2025年(令和7年)所得税・住民税改正、基礎控除・給与所得控除など
2025年(令和7年)は所得税・住民税に大きな改正があります。基礎控除の金額や、給与所得控除の最低ラインの金額などが…[続きを読む]
年末調整の書類を書いていると、「特定扶養控除、特定扶養親族」という用語が出てきて、何のことか疑問に思うかもしれません。
簡単にいうと、「特定扶養親族」とは、19歳から22歳までの、扶養している子供のことです。この年齢の子供は、控除額が高くなります。
特定扶養親族がいるといくら節税できるのか、控除額や年末調整の方法などを、わかりやすく解説します。
目次
「扶養親族」とは、その名のとおり、扶養している親族のことです。扶養親族がいると、年末調整や確定申告で扶養控除を受けられます。
そのうち、12月31日時点での年齢が19歳から22歳までの親族を、「特定扶養親族」といいます。特定扶養親族がいると、控除額が高くなり節税になります。その金額が高くなる扶養控除のことを特別に「特定扶養控除」と呼びます。
扶養親族の細かい条件については、別の記事「扶養控除の対象となる扶養家族とは?」をご覧ください。
年齢は、12月31日時点で判断します。年末調整の書類を記入する日付ではありませんので、ご注意ください。
また、1月1日生まれの人は少し特殊です。民法143条では、誕生日の前日の午後12時に1歳年齢が加算されることになっています。つまり、2006年(平成17年)1月1日生まれの人は、年齢を判定する2024年(令和6年)12月31日時点において満19歳となります。
扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢によって異なります。また、所得税と住民税でも扶養控除額が異なります。一覧にまとめました。
扶養親族の年齢 | 扶養親族の区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
---|---|---|---|
0歳~15歳以下 | 年少扶養親族 | 0円 | 0円 |
16歳以上~18歳以下 | 一般扶養親族 | 38万円 | 33万円 |
19歳以上~22歳以下 | 特定扶養親族 | 63万円 | 45万円 |
23歳以上~69歳以下 | 一般扶養親族 | 38万円 | 33万円 |
70歳以上(同居) | 老人扶養親族 (同居老親等) |
58万円 | 45万円 |
70歳以上(その他) | 老人扶養親族 (その他) |
48万円 | 38万円 |
所得税では、一般的な扶養親族の控除額は38万円ですが、特定扶養親族の場合、63万円です。なんと、25万円も多く控除できるのです。
その理由ですが、19歳から22歳までの年齢は、ちょうど大学生となる年齢で、学費や一人暮らしの生活費などで、たくさんのお金がかかることから、控除額が多めに設定されています。
特定扶養親族は年齢で決まりますので、大学生でなくても、特定扶養親族になります。
逆に、大学生であっても、18歳以下、または、23歳以上であれば、特定扶養親族から外れてしまいます。
例えば、年収600万円で、特定扶養親族がいる場合といない場合を比べてみましょう(配偶者控除など他の控除は考慮しません)。
例:給与収入600万円の人の場合
・扶養控除なし
所得税201,300円+住民税302,100円=合計503,400円
・扶養控除あり(特例扶養親族の対象になる子1人)
所得税137,000円+住民税257,100円=合計394,100円
※社会保険料控除は15.54%(令和6年10月時点、協会けんぽ東京、介護保険あり、雇用保険:一般の事業)で計算
扶養控除ありの場合は、なしの場合に比べて、所得税が64,300円、住民税が45,000円、合計で109,300円、安くなっています。
かなりの違いがありますね。
年収ごとに節税額を一覧にしてみました(他の控除は考慮していませんので、実際には少し違いますが、参考としてください)。
給与年収 | 所得税の節税額 | 住民税の節税額 | 節税額合計 |
---|---|---|---|
300万円 | 32,200円 | 54,000円 | 86,200円 |
400万円 | 32,100円 | 54,000円 | 86,100円 |
500万円 | 51,700円 | 54,000円 | 105,700円 |
600万円 | 64,300円 | 45,000円 | 109,300円 |
700万円 | 99,600円 | 45,000円 | 144,600円 |
800万円 | 128,700円 | 45,000円 | 173,700円 |
900万円 | 128,600円 | 45,000円 | 173,600円 |
1000万円 | 128,700円 | 45,000円 | 173,700円 |
※住民税は10%ですが、年収が低いときは、調整控除の結果、節税額が少し多くなります。
こんどは、特定扶養親族(19歳~22歳)と一般扶養親族(16歳~18歳、23歳~69歳)で、節税額がどれだけ違うか比較してみました(他の控除は考慮していません)。
給与年収 | 特定扶養親族 の節税額 |
一般扶養親族 の節税額 |
節税額の差 |
---|---|---|---|
300万円 | 86,200円 | 54,900円 | 31,300円 |
400万円 | 86,100円 | 54,900円 | 31,200円 |
