年末調整をしないとどうなる?|7つのデメリットをわかりやすく解説!

年末調整をしないとどうなる?

毎年10月下旬から11月頃、年末調整の時期になると年末調整書類が会社から配布されますね。これらの書類はどれも内容が細かく、計算が必要な箇所もあります。「めんどくさい」と感じてしまうのも無理はありません。

しかし年末調整をしないと思わぬデメリットを受けることもあります。

この記事では、

  • 年末調整書類を提出しない
  • よくわからないから名前だけ書いて提出する

という場合にどんなデメリットがあるのかをお伝えしていきます。

年末調整をしないとどうなる? どんなデメリットがある?

毎年面倒くさい思いをする年末調整ですが、きちんと書類を提出しないと次のようなデメリットが生じる可能性があります。

  1. 年末調整書類を提出しないと法律に違反してしまう
  2. 還付金が少なくなる
  3. 住民税が高くなる
  4. 源泉徴収が乙欄になる(天引きされる金額が増える)
  5. 自分で確定申告をしなければいけなくなる
  6. 加算税や延滞税のリスクがある
  7. ワンストップ特例が利用できなくなる

どのようなデメリットが生じるのか、それぞれ理由や影響度合いについて解説していきます。

1.年末調整書類を提出しないと法律に違反してしまう

年末調整を行うのは会社の義務です。一方、従業員は年末調整の申告書を会社に提出することが法律で義務付けられています。年末調整書類を会社に提出しなかったからといって罰則があるわけではありませんが、提出義務があることは頭に入れておきましょう。

なお「めんどくさいから」と年末調整書類に自分の氏名や住所など最低限の項目だけを記入して提出すること自体は禁止されていません。ただし、次から解説するように様々なデメリットがあり、結果的に損をする可能性が高いと言えます。

2.還付金がなくなる・少なくなる

年末調整を正しく行えば、ほとんどの方は還付金を受け取ることができます。しかし、年末調整書類を会社に提出しなかったり、「書類の書き方が分からない」と名前や住所だけ書いて提出したら還付金の額が少なくなる可能性があります。

さらに、2024年については、定額減税も受けられない可能性があります。

(1)年末調整を提出しないと還付金がもらえない

会社員の皆さんのお給料からは、毎月、所得税が天引きされています。

ですが所得税の金額は1年間の収入が出そろって初めて計算可能になるもので、毎月の給料の支払いの段階では「ある程度の予想」はつけられても正確な金額はわかりません。

つまり、私たちのお給料から天引きされる所得税額というのは「おおよその金額」であって、正確な金額ではありません。私たちは所得税額が確定する前に、大体の金額を国に前払いしているのです。

当然、「1年間で天引きされた金額の合計」が「実際に支払うべき所得税の金額」より多すぎたり少なすぎたりという事になってしまいますので、年末調整を行って過不足を清算するのです。

多くの場合、私たちのお給料からは「実際に払うべき所得税よりも少し多めの金額」が天引きされていて、払いすぎた分については年末調整で返してもらうことになります。これが還付金です。

年末調整をしない(年末調整書類を提出しない)と、払いすぎた税金は返ってこず、損をしてしまうという事になります。

(2)年末調整で手抜きをすると還付金が減る

また、年末調整書類を提出したとしても、書類の書き方が分からないからと、名前や住所だけ書いて提出した場合も、還付金の面でかなり損をする可能性があります。

以下のような控除が使えるのに、年末調整書類に記載しなかった、というケースです。

  • 配偶者や子供、両親を養っているのに「配偶者控除」「扶養控除」の欄に記入しなかった
  • 生命保険や地震保険に加入しているのに「生命保険料控除」「地震保険料控除」の欄に記入しなかった

例えば配偶者控除と生命保険料控除を利用できる年収600万円の人を例にして計算してみると、還付金に以下のような差が生じます。

条件 還付金の額
控除をすべて利用した場合 117,000円
控除をすべて利用しなかった場合 54,000円

あくまでざっくりとした計算ではありますが、年末調整書類を提出したかどうかで還付金の額が大きく変わることが分かると思います。

ただし、ここまで差が大きく出るのは利用できる控除が多いからでもあります。

実は年末調整書類に名前など最低限の情報だけ書いて提出しても、

  • 会社員にとっての経費的な意味を持つ「給与所得控除」
  • 合計所得2,500万円以下の人に適用される「基礎控除」
  • 給与から天引きされている社会保険料である「社会保険料控除」

