【2023年版】ふるさと納税 控除限度額シミュレーション
ふるさと納税の控除限度額を簡易的に計算するツールです(給与所得者を対象)。給与収入と年齢を入力するだけで簡単に計算で…[続きを読む]
2023年10月末、政府は、住民税の非課税世帯に7万円給付、それ以外の人には合計4万円の所得減税を行う予定であることを発表しました。詳細はこれから検討予定で、実施は2024年になる予定です。
ただ、給付金の支給と比べて、所得減税はやり方が難しく、恩恵を受けられない人が出る可能性もあります。
今わかっている情報の中で、所得減税の問題点をいくつかあげ、このままだと損をしてしまう人たちを紹介します。
目次
国税の税収は、2020年の60.8兆円から2022年には71.1兆円と、大幅にアップしました。所得税だけでも、2020年:19.2兆円から2022年:22.5兆円に増加しました。住民税も2020年:13.4兆円から2022年:13.6兆円に増加しました
所得税と住民税をあわせて3.5兆円の税収増加を国民に還元する目的で、所得税と住民税の減税を行います。
低所得世帯の給付金とあわせて、5兆円規模の支援策を予定しています。
今回の減税案は、一定金額を差し引く「定額減税」です。
所得減税は、所得税3万円、住民税1万円、合計4万円の予定です。
納税者本人だけでなく、扶養している配偶者・子供など扶養親族も対象になり、同額が減税される予定です。
実施時期は2024年6月を想定しています。
「租税法律主義」といって、国民から徴収する税金についてはすべて法律で明確に定められていますので、減税するには法律改正が必要なため、実際に実施するまでには時間を要することが想定されます。
なお、今回は1回だけの減税の予定であり「期限付きの定額減税」と呼ばれたりします。
「減税」ですので、支払う税金から差し引くことになります。給付金とは違って、お金が支給されるわけではありません。
会社員・公務員の場合は、毎月の給与から源泉徴収(源泉所得税)の形で所得税が差し引かれていますので、実施する月だけ、差し引かれる金額が少なくなります。つまり、手取りが多くなります。
住民税についても、毎月の給与から特別徴収の形で差し引かれていますので、その金額が少なくなり、手取り金額が多くなります。
フリーランス・個人事業主などの自営業者は、1年間の収入(所得)に対して、翌年3月15日までに確定申告を行い納税しますので、翌年に納税する所得税の金額から差し引かれることになると想定されます。
住民税については、年4回(6月、8月、10月、1月)に分けて市区町村に対して納税しますので、6月に支払う住民税から差し引かれると予想されます。
以上の内容は、あくまでも、政府がまだ検討している内容であり、正式に決定されたわけではありません。
今後、税制関連法案を来年(2024年)1月の通常国会に提出し、3月末までの成立を目指すことになっています。
近年、コロナ禍での経済支援は、給付金や助成金がメインとなりましたが、所得減税は過去にも何度か行われています。
1998年、アジア通貨危機や山一証券の破綻を背景として、橋本龍太郎政権のとき、所得税・住民税の特別減税が2回に分けて行われました。そのときの減税金額です。
2月 | 8月 | 合計 | |
---|---|---|---|
所得税 | 18,000円 | 20,000円 | 38,000円 |
住民税 | 8,000円 | 9,000円 | 17,000円 |
合計 | 55,000円 |
2月 | 8月 | 合計 | |
---|---|---|---|
所得税 | 9,000円 | 10,000円 | 19,000円 |
住民税 | 4,000円 | 4,500円 | 8,500円 |
合計 | 27,500円 |
所得税減税では様々な問題点(課題点)があります。その中でも大きい問題点をいくつかあげていきます。
給付金であれば、個人が指定した口座に、自治体が一定金額を振り込むだけですが、減税では、納税する金額から差し引くという作業が必要になります。
日本では、源泉徴収制度により、会社員・公務員など給与所得がある人は、会社が給与から所得税や住民税を差し引き、代わりに納税しています。
つまり、減税の処理をするのは、企業や自治体・公的機関などになります。
多くの企業では、給与システムを導入していますので、その改修作業が必要です。給与システムは基幹システムの一つであり、通常、ちょっとした改修でも高額になることが多いです。たった1回の減税のために、改修作業をするのは、時間および費用の面で企業にとって大きな負担になります。
フリーランス・個人事業主については、住民税を市区町村に自ら納税しています。通常、6月に、支払う金額が印字された納付書が自治体から郵送されてきます。減税を行うには、自治体が減税された金額の納付書を作成する必要があります。
所得税3万円、住民税1万円の減税ということは、それ以上の税額が発生している必要があります。
2024年6月に実施予定とのことですが、その一ヶ月の源泉所得税が3万円を超えていないと、3万円すべてを差し引くことができません。
(一ヶ月の源泉所得税が3万円を超えるのは、約59万円以上の給料の場合です。)
