ガソリン・軽油・灯油にかかる消費税の違い、10%増税後の計算

ガソリン 軽油 給油

ガソリン、軽油、灯油にかかる消費税も、2019年10月から10%に増税されました。これらの燃料にはその他の税金が課せられているので、ルールが複雑です。

この機会に、ガソリン、軽油、灯油に関する「消費税とその他の税」と消費税の関係を整理しておきましょう。

1.ガソリン、軽油、灯油にかかる税金

まずは、ガソリン、軽油、灯油にかけられている「消費税以外の税金」を紹介します。

ガソリンには、ガソリン税53.8円、石油税2.8円が課せられています(いずれも1リットル当たり。以下同)。
軽油には、軽油引取税32.1円と石油税2.8円が、灯油には石油税2.8円のみが、それぞれ課せられています。
(石油税は、2016年4月から、2.54円→2.8円へ値上げされています。)

【参考】財務省:自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料

もう少し詳しく説明すると、ガソリン税は、揮発油税48.6円と地方揮発油税5.2円に分けられます。
本来は、揮発油税24.3円+地方揮発油税4.4円=合計28.7円なのですが、2008年5月から暫定税率(2010年4月より特例税率)が適用されて、1リットル当たり53.8円となっています。

軽油引取税も、本来は、15円ですが、2008年5月から暫定税率(2010年4月より特例税率)が適用されて、1リットル当たり32.1円となっています。

2.ガソリン、軽油、灯油にかかる消費税

ガソリン、軽油、灯油には消費税が課せられていて、増税により10%になりました。
ただ、ガソリンへの消費税のかけ方と、軽油・灯油への消費税のかけ方は少し異なります。

2-1.ガソリン税と石油税の両方に消費税がかかる

ガソリンでは、ガソリン税と石油税の両方に消費税がかかります

たとえば、ガソリンを「消費税抜き1リットル140円」で売っているガソリンスタンドがあったとします。ここでガソリンを1リットル入れると、消費税抜き価格は140円になり、その内訳は「本体83.4円、ガソリン税53.8円、石油税2.8円」になります。

この140円全体に消費税10%がかかりますので、消費税を計算すると

・消費税=(本体83.4円+ガソリン税53.8円+石油税2.8円)×消費税10%=14円

よって、消費税込み価格は、140円+14円=154円です。

ガソリン 軽油

二重課税になっている?

この計算式のうち、税金の部分だけ抜き出すと次のようになります。

  • ガソリン税53.8円×消費税10%
  • 石油税2.8円×消費税10%

税金に税金が課せられています。
この状態を、税金のルールとしては「よろしくない」とされている二重課税であると指摘する声もあります。

2-2.軽油と灯油では石油税にしか消費税がかからない

軽油には軽油引取税32.1円と石油税2.8円が課せられますが、このうち消費税がかかるのは石油税だけです。軽油引取税には、消費税がかかりません
つまり、消費税がかかるのは「本体価格+石油税」だけです。

灯油も石油税2.8円のみ消費税がかかりますので、消費税は「本体価格+石油税」にかかります。

たとえば、軽油を「消費税抜き1リットル112.1円」で売っているガソリンスタンドがあったとします。ここで軽油を1リットル入れると、消費税抜き価格は112.1円になり、その内訳は「本体77.2円、軽油引取税32.1円、石油税2.8円」になります。

このうち、消費税10%がかかるのは、「本体+石油税」のみですので、消費税を計算すると

・消費税=(本体77.2円+石油税2.8円)×消費税10%=8円

よって、消費税込み価格は、112.1円+8円=120.1円となります。

ガソリン 軽油

3.なぜガソリン税だけ消費税がかかるの?

ガソリン税には消費税がかかり、軽油引取税には消費税がかからないと聞いて、なぜガソリン税だけに消費税がかかるのか疑問が生じることでしょう。

国税庁は次のような見解を示しています。

 消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などが含まれます。これは、酒税やたばこ税などの個別消費税は、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金であり、その販売価額の一部を構成しているので、課税標準に含まれるとされているものです。
これに対して、入湯税、ゴルフ場利用税、軽油引取税などは、利用者などが納税義務者となっているものですから、その税額に相当する金額を請求書や領収証等で相手方に明らかにし、預り金又は立替金等の科目で経理するなど明確に区分している場合には、課税資産の譲渡等の対価の額には含まれないことになります。

【引用】国税庁:No.6313 たばこ税、酒税などの個別消費税の取扱い

ややこしい記述ですが、解説しますと、
ガソリン税と石油税は、メーカーである石油会社が負担者として納税するものであり、石油会社がガソリンスタンドにガソリンを卸す際に、ガソリン税分を上乗せしています。ガソリンスタンド側からすると、仕入価格の一部にすぎませんので、消費者に販売する際に消費税を上乗せします。

一方、軽油引取税は、消費者が負担してガソリンスタンドが納税するものであり、軽油引取税に消費税をかけると二重課税になってしまいますので、軽油引取税には消費税をかけません。

とはいえ、消費者に販売される際のガソリン価格にはガソリン税が含まれていますので、ガソリン税も最終的には消費者が負担していることに変わりはありません。

なんとなく後味の悪い微妙な制度となっています。

まとめ

消費増税により、ガソリン、軽油、灯油も増税になりました。

ガソリンと軽油・灯油では、消費税のかけ方が、次のように異なります。

  • ガソリン:本体、ガソリン税、石油税のすべてに消費税がかかる。
  • 軽油:本体、石油税のみに消費税がかかる。軽油引取税にはかからない。
  • 灯油:本体、石油税のみに消費税がかかる。

消費税増税による影響については、最も多くの要素に消費税がかけられているガソリンへの影響が最も大きいといえます。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2023年時点)。
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