【2022年以前版】住宅ローン控除とは?条件、手続き方法、注意点
「住宅ローン控除」は減税額が非常に大きく、マイホームを購入した人にとって、とても有利な制度です。2022年税制改正前…[続きを読む]
年末年始は年末調整の還付金を楽しみにしている方も多いかと思います。この記事では年末調整でいくら税金が戻ってくるのか、自分で計算する方法をわかりやすく解説していきます!
目次
還付金の計算をしていく前に、以下の書類を準備しておきましょう。
還付金の計算には様々な要素を考慮する必要がありますが、最低限上記の書類があれば自力で計算することができます。
生命保険料の支払額や住宅ローンの年末残高が分かる書類が無いという方も対応は可能です。生命保険料は毎月の支払額を×12で計算すれば良いですし、住宅ローンの年末残高は「昨年末の残高-(毎月の元本支払額×12)」のように計算して年末残高を割り出しましょう。
年末調整の還付金額は以下の手順で計算することができます。
ざっくりいうとこの4つの手順になりますが、具体的には次の7つのステップがあります。
難しそうに見えるかもしれませんが、一つ一つのステップを見ていけばそんなに複雑な計算は必要ありません。以下、それぞれのステップ別に解説していきます。
まずは今年1月~12月に受け取った給与・賞与の金額を合計します。
年末調整は支払いベースで計算されるため、例えば12月分の給与が1月に支払われるサイクルになっている方も単純に「今年1月~12月に受け取った給与・賞与」を合計すればOKです。
ここで合計する給与の金額は、簡単に言えば「基本給+通勤手当以外の各種手当の合計」となります。通勤手当を給与の合計に含めないよう注意してください。通勤手当以外の「住宅手当」「残業手当」「家族手当」といった各種手当は給与の合計に含めます。
年末までの給与・賞与の金額が確定していない場合は、だいたいの推測で12月までの給与・賞与を合計してみてください。源泉徴収票が手元にある場合は、源泉徴収票の「支払金額」欄の金額が1年間の給与収入の合計額となります。
所得とは「収入-経費」で計算しますが、会社員の皆さんの場合は「給与収入-給与所得控除」の式で計算します。
給与所得控除とは簡単に言えば、国が定めた「会社員にとっての経費」のようなもので、会社員なら誰でも適用できる控除です。給与所得控除の金額は以下の表のように、給与収入に応じて異なります。
給与収入の合計額 | 給与所得控除額 |
---|---|
~1,625,000円 | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円 |
例えば給与収入が300万円の人の給与所得控除は「収入金額×30%+80,000円」で計算できるので、以下のようになります。
ステップ①で計算した「給与収入の合計額」から、上記の式で計算した給与所得控除を差し引きます。この金額が「所得金額」となります。これが還付金計算の第一歩です。ここで差し引きした金額は後ほど使用しますのでメモなどして控えておいてください。
1点だけ、年収850万円超の方で、23歳未満の扶養親族がいるなどの条件を満たす方は「所得金額調整控除」という制度が適用される可能性があるため注意が必要です。
所得控除とは、所得税額を計算する際に所得金額から差し引くことができる金額です。所得税額は「稼ぎ×税率」で決まるので、基本的には所得控除が多ければ多いほど税金は安くなるし、還付金の額にも影響します。
所得控除には様々な種類があって、どの控除を利用できるか、いくつ控除を利用できるかは人によって違います。
この章では年末調整で利用できる各控除の概要と控除額を記載していくので、
をメモしていきましょう。
利用できる控除額の合計を出したらこのステップは完了です。
基礎控除は誰でも受けることができる控除です。合計所得金額2,400万円以下の方は、控除額は一律48万円となります。それを超える方は以下の表の通り控除額が変動します。
納税者本人の合計所得金額※ | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
※合計所得金額とは、給与所得だけでなく副業や不動産収入などの所得を合計した金額をいいます。
社会保険料控除は、その年に支払った社会保険の金額を控除できる制度です。会社員の方であれば、毎月の給与や賞与から天引きされている健康保険・厚生年金の金額の合計がそのまま社会保険料控除の金額となるはずです。
ただし、扶養親族の国民健康保険・国民年金を別途支払っている方は、その支払額も社会保険料控除に含めることができます。
配偶者控除とは、文字通り配偶者がいる人が受けられる控除です。ただし内縁関係の方は配偶者には該当しません。加えて、配偶者控除を受けるためには以下の要件を満たしている必要があります。
なお、合計所得金額とは給与所得以外の所得を合計した金額です。給与以外に不動産賃貸収入や副業、株、仮想通貨などによる収入がある方は注意が必要です。また、上記の「専従者給与」とは個人事業主の方に関係する内容なので、会社員の方は無視して問題ありません。
配偶者控除の金額は、配偶者ではなく納税者本人の合計所得金額によって変動し、合計所得金額が1,000万円を超える方は配偶者控除を受けることができません。詳しくは下記の表を参照してください。
本人の合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者※ | |
