確定申告書の書き間違いはどう修正すればいいの?
確定申告書の記入ミスをどのように訂正すればいいのか解説します。[続きを読む]
確定申告書には前年1年分の所得等、様々な金額を記載するのでうっかり計算ミスをしてしまうこともありますよね。
この記事では、間違った内容で申告書を提出してしまったらどうなるのか、税理士事務所の代表をしている杉谷大輔さんに解説していただきます。
なお、この記事では確定申告書を提出した後に間違いに気づいたケースについて解説します。提出前の確定申告書の修正については下記の記事をご確認くださいね。
目次
確定申告の法定期限は3月15日です。法定申告期限内に同じ人から2以上の確定申告書が提出されたときは、法定申告期限内にその人から特段の申出がない限り、最後に提出された申告書をその人の確定申告書として取り扱うこととなっています。
従って、法定申告期限内に確定申告書の誤りに気付いたときは、3月15日までに正しい確定申告書を提出してください。この場合、提出する確定申告書に特段の付記は不要です。
法定申告期限後に間違いに気づいたときは、既にした確定申告における納付すべき所得税の額または還付されるべき所得税の額が、あるべき額と比べて過大になっているか過小になっているかで、それぞれ行う手続きが異なります。それぞれの場合と行う手続きは次のとおりです。
ケース | 手続 |
---|---|
納付すべき所得税の額が過大 | 更正の請求 |
還付されるべき所得税の額が過小 | |
納付すべき所得税の額が過小 | 修正申告 |
還付されるべき所得税の額が過大 |
税金を払いすぎたり本来受け取るべき還付金を受け取れていない場合は「更正の請求」を、税金の支払いが足りていなかったり還付金を多く申請してしまっている場合は「修正申告」をすることになります。
「更正の請求」は義務ではありませんが、行うことで支払済みの所得税が還付される可能性があります。
「修正申告」は、税務署による更正があるまでの間はすることができますが、これを怠っていた場合において、税務調査で指摘を受けたときは、相応のペナルティが課せられます。
修正申告とは、既にした確定申告において納付すべき所得税の額が過小、または還付されるべき所得税の額が過大だったときに、その法定申告期限後に行う修正の申告のことをいいます。
修正申告を行うのは、たとえば次のようなケースです。
なお、納付税額または還付税額が変わらない場合等は修正申告をすることができません(このことは更正の請求でも同じです)。
修正申告をする場合はペナルティが課せられます。これは、法定申告期限までに正しい税額を申告納付している人との公平性を保つためです。
修正申告のペナルティは、一般的には以下のの合計額です。なお、税務調査の事前通知が来る前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税は課されません。
修正申告の法定期限は「税務署による更正処分があるまで」ですが、税務調査の事前通知が来るまでに修正申告を行えば過少申告加算税が課されないため、必要性に気づいた場合は、出来るだけ早く修正申告を行うのがベターです。税務調査における税務署の指摘を受け入れて修正申告を行う場合の期限は、担当の税務調査官とご相談ください。
修正申告の大まかな流れは確定申告と同じですが、以下の2点が確定申告とは異なります。
使用する申告書について、確定申告では所得の種類に応じて申告書Aと申告書Bがありましたが、修正申告の場合は申告書Bを使用します(当初申告で申告書Aを使っていた方も、修正申告においては申告書Bを使用する必要があります)。
また、修正申告書の表(第5表)も新たに作成する必要があります。
納付日について、確定申告では法定申告期限までに納付しますが、修正申告では修正申告書の提出日が納期限なので、修正申告書の提出と同じ日に全額を納付します。
修正申告に必要な下記2点の書類の書き方を説明していきます。
まず、最上部の「申告書B」の左隣にスペースがあるので、そこに「修正」と記載します。
次に、「収入金額等」、「所得金額」、及び「所得から差し引かれる金額」の各エリアは、修正する必要がある欄は正しい数字を、修正する必要がない欄は当初申告と同じ数字を記入します。この際、どこを修正したかを示す必要はありません(それを税務署側が把握するために第5表を添付します)。
