転勤しても住宅ローン控除を受けられる?

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現在住宅ローン控除の適用を受けている方が、転勤によってこれまで住んでいたマイホームに住めなくなったら、住宅ローン控除の適用はどうなるのでしょうか。

この記事では、住宅ローン控除について知っておくべき税金ルールや手続きの方法について解説します。

1.住宅ローン控除について

住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合に、所得税や住民税の負担を小さくしてもらうことができる制度のことです。

具体的には、マイホームを購入した年から最長13年間にわたって、住宅ローンの年末残高の0.7%または1%を、その年の所得税の金額からそのまま差し引きしてもらうことができます(2023年2月時点、今後改正の可能性あり)。

住宅ローン控除は「税額控除(一定金額を税額からそのまま差し引きしてもらえます)」であることから高い節税効果があります。

なお、住宅ローン控除の適用を受けるためには、マイホームを購入した年度に確定申告を行う必要があります

(1)居住用家屋に実際に居住していることが条件

住宅ローン控除の適用を受け続けるためにはいくつか条件がありますが、中でも重要なのが「居住用の家屋に、あなた自身や家族が実際に居住している」という条件です。

転勤などによってマイホームにあなた自身が住み続けられなくなってしまった場合には、住宅ローン控除の適用が受けられなくなってしまう可能性があります。

以下では、転勤と住宅ローン控除の関係について具体的なケースを想定しながら解説します。

2.単身赴任の場合

子供の通学の事情から、単身赴任を選択するということもあるでしょう。
単身赴任によって住宅ローン控除を受けている本人がマイホームには住めなくなるという場合でも、生計を一にしている親族がマイホームに住み続ける場合には、住宅ローン控除の適用を受け続けることが可能です。

単身赴任と住宅ローン控除については、ほかにも以下のようなことが問題となります。

(1)住民票がなくても家族が実際に住んでいれば適用可能

単身赴任をした場合、本人が新住居の住所地に住民票を移すことが多いと思われます。
この場合にも、住宅ローン控除の適用を受け続けることが可能です。

家族が実際にもとの住宅に住み続けているかどうかが重要ですから、本人の住民票がどこにあるかは住宅ローン控除の適用に影響はありません

(2)親族の範囲は?

「親族が住宅に住み続ける場合にはOK」ということですが、この「親族」の範囲が問題となります。
ここでいう「親族」に該当するのは「生計を一にしている親族」で、ごく簡単に言うと「生活費が同じ財布から出ている親族」ということになります。

血縁関係にあったとしても、それぞれ独立していて世帯が別となっている場合にはここでいう親族には該当しませんから注意してください。

(3)二世帯住宅で、子供が親を扶養していれば、子供世帯が転勤しても適用可能

親と二世帯住宅で同居している場合には、親をあなた自身が扶養しているという場合に限って住宅ローン控除の適用を受け続けることが可能になります。

そのため、これまでは別居していたけれど子供の転勤を機に、子供の住宅に親が住み始めるという場合には、住宅ローン控除の適用を受けることはできなくなります。

(4)自己都合による転勤の場合はNG

単身赴任が会社による命令ではなく、自己都合によるものである場合には親族が住宅に住み続ける場合にも住宅ローン控除の適用を受け続けることはできません。

「自己都合」とは具体的には転職をした場合に問題となりますが、基本的に勤務先が変わったことが原因で単身赴任をせざるをえなくなったという場合には、自己都合として住宅ローン控除は受けられなくなると考えておく必要があります。

(5)2016年4月1日以降は海外勤務者も摘要OK

以前には海外に単身赴任した場合には、家族が住宅に住んでいたとしても住宅ローン控除の適用を受けることはできなかったのですが、法律の改正により2016年(平成28年)4月1日以降は海外への単身赴任者も住宅ローン控除を受けられるようになりました。

住宅を購入してから海外勤務が決まった場合のほかに、海外勤務の期間中に日本国内で住宅を購入したという場合でも住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。

3.家族で移転する場合

家族で移転する場合には、移転後は住宅ローン控除の適用を受けることができなくなります。
もちろん、その後戻ってきて再度住み始めたという場合には、再入居時に残っていた住宅ローン控除の適用残年数だけ適用を受けることができます。

