衆院選・参院選(選挙区・比例代表制)の仕組み
現在の日本では、衆議院選挙・参議院選挙のどちらも、次の2つを混合した仕組みがとられています。 選挙区選挙:候補者名で…[続きを読む]
2025年の参院選(第27回参議院議員通常選挙)は、2025年7月3日(木)公示、2025年7月20日(日)投開票の日程で行われます。
回の参議院選挙の改選数は、定数248の半数である124(選挙区74、比例代表50)となります。
目次
世界的な原材料・エネルギー価格の高騰による物価上昇、米価格の急激な上昇、保険料の増加など、国民生活はさらに厳しさを増していおり、今回の参院選では、今までにも増して経済政策が大きな論点となると考えられます。
物価高対策として、「現金給付」か「消費税減税」かが、今回の大きな争点となっています。
当サイトでは、税制・社会保障・教育関連と経済政策の観点のみに絞って、主要政党の公約を比較します。各政党の全ての政策を紹介することはできませんので、具体的な数値や方針を主に紹介します。
公約は「個人向け」「事業者向け」に分類していますが、これは「主に個人向け」「主に事業主向け」という意味であり、両者に共通する場合もあります。
それぞれの政党ごとに公約が多くあるため、なるべく抽象的な内容は避け、明確なものを中心に記載しました。
各党のホームページやTV・新聞メディアでのニュース情報を参考にしていますが、間違いがある場合にはご容赦ください。各政党のWEBサイトのリンクについては、参院選特設サイトがある場合はそのページに、ない場合は政党のトップページに対してリンクを貼っています。
本記事では、文章量等の都合から、すべての政党を掲載できてはいませんが、ご了承ください。
届出をしているが、本記事では掲載していない政党について、下記にリンクを貼っておきます。
各政党の政策・公約を一部の内容に絞ってまとめます。
政党 略称 |
現金給付 | 消費税減税 | 他 |
---|---|---|---|
自民 | 国民全員一律2万円 (子供と非課税世帯の 大人は1人当たり4万円) |
- | ガソリン税の暫定税率廃止 を議論 |
公明 | 軽減税率の引き下げの検討 | ガソリン補助金 | |
立民 | 国民全員一律2万円 | 食料品のみ1年間限定で0% インボイス廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
維新 | - | 食料品のみ2年間限定で0% 中長期的には8%で 軽減税率を廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
共産 | - | 一律5%に減税 さらに廃止を目指す インボイス廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
国民 | - | 一律5%に減税 (賃金上昇するまで) インボイス廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 ガソリン二重課税廃止 |
れいわ | 国民一律10万円 | 廃止(最低でも5%減税) インボイス廃止 |
ガソリン税ゼロ |
参政 | - | 段階的廃止 インボイス廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
社民 | - | 食料品のみ0% インボイス廃止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
保守 | - | 食料品のみ恒久的に0% インボイス中止 |
ガソリン税の暫定税率廃止 |
N党 | - | 一律5%に減税 インボイス廃止 |
- |
現金給付を公約に掲げているのは、自民・公明・れいわの3党のみです。
自民・公明以外は、消費税減税または廃止を公約に掲げています。公明も、軽減税率の引き下げを検討するとしています。
なお、消費税一律5%減税の場合、消費税の税率が一つになりインボイスが不要になります。
しかし、立民・社民・保守は食品のみ0%にするとして、複数税率の状態を維持しながらも、インボイス廃止を主張しています。複数税率がある場合にインボイスを廃止すると、事業者による不正が発生することが想定されます。
自民・公明の与党以外は、ガソリン税の暫定税率の廃止を公約としています。れいわのみ、ガソリン税そのものの廃止を主張しています。
なお、自民の森山幹事長は、ガソリン税暫定税率を年度内に廃止する意向を示しました(2025/7/4)。
政党 略称 |
所得税 | 社会保険・年金 | 他 |
---|---|---|---|
自民 | - | - | - |
公明 | 基礎控除等の引き上げ 扶養控除など各種控除の見直し |
社会保険加入の拡大 年金の給付水準底上げ 在職老齢年金の見直し |
- |
立憲 | 金融所得課税に累進課税導入 基礎控除などの引き上げ 退職所得控除1年一律60万円 |
