

(2)国税OB税理士

実は、税務署に長年勤務して一定要件を満たせば試験が免除されて税理士登録ができます。いわゆる、国税OB税理士と呼ばれている人たちです。この割合は約34%とかなり高いです(2015年時点)。また、昭和31年から5年間だけ、税務署出身者に対する特別税理士試験制度がありましたが、これに合格して税理士登録している人が約7%です。先ほどの試験免除者と合わせると、実に約41%が国税OB税理士です。他に公認会計士試験に合格していて税理士登録をしている人が約12%います。弁護士で税理士登録する人もいますが1%以下です。

さらに、2015年の新規税理士登録者に限ってみると、税理士試験合格者:約32%、国税OBの試験免除者:約48%、公認会計士:約18%、弁護士:約2%という割合になっており、純粋に税理士試験に合格して税理士になった人がかなり少ないことがわかります。

(3)税理士に向いている人

税理士にはどんな人たちが向いているのでしょうか?やや独断ですが、税理士に向いている人/向いていない人の特徴をいくつかあげてみます。

計算や数字が好きな人

税理士のメイン業務はなんといっても、顧客の税金に関する相談であり、具体的な計算や書類作成を多く行います。確定申告書などを見ていただければわかりますが、ひたすら数字が並んでいます。とにかく計算や数字が好きな人でないと業務が勤まらないかもしれません。

ただし、暗算や電卓が得意である必要はありません(ただし、税理士試験では電卓が必須です)。現代ではほとんどの書類をExcelファイルや会計ソフトで作成しますので、むしろパソコンを使いこなせる力があったほうが良いでしょう。

勉強好きな人

税金に関する法律は税法と呼ばれますが、その内容は非常に多岐にわたります。所得税、法人税、消費税など各税目ごとに法律があり、事細かに決められています。しかも税法は、税制改正で内容や税率がころころ変わります。

税理士の試験では、これらの税法の一部を暗記する必要があります。「理論」と呼ばれていますが、税法の条文を暗記することは、かなり大変な作業です。

さらに、税理士になった後も最新の税制に対応するために常に勉強が必要です。勉強が嫌いとか本を読むのが苦手という人は税理士には向いていないでしょう。

口が堅い人

税理士の仕事を行う上で大変重要となるのが顧客の守秘義務を必ず守ることです。税理士が扱うデータは、会社や個人の内部事情を如実に表すものです。特に、公開されていない非上場企業の勘定元帳・仕訳帳などは、重要機密情報というべきものです。これらの情報を平気で他人に漏らすような人は、決して税理士になってはいけません。当然ながら家族にも話してはいけませんし、同じ事務所内でも当該顧客と関係ないメンバーにみだりに伝えてはいけません。

顧客とは密にコミュニケーションをとりながらも、一歩、業務から離れたら、顧客名すら一切話題にしない口の堅さがある人が良いでしょう。

4.税理士の人柄

税理士と一口に言いましても、若い人/年配の人、堅実な人/一発勝負な人、計算の速い人/口の速い人、地味な人/派手な人など、いろいろな方がおります。実際におられる税理士の人柄を、いくつかのタイプ別にまとめてみました。

(私がいろいろな税理士の方と出会っての印象をまとめたものであり主観的な要素も含んでいますので、あくまでも参考としてください。)

(1)昔ながらの職人、親方タイプの税理士

まず一つ目は、昔ながらの職人あるいは親方という感じの税理士です。このタイプは高齢者に多いです。税理士の半分以上は60歳以上の方ですので、けっこう多い部類です。

インターネットやスマートフォンなど文明の利器はあまり使わずに、書籍、紙と筆を好まれます。メールは使わず電話でやりとりします。バンバン仕事をとろうと広告を派手にうったりせずに、地元の人とのつきあいを大切にします。

そのため、地域の実情やお金の流れに関しては、過去からの経緯を含めてかなり詳しいです。80歳以上の税理士の方だと、その地域の生き字引的な存在感があります。

事務所は町の商店街や住宅街の一画にあることが多く、ちょっとした公民館みたいな感じです。中に入ると、税に関する難しそうな書籍がずらりと並び重厚感が漂います。高級な木で作られた重そうなテーブルのある部屋に通され、湯のみ茶碗についだ緑茶が出されます。

