年末調整の書類は名前だけ記入して提出しても大丈夫なの?
毎年、年末近くになると、会社から年末調整の書類が配られますが、記入するのは面倒くさいですよね。独身で扶養家族もいないし、保険にも入っていないし、とりあえず、「名前だけ記入して提出すればいいかな」と思っている人もいるでしょう。
実は、2019年(令和元年)までは、名前だけ記入して提出しても大丈夫でしたが、2020年(令和2年)からは、名前以外に必ず記入すべき箇所があります。その箇所について、記入例を使って説明します。
年末調整の書類は3種類
年末調整の書類は主に次の3種類です。
- ①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- ②給与所得者の基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)所得金額調整控除申告書
- ③給与所得者の保険料控除申告書
①は、独身で扶養家族がいなければ、名前だけ記入すればOKです。
③も、生命保険や医療保険などに加入していなければ、名前だけ書けばOKです。
しかし、②は名前だけ記入はNGで、「基礎控除申告書」という部分だけは、必ず記入が必要です。
それぞれの書類の中身を、記入例つきで簡単に見ていきましょう。
①扶養控除等申告書
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養している配偶者や家族の情報を記入すると、配偶者控除や扶養控除などを受けられます(図はクリックすると拡大できます)。
独身で扶養家族がいない方は、名前だけ記入して提出すればOKです。
記入例
こちらが記入例です。
名前だけとはいっても、住所・生年月日なども記入します。
個人番号とは「マイナンバー」のことです。基本的には記入しますが、以前にもマイナンバーを記入している場合は、勤務先から、記入しないように指示がある場合がありますので、勤務先の指示に従ってください。
住所は、引っ越し予定がなければ今の住所でOKですが、引っ越し予定であれば、令和6年(2023年)1月1日時点の見込みの住所を記入します。
世帯主の箇所は、自分が世帯主であれば、自分の氏名を書き、「あなたとの続柄」に「本人」と記入します。
実家に住んでいるなど、世帯主が別の方であれば、世帯主の方の氏名を書き、「あなたとの続柄」には、あなたから見た関係を記入します。たとえば、父親が世帯主であれば「父」と記入します。
「配偶者の有無」欄は「無」に丸をします。
書き方をさらに詳しく知りたい方は「年末調整の扶養控除等申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。
②基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書
「給与所得者の基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)所得金額調整控除申告書」は、非常に長い名前がついていますが、「基礎控除」「配偶者控除」「所得金額調整控除」の3つが一緒になったものです(図はクリックすると拡大できます)。
2024年は、さらに、「定額減税」の申告もセットになっています。
こちらの書類だけは、名前だけ記入するだけではNGで、「基礎控除申告書」という部分に記入する必要があります。
これは、全員一律で控除される48万円の基礎控除を受けるためです。さらに、2024年は定額減税を受けるために、「本人定額減税対象」欄にチェックが必要です。
「あれ、ずっと前は、こんなものを書かなかった気がするけど・・・」と疑問に思うかもしれませんね。
実は、2019年(令和元年)までの年末調整では、この書類はありませんでした。特に何も記入しなくても、基礎控除を受けられたのです。
でも、2020年(令和2年)からの年末調整では、所得税法が改正されて、基礎控除の金額が年収によって異なるようになりましたので、基礎控除を受けるための年収の情報を記入するようになりました。
記入例
まず、名前・住所を記入しましょう。
こちらが、基礎控除申告書です。
給与収入の金額は、まだ、その年が終わっておらず収入がいくらか確定していませんので、見積額を記入します。
給与所得の金額も記入します。給与所得とは、給与収入から経費(給与所得控除)を引いたものです。
給与等収入額(A) | 給与所得の金額(C) |
---|---|
551,000円未満 | 0円 |
551,000円以上1,619,000円未満 | (A)-550,000円 |
1,619,000円以上1,620,000円未満 | 1,069,000円 |
1,620,000円以上1,622,000円未満 | 1,070,000円 |