その場合は、7月の源泉所得税からも差し引き、それでも引き足りなければ8月からも差し引くことになるでしょう。最終的には年末調整で調整します。
ただし、年間の所得税が3万円未満の人は、いずれにしても、3万円すべてを引くことができません。3万円満額の恩恵を受けられないのです。
参考までに、所得税が3万円を超えるのは給与年収227万円以上の場合です(協会けんぽ東京、介護保険なしのケース、他の控除を考慮せず)。扶養親族がいたり、医療費控除などがある場合は、さらにもっと高い年収でないと所得税が3万円に達しません。
住民税についても同様で1万円を超えていないと、1万円すべてを差し引くことができません。
このように、合計4万円の満額の恩恵を受けられない人が、現状わかっているだけで900万人いるとされています。
これに対して、4万円と、実際に減税された金額との差額を、給付金という形で支給するという案も出ています。
ただ、これは制度を複雑にするだけでなく、自治体の負担を大幅に増やします。
今でも非課税世帯に定額の給付金を振り込むだけでも大きな負担であるはずなのに、それぞれ個人によってみんな異なる金額の給付金を振り込むことは、自治体に非常に大きな負担となり、ミスが発生する可能性もあります。
ふるさと納税では、自己負担2000円だけで寄付ができ返礼品がもらえるとして、近年、非常に人気となっています。
たとえば、10万円を寄付したら、所得税と住民税で合わせて98,000円が減税されます。
実際には、収入(所得)に応じた控除限度額が設定されています(下記のツールで計算可能です)。
ふるさと納税により、最終的な所得税が3万円未満、または住民税が1万円未満になっている人は、減税の恩恵を満額で受けることができなくなります。
フリーランス・個人事業主など自営業の方は、2024年の収入(所得)に対して、2025年2月~3月に確定申告を行い、所得税を納税します。
今回の減税政策は、2024年の所得税の減税ですから、2025年に行う確定申告で発生する納税額から差し引くことになります。
そうなると、減税の恩恵を受けるのは、2025年になってからということになります。
非課税世帯が2024年3月頃には給付金を受け取り、会社員・公務員は2024年6月に減税を受けているのに、フリーランス・個人事業主は、その翌年の3月まで先延ばしされてしまうのです。
長期的な減税であれば、これで問題ないですが、今回の減税の目的として、物価高騰で今苦しんでいる国民に還元するというのもありますので、そこからは大きく外れてしまうでしょう。
配偶者や子供・親など、扶養している家族がいる場合には、その家族も1人当り、所得税3万円、住民税1万円、合計4万円が減税となる予定です。
ただし、所得税において、扶養親族の定義は「12月31日時点で扶養している」です。
減税をするのは2024年6月ですが、2024年に配偶者控除や扶養控除が適用できるかどうかは、12月31日時点の扶養の状況で決まります。
つまり、6月時点では扶養している配偶者がいて、その配偶者の分まで減税を受けたとしても、その後、年内に離婚したら、12月31日時点では扶養している配偶者がいませんので、減税を受けた分を返還しなければならなくなる可能性があります。
同じことは子供・親などの扶養親族にもいえます。6月時点では扶養している子供がいたが、その後就職して年間の収入が103万円を超えたら、扶養から外れますので、減税の対象外になる可能性があります。
結婚・離婚・就職・退職など、年内に扶養関係に変化がある場合は要注意です。
今回の減税は定額減税であり、納税者本人も扶養家族も1人当り合計4万円を減税するというものです。
低所得者で4万円を引き切れない際には、差額を給付するという案も出ています。
ということは、1人当り4万円の給付金と同じことです。名前だけ「減税」ですが、実質は「1回限りの給付」です。
減税の対象になるのは課税されている世帯だけですが、一方で、非課税世帯には7万円の給付金を予定しています。
「働いてる人は、払う税金を4万円だけ減らしてあげる。 働いてない人は、働いてる人が払った税金を7万円あげる。働いたら負け!」と、ひろゆき氏は表現していますが、毎年多くの税金を払っている人からの不満も高まっています。
単純に考えて、非課税世帯以外には、1人当り4万円の給付金を支給したほうが、会社や自治体の負担も少なく、かつ、早いうちに恩恵を受けられます。
1998年の減税時には給付金という制度がなく、マイナンバーやマイナンバーカードも普及しておらず給付するのも大変でしたので、減税が国民に受け入れられたでしょう。しかし、現在は、国民全員の10万円一律給付を経験しており、比較的簡単に給付金を支給できる状況になっています。
減税は、少なくとも数年、長ければ10年以上にわたって行ってこそ効果があるものであり、わずか1回(1年間)だけの期限付き減税では効果があまりないという検証結果もあります。
この先、増税されるのでは?という不安も大きく、減税された分も貯蓄に回すと、現時点で表明している人もいます。
単なる選挙対策としての場当たり的な政策ではなく、中長期的な視野での減税政策が求められるでしょう。