がそれぞれ自動的に適用されます。これら3つの控除以外の控除がない方は最低限の情報だけ記載して提出しても還付金への影響は少ないでしょう。

年末調整の申告内容で還付金がいくら変わるのかが気になる方は↓こちらの自動計算ツールをご利用ください。

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(3)所得税3万円の定額減税がされない

2024年(令和6年)は所得税3万円の定額減税がありますが、年末調整をしないと減税されません。

もしかしたら、年の途中に、給料や賞与から所得税が減税されているかもしれませんが、あれはあくまでも仮で、年末調整で確定させる必要があります。

もし年末調整も確定申告もしないと、減税の対象外の人となり、せっかく安くなった税金を追加で払わなければならなくなります。

そんなことがないように、勤務先で年末調整は必ず行いましょう。

3.年末調整をしないと住民税が高くなる

住民税の金額は所得税の計算を元に決定します。要するに所得税が安ければ安いほど通常は住民税も安くなるということです。

年末調整書類を提出しなかったり、名前や住所だけ書いて提出すると本来よりも所得税額が高くなるため、それに伴って住民税の額も高くなってしまいます。

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4.年末調整をしないと源泉徴収が乙欄になる

会社に年末調整書類を提出しないと、毎月の給与やボーナスから天引きされる源泉所得税が「乙欄」となります。ちなみに年末調整書類を提出していれば「甲欄」で天引きされます。

(1)乙欄になると何が困るの?

この乙欄と甲欄、もっとも大きな違いは甲欄にくらべて乙欄の方が圧倒的に天引きされる源泉所得税の額が高いという点です。例えば社会保険料控除後の月給が30万円の人の場合、天引きされる金額はそれぞれ下記のようになります。なお、扶養家族はいないものとして計算します。

  天引きされる源泉所得税 手取り額
甲欄 8,420円 291,580円
乙欄 53,700円 246,300円

このように、毎月の手取りが甲欄より乙欄の方が45,000円ほど少なくなります。この天引きされた金額は確定申告をすれば還付金として受け取ることができるものの、毎月の手取り額がここまで少なくなると生活が苦しくなるなどの影響がないとは言えません。

5.年末調整をしないと確定申告が必要になる

通常、会社員は会社が年末調整をしてくれるため確定申告をする必要はありません。しかし会社で年末調整をしなかった場合、本来もらえるはずだった還付金の額より少ない還付金しか受け取っていない可能性があります。年末調整が終わった後に損をしたことに気付いた場合、自分で確定申告を行うしかありません

確定申告は年末調整以上に書類の作成が大変ですし、自分で税務署に提出する手間も生じます※。年末調整がめんどくさいと感じても、年末調整で税金面の処理を完了させた方が結果的に手間は少なくて済むでしょう。

なお、「会社員は通常確定申告をする必要はない」と言いましたが、給与収入が2,000万円を超える人やダブルワークをしている人などは会社員でも確定申告をする義務があります。

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※マイナンバーカードとマイナンバーカード対応のスマホまたはPCカードリーダーをお持ちの場合はオンラインでも確定申告が可能です

6.年末調整をしないと加算税や延滞税のリスクがある

年末調整は大半の人は還付金を受け取ることができますが、一部の人は年末調整で追加徴収を受ける可能性があります。

もし追加徴収が必要な人が年末調整をせずに、さらに確定申告もしなかった場合どうなるでしょうか? これは「国に支払うべき税金を支払っていない」という状態になります。

これが何らかの理由で税務署にバレた場合、あなた自身に加算税や延滞税などのペナルティが課せられる可能性があります。

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7.ワンストップ特例が利用できなくなる

従来、ふるさと納税による節税効果を得るためには確定申告が必要でした。その面倒を解消するために制定されたのが「ワンストップ特例」という制度です。ワンストップ特例を利用すれば、確定申告をしなくても節税効果を得ることができるため非常に便利な制度です。

しかし年末調整をせずに確定申告をする場合、ワンストップ特例は利用できなくなってしまいます。結局確定申告でふるさと納税の申請をする面倒が生じるため、せっかくのワンストップ特例が無駄になってしまいます。

最後に

年末調整をしないとどんなデメリットがあるのかお話ししましたが、そうはいっても年末調整は面倒に感じますよね。そんな時は、デメリットを回避しつつ少しでも楽に年末調整を終わらせるために、下記の記事もぜひご活用いただければと思います。

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服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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