年末調整の住宅ローン控除でいくら返ってくる?

住宅ローン

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、2年目からは年末調整で申告します。住宅ローン控除は還付額が大きいため、期待している人も多いでしょう。

年末調整の住宅ローン控除で、いくら返ってくるのか? 入居年月、購入した住宅の種別、住宅ローン残高によって異なりますので、パターン別に詳しく解説します。

1.住宅ローン控除は2022年、2024年の改正で厳しく

2022年に住宅ローン控除の税制改正があり、控除率が下がりました。
さらに2024年にも改正されて環境性能にも厳しくなり、新築では省エネ住宅でないと住宅ローン控除を受けられなくなりました。

2021年までに入居した場合と、2022年以降に入居した場合で、返ってくる金額に大きな差が出ています。

(1)控除率

住宅ローン控除では、基本的に、住宅ローンの年末残高に控除率をかけた金額が返ってきます。

住宅ローン年末残高×控除率=控除額

控除率は、改正前は1.0%でしたが、改正後は0.7%に下がりました。

  2021年以前 2022年以降
1~10年目 1.0% 0.7%
11~13年目 住宅ローン年末残高×1.0%と
税抜建物購入価格(上限4,000万円)×2%÷3の
いずれか少ないほう
2021年以前に入居している場合は、改正前の税制が適用されます。よって、基本的に控除率は1.0%のままです。以降の説明も同様です。
なお、特定の条件を満たすケースでは、2022年末までの入居であれば、改正前の税制が適用されることがあります。

(2)借入限度額

住宅ローン控除では、借入限度額があります。これを超えたローン残高の分は控除の対象になりません。

住宅ローン控除の改正で、環境性能に応じて借入限度額が細分化され、さらに減額されました。

  入居年 2021年以前 2022~2023年 2024年 2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 5,000万円 5,000万円 4,500万円
(5,000万円※1)
4,500万円
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
4,000万円 4,500万円 3,500万円
(4,500万円※1)
3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
(4,000万円※1)
3,000万円
その他の住宅 3,000万円 0(2,000万円※2)
中古住宅 認定住宅 2,000万円 3,000万円
その他の住宅 2,000万円

※1 子育て世帯・若者夫婦世帯
※2 2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅は、借入限度額が2,000万円

(3)控除期間

2019年10月1日に消費税が10%に増税されたことに伴い、控除期間が10年から13年まで延長されました。改正後も、新築住宅では13年のままとなっています。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅
ZEH
省エネ基準適合住宅
13年間 ※1 13年間 13年間
その他の住宅 13年間※1 13年間 -(10年間※2)
中古住宅 10年間 10年間 10年間

※1 消費税10%で購入した住宅など
※2 2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅は、控除期間が10年間

なお、住宅ローンには次のようにいろいろな種類がありますが、種類による差はありません。

【参考】住宅ローンの種類とは?|FP(ファイナンシャルプランナー)の通信教育・通信講座ならフォーサイト

2.住宅ローン控除で、いくら返ってくる?

それでは、住宅ローン控除で、いくら返ってくるのか?を紹介していきます。まず、1年間に控除できる最大の金額を(限度額)を確認します。

(1)年間の控除限度額

控除率と借入限度額をかけると、年間の控除限度額を計算できます。

これは借入限度額まで住宅ローン残高がある場合で、残高がそれよりも少ない場合は、控除額が少なくなります。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 50万円 ※1 35万円 31.5万円
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
40万円 ※2 31.5万円 24.5万円
省エネ基準適合住宅 28万円 21万円
その他の住宅 21万円 0(14万円 ※3)
中古住宅 認定住宅 20万円 21万円
その他の住宅 14万円

※1 11~13年目の控除限度額は33.3万円
※2 11~13年目の控除限度額は26.6万円
※3 2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅は、控除限度額が14万円
※ 子育て世帯・若者夫婦世帯の2024年入居については金額が異なるが省略

(2)基本は所得税から控除、住民税からも一部控除

住宅ローン控除では、基本的には、所得税から控除します。つまり、年末調整や確定申告のとき、控除された金額がまるまる返ってきます(還付されます)。

ただし、控除額分の所得税が発生していないと控除しきれません。控除しきれない分は、翌年の住民税から控除(減額)されますが、上限があります。

住民税からの住宅ローン控除の上限額
2021年以前 2022年以降
所得税の課税所得金額の7%
(上限136,500円)
所得税の課税所得金額の5%
(上限97,500円)

ある程度の年収(所得)がないと、住宅ローン控除をフルで活用しきれないことになります。

3.【年収別】住宅ローン控除、所得税と住民税の控除額の早見表

それでは、年収別に、住宅ローン控除で所得税と住民税の控除額が最大いくらになるか早見表で紹介します。
次のケースで想定してみました。

  • 年収:400、500、600、700、800、900万円
  • 年齢:40歳
  • 扶養家族:配偶者、子供2人(16歳未満)
  • 社会保険:協会けんぽ東京、雇用保険:一般の事業
  • その他の控除は考慮しない