1,622,000円以上1,624,000円未満 | 1,072,000円 |
1,624,000円以上1,628,000円未満 | 1,074,000円 |
1,628,000円以上1,800,000円未満 | (A)÷4(千円未満切捨て)=(B) (B)×2.4+100,000円 |
1,800,000円以上3,600,000円未満 | (A)÷4(千円未満切捨て)=(B) (B)×2.8-80,000円 |
3,600,000円以上6,600,000円未満 | (A)÷4(千円未満切捨て)=(B) (B)×3.2-440,000円 |
6,600,000円以上8,500,000円未満 | (A)×90%-1,100,000円 |
8,500,000円以上 | (A)-1,950,000円 |
給与収入以外に、副業での収入がある場合や、株や不動産による収入がある場合などには、「給与所得以外の所得」欄に、その所得の合計額も記入します。特に他に収入がなければ、「0」と記入します。
「給与所得」と「給与所得以外の所得」の合計額を記入します。
上記で記入した金額が該当する□にチェックをします(✓マークを書きます)。
チェックした項目が(A)~(D)に該当する場合は、「区分Ⅰ」蘭にその区分を記入します。さらぬ「本人定額減税対象」欄にチェックします。
チェックした項目の金額を記入します。
⑧ ⑤でチェックした項目が(A)~(D)に該当する場合は、「本人定額減税対象」欄にチェックを入れます。
合計所得金額の見積額 | 基礎控除額 | 区分Ⅰ |
---|---|---|
900万円以下 | 48万円 | A |
900万円超950万円以下 | B | |
950万円超1,000万円以下 | C | |
1,000万円超1,805万円以下 | D | |
1,805万円超2,400万円以下 | (なし) | |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 | |
2,500万円超2,500万円以下 | 16万円 |
給与所得・基礎控除額を計算し、区分Ⅰを表示するツールを用意していますので、ご自由にご利用ください。 |
書き方をさらに詳しく知りたい方は「基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書の書き方」をご覧ください。
名前だけ記入して提出したらどうなる?
「基礎控除申告書」の部分に記入せず、名前だけ記入して提出したらどうなるのでしょうか? 会社によって対応が異なると思われます。
一般的な会社であれば、「書類に不備があるので、記入して再度提出してください」と依頼してくることでしょう。
あるいは、会社のほうで、あなたの給与額を代わりに記入して処理してくれるかもしれません。
しかし、最悪の場合は、基礎控除額の記入がないということで、48万円の基礎控除を受けられず、所得税も住民税も高くなってしまう可能性もあります。その場合は、翌年3月15日までに自分で確定申告が必要です。
③保険料控除申告書
「給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険料や地震保険料を支払った場合に記入すると、控除を受けられます(図はクリックすると拡大できます)。
支払った保険料がなければ、記入は不要です。ただし、提出が不要か、それとも、名前だけ記入して提出が必要かどうかは、勤務先によりますので、勤務先の指示に従ってください。
ここでは、説明を省略しますので、書き方を知りたい方は、「年末調整の保険料控除申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。
よくある質問
年末調整で名前だけ記入しても大丈夫な書類はどれですか?
扶養控除等申告書は、独身で扶養家族がいなければ、名前だけ記入して提出してもOKです。
保険料控除申告書も、支払った保険料がなければ、提出しないか、または、名前だけ記入して提出してもOKです。
ただし、基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書は名前だけでなく「基礎控除申告書」の部分に記入する必要があります。
年末調整の書類に名前だけ記入して提出したらどうなる?
基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書は名前だけでなく「基礎控除申告書」の部分に記入する必要があります。
基礎控除の金額の記入がない場合、通常は書類の再提出を求められることが多いと思われますが、最悪の場合、48万円の基礎控除が受けられず、税金が高くなってしまう可能性もあります。その場合は自分で確定申告が必要になります。
基礎控除の金額だけは漏れなく記入するようにしましょう。