高所得者の保険料引き上げ 130万円の壁で手取り減らない 低所得高齢者の年金上乗せ |
相続税・贈与税の累進強化 |
維新 | 金融所得課税を総合課税化 配偶者控除等の見直し 勤労税額控除を導入 |
国民医療費4兆円削減 社会保険料年6万円減 第3号廃止 基礎年金の税方式化 |
- |
共産 | 所得税最大65% | マクロ経済スライド中止 年金引き上げ、最低保障年金 子供の国保料ゼロ 後期高齢者医療制度廃止 |
相続税最大70% |
国民 | 年収178万円の壁に引き上げ 年少扶養控除を復活 暗号資産を分離課税20% 働く若者の所得減税 |
現役世代の社会保険料削減 年金の最低保障 高齢者の窓口負担を2割 |
外国人に空室税 入国税の拡大 |
れいわ | 所得税の累進課税を強化 金融所得課税の見直し |
マクロ経済スライド廃止 社会保険料の引き下げ 後期高齢者医療制度を廃止 介護保険の国負担50%以上増 |
法人税引き上げ |
参政 | 年収の壁を212万円に引き上げ 金融所得課税の課税強化 |
予防医療に保険適用拡大 | 国民負担率を35%以内に 税の種類を10種類に減らす |
社民 | 金融所得課税を総合課税化 年少扶養控除の復活 |
最低保障年金月10万円 社会保険料の本人負担を25% |
法人税引き上げ |
保守 | - | - | - |
N党 | 基礎控除200万円まで引き上げ ふるさと納税を廃止 住民税の所得割を減税 |
社会保険料の総称を給与税に 厚生年金保険料を1割減額 後期高齢者自己負担を3割に |
森林環境税を廃止 不動産取得税を廃止 法人税引き下げ |
所得税については、いろいろな案がありますが、金融所得課税の分離課税(約20%)を総合課税(最大55%)に変更することで、所得1億円を超える富裕層への課税を強化する公約が多いです。
社会保険については、社会保険料の削減や、マクロ経済スライド廃止による最低保障となる年金額を確保する公約が多いです。
そのほか、相続税・贈与税の最高税率を、かつての70%に戻して、富裕層への課税強化する案もあります。
政党 略称 |
子育て・教育 | 賃金 | 他 |
---|---|---|---|
自民 | 高校授業料の実質無償化 | 2030年賃金約100 万円増加 | GDP1000兆円(名目GDP) 中小企業5年間60兆円の生産性向上 |
公明 | 学校給食の無償化 高校の授業料、教材費の無償化 |
同一労働同一賃金 介護従事者、保育士等の給与を 全産業平均(月額38.6万円) |
奨学金の減額返還制度・ 企業による代理返還制度 |
立憲 | 大学・給食の無償化 18歳までの児童手当を月1万5千円に 児童扶養手当の所得制限を引き上げ |
最低賃金を時給1500円以上 中小企業の社会保険料減免 130万円の壁に対する給付 |
新たな家賃補助制度 |
維新 | 0~2歳児の保育無償化 出産費用、給食の無償化 大学院まで完全無償化 |
最低賃金の水準を引き上げ | エンジェル税制の優遇措置 減反の補助金廃止 |
共産 | 大学の授業料半減・入学金ゼロ 給食費の無償化 |
最低賃金を時給1500円 手取り月額20万円程度 中小企業の社会保険料減免 |
農家手取り保障 減反廃止 |
国民 | 3歳からの義務教育化で待機児童ゼロ 給食費・教材費等、高校まで完全無償化 子育て・教育・奨学金の所得制限撤廃 |
手取りを増やす | 奨学金債務減免 年5兆円の教育国債 2035年名目GDP1000兆円 |
れいわ | 子ども手当一律月3万円 保育料、給食費、18歳まで医療費無償化 大学院まで教育無償化 |
介護・保育の月給10万円増 最低賃金を時給1500円 中小企業の社会保険料減免 |
家賃補助・給付付きの職業訓練 公的な家賃補助制度 高速道路無償化 |
参政 | 0〜15歳へ月10万円給付金 | 最低賃金と社会保障の見直し | 公務につく人の奨学金返済免除 教育国債 |
社民 | 大学まで教育無償化 出産への保険適用 子ども医療費と保育料の無償化 |
最低賃金を時給1500円 | 給付型奨学金と返済免除制度 農家の所得を増やす |
保守 | 専門学科(商業・工業科等)の無償化 出産育児一時金の引き上げ (国籍条項あり) |
- | 大学の補助金を減らし統廃合 |
N党 | - | - | - |
子育て・教育については、給食費、保育料、医療費の無償化や、高校・大学・大学院の授業料・入学金の無償化などの公約が多いです。
子ども手当(児童手当)を増額するという案や、学生本人が借りる奨学金の返済を免除するという案もあります。
賃金については、最低賃金時給1500円以上が目安となっています。また、中小企業の社会保険料を減免する公約も多いです。
【出典】自民党:公約・政策パンフレット
物価高対策は、国民全員一律2万円の現金給付です。
公約の内容は多岐にわたっていますが、「強力な経済対策を実行する」「中小・小規模事業者支援に全力で取り組む」など、全体的に抽象的な内容が多く、具体的な内容や数値はほとんど見られません。これは、過去のすべての選挙においても同じ傾向です。
