大学生アルバイトの社会保険の扶養条件が150万円に10月1日から引き上げ

扶養に関する年収の壁には、大きく分けて「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類があります。
2025年度から、大学生アルバイトの、税金の扶養条件である年収の壁は150万円に引き上げられますが、社会保険の扶養条件である年収の壁は現状、130万円となっています。
これが、10月1日から、150万円に引き上げられます。
1.大学生アルバイトの税金の扶養条件は150万円に
年収の壁には、いろいろありますが、税金(所得税・住民税)の壁について、親が学生である子供の扶養控除を受けるには、従来は、学生のバイト年収が103万円以下である必要がありました。
所得税の改正で、2025年度から、この年収の条件が103万円から、150万円に引き上げられました(150万円の内訳は、給与所得控除65万円+所得条件85万円です)。住民税の扶養控除にも同じ年収の条件が適用されます。
ここで「大学生」とは、正しくは、19歳以上22歳以下の扶養家族のことです。大学生ではなくても、この年齢であれば対象です。逆に、18歳の大学1年生や、23歳の浪人した大学生は対象になりません。条件に当てはまらない扶養家族の年収条件は、123万円となります。
2.社会保険(健康保険)の扶養条件の年収も150万円に
税金の扶養の壁と並んで、非常に重要かつインパクトが大きいのが、社会保険の扶養の壁です。
親が会社員・公務員の場合、その扶養家族である大学生は、親が加入している社会保険(健康保険)の扶養に入ることができますが、そのための年収条件は、従来、年収130万円未満でした(正確には、月収で判断し、月収108,334円未満)。
大学生の子供のバイト年収が130万円以上になると、親の社会保険の扶養から外れ、国民健康保険に自ら加入し、国民健康保険料を払わなければならなくなります。この保険料は、自治体によって異なりますが、年収130万円であれば年間7~8万円と大きな負担になります。
そのため、税金の扶養の年収条件を、150万円に引き上げても、社会保険の扶養条件が変わらなけば、実質的な学生バイトの年収の壁は130万円ということになります。
そこで、厚生労働省は、税金の扶養の年収条件に合わせて、19歳以上22歳以下の扶養家族に対する、社会保険の扶養の年収条件も130万円から150万円に引き上げることにしました。(実際には、月収で判断し、「月収125,000円未満」という条件になる)。
具体的には、2025年10月1日からを予定しています。
2025年7月4日に、厚生労働省から正式に通達が出されました。
【出典】厚生労働省「19 歳以上 23 歳未満の被扶養者に係る認定について」
3.年収の壁150万円の対象者・対象期間
今回の、年収の壁、150万円への引き上げですが、対象者や対象期間にやや注意があります。
日本年金機構から、具体的な運用内容について詳細が発表されていますので、それをもとに解説します(他の健康保険組合では、運用が異なることもありますので、詳細は、それぞれの健康保険組合にお問い合わせください。)
【参照】日本年金機構:19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります
▷対象者は誰? 19歳以上23歳未満とは?
年収の壁150万円への引き上げの対象者は、19歳以上23歳未満の子供(扶養親族)です(配偶者を除く)。
年齢で決まりますので、大学生でなくても、この年齢であれば対象です。
逆に、18歳の大学1年生や、23歳の大学生・大学院生などは対象になりません。
12月31日時点の年齢で判断する
年齢ですが、税金(所得税・住民税)の扶養の条件と同じく、12月31日時点の年齢で判断します。
つまり、その年の12月31日時点で、19歳以上23歳未満の扶養家族が対象になります。現在の年齢ではなく、12月31日時点の年齢であることにご注意ください。
たとえば、現在は22歳でも、その年に誕生日を迎えて、12月31日時点では23歳になる子供は、対象になりません。大学4年生で4月~12月生まれの場合は、これに該当します。
なお、1月1日生まれの人は、12月31日時点で年をとったと判断します。
▷2025年10月1日以降が対象
健康保険の扶養の年収条件が150万円に引き上げられるのは、2025年10月1日からです。2025年9月30日までは、今までと同じ130万円です。
仮に、現在、月収12万円(年収換算144万円)でアルバイトをしている場合、10月1日以降については年収条件を満たしていますが、9月30日までは年収条件を満たしていません。10月1日以降は、扶養の扱いになるとしても、9月30日までは扶養として扱われない可能性があります。
▷年収150万円の判定は、通常、月収125,000円で判断
健康保険の扶養条件の年収の判定は、「年収150万円となる見込みであるかどうか」で判断します。具体的には、過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込んで判断します。
税金の扶養の年収条件では、12月31日時点で、1月1日~12月31日の1年間の年収で判断しますが、健康保険の扶養の年収条件では、現時点で、年収150万円の見込みかどうかで判断します。
具体的な判断方法は健康保険組合によって異なりますが、多くの場合、年収150万円を12で割った月収125,000円未満かどうかで判断します。
この扶養から外れる条件については、加入している健康保険組合によってやや異なり、次のようにいくつかのパターンがあります。詳細は加入している健康保険組合にお問い合わせください。
- 2ヶ月連続で月収125,000円以上
- 3ヶ月連続で月収125,000円以上
- 年収150万円以上
- 2または3ヶ月連続で月収125,000円以上、かつ、年収150万円以上
4.社会保険(健康保険)の扶養についてよくある質問
Q.夏・春の長期夏休みは月収15万円くらい稼いでも年収150万円未満なら大丈夫ですか?
