【年末調整・確定申告】給与所得・給与所得控除とは?計算方法など

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給与所得控除の最低ラインが55万円→65万円に10万円増える予定です。2025年は所得税だけ、2026年以降は所得税と住民税の両方です。(2025/2/12)

会社員が納める税金の金額は、年収から「給与所得控除」の金額を差し引いて計算します。
この記事では、給与所得控除とは何か、計算方法などを、図を使ってわかりやすく解説します。

1.給与所得控除とは?

(1)給与所得控除とは?

収入(売上)-経費=利益

自営業者であれば、「収入(売上)」から「経費」を引いたものが「利益」です。これはご存知ですよね。
「利益」に対して、税金がかかります。

一方、会社員・アルバイトなど、給与をもらって働いている人(給与所得者)の場合、経費はどうなるのでしょうか?

給与所得者の場合も、鞄やスーツなど経費がかかっているはずですが、何がどこまで経費なのか計算するのは困難ですので、経費に代わるものとして、「給与所得控除」があります。

給与所得控除とは、給与収入の金額に応じて経費を計算し、控除することです。

財務省が家計の実態調査を行い、その必要経費と思われる金額を計算しています。

(2)給与所得とは?

先ほどの自営業者の場合の利益の式を、次のように、給与所得者の場合に置き換えるとわかりやすいです。

  • 収入⇒給与収入
  • 経費⇒給与所得控除
  • 利益⇒給与所得

つまり「給与収入」の金額から「給与所得控除」の金額を差し引いた金額が「給与所得」です。

給与収入-給与所得控除=給与所得
税金は「給与所得」に対して課税されます。

(3)給与所得控除と所得控除の違い

「控除」という名前がつくものには、「給与所得控除」の他に、年末調整でよく見る「所得控除」もあります。
この2つは、まったく意味合いが異なります。

違い① 差し引く対象が違う

  • 給与所得控除「収入」から差し引く
  • 所得控除「所得」から差し引く

給与所得控除 違い

違い② 控除の目的、内容が違う

  • 給与所得控除は「必要経費」に代わるもの
  • 所得控除は本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情によって、税の負担を軽くするための控除

具体的な控除内容については以下の記事をご参照ください。

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2.給与所得&給与所得控除額の計算方法

給与所得控除額の具体的な金額は以下になります。

給与収入額 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
162.5万円~180万円以下 給与収入額×40%-10万円
180万円超~360万円以下 給与収入額×30%+8万円
360万円超~660万円以下 給与収入額×20%+44万円
660万円超~850万円以下 給与収入額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

計算例

例えば、給料での年収が500万円の人であれば、給与所得控除額と給与所得は次のように計算されます。

500万円(給与収入)×20%+44万円=144万円(給与所得控除額)

500万円(給与収入)-144万円(給与所得控除額)=356万円(給与所得額)

年収ごとの例

一般的な年収ごとに給与所得控除を計算した結果です(ただし、後述の所得金額調整控除を考慮しない場合)。

給与収入額 給与所得控除額 給与所得
100万円 55万円 45万円
200万円 68万円 132万円
300万円 98万円 202万円
400万円 124万円 276万円
500万円 144万円 356万円
600万円 164万円 436万円
700万円 180万円 520万円
800万円 190万円 610万円
900万円 195万円 705万円
1,000万円 195万円 905万円

計算ツール

給与所得控除額の計算に便利な、給与所得計算ツールがありますので、ご自由にご利用ください。

▷給与所得の簡単な計算方法

今まで、給与所得控除額を先に計算したうえで、次に、その金額を給与収入から差し引いて給与所得を計算していましたが、これを一気にやれば、給与所得を簡単に計算できます。

給与所得の金額を一発で計算する式は以下の表のようになります。

給与収入額 給与所得の金額
162.5万円以下 給与収入額-55万円
162.5万円~180万円以下 給与収入額×60%+10万円
180万円超~360万円以下 給与収入額×70%-8万円
360万円超~660万円以下 給与収入額×80%-44万円
660万円超~850万円以下 給与収入額×90%-110万円
850万円超 給与収入額-195万円

3.2025年、給与所得控除の最低額が55万円→65万円にアップ

2025年(令和7年)所得税改正で、所得税・住民税の給与所得控除の最低ラインの金額が、55万円→65万円に10万円引き上げられます。

対象者は、給与所得者で、年収190万円未満の人です。年収190万円以上の人には変更はありません。

給与所得控除額の具体的な金額は以下のように変更されます。

給与収入額 給与所得控除額
190万円以下 65万円
190万円超~360万円以下 給与収入額×30%+8万円
360万円超~660万円以下 給与収入額×20%+44万円
660万円超~850万円以下 給与収入額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

住民税は翌年に課税されますので、住民税の給与所得控除額が変更されるのは2026年(令和8年)の支払いからです。

4.所得金額調整控除(2020年新設)

(1)対象者

給与所得控除の減額により、給与収入850万円を超える方は増税になります。
ただ、高所得者でも、子どもや障害者を扶養していて、生活の負担が大きい人もいるでしょう。

それらの人の税金負担を減らすために、「所得金額調整控除」という調整控除の制度が設けられました。

給与収入が850万円を超える人のうち、次の3つのいずれかに該当する場合には、所得金額調整控除の対象になります。

  1. 23歳未満の扶養親族がいる場合
  2. 本人が特別障害者の場合
  3. 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合