初見では、税理士の方の個人的な人生談を語っていただいたりします。戦後の混乱の中をどのように生き抜いて建てなおしてきたかという話も聞けたりします。

やはり貧しい中で非常に苦労されたからか、顧客に対しても低姿勢であり、報酬もかなり安い価格で、最初のころは無料で対応してくれることもあります。お金うんぬんではなく心が重要なんだと、部下の税理士に説かれており、こちらも勉強させられます。法律すれすれの節税法の話にはのってくれませんが、長い目で見て親身に対応してくれます。

一見、堅そうなイメージもありますが、大変親切で心優しい方が多いですので、最初はこちらも下手に出ながら、ゆっくりと時間をかけ、税理士との信頼関係を築いていくと良いでしょう。

(2)会社のビジネスパーソンタイプの税理士

こちらは、普通の会社のビジネスパーソンあるいは役職者という感じの税理士です。このタイプは比較的若い人に多いです。

インターネットとスマートフォンを駆使して情報を集め、メールを使いこなします。クラウド会計など新しいツールにも対応しています。法律の改正に合わせて、どんどん新しい顧客をとりこんでいこうと積極的です。ネット上に広告をうち、事務所のホームページを作りアピールします。近くの顧客を狙おうと電話で営業されたりもします。

事務所は小さいうちは住宅街とかですが、大きくなってくるとオフィス街や丸の内、青山などの一等地のビルに構えます。

ビルに入り、かっこよくデザインされたオフィス入口にたどりつき、インターホンで呼び出しをして中に通されます。会議室はたいていガラス張りの明るい部屋で、モダンなデザインの会議用机と椅子が置かれています。飲み物はグラスでお茶あるいはコーヒーが出されます。

税理士の印象は、だいたいどの会社でもいる通常のビジネスパーソンという感じで、町でふつうに出会ったら税理士とは思わないでしょう。最近流行りの節税法を積極的に提案し、ネットからいろいろな情報を引っ張ってきて教えてくれます。顧客から要望をヒアリングし見積書を出し、報酬を決めて、しっかり契約を結びます。お金をそれなりに払えば、ある程度こちらのわがままにも対応してくれます。

中には、外国の会計士資格を持っていたり、外資系のM&Aに詳しかったりで、グローバルな雰囲気を醸し出していたりします。

ちょっとサバサバした感じもありますが、こちらの依頼にはきっちり応えてくれますので、疑問や要求があればどんどん出して、お互いに不安のない形で税理士との関係を築いていくと良いでしょう。

(3)ビジネスオーナー、ワンマンタイプの税理士

こちらはちょっと異色ですが、税理士というよりもどちらかというと、成功したビジネスオーナーあるいは資産家といった感じの税理士です。

ご自身で多くの不動産や現金・株式を保有していたり、いくつかの事業を手掛けていたりします。税理士の業務よりもビジネスのほうが本業だったりします。他人に節税や会社経営のアドバイスをするくらいなら、自分で実践して成功してしまった人たちです。ある意味、経験に裏付けされて、一番、説得力のある税理士かもしれません。

最初の「親方」タイプの税理士とかぶるところもありますが、比較的、年配の方が多いと思われます。

資産化、経営者、税務署、ときに政治家などと幅広い人脈がありアクティブに行動しています。ワンマンで決断力があり周囲に対して大きな影響力を持っています。事務所は自宅あるいはビルの一室などそれぞれですが、廊下が大理石でできていたり、テーブルや机が高級品など派手さが見受けられます。

年配の方の中には、漫画の「ナニワ金融道」に出てきそうな、悪徳的な雰囲気も醸し出す人もいます。「~先生」と言われており、たばこをぷかぷか深し、高そうな車に乗っています。会社を経営していて儲かっていれば、毎日銀座で豪遊している方もいます。

相性が大事

税理士にもいろいろなタイプの人がおり、人によって好き嫌いが分かれますが、最終的には相性が合う税理士とお付き合いしていくのが良いでしょう。単純に申告の依頼だけでなく、日々の節税やライフプランニング、ビジネス戦略などの良き相談相手となってくれる税理士と出会えることを願っております。

監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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