~900万円 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※その年の12月31日時点で70歳以上の人が該当
扶養控除とは、16歳以上の扶養親族(養っている家族)がいる場合に受けられる控除です。ただし、以下の要件を満たしている必要があります。
扶養控除の金額は下の表を参照してください。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 (12月31日時点で19歳以上23歳未満の人) |
63万円 | |
老人扶養親族 (12月31日時点で70歳以上の人) |
同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
生命保険料控除はその年に支払った生命保険を控除できる制度です。生命保険料控除は新制度と旧制度に分かれます。平成23年12月31日以前に契約した保険は旧制度、それ以降に契約した保険は新制度となります。
さらに新制度と旧制度は下記の通り保険の種類が分けられています。
控除額の計算は上記5種類の保険の種類ごとにそれぞれ行います。計算方法は下記の表を参照してください。
新制度 | 旧制度 | ||
---|---|---|---|
支払った保険料 | 控除額 | 支払った保険料 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払った保険料の全額 | 25,000円以下 | 支払った保険料の全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
(支払保険料×1/2) +10,000円 |
25,000円超 50,000円以下 |
(支払保険料×1/2) +12,500円 |
40,000円超 80,000円以下 |
(支払保険料×1/4) +20,000円 |
50,000円超 100,000円以下 |
(支払保険料×1/4) +25,000円 |
80,000円超 | 40,000円 | 100,000円超 | 50,000円 |
ただし、生命保険料控除全体の控除額の上限は12万円である点に注意してください。
iDeCoや企業型確定拠出年金の支払額は「小規模企業共済等掛金控除」としてその年中に支払った金額の全額を控除することができます。支払った金額は10月~11月頃に送付されてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」で確認することができます。証明書がまだ手元に無い場合は「毎月の掛金×12月までの今年の支払い月数」で支払額を計算しましょう。
本人や配偶者、扶養親族の中に障害者がいる場合に受けられる控除です。障害者控除は16歳未満の扶養親族にも適用されます。控除額は下記の表を参照してください。
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
ひとり親控除はその名の通りひとり親の方が受けられる控除です。ひとり親控除を適用できるのは、その年の12月31日時点で「婚姻をしていないこと」又は「配偶者の生死が明らかでないこと」という要件を満たしており、かつ次の三つの要件を全て満たす人です。
ひとり親控除の控除額は35万円となります。
寡婦控除は寡婦の方が受けられる控除です。寡婦とは夫と離婚又は死別した方で、上記の「ひとり親」に該当しない方が当てはまります。寡婦は子供の有無は問わないという点がひとり親控除と異なる点です。
寡婦控除を受けるためには次のいずれかの要件を満たしている必要があります。なお、事実上の婚姻関係にある人がいる場合には寡婦控除は適用できません。
寡婦控除の控除額は 27万円となります。
本人が勤労学生である場合に受けられる控除です。勤労学生に該当するための要件は以下の3点です。
少し複雑なのが「特定の学校」の条件ですが、一般的な大学、高校であれば問題なく該当します。専門学校の場合は卒業までに1年以上を要する等の条件がありますので、気になる方は学校に確認してみましょう。
勤労学生控除の控除額は27万円となります。
ステップ②で計算した「所得」から、ステップ③で計算した「所得控除」を差し引くと「課税所得」が算出されます。これが、実際に課税される所得です。1000円未満は切り捨てます。
(ステップ①の金額-ステップ②の金額)※=課税所得
※1……千円未満を切り捨て
ステップ④で計算した「課税所得」に所得税率を乗じて税額を算出します。
計算式は下記のとおりです。
課税所得× 税率-控除額=所得税額
なお、所得税率は課税所得の金額によって変動するため、下記の表を参考にしてください。また、この式に出てくる「控除額」とはステップ③で計算した所得控除とは別で、誰でも一律控除が認められている金額です。以下の表にまとめてありますので、計算の際には忘れずにマイナスしてください。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
返済期間10年以上の住宅ローンを組んで家を購入したり、増改築を行った場合には住宅ローン控除を適用することができます。
住宅ローン控除が適用されない方は次に進んでください。
なお、住宅ローン控除は適用初年度は自分で確定申告を行う必要があります。したがって住宅ローン控除初年度の方は年末調整の還付金の計算には含めないよう気を付けてください。