23歳未満の扶養している子どもがいれば対象になりますので、子育て世帯のほとんどが該当すると考えて良いでしょう。

(2)控除金額

所得金額調整控除額の計算式は、次の通りです。

(給与収入-850万円)×10%=所得金額調整控除額
※給与収入は1,000万円が上限になります。

例として、給与収入が900万円の場合の所得金額調整控除額は、

(900万円-850万円)×10%=5万円

給与収入1,000万円以上では、一律15万円となります。

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5.年末調整での給与所得の計算

給与所得控除額」のところで、改正された計算式をあげましたが、実は、年末調整や確定申告で行う実際の計算は、もう少し複雑になります。

給与収入が161.9万円~660万円までは、給与所得の金額は、1,000円、2,000円または4,000円ごとに階段状に増えるようになっています。

給与所得の金額は次の表で計算します。

給与等収入額(A) 給与所得の金額(C)
551,000円未満 0円
551,000円以上1,619,000円未満 (A)-550,000円
1,619,000円以上1,620,000円未満 1,069,000円
1,620,000円以上1,622,000円未満 1,070,000円
1,622,000円以上1,624,000円未満 1,072,000円
1,624,000円以上1,628,000円未満 1,074,000円
1,628,000円以上1,800,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×2.4+100,000円
1,800,000円以上3,600,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×2.8-80,000円
3,600,000円以上6,600,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×3.2-440,000円
6,600,000円以上8,500,000円未満 (A)×90%-1,100,000円
8,500,000円以上 (A)-1,950,000円

この表を利用して実際に計算するのは大変ですので、
給与所得控除額の計算は給与所得計算ツールをご利用ください。

計算例

例えば、給与収入が2,015,900円の人であれば、給与所得は次のように計算されます。
(給与所得控除額の計算を飛ばして、給与所得を一気に計算します。)

給与収入額=2,015,900円(A)

2,015,900円÷4=503,975円 → (千円未満切り捨て)503,000円(B)

503,000円×2.8-80,000円=1,328,400円(給与所得)(C)

給与所得の早見表

国税庁のウェブサイトに掲載されている事業者向けの「年末調整のしかた」という冊子の中には、次のような表があります。

見てわかるように、給与所得は、1,000円、2,000円、あるいは4,000円ごとに階段状に増えていきます。

パソコンがない頃、手計算でやるには、このような早見表があると便利でした。その名残と考えられます。

年末調整のしかた 令和2年

こちらの表をExcelで表にしたものを、無料配布していますので、ご自由にダウンロードのうえ、ご利用ください。

【ダウンロードはこちらから】令和5年 給与所得 早見表(Excel版)

6.特定支出控除

サラリーマンの人でも「仕事をしていくうえでたくさん支出がある」という方もおられるかもしれません。
そういう方は「特定支出控除」の制度を上手に使うことをおすすめします。

特定支出控除とは、給与所得者でも、給与所得控除に加えて一定の条件に該当する支出であれば経費として認めてもらえるルールのことです。

特定支出控除の分、さらに給与所得が低くなり、税金の負担も軽くなります。

給与所得=給与収入-給与所得控除-特定支出控除

以下、特定支出控除の内容について具体的に解説します

(1)利用条件

特定支出控除は「給与所得控除の2分の1以上の支出がある場合」だけ利用することができます。

例えば、給与収入額が400万円の人であれば、「給与所得控除の2分の1」の金額は62万円です。

給与所得控除=400万円×20%+44万円=124万円

特定支出が認められるための基準額=給与所得控除額÷2=62万円

そのため、この場合は年間で62万円以上の特定支出がある場合にのみ、特定支出控除を受けられることになります。

例えば70万円の特定支出があると

超過分=70万円-62万円=8万円

ですので、

給与所得額=400万円-(400万円×20%+44万円)-8万円(特定支出控除額)=266万円

ということになります。

また、特定支出は「業務に関連して支出したもの(具体例は後述)」に限られます。

(2)特定支出の対象となる支出

特定支出控除の対象となる支出は、以下のようなものです。

  1. 通勤費:勤務先に通うために通常必要になる支出が該当します
  2. 転居費:転勤時の引っ越しのために必要になった支出など
  3. 研修費:勤務先での仕事で直接的に必要になるセミナーなどの出費など
  4. 資格取得費:勤務先での仕事で直接的に必要になる資格スクール費用など
  5. 帰宅旅費:単身赴任者が家族が住む家と往復するために必要になった費用
  6. 勤務必要費(上限65万円):職務上必要になった書籍や制服、交際費などの出費※

令和2年分から、業務のために直接必要な旅行費用も対象になります。

(3)特定支出控除を受けるハードルは高い?

この特定支出控除ですが、実はほとんど使われていません。

その理由として、

  1. 経費ごとに会社からの業務に必要であるとの証明書をもらう必要があり、その条件が厳しいこと
  2. これらの経費には、全額または一部は会社が負担してくれるものがあり、かつ、特定支出として認められた経費のうち、所得控除の対象となる額は、給与所得控除の2分の1を上回った部分なので、金額的に多くの部分が足切りの対象となってしまうこと
  3. 特定支出控除を利用するためには確定申告を行う必要があること

という状況があり、特定支出控除を使うハードルがなかなか高いです。

もし、直接仕事に関係する経費をかなり多く使ってしまった人は、救済措置として活用できるかもしれません。

給与所得 計算ツール

給与所得を計算するツールです。

[利用方法]

「あなたの情報」の「年間の給与収入」の項目だけ入力ください。

あなたの情報
なし あり
配偶者の情報

[注意事項]
本ツールは、個人的に、給与所得を計算する用途にご利用ください。
令和6年(2024年)10月時点の税制に基づいています。

本ツールを利用して、不利益や損害等が発生したとしても、当社は一切の責任を負いませんので、ご了承ください。

作成:エファタ株式会社 ZEIMOチーム

監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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