500万円 | 105,700円 | 71,800円 | 33,900円 |
600万円 | 109,300円 | 71,800円 | 37,500円 |
700万円 | 144,600円 | 107,000円 | 37,600円 |
800万円 | 173,700円 | 110,600円 | 63,100円 |
900万円 | 173,600円 | 110,600円 | 63,000円 |
1000万円 | 173,700円 | 110,600円 | 63,100円 |
年収700万円までの人なら約3万円、年収800万円以上の人なら約6万円、差額があることがわかります。
年末調整での扶養控除の申請をするには、勤め先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に特定扶養親族の氏名・住所・マイナンバーを記入し、勤め先に提出します。
下記は記入例(申告書の一部抜粋)です(「税金一郎」が海外に留学中の特定扶養親族という設定です)。
住所は、引っ越し予定があれば、今の住所ではなく、令和6年1月1日時点の住所を記入します。
マイナンバーは基本的には記入しますが、以前にマイナンバーを提出している場合は記入不要なこともありますので、勤務先にお問い合わせください。
書き方の詳細は、「【令和6年分】給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。
扶養にしている子供や親がアルバイト・パートをしている場合は、その所得の見込み金額を記入します。
収入金額では所得金額を記入します。所得は次のように計算します(ただし、給与収入162.5万円以下の場合)。
扶養控除等申告書を記入するときは、まだ、その年が終わっていないはずですので、だいたいの見込み金額を記入すればOKです。
ただし、見込みよりもオーバーして、所得が48万円を超えてしまうと、扶養控除の対象になりません。翌年になってしまうと、会社も締め切ってしまっていることが多いですので、その場合は自分で確定申告をして修正が必要です。
A.特定扶養親族とは、12月31日時点の年齢が19歳以上22歳以下の扶養親族のことです。大学生かどうかは関係ありません。
大学生であっても、12月31日時点で18歳未満(飛び入学したケース)、または23歳以上の人(浪人・留年したケース)は、特定扶養親族ではありません。
A.勤労学生控除とは、本人の所得税に関する控除です。年収130万円未満であれば、学生本人には所得税はかかりません。
しかし、扶養控除の基準は、勤労学生控除は関係なく、年収103万円以下ですので、年収103万円を超えてしまうと、扶養に入ることはできません。
A.留学中であっても、生活費を仕送りしているなど、生計を共にしていれば、扶養控除の対象となります。ただし、親族関係書類(親族であることを証明するもの)と送金関係書類(生活費を送金していることを証明するもの)が必要です。
海外でアルバイトをしていて収入がある場合でも、国外源泉所得となりますので、扶養控除を判定するうえでの収入には含まれません。国内での収入が103万円以下であれば、扶養控除の対象になります。
特定扶養控除を受ける場合、扶養対象者となる19~22歳の特定扶養親族の年収条件が、103万円→150万円(所得では48万円→85万円)に引き上げられます。
正確にいうと、扶養控除の年収条件は、103万円→123万円(所得48万円→58万円)に引き上げられるのですが、
19~22歳の特定扶養親族に限っては、年収123万円を超えても150万円以下であれば、同額(63万円)の「特定親族特別控除」(仮称)を受けられるようになります。
また、年収150万円(所得85万円以下)を超えると、特定親族特別控除が少しずつ減りますが、年収188万円以下(所得123万円以下)であれば、控除を受けられます。
所得税・住民税の扶養控除の年収(所得)条件と控除額は以下の表のようになります。
特定扶養親族の給与年収 ()内は合計所得金額 |
控除額 | |
---|---|---|
所得税 | 住民税 | |
150万円以下 (85万円以下)(※) |
63万円 | 45万円 |
150万円超~155万円以下 (85万円超~90万円以下) |
61万円 | 45万円 |
155万円超~160万円以下 (90万円超~95万円以下) |
51万円 | 45万円 |
160万円超~165万円以下 (95万円超~100万円以下) |
41万円 | 41万円 |
165万円超~170万円以下 (100万円超~105万円以下) |
31万円 | 31万円 |
170万円超~175万円以下 (105万円超~110万円以下) |
21万円 | 21万円 |
175万円超~180万円以下 (110万円超~115万円以下) |
11万円 | 11万円 |
180万円超~185万円以下 (115万円超~120万円以下) |
6万円 | 6万円 |
185万円超~188万円以下 (120万円超~123万円以下) |
3万円 | 3万円 |
188万円超~ (123万円超~) |
0万円 | 0万円 |
※年収123万円以下(所得58万円以下)は扶養控除、年収123万円超~年収150万円以下(所得58万円超~所得85万円以下)は特定親族特別控除
住民税の扶養控除額が変更されるのは2026年(令和8年)の支払いからです。