例えば、住宅ローン控除は最長13年間適用を受けられますから、購入後2年間住んだ後に移転し、さらに3年後に戻ってきたという場合には8年間が残っているということになります。

ただし、移転して別の家に住んでいる間、もとの住宅を他人に賃貸していたという場合には、再入居した年の翌年以降からのみ適用を受ける形になります。

(1)転居・再転居の回数には制限なし

なお、転居と再転居の回数については制限がありません。

例えば、マイホームを購入して2年間居住し、その後3年間は別の家に住んでマイホームに戻り、2年間住んでさらに転居した…というような転勤族の方であっても、購入した年から13年間の間であれば住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。

4.転居する際に必要な手続き

すでに説明したとおり、いったん住宅から出て、その後再入居した場合には、再入居した年から住宅ローン控除を受けることが可能です。

この再入居による適用を利用するためには、引っ越しする前に税務署に対して転居の手続きを行っておく必要がありますのでご注意ください。
引っ越し時と再入居時には、具体的には以下のような手続きを行っておく必要があります(すべて税務署に対して行う手続きです)。

(1)引っ越し前

まず、引っ越しをする前には「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を税務署に対して提出します。
国税庁のホームページからダウンロードすることができます(税務署に直接取りに行ってもかまいません)。

あなたの住所氏名や勤務先のほかに、転居の予定日や引っ越しをする理由について記載する必要がありますが、会社命令による転勤による場合には「転任命令に伴う転居」にチェックを入れましょう。
提出期限は「住宅ローン控除の適用を受けていた家屋を居住の用に供しなくなる日」ですから、引っ越しの当日までということになります。

なお、税務署から送られてくる「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が手元にある場合は、これら2つも添付書類として提出しなくてはなりません。

(2)再度住み始めたとき

転居先から戻ってきて、再度マイホームに居住する場合には「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」という書類を税務署に対して提出する必要があります。

過去に住宅を購入した際には確定申告を行っていると思いますが、再入居の時には同じように確定申告を行わなくてはなりません。

家屋や土地の取得対価の金額や、住宅ローン残高についての計算書類を確定申告書に添付するという形で作成する必要がありますので、金融機関から送られてくる住宅ローン残高明細やマイホーム購入時の契約書を準備しておきましょう。

5.住宅を購入した年に転勤になった場合

マイホームを購入した年に転勤になってしまった場合、住宅ローン控除を適用できるケースとできないケースの2パターンがあります。

(1)入居前に転勤するとNG

住宅ローン控除を受けるためには、控除を受ける本人や家族が、住宅購入から6か月以内に入居し、年末時点まで入居していなくてはなりません。

そのため、入居を始める前に転勤したという場合には住宅ローン控除の適用を受けることができません

この場合、その後戻ってきて入居したという場合にも住宅ローン控除の適用は受けられないので注意してください(一番デメリットが大きいケースです)

(2)購入後6ヶ月以内に入居していればOK

対策としては、マイホームを購入して6か月以内に家族だけはその住宅に一度は入居することが考えられます。

購入から6か月以内に家族が入居していた場合には、その後戻ってきてから住宅ローン控除の適用を受けることが可能になります(ただし、残っている年数だけが適用となります)。

まとめ

会社の命令で転勤をせざるを得なくなった場合に、住宅ローン控除の適用を受けられなくなるケースもあります。

単身赴任で家族が元の住宅に住み続けるというケースであれば住宅ローン控除を受け続けることが可能になりますが、家族みんなで引っ越しするという場合には住宅ローン控除適用は受けられなくなります。

ただし、引っ越し前に必要な手続きを行っていれば、戻ってきたときに再度住宅ローン控除の適用を受けることができますから、必ず引っ越し前の手続きを行っておくようにしましょう。

よくある質問

転勤で単身赴任の場合、住宅ローン控除を受けられる?

転勤で単身赴任の場合、家族がその住宅に住み続けるのであれば、住宅ローン控除を受けることができます。詳しくは、こちらをご覧ください。

家族で引っ越す場合、住宅ローン控除を受けられる?

家族で引っ越す場合、住宅ローン控除を受けられなくなります。ただし、戻ってきて再度住み始めた場合は、再入居時に、残っている年数だけ住宅ローン控除を受けられます。詳しくは、こちらをご覧ください。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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