簡単にできる所得税の計算
所得税の計算方法を5STEPで、具体的と図を用いてわかりやすく説明します。所得や控除の種類についても紹介します。[続きを読む]
毎年勤務先から渡される源泉徴収票には収入と所得などいろいろな金額が載っています。ただ何となく見ているけれども実はあまりよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は所得税についてはじめての方でもわかるように基礎から解説していきたいと思います。
目次
所得税とは、個人がその年の1月1日~12月31日の1年間に得た所得に対して課税される税金です。
所得とは、収入から経費や控除額を引いた残りの金額を指します。
日本の現在の税収は国税と地方税を合わせて約100兆円ですが、そのうち約3割が個人に対する所得税です。
税金は税金のかかる対象や納める先、徴収の方法などによって沢山の種類があります。また、税金には国に納める国税と県や市町村などの地方に納める地方税があります。
国税は所得税や法人税、相続税、消費税など分類されます。地方税には住民税や固定資産税などが分類されます。
さらに税金は徴収の方法によっても納税者が直接国などに納税する直接税と消費税のように事業者などが消費者から一度税金を預かって納める間接税があります。
所得税は個人の所得に対して課税される個人所得課税であり、国税に分類され直接税として徴収されます。
また、基本は確定申告によって納税します。しかしサラリーマンなど給与所得者には、給料支払いと同時に天引きをする源泉徴収による納税が一般的です。
主な税金の種類 | |||
---|---|---|---|
税金の対象 | 税金名 | 徴収方法 | 納税先 |
所得と収入に対して かかる税金 |
所得税 | 直接税 | 国税 |
法人税 | 直接税 | 国税 | |
住民税 | 直接税 | 地方税 | |
消費などに対して かかる税金 |
消費税 | 間接税 | 国税 |
地方消費税 | 間接税 | 地方税 | |
酒税 | 間接税 | 国税 | |
不動産屋や自動車などの 資産に対してかかる税金 |
自動車税 | 直接税 | 地方税 |
固定資産税 | 直接税 | 地方税 | |
相続税 | 直接税 | 国税 |
では所得税の「所得」とは何を指すのでしょうか?
いわゆる「収入」と「所得」は違うものです。
収入とは給与収入であれば単純に受け取った額面の金額を指します。所得とは収入から経費を差し引いた金額を指します。
例えば事業者の方がネットの通販をしているとします。
ネットで品物を売って得た金額が「収入」となりますが、そこから仕入れにかかった経費などを差し引くことで、手取りである「所得」を計算できます。
所得=収入から損失や経費を引いたものと覚えてください。
では経費がいくらかかったかどのように計算するのでしょうか。
サラリーマンなど給与所得者は個別に経費を申告していると税務署も人手がとても足りないので、「給与所得控除」と言って「収入から計算式によって経費となる控除額が計算される」仕組みとなっています。
白色申告の個人事業主は、確定申告で「収支内訳書」を提出します。 青色申告の個人事業主は、「青色申告申告書」を提出します。
この収支内訳書と青色申告決算書には、あらかじめ経費の種類が記載されており、使った経費の金額を、経費の種類ごと(勘定科目)に振り分けていきます。
主な所得の分類は10種類あり、それぞれによって税率や計算式が異なります。
所得の種類 | 所得の例 |
---|---|
利子所得 | 債券や銀行預金などの利子 |
配当所得 | 株式や投資信託などの配当 |
不動産所得 | 家賃や駐車場代などの不動産収入 |
事業所得 | 個人事業主など事業からの収入 |
給与所得 | サラリーマンやアルバイトなどの給与の収入 |
譲渡所得 | 土地や建物、株式などを売却して得た収入 |
一時所得 | 生命保険などの一時金、競馬や競輪の払戻金など |
退職所得 | 退職金の収入 |
山林所得 | 山林を伐採して譲渡した収入など |
雑所得 | 他の所得にあたらないもの、 年金収入・FX・ビットコイン取引などの収入など |
【参照】国税庁HP:確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等
所得税に関するさまざまな疑問について整理しました。
2-1でご説明したように、売上から経費を引いたものが所得となります。
