在職老齢年金の65万円引き上げはいつから?年金カットはいくら?

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【最新情報】
・2026年度(令和8年度)の在職老齢年金の(年金が停止される)基準額は65万円になります。2025年度より14万円増額です。(2026/1/23)

働きながら年金をもらう人が年金カットされる(在職老齢年金の)基準額は、51万円→65万円に大きく引き上げられることが決定しました。

在職老齢年金の引き上げはいつから? 年金カットの金額はいくらになるのか? などをわかりやすく説明します。

1.在職老齢年金とは?

「在職老齢年金」とは、60歳以降、働きながら年金をもらう人の、年金の一部または全部がカットされる(支給停止される)仕組みです。
現状、年金の月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)と月給(※)の合計が51万円を超えた場合に、超えた分の2分の1の金額が年金からカットされます。

※正確には、社会保険の標準報酬月額と、賞与を合計して12で割って足した、「総報酬月額相当額」です。

ここでいう「年金の月額」とは、老齢厚生年金の報酬比例部分のことだけであり、老齢基礎年金は含みません
また、カットされる年金は老齢厚生年金だけであり、老齢基礎年金はカットされません。

「在職老齢年金」制度の詳細はこちらをご覧ください。

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2.在職老齢年金は65万円に引き上げ

(1)在職老齢年金は、2026年4月1日から65万円に引き上げ

2026年度(令和8年度)の基準額は、51万円から65万円に、14万円引き上げられます。
年度が変わる、2026年4月1日から、65万円になります。

在職老齢年金の基準額が65万円のときの、年金カットされる金額の早見表です。
(緑色の箇所はカットなし、赤色の箇所は全額カット)

在職老齢年金 早見表

たとえば、年金月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)が15万円、月給が55万円の場合には、次のようになります。

年金カット金額:(15万円+55万円-65万円)/2=2.5万円
もらえる年金の金額:15万円-2.5万円=12.5万円

カットされる年金額が、年金月額以上になると、全額カットされます。

(2)在職老齢年金は62万円ではないの?

「あれ? 2026年は62万円に引き上げられると聞いたけど、違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。

実は、本当は、在職老齢年金の基準額は「62万円」です。ただ、物価変動を考慮すると、65万円になるのです。

もともと、2024年(令和6年)の水準では、在職老齢年金の金額は50万円でした。
そして、「在職老齢年金を50万円から62万円に引き上げる」ことを盛り込んだ、年金制度改正法案が2025年5月16日に国会に提出され、6月13日に可決されました。

【参照】厚生労働省:年金制度改正法案を国会に提出しました

これらの金額は、物価変動を考慮しない場合の金額です。

物価変動を考慮すると、令和7年度の名目賃金変動率は2.3%ですので、2025年(令和7年)の在職老齢年金の基準額は51万円となっていました。

今回、令和7年度の名目賃金変動率2.3%と、令和8年度の名目賃金変動率2.1%の両方を考慮し、改定後の金額「62万円」にかけて四捨五入すると、65万円になります。

(3)在職老齢年金:62万円の根拠

50歳代の平均的な給料(ボーナス含む賃金月額49.1万円)に、2022年~2024年の名目賃金変動率を反映すると、52万円になります。これに、厚生年金加入期間25年以上の人の報酬比例部分の年金額9.7万円(賃金変動を反映済み)をプラスすると、約62万円となります。

3.在職老齢年金について

ここからは、在職老齢年金の目的や意味合いについて、少し発展的なことを述べます。

(1)在職老齢年金の引き上げの目的は?

在職老齢年金の引き上げの目的は、「働き損」を解消して、高齢者の就労を促し、人手不足の解消につなげることです。

65歳以降で働きながら年金をもらっている人は、2022年時点で308万人いますが、このうち16%の約50万人が、年金カット(支給停止)されています。
支給停止額は4,500億円です。

【出典】厚生労働省:第21回社会保障審議会年金部会 資料2

年金カット(支給停止)の基準額を62万円に引き上げると、対象者は約30万人まで減り、支給停止額は約2900億円となります。
年金カット(支給停止)の基準額を71万円に引き上げると、対象者は約23万人まで減り、支給停止額は約1600億円となります。

(2)在職老齢年金の引き上げは意味があるの?

筆者の意見ですが、「高齢者の就労を促す」という目的を達しようとするならば、在職老齢年金の引き上げや撤廃はあまり影響がないと考えます。

なぜなら、現在、年金カット(支給停止)の対象になっているのは、月給がおおよそ40万円以上、年収換算で約480万円以上の人です。これは、平均年収(約460万円)よりも高い金額です。
65歳以降で、現役世代より高い給料をもらって働き続ける人は、それなりのスキルや技能がある人であり、知的労働を中心とするホワイトワーカーでしょう。体力が衰えても、頭が回るかぎりは、今後も高収入が見込めます。

このような人たちからすると、月給に対する厚生年金の年金額(10万円~20万円程度)は、お小遣い程度に過ぎません。実際のところ、現状でも、働きたい人は年金カットを気にせずに働いているのではないでしょうか。65歳以降も働く理由は、生活の資金を得るためというよりも、生きがいや、人生の充実のほうが大きいでしょう。

そのため、在職老齢年金の基準を引き上げたとしても、働く高齢者が増えるとは考えにくいです。

一方で、「不公平感をなくす」という意味においては、在職老齢年金の引き上げは意味があると考えます。

高収入を得るということは、過去から努力し、そして今もなお、努力し続けているからこその結果です。そのような人たちは、過去の収入もそれなりに高く、平均よりも多くの厚生年金保険料を払ってきたはずです。にもかかわらず、年金をカットするということは、不公平感があります。ある意味、努力して働く人に対する罰則のようなものといえます。

在職老齢年金の基準額を引き上げる、または廃止すれば、不公平感はなくなるでしょう。

(3)在職老齢年金の引き上げは、毎年行われている

1954年(昭和29年)に厚生年金の仕組みを全面改正したときの考え方としては、厚生年金は退職した人に支給されるものであり、働いている(在職している)人には支給されないものでした。

1965年(昭和40年)の改正で、65歳以上の働きながら年金をもらう人に対して8割が支給される「在職老齢年金」の制度ができました。その後、支給割合が変更されたり、60歳代前半にも対象が拡大さえるなど、何度も改正を繰り返してきました。

直近では、毎年、引き上げが行われています。

  • 2022年4月から:60~64歳の基準額を28万円→47万円に引き上げ(65歳以上と同額に)
  • 2023年4月から:基準額を47万円→48万円に引き上げ(全年齢)
  • 2024年4月から:基準額を48万円→50万円に引き上げ(全年齢)
  • 2025年4月から:基準額を50万円→51万円に引き上げ(全年齢)

このうち、2023年4月、2024年4月、2025年4月の増額は、名目賃金の変動に応じて改定されたものです。

2026年4月からは、基準額が51万円→65万円に引き上げられます

金額の根拠はすでに紹介しましたが、現役世代(50歳代)並みの給料を得て働いても、年金がカットされないようにするのが目的です。

東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP®(日本FP協会認定)、日商簿記検定1級。
税理士試験 財務諸表論 科目合格。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
著書「届け出だけでもらえるお金大全
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