年末調整の住宅ローン控除でいくら返ってくる?
年末調整の住宅ローン控除で、いくら返ってくるのか? 入居年月、購入した住宅の種別、住宅ローン残高によって異なりますの…[続きを読む]
「住宅ローン控除」は減税額が非常に大きく、マイホームを購入した人にとって、とても有利な制度です。2022年に税制が改正されて内容が大きく変わりましたが、税制改正前に入居した人は以前の税制が適用されます。
2022年税制改正前の住宅ローン控除制度について徹底解説します。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を新築・購入または増改築した人に対して、税金(所得税)の負担を減らす制度です。
正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、通称として「住宅ローン控除」「住宅ローン減税」などと呼ばれます。
この制度を利用すると、住宅ローンの年末残高の1%が、10年間(購入時期によっては13年間)に渡ってその年の所得税から控除されます。
控除される金額は年40万円が限度となっており、10年間で最大400万円(13年間の場合は最大480万円)もの所得税が節税できます。
住宅ローン控除は税額控除であり、節税効果が大きいのがポイントです。
所得税の控除には所得控除と税額控除がありますが、所得控除は税率を乗じる前の所得から差し引きますが、税額控除は税率を乗じた後の所得税額から直接差し引くことができるからです。
1年目から10年目、11年目から13年目までで控除される金額は異なります。
1年目から10年目までは住宅ローンの年末残高の1%が税額控除されます。税額控除の上限は40万円(認定住宅では50万円)です。
消費税が8%に増税される以前(2014年3月31日以前)に入居開始した場合、その開始した年によって税額控除の上限は異なり、20万円~50万円となります。また、住宅購入時の消費税が8%/10%以外の場合は、税額控除の上限は20万円(認定住宅等は30万円)となります。
例えば1年目の住宅ローン年末借入残高が3,000万円であれば、3,000万円×1%=30万円が税額控除されます。
税額控除とは、その年に支払う税金から直接控除されるという控除です。
例えばその年の所得税納税額が50万円の人が30万円の税額控除を受けることができれば20万円の納税額になるという仕組みです。
一般的には課税所得から控除される「所得控除」よりも、納税額がからダイレクトに控除される税額控除のほうが控除される税額は大きくなる傾向にあります。
また、基本的には所得税から控除されますが、所得税から控除しきれない場合には住民税から控除される仕組みになっています。
住宅ローン控除は2018年までは10年間しか控除されませんでした。
しかし2019年10月に消費増税が行われたことによって、増税の景気対策として13年目まで控除されるようになりました。
ただし、2019年10月1日~2022年12月31日の間に入居した場合に限られます。
また、契約時期に期限があり、新築の場合は2021年9月末まで、購入や増改築等の場合は2021年11月末までに契約したときに限られます。
該当する人は、11年目〜13年目は以下の1か2のいずれか少ない金額が税額控除される仕組みになっています。
このように、11年目から13年目の控除額の合計額は最大で住宅購入額の2%しか控除されません。
単純に消費増税分が控除されるだけになってしまいます。
これは消費増税前に住宅を購入して10年間の控除を受けても変わらないことになるので、2019年10月から住宅ローン控除の期間が延びたことで得になったわけではありません。
あくまでも、増税によって負担が増えた分だけを11年目から13年目に住宅ローン控除として返還するだけの制度となっています。。
もしも、住宅ローン控除可能な金額が30万円で、住宅ローン控除適用前の所得税の額が20万円だった場合には、その年の所得税は0となります。 その場合には使いきれなかった10万円が気になりますね。
控除しきれなかった金額は、翌年に繰越すことはできませんが、次のどちらか少ない金額を住民税から控除できます。丸々捨てることにはなりませんので大丈夫です。
居住開始日 | 2014年4月1日~2019年9月30日 | 2019年10月1日~2022年12月31日 |
---|---|---|
消費税率 | 8% | 10% |
控除期間 | 10年間 | 13年間 |
控除限度額 (1~10年目) |
・年末残高×1% ・40万円 いずれか少ない方 |