そこから、各種控除を引いたものが課税所得となり、それに税率をかけると所得税となります。
例えば年収500万円のサラリーマンの方は2020年に所得税をいくら支払うのでしょうか。
独身で給与収入の他に収入がなく、控除なども無いと仮定します。
年収500万円の場合、経費となる給与所得控除は約144万円です。
さらに基礎控除48万円、厚生年金などの社会保険料控除がおよそ72万円ほどと仮定すると、詳しい計算式は割愛しますが、所得税は約13万円になります。
所得税の詳しい計算は、こちらの記事をご参照ください。
サラリーマンの方は毎月振り込まれる給料から源泉徴収によって税金を納税しています。
「源泉徴収」とは、給与だけでなく、利子や配当など事業者が支払いを行う際に納税者に代わってあらかじめ差し引くことです。ただし、差し引かれる税額は前年の収入などによって仮計算された金額になっています。
そのため、少し多めに源泉徴収されています。また、支払った生命保険料や地震保険料の一部は控除によって税額を少なくすることができます。
この手続きを従業員が会社に代行してもらい、税金を還付してもらったり、不足額を納税するように調整するのが「年末調整」です。
ただし、住宅ローン減税を新たに申告する場合や医療費控除などは、年末調整による還付が出来ませんので、このような場合には確定申告をすることになります。
日本の所得税の税率は「超過累進課税」という方式です。
税率は所得が上がるほど高くなるように設定されています。
一定の金額を超えた場合は、超えた金額に対してのみ税率が高くなるため、税負担額の増え方が滑らかになります。
また「累進課税」とは所得が多くなればなるほど税率が上がっていく仕組みで、「支払い能力が高い人には多く税金を負担してもらいましょう」という考え方によるものです。
【参照】国税庁ホームページ
控除とは所得税を計算する際に差し引ける一定の金額のことです。
税額の計算のもととなる所得を差し引ける「所得控除」と税金額を直接差し引ける「税額控除」の二種類があります。
主な控除は以下のようなものです。
控除の種類 | 内容 |
---|---|
基礎控除 | 所得がある人全てに適用される控除 |
給与所得控除 | サラリーマンなど給与所得の方の経費としてが一律的に計算される控除 |
配偶者控除・配偶者特別控除 | 配偶者を扶養している場合に受けることのできる控除 |
社会保険料控除 | 厚生年金保険や健康保険料など社会保険に支払った額に対する控除 |
生命保険料・損害保険料控除 | 生命保険や地震保険などの支払額の一部を対象とした控除 |
扶養控除 | 子供や親、親族などを扶養している場合に受けられる控除 |
勤労学生控除 | 納税者が働きながら学校へ行っている場合に受けられる控除 |
寡婦・寡夫控除 | 配偶者と死別、離別していたのち独身の人が受けられる控除 |
障害者控除 | 納税者が障がい者または障害者の方を扶養している場合に受けられる控除 |
雑損控除 | 火災や盗難にあった際に受けられる控除 |
小規模規模共済控除 | 個人事業主や小規模企業を対象とした共済の掛け金を対象の控除 |
公的年金控除 | 受給している年金に対する控除 |
寄附金控除 | ふるさと納税など寄付金に対する控除 |
パート・アルバイトをしている方であれば聞いたことがあるかと思いますが、103万円の壁というものがあります。これはこれ以上の金額を稼いでしまうと税金や社会保険料が上がってしまい結果として損になる金額です。
具体的には基礎控除の48万円と給与所得の控除の最低額の55万円を足すと103万円になります。パート・アルバイトの方の年収が103万円以下であれば所得税がかかりません。
また、主婦の方などでご主人が働いている場合など収入が103万円を超えると配偶者控除の金額に影響してしまいます。
住宅ローン減税とは「住宅借入金等特別控除」のことです。個人がマイホームを購入した場合やリフォームをローンを借入れた場合にローン残高に応じて一定の額を所得税・住民税から控除出来る便利な制度です。
マイホームをこれから取得する際にはぜひ利用したい制度ですが、一定の要件や減税の限度額が細かく決まっているので、利用の際にはファイナンシャルプランナーなど専門家への相談などもおすすめします。
【参照】国税庁ホームページ
一見難しいと感じてしまいがちな税金に関するキーワードも「所得」「控除」とは何か?といった基本をきちんと押さえることでかくだんに理解しやすくなります。
今回の記事を入り口に興味のある方は税金について調べてみてはいかがでしょうか?