最後に、「税額の計算」以降のエリアに、申告書に記載された計算式に従って数字を記入します。
なお、申告書Aで当初申告を行っていた方であっても、修正では申告書Bを使用する必要がありますが、単に使用する様式が変わるだけなので、上記のとおり数字を記入すれば問題ありません。
まず、「修正前の課税額」のエリアには、修正前(当初申告)の数字を転記します。
次に、「修正申告により増加する税額等」のエリアには、当初申告の税額と修正申告の税額との差額を記入します。その際、下記に留意してください
最後に、「修正申告によって異動した事項」のエリアに、今回の修正の内容を記載します。たとえば、配偶者特別控除額に誤りがあった(当初は38万円で申告したが、正しくは11万円だった)場合、「所得から差し引かれる金額に関する事項」のエリアに次のとおり記載します。
修正申告書の提出先は、提出時点の住所地を所轄する税務署です。たとえば、当初申告時には東京都荒川区に住んでいた方が、修正申告書提出時点で東京都板橋区に転居していた場合、修正申告書は板橋税務署に提出します。
修正申告書の提出方法は、確定申告書の提出方法と同じです。なお、確定申告書の提出時に提出した添付書類は、修正申告書の提出時に再度提出する必要はありません。
修正申告書の提出はオンライン(e-Tax)で行うことが可能です。
オンラインでの修正申告は、確定申告と同じく、国税庁の確定申告書作成コーナーなどで電子的に作成した申告書を、e-Taxのシステムで電子申告する方法により行います。
当初申告を書面で行った方が、修正申告をオンラインで行うことは可能ですし、その逆に当初申告をオンラインで行った方が修正申告を書面で行うことも可能です。
追加納付分(税額、ペナルティ)の納税方法は、確定申告時と同じです。追加納付分の納期限は修正申告書を提出した日なので、修正申告書を提出したことで満足してうっかり納付を忘れることのないようご注意ください。
所得税の修正申告をすると、一般的には連動して住民税も増えます。所得税の修正申告をするとその情報が地方自治体へ連携されるので、納税者側が地方自治体に修正申告する必要はありません。過年分の修正申告である場合、ある程度の期間が経過するとお住まいの地方自治体から納付金額が記載された納付書が届くので、その納付書に書かれた期限までに納付します。
当初申告での所得区分に誤りがあり、かつ修正申告をすることができる要件を満たせば、修正申告で所得区分を変更することは可能です。
たとえば、システムエンジニアで、2019年の1月1日からフリーランスとなった方が、システムエンジニアとしての収入の所得区分を「雑所得」として申告していた場合において、2019年における売上に30万円の計上漏れ発見したときは、その経費の計上漏れに係る修正申告をすると同時に所得区分を「雑所得」から「事業所得」に変更することは可能です。
もっとも、修正申告で所得区分を変更できるのは、当初申告の所得区分が誤っていた場合のみです。
コロナ禍において持続化給付金を受給するため、当初「雑所得」として申告していた所得を「事業所得」に変更したいと希望される方もいるようですが、所得を事業所得として申告するためには、事業所得の要件を満たす必要があります。
ここでいう事業所得の要件とは、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいうもの」と解されています。
たとえば同じシステムエンジニアでも、平日は会社員として働き、日曜日のみ副業でフリーランスとしてスポット的に業務を受注する場合において、会社員としての給与所得が800万円で副業所得が30万円のときは、この副業による所得は事業所得の要件を充足しないと考えられますから、この所得を事業所得として申告することはできません(雑所得として申告することになります)。
いかがでしたでしょうか。今回は確定申告の内容を修正する方法と修正申告について解説しました。最後にこの記事のおさらいをしましょう。
確定申告についてまだ解決していない疑問がある方は以下の記事もお勧めです。ぜひ併せてご覧ください。