|
(11~13年目) | - | ・年末残高(上限4,000万円)×1% ・税抜建物購入価格(上限4,000万円)×2%÷3 いずれか少ない方 |
住宅ローン控除を受けられるのは、次の各条件のすべてを満たす場合です。人、ローン、住宅の条件ごとに解説します。
購入した住宅が中古住宅の場合には、新築住宅の条件に次の条件がプラスされます。
結構たくさんの条件があることに驚かれるかもしれません。
ただ、これから新築住宅を購入しようという人は、まず該当するはずです。施工会社の営業マンもそれが前提で話を進めていくでしょう。
気になる場合には、一度、施工会社や金融機関に確認しましょう。特に中古住宅の場合には、住宅ローン控除の適用対象かどうか事前にしっかり確認しておくことが重要です。
また、個人事業主の方は、自宅の一部を事業所として使用する場合は、居住面積の割合には要注意です。
住宅ローン控除の手続きは簡単です。誰でもできるようになっているので安心してください。
年末調整がある会社員は、1年目とそれ以降で手続きが変わります。 住宅ローンを初めて受ける年は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で済ませることができます。
住宅を取得した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告書を税務署に提出します。
無事に申告書が受理された場合には、1、2ヶ月以内に申告書に記載した口座に還付金が入金されます。
必要書類名 | 備考 |
---|---|
確定申告書 | 2022年以前は確定申告書AとBがありましたが2023年の確定申告からは確定申告書Aが廃止となりBに一本化されました |
(特定増改築等) 住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
申告書の様式の1つです。 |
次のいずれかのコピー ①マイナンバーカード ②マイナンバー通知カード ③マイナンバーが記載されている住民票 |
②、③を提出する場合には、運転免許証などの本人確認書類も必要です。 |
建物・土地の登記事項証明書 | 法務局で取得します。 |
建物・土地の不動産売買契約書、 工事請負契約書のコピー |
不動産会社や建設会社との契約書です。 |
源泉徴収票 | 勤務先から毎年もらいます。 |
住宅取得資金にかかる借入金の年末残高証明書 | 住宅ローンの年末残高が記載されており、毎年借入先から郵送されます。 金融機関によって名称が異なる場合があります。 |
※認定長期優良住宅の特例などを利用する場合には、この他にも別途必要書類があります。
ふるさと納税をしている人はワンストップ特例制度を利用しないよう注意してください。
ワンストップ特例とは、寄付をした自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を郵送するだけで寄付控除を受けることができるものです。
確定申告が不要となり、非常に便利な制度です。
しかし、住宅ローン控除を初年度で適用する人は確定申告をしますので、もし、ふるさと納税をしていた場合には、住宅ローン控除の確定申告の際に、ふるさと納税の申告も行なうことになります。
いつもの年末調整書類に次の書類を追加で添付し、勤務先に提出します。
必要書類名 | 備考 |
---|---|
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」 | 1年目の確定申告後に税務署から郵送されてきます。 2年目以降に必要となる枚数が一気に送られてきますので、紛失には注意しましょう。 万が一、紛失した場合には、手数料無料で再交付可能です。 |
住宅取得資金にかかる借入金の年末残高証明書 | - |
住宅借入金等特別控除申請書に必要事項を記入して、年末残高証明書とともに会社に提出するだけですので、2年目以降の手続きは非常に簡単です。
年末調整が行われ、給与と一緒または別途、勤務先から還付されます。
個人事業主は会社員のように年末調整がないので、毎年確定申告により適用を受けることになります。
必要書類は会社員の確定申告時と同様ですが、確定申告書様式はAではなくBです。
2年目以降は次の書類だけで大丈夫です。
所得税から控除しきれなかった金額は住民税から控除されますが、このために必要な手続きはありません。
所得税の税務署と住民税の市区町村役場は連携しており、確定申告情報は市区町村役場に流れるようになっているからです。