ここでは、年末の住宅ローン残高は借入限度額より多いとします。なお、今まで注意書きをしてきた特別なケースについては省略します。

▷年収400万円

所得税は64,300円しか発生していないため、すべてのケースで控除しきれません。
住民税の控除限度額は88,270円(2021年以前:所得税の課税所得金額の7%)または63,050円(2022年以降:所得税の課税所得金額の5%)ですので、控除しきれません。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 64,300円
(88,270円)
64,300円
(63,050円)
64,300円
(63,050円)
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
64,300円
(88,270円)
64,300円
(63,050円)
64,300円
(63,050円)
省エネ基準適合住宅 64,300円
(63,050円)
64,300円
(63,050円)
その他の住宅 64,300円
(63,050円)
0円
中古住宅 認定住宅 64,300円
(88,270円)
64,300円
(63,050円)
その他の住宅 64,300円
(63,050円)

()内は住民税からの控除額

▷年収500万円

所得税は98,400円しか発生していないため、すべてのケースで控除しきれません。
住民税の控除限度額は135,030円(2021年以前)または96,450円(2022年以降)ですので、一部を除いてほとんどのケースで控除しきれていません。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 98,400円
(135,030円)
98,400円
(96,450円)
98,400円
(96,450円)
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
98,400円
(135,030円)
98,400円
(96,450円)
98,400円
(96,450円)
省エネ基準適合住宅 98,400円
(96,450円)
98,400円
(96,450円)
その他の住宅 98,400円
(96,450円)
0円
中古住宅 認定住宅 98,400円
(101,600円)
98,400円
(96,450円)
その他の住宅 98,400円
(41,600円)

()内は住民税からの控除額

▷年収600万円

所得税は161,800円発生していますので、それより控除額が低い場合は控除しきれますが、高い場合は控除しきれません。
住民税の控除限度額は136,500円(2021年以前)または97,500円(2022年以降)ですので、一部のケースについては控除しきれます。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 161,800円
(136,500円)
161,800円
(97,500円)
161,800円
(97,500円)
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
161,800円
(136,500円)
161,800円
(97,500円)
161,800円
(83,200円)
省エネ基準適合住宅 161,800円
(97,500円)
161,800円
(48,200円)
その他の住宅 161,800円
(48,200円)
0円
中古住宅 認定住宅 161,800円
(38,200円)
161,800円
(48,200円)
その他の住宅 140,000円

()内は住民税からの控除額

▷年収700万円

所得税は230,300円発生していますので、それより控除額が低い場合は控除しきれますが、高い場合は控除しきれません。
住民税の控除限度額は136,500円(2021年以前)または97,500円(2022年以降)ですので、一部のケースについては控除しきれます。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 230,300円
(136,500円)
230,300円
(97,500円)
230,300円
(97,500円)
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
230,300円
(136,500円)
230,300円
(84,700円)
230,300円
(14,700円)
省エネ基準適合住宅 230,300円
(49,700円)
210,000円
その他の住宅 210,000円 0円
中古住宅 認定住宅 200,000円 210,000円
その他の住宅 140,000円

()内は住民税からの控除額

▷年収800万円

所得税は386,000円発生していますので、2022年以降ではすべてのケースで控除しきれます。
2021年以前は控除しきれないケースがありますが、住民税の控除限度額は136,500円(2021年以前)ですので控除しきれます。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 386,000円
(114,000円)
350,000円 315,000円
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
386,000円
(14,000円)
315,000円 245,000円
省エネ基準適合住宅 280,000円 210,000円
その他の住宅 210,000円 0円
中古住宅 認定住宅 200,000円 210,000円
その他の住宅 140,000円

()内は住民税からの控除額

▷年収900万円

所得税は568,700円発生していますので、すべてのケースで所得税から控除することができます。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 500,000円 350,000円 315,000円
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
400,000円 315,000円 245,000円
省エネ基準適合住宅 280,000円 210,000円
その他の住宅 210,000円 0円
中古住宅 認定住宅 200,000円 210,000円
その他の住宅 140,000円

4.住宅ローン控除、全期間の控除合計額

住宅ローン控除を全期間適用した場合の、控除合計額です。
入居時期、住宅の種類によって、全期間で控除される金額が大きく違うことがわかります。

    2021年以前 2022~2023年 2024~2025年
新築住宅
買取再販
認定住宅 600万円 455万円 409.5万円
ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)
480万円 409.5万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 364万円 273万円
その他の住宅 273万円 0(140万円 ※)
中古住宅 認定住宅 200万円 210万円
その他の住宅 140万円

※ 2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅は、控除合計額は140万円

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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