「給付金2万円」「名目GDP1000兆円」という部分が、唯一の具体的な内容です。
現在、政権を運営している党であり、新規の政策というよりも既存の政策の継続や拡充が多くあります。すでに実施中の内容も多いため、実現性の面では高いと考えられます。一方で、各種の問題を抜本的に解決しようとするような、大胆な政策はあまり見られません。
【出典】公明党:2025参院選 重点政策
物価高対策は、国民全員一律2万円の現金給付です。
自由民主党との連立与党として、基本的には、自由民主党と歩調を合わせていますが、「軽減税率の引き下げを検討」など、独自の公約も見られます。
【出典】立憲民主党「政策集2025」
物価高対策は、食料品のみ1年間限定で0%です。
所得税・相続税・贈与税の累進性をさらに高めることを提案していますので、高所得者や多額の資産を持つ人は増税になります。
政策集は200ページ以上にもおよび、すべての党の中で、最も細かく政策を記しています。そのためか逆に、公約のポイントがわかりづらくなっている感もあります。
【出典】日本維新の会「第27回参議院議員通常選挙 マニフェスト(政権公約)」
物価高対策は、食品のみ消費税を2年間ゼロ(免税)としていますが、他の野党と違うのは、中長期的には「消費税を8%で軽減税率を廃止」したうえで、最終的には、地方税に移行し、地方がそれぞれ税率を設定し、地方の財源とすることです。
「社会保険料を年6万円負担減」と、社会保険料の削減について金額を明確にしています。
「維新八策 2025」と称された、37ページ、494項目におよぶ基本政策を掲げており、非常に多くの内容が盛り込まれています。
以前から、「副首都構想」「道州制」を打ち出しており、国が主体ではなく、地方が主体となる政治・経済構造に変更することが、政策全体の根幹となっています。
物価高対策は、消費税5%への減税、最終的には、廃止を目指しています。その代わりに、所得税・相続税の最高税率を引き上げて、高所得者や富裕層からの課税を強化します。また、法人税も引き上げ、大企業の内部留保に対しても課税します。
高齢者への年金も減らさず、むしろ増やすことを想定しています。
全体として、一部の高所得者や富裕層に対して、課税や社会保険料の徴収をさらに強化することで、国民全員ができるだけ平等になる社会を目指していると考えられます。
ほかにも約100項目にわたる、細かい政策を掲げています。政策の内容が過去から一貫しているのが特徴的です。
【出典】国民民主党の政策2025
物価高対策は、消費税5%への減税です。また、もともと現役世代の所得税減税を掲げており、全員一律で基礎控除額を引き上げ、年収178万円の壁を実現します。
賃金をあげた企業には、法人税だけでなく固定資産税や消費税の減税もします。
全体的に、若者や就職氷河期世代に対する政策を強くうちだしています。
物価高対策は、消費税を廃止、現金給付10万円と、両方に言及しています。
毎回、すべての政党の中で最も挑戦的と思われる公約を掲げています。全体的に短い言葉でわかりやすい公約になっています。
子ども手当一律月3万円など、子育て世帯支援や教育無償化が大きな特徴です。580万人の奨学金を帳消しというのもインパクトがあります。
全体的に、働く現役世代や子育て世代の負担を軽減すること、また、低所得者のサポートに重きが置かれています。
【出典】参政党:政策2025
物価高対策は、消費税の段階的廃止を進めるとしています。また、所得税の年収の壁を212万円まで大幅に引き上げます。
税の種類を約50から10種類程度に減らしてコスト削減を図るというのは、他党にない大きな特徴です。
全体的に、日本の文化や国体を守るという思想理念を基に公約が作成されています。
【出典】社民党:参議院議員選挙
物価高対策は、消費税の食料品消費税ゼロです。
社会保険料の労使負担割合を1:3にするという案は、他党にない大きな特徴です。
【出典】日本保守党:重点政策項目
物価高対策は、消費税の食料品消費税ゼロです。
社会保険料の労使負担割合を1:3にするという案は、他党にない大きな特徴です。
全体的に、日本の国体や伝統文化を守るという思想理念を基に公約が作成されています。
【出典】NHK党「公約」
物価高対策は、消費税率5%への引き下げです。所得税の基礎控除を200万円まで引き上げとあり、仮に実現すれば、かなりの減税となります。
全体的に、ほとんどの税金を廃止または減税という案であり、政府や自治体の役割が小さい「小さな政府・行政」を目指していると考えられます。
「~を求める」という書き方がされており、政権の運営ではなく、野党として政府に意見を述べていくことを前提としています。
参院選は小選挙区と比例代表制の2つの方式に分かれています。仕組みを詳細を下記で解説しています。
2022年参議院選挙の給付金・税金・経済政策関連の政策・公約(マニフェスト)を比較しています。
この当時から、公約が変わった政党もあれば、変わらない政党もあります。