会社員は2年目以降は年末調整だけで確定申告はしませんが、勤務先が年末調整の情報を市区町村役場に届け出ているので、ちゃんと把握されています。
所得税・住民税がどのくらい安くなるのか、下記の具体例を使って計算してみましょう。
まず年収700万円の所得税を計算します。
次に住宅ローン控除です。
税額控除をします。
よって、この年の所得税は0となります。
控除しきれなかった金額があるので、次に住民税からの控除額を計算します。
住民税から控除されるのは、136,500円ということになります。
この例の場合には、所得税と住民税合わせて377,000円減税されました。住宅ローン控除は非常に大きな節税効果があることが分かります。
借入額 | 2,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 |
---|---|---|---|---|
年収 | ||||
400万円 | 160万円 | 160万円 | 160万円 | 160万円 |
500万円 | 170万円 | 220万円 | 240万円 | 240万円 |
600万円 | 170万円 | 250万円 | 300万円 | 300万円 |
700万円 | 170万円 | 250万円 | 350万円 | 370万円 |
800万円 | 170万円 | 250万円 | 360万円 | 400万円 |
※控除額は10年間の合計です。
※住宅ローン控除は、家庭状況、ローン条件等により、適用を受ける人ごとに異なります。この早見表はおおよその金額としてざっくり捉えてください。
最後に住宅ローン控除について、プラスαで知っておくと役に立つことを解説します。
住宅ローン控除による減税額は、所得税と住民税で還付方法と控除のタイミングが異なる点に注意しましょう。
所得税はその年の年末調整または確定申告で、現金として還付されます。
これに対して住民税は、その年の翌年度の住民税から控除されます。現金として還付されるのではなく、翌年6月以降の住民税が減る形で影響します。
住宅ローン控除は所得税で使いきれなければ住民税から控除されるので、控除額の全額を使い切っているように思うかもしれません。しかし実際には、平均的な年収の人であれば、住民税でも使いきれずに切り捨てている部分がある人が多いです。
このような人で、もしも夫婦共働きの場合には、夫婦でローンを組み、夫婦どちらにも住宅ローン控除の適用を受けることで、控除額を使い切ることが可能です。
ただし、その時点の収入だけを見て夫婦ローンを組むのは危険です。夫婦どちらかに収入がなくなった場合には、その人分の住宅ローン控除は丸々捨てることになるのです。
今後も共働きを続けられるのか、出産、育児をどうするのかといった点をしっかり話し合ってから決めましょう。
場合によっては、税理士やファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう。
住宅ローン控除額は、住宅ローンの年末残高の1%であることから、繰り上げ返済をして残高が減ると、それに比例して控除額も少なくなってしまいますが、その反面、繰り上げ返済することで借入利息は軽減されます。
住宅ローン控除が1%であることを考えると、住宅ローンの金利が1%以上の場合には繰り上げ返済、1%未満の場合には住宅ローン控除の方が有利になります。
ただし、控除額を使い切れていない人などは金利が低いからといって住宅ローン控除の方が有利になるとは限りません。
繰り上げ返済をするかどうかの判断は、住宅ローン控除額と借入利息軽減額を比べてどちらが得かを慎重に検討することが重要です。
住宅ローン控除の条件には、「住宅購入後6ヶ月以内に入居し、控除を受けたい年の12月31日まで続けて住んでいる」とありますが、転勤などのやむを得ない事情でせっかく購入したマイホームを離れざるを得ない場合もあります。
住んでいないので住宅ローン控除は受けられないのかと思いきや、一定要件に該当する場合には適用を受けることができます。
転勤した場合の住宅ローン控除については、次の記事をご覧ください。
住宅ローンを利用せずに自己資金で住宅を購入する場合には、住宅ローン控除は適用できません。
しかし、購入する住宅が耐久性や省エネルギー性に優れたものとして一定要件に該当する場合には、同じように所得税を軽減することができる投資型減税制度があります。
住宅ローン控除は、住宅ローン年末残高の1%が税額控除できる制度で、減税効果が非常に高いです。10年間所得税が0という人も多いでしょう。
住宅ローン控除は、とにかく控除枠を最大限使い切るということが1番のポイントです。