税金(所得税・住民税)の扶養の年収条件は、1月1日~12月31日の1年間の年収で判断するのに対して、社会保険(健康保険)の扶養の年収条件は、月収で判断します。
つまり、年収150万円を12ヶ月で割ると、125,000円ですので、月収125,000円以上の状態が3ヶ月連続で続くと、社会保険の扶養から外れる可能性があります。
この扶養から外れる条件については、親が加入している健康保険組合によってやや異なります。
ただ、学生の場合は、長期休みに一時的に月収が多くなるだけで、1年を通して月収が増える見込みではありませんので、仮に、上記に当てはまった場合でも、扶養から外れない可能性はあります。
しかし、実際にどうするかは、それぞれの健康保険組合の判断になりますので、事前に、健康保険組合に確認することをお勧めします。
できれば、月収125,000円未満でバイトすることが安全です。
Q.交通費(通勤手当)も、年収の条件に含まれますか?
はい、交通費(通勤手当)も、年収150万円(月収125,000円)の計算に含まれます。交通費なしで月収125,000円未満でも、交通費を入れたら月収125,000円以上の場合、扶養条件から外れますので、ご注意ください。
Q.9月以前でも月収125,000円近くまでバイトして大丈夫ですか?
社会保険の扶養でいられる年収条件の引き上げは、2025年10月1日からとなっています。
9月30日まではまだ、年収条件は130万円(月収条件は108,333円)ですので、9月までの期間、扶養から外れる可能性があります。9月30日までは、月収108,333円以下でバイトすることをお勧めします。
Q.18歳の大学1年生は対象にならないのですか?
今回、扶養条件が150万円に引き上げられるのは、19歳以上22歳以下の子供に対してです。残念ながら、18歳の方は対象になりません。
現役合格の大学1年生で、早生まれ(1月2日~4月1日生)の学生は、年明けに19歳になりますので、対象になりません。
この点については、不公平であるという意見もあります。
個人的には、学校制度の年度(4月~3月)と税金等の年度(1月~12月)のズレから生じる「制度のバグ」であると考えています。
ただ、問題として議論している政治家はほとんどいないようでして、声をあげていく必要があると感じています。
Q.年明けに23歳になったら扶養から外れるのですか?
扶養の年収条件が150万円になるのは、その年の12月31日時点で、19歳以上22歳以下の人です。
たとえば、大学4年生で、2025年12月31日時点で22歳であれば、2025年度中の年収条件は150万円です。ところが、2026年に23歳になるのであれば、年明けの2026年1月からの、年収条件は130万円となります。
ここで、注意が必要なのは、23歳になった時点から、年収条件が150万円→130万円に戻るのではなく、まだ22歳でも、年明けの1月から130万円に戻ってしまうことです。
バイトの月収を108,333円以上125,000円未満にあげた人は、2025年中は大丈夫ですが、2026年1月になったら、月収108,333円未満に減らさないと、扶養から外れる可能性があります。
もし、2026年4月以降も学生であれば、一時的に超えていても問題なしとみなされる場合もありますが、4月以降、就職が決まっているのであれば、就職後は確実に扶養から外れることが見えていますので、月収108,333円を超えた時点で外される可能性は高いと考えられます。
Q.国民年金はどうなりますか?
大学生でも20歳になったら、国民年金に加入する必要があります。国民年金には、配偶者以外には扶養という制度はないため、自ら国民年金に加入して、月額17,510円の国民年金保険料を払う必要があります。
ただし、学生であれば、学生納付特例制度を利用することで、年金事務所で申請すれば、学生である間は、全額、納付を猶予してもらえます。
これは、今は払わなくても良いから後で払えばいいよ、という制度です。免除ではありませんので、就職した後など、本来の納付期限から10年以内に支払う(追納)ことになります。後で追納しないと、将来もらえる老齢基礎年金が減らされたり、障害を負った歳に障害年金をもらえなくなる可能性があります。
Q.親が自営業で国民健康保険に加入しているのですが、どうなりますか?
国民健康保険には扶養制度がありませんので、学生バイトの年収条件は関係ありません。