配偶者控除は38万円もらえるの?【図解】

年末調整や確定申告で、配偶者控除を受けると、38万円もらえると思っている人はいないでしょうか?

実は、38万円もらえるわけではなく、所得が38万円少なくなる(控除される)ということなのです。戻ってくる金額は、人によって、19,000円の場合もあれば、171,000円の場合もあります。

どういうことなのか、誰にでもわかりやすく図を使って説明します。

1.所得控除とは?

「38万円の配偶者控除」という話をするとき、「配偶者控除」というのは「所得控除」の一種です。

「所得控除」とは、所得から、いくらかを差し引いて、税金(所得税・住民税)の負担を減らすためのものです。

(1)所得とは?

ここで、そもそも「所得とは何?」という人向けに、「所得」について簡単に説明します。

ズバリ、「所得」とは「収入」から「経費」を引いたものです。

所得=収入-経費=利益

自営業者であれば、「収入(売上)」から「経費」を引いたものが「利益」ですよね。
これを、所得税の用語では「所得」といいます。

給与所得

給与にも所得という概念があります。「給与収入」の金額から「経費」を引いたものが「給与所得」です。

ここで、会社員・公務員の経費はいくらか明確にわかりませんので、「給与所得控除」といって、財務省が家計の実態調査を行い、収入に応じて決めています。

給与所得=給与収入-給与所得控除(経費)
こちらの図をご覧いただければ、給与所得の意味がすぐにわかると思います。

給与所得控除

会社員にも、働くうえの経費が認められており、それが「給与所得控除」です。給与所得控除とは何か、計算方法などを、わかり…[続きを読む]

(2)所得控除

同じ会社員でも、扶養家族がいる人といない人では、家計の負担が違いますよね。それを考慮するのが「所得控除」です。

「所得」から「所得控除」を差し引くと、「課税される所得」となります。ここに所得税や住民税がかかるのです。

課税される所得=給与所得-所得控除

給与所得控除
所得控除には、いろいろな種類がありますが、代表的なものをあげておきます。

  • 基礎控除:全員
  • 配偶者控除:収入103万円以下の配偶者がいる人
  • 扶養控除: 収入103万円以下の子供や親(親族)がいる人
  • 生命保険料控除:生命保険料を払った人
  • 医療費控除:医療費を払った人

(3)所得税の計算

「所得」から「所得控除」を差し引くと、「課税される所得」となりました。ここに、その金額に応じた税率(5%~45%)をかけると、所得税の金額が出ます。

所得税額=課税される所得×税率

所得税計算 給与所得控除

2.配偶者控除の38万円は「所得控除」のこと

ここまで理解できましたら、本題です。

「配偶者控除の38万円」というのは「所得控除」のことです(図の水色の部分)。
ですので、「課税される所得」が38万円少なくなります(図の橙色の部分)。

そして、最後に税率をかけて、所得税の金額が計算されます(図の緑色の部分)。よく「税金が戻ってくる」と言っているのは、この所得税の金額のことです。

所得税計算 給与所得控除

要するに、38万円の配偶者控除では、38万円戻ってくるのではなく、38万円に税率をかけた分の所得税が戻ってくるのです。

税率ごとに戻る金額を計算すると、こんな感じです。

税率 配偶者控除で戻る金額
5% 19,000円
10% 38,000円
20% 76,000円
23% 87,400円
33% 125,400円
40% 152,000円
45% 171,000円
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(1)もらえるのではなく、税金が戻ってくる(還付される)

配偶者控除を受けると、お金をもらえると思っている人がいるかもしれませんが、給付金みたいにもらうわけではありません。

源泉徴収といって、会社員・公務員などのサラリーマンは、もともと毎月の給与から所得税を引かれています。だいたいの場合、本来の所得税よりも多く引かれています。

なので、年末調整や確定申告をして、配偶者控除を受けると、払いすぎた所得税が戻ってきます(還付されます)

なんとなく得をした気分になるかもしれませんが、もともと払いすぎた税金が戻るだけです。

(2)実際に戻る金額は、もっと少ないことが多い

ところで、さきほど紹介した表の戻る金額は、毎月の源泉徴収で配偶者控除を適用していなくて、年末調整や確定申告で初めて配偶者控除を受けた場合の話です。

年始から配偶者を扶養に入れていれば、毎月の源泉徴収でも、その分を考慮して、給与から引かれる税金が少なくなります。

もともと引かれている金額が少ないので、戻ってくる金額も少なくなります

いくら戻るかは、人によって違いますが、あまり期待しすぎないほうが良いでしょう。

3.同じ配偶者控除でも38万円控除されない人もいる

「配偶者控除は一律38万円」というのは、少し前の話。今は、本人の年収によって、38万円より少なくなってしまう人もいます。
こちらの表をご覧ください。

配偶者控除
納税者本人の給与年収 控除額
70歳未満 70歳以上
1,095万円以下 38万円 48万円
1,095万円超1,145万円以下 26万円 32万円
1,145万円超1,195万円以下 13万円 16万円
1,195万円超 0円 0円

本人の年収が1,095万円以下なら、満額の38万円が控除されます

年収が1,095万円を超えて、1,145万円以下なら、26万円しか控除されません。
年収が1,145万円を超えて、1,195万円以下なら、13万円しか控除されません。
そして、年収が1,195万円を超えると、配偶者控除を受けられなくなります

高収入の人は要注意ですね。

4.配偶者特別控除でも38万円控除される人もいる

配偶者控除は、配偶者の年収が103万円以下の場合のみ受けられます。「103万円の壁」としてよく知られているかもしれません。

配偶者の年収が103万円を超えたら、「配偶者控除」は受けられませんが、その代わり「配偶者特別控除」を受けられます。

実は、少し前に所得税が改正されて、配偶者の年収が150万円以下なら、同じ38万円の控除を受けられるのです。

配偶者控除と配偶者特別控除について詳しくは次の記事をご覧ください。

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配偶者控除を受けられる人なら、2024年だけですが、自分の分にさらにプラス3万円、所得税が減税されます(定額減税)。

年末調整をする方は、「配偶者控除申告書」の一番右下の「配偶者定額減税対象」欄に忘れずにチェックしましょう。

基礎控除申告書 令和6年分

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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