住宅ローン控除は基本的には住宅ローンの年末残高の1%(百円未満切捨て)を控除することができます。控除額の上限は40万円ですが、認定住宅の場合は上限が50万円となります。
ただし、2022年1月1日以降に住宅を取得したり入居した方は、住宅ローンの年末残高の0.7%になります。
課税所得(ステップ⑤で計算した金額)から住宅ローン控除を差し引きましょう。計算式は下記の通りとなります。
住宅ローン控除には他にもいくつかの要件がありますので、詳しく知りたい方は下記の記事を参照してください。
2024年だけですが、住宅ローン控除後の金額から、さらに所得税3万円を差し引きます。扶養家族がいる方は、その家族の人数分も差し引きます。
定額減税については、下記の記事を参照してください。
最後にご自身が支払うべき所得税の金額と、天引きされた所得税の金額を比べて還付金の金額を計算しましょう。
ステップ⑤で出した課税所得に所得税率をかけた金額(住宅ローン控除がある方はステップ⑥で出した年調年税額の金額)に復興特別所得税を加算します。なお、百円未満は切捨てます。計算式は下記の通りです。
この金額があなたの給与収入から生じた所得税額となります。ちなみにステップ⑥の時点ですでにマイナスの金額となっている方は、この計算は不要です。
給与明細をチェックして毎月の給与・賞与から天引きされている源泉所得税の金額を合計します。
最後に上で出した「所得税額」から「源泉所得税の金額」を差し引きます。恐らく多くの方がマイナスの金額が出ると思いますが、このマイナスの金額があなたの還付金額となります。
もしここでの計算でプラスの数字が出た方は年末調整で追加税額を徴収されることとなります。
ここからは具体的なモデルケースを用いて、年末調整の還付金計算の流れを解説していきます。
まずは年収から給与所得控除を差し引いて所得金額を求めます。年収480万円の人の給与所得控除は以下の式で求められます。
したがってこのケースでは以下の金額が所得金額となります。
続いて所得控除の金額を合計します。このケースでは独身で扶養家族もなく、生命保険の支払いもありません。したがって利用できる控除は以下のもののみになります。
ステップ①②で求めた所得金額からステップ③で求めた所得控除の金額を差し引いて課税所得を求めます。このケースの課税所得は「340万円-120万円=220万円」となります。
課税所得が220万円なので、所得税率は10%となります。所得税率は上述の表を参照してください。課税所得に所得税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を算出します。
このケースでは住宅ローン控除は適用しないため、ステップ⑥は飛ばします。
復興特別所得税の計算をして所得税額を確定させます。
最後に還付金額を計算します。このケースでは給与から17万円の源泉所得税が天引きされています。先ほど計算した所得税額は125,000円でしたので、実際の税額より余分に天引きされていることが分かると思います。
このように還付金額は45,000円と算出できました。
まずは年収から給与所得控除を差し引いて所得金額を求めます。本ケースの年収は670万円なので、給与所得控除は以下の式で求めます。
したがって本ケースでは以下の金額が所得金額となります。
続いて所得控除の金額を合計します。このケースでは専業主婦の妻がいるため「配偶者控除」が、また、無収入の母親を扶養しているので「扶養控除」が使えます。なお、子供は16歳未満のため扶養控除の対象とはなりません。
その他、生命保険料控除、社会保険料控除も利用できます。所得控除の合計額は以下の通りとなります。
ステップ①②で求めた所得金額からステップ③で求めた所得控除の金額を差し引いて課税所得を求めます。本ケースの課税所得は「493万円-240万円=253万円」となります。
課税所得が253万円なので、所得税率は10%となります(※上述の表を参照)。課税所得に所得税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を算出します。
住宅ローンの年末残高が2,500万円あるため「2,500万円×1%=25万円」が住宅ローン控除の金額となります(2022年1月1日より前に入居)。ステップ③で計算した金額から住宅ローン控除の金額を差し引きます。
この計算の結果、この時点でマイナスとなります。したがって本ケースの所得税額は0円となります。
2024年は、さらに定額減税3万円を差し引きます。
ただ、すでにマイナスで差し引けませんので、その分は、2025年に市区町村から給付金が支給されます。
所得税額が0円のため、復興特別所得税の計算は不要です。
最後に還付金額を計算します。このケースでは給与から33万円の源泉所得税が天引きされています。先ほど計算した所得税額は0円でしたので、天引きされた源泉所得税の全額が還付されることとなります。
還付金の計算は以上です。本ケースの還付金額は330,000円と算出できました。
いかがでしたでしょうか。還付金の金額が決まるルールはご理解いただけたでしょうか。
最後に、こうした手動計算がめんどうくさいなぁという時や、計算結果があっているか確認したいときに利用できる自動計算ツールをご紹介します。
ご自身や配偶者の方の年収、年齢等を入力すると還付金の金額が自動で計算されます。是非お試しください。