ゴミ処理券に消費税はかかる?インボイスは必要?勘定科目と仕訳方法

粗大ごみ処理券

行政サービスの大半は消費税がかかりませんが、ゴミ処理券は例外です。

大都市部(東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市など)では、ゴミ回収は無料のところが多いのですが、地方ではゴミ回収が有料の自治体も多くあります。また、ほとんどの自治体で消費税が課税されますが、一部、課税されない自治体もあります。

この記事では、ゴミ回収サービスが課税される理由や、ゴミ処理券の勘定科目と仕訳方法、ゴミ処理券のインボイス対応について解説していきます。

注:上の図は家庭用の有料粗大ごみ処理券です。事業用は別の処理券となります。

1.ゴミ処理の消費税について

自治体が販売する「有料ゴミ袋」「粗大ゴミ処理券」「事業系有料ゴミ処理券」などは、ほとんどの場合、消費税が含まれています
しかし、行政サービスに消費税を課すのは、むしろ例外です。

(1)行政サービスが原則非課税である理由

国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が行う行政サービスのほとんどは、消費税が課せられていません。例えば、住民票・免許・パスポートなどの登録、認定、検定、審査、証明などの行政サービスは料金が発生しますが、消費税は課せられません。

これらの、いわゆる行政手数料は、法令に基づいて徴収される手数料であり、課税の対象としてなじまないため、消費税法基本通達で非課税とされています。

【参照】国税庁:第5節 国等の手数料及び外国為替業務等関係

(2)なぜゴミ処理に課税されるのか

多くの自治体ではゴミ処理に消費税を課しています。

ゴミ処理が自治体サービスであるにもかかわらず、例外的に消費税が課税されるのは、民間のゴミ処理業者のゴミ処理には課税されているからです。

事業という点では、自治体のゴミ処理も民間業者のゴミ処理も同じです。公平を期すために、自治体のゴミ処理費にも消費税がかかっているわけです。

(3)なぜゴミ処理を非課税にする自治体があるのか

一部の自治体は、ゴミ処理費に消費税を課していません。なぜでしょうか?

理由はいくつかあります。東京都立川市などは、ゴミ処理も他の行政サービスと同じと考え、「行政サービス非課税の原則」を貫いています。

また、東京都府中市などは、ゴミ処理費に消費税を課したとしても、その消費税を国に納めないため、非課税にしています。国に消費税を納めないのであれば、住民から消費税を取ることはできない、という考え方です。

2.ゴミ処理券の勘定科目と仕訳方法

粗大ゴミなどのゴミ処理券はシール形式が一般的です。購入者はコンビニエンスストアやスーパーなどの自治体が指定した販売所で購入し、ゴミを出す日に、対象のゴミに貼って出します。

つまり、原則的には、ゴミ処理券購入した時点では経費は発生しておらず消費税の課税仕入れにはできません。ゴミ処理券を使用した時点(ゴミに貼ってゴミを回収してもらった時点)で、経費に計上し、消費税の課税仕入れとします(課税される自治体の場合)。

しかし、これだと仕訳が2段階になって手間がかかりますし、通常、ゴミ処理券を購入してから短期間でゴミを出しますので、実務的には、ゴミ処理券を購入した時点で、消費税の課税仕入れの処理を行います

勘定科目は「雑費」です。勘定科目として「支払手数料」など他の科目を利用することも可能ですが、継続して、同じ勘定科目を使う必要があります。

ゴミ処理券の仕訳例

例えば、税込1,100円の有料ゴミ処理券を購入したら、次のように仕訳処理します。

借方 金額 貸方 金額
雑費(課税) 1,000円 現金 1,100円
仮払消費税 100円    

消費税の処理は郵便切手と同じ

ごみ処理券は「物品切手」に該当すると考えられますので、郵便切手と同じく、

  • 購入時-非課税、貯蔵品として資産に計上
  • 使用時-課税、雑費として経費に計上

という仕訳処理をします。

ただし、継続的に、購入時に課税仕入れをする処理をしている場合は、購入時に課税仕入れをすることが認められています。

※年度をまたぐ場合は注意です。年度末で未使用のごみ処理券がある場合は、課税仕入れにはできません。経理処理がややこしくなりますので、年度末のときは、できれば、新しい年度になってから、ごみ処理券を購入したほうが良いでしょう。

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3.ゴミ処理券にインボイスは必要?

すでに説明したとおり、ごみ処理券の消費税は、原則として

  • 購入時-非課税
  • 使用時-課税

という処理になりますので、本来であれば、使用したときに、インボイスの交付を受けることになります。

ただ、使用時(ゴミに貼って出した時)に、自治体からインボイスの交付を受けることは事実上困難ですので、次のように処理します。

①ごみ処理券と領収書が一体となっている場合

ごみ処理事業は、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」に該当しますので、簡易インボイス(宛先の名前のないインボイス)の交付が認められています。

多くの自治体のゴミ処理券では、このように、ごみ処理券と領収書が一体になっています。インボイス制度開始以降、領収書部分には、「税率」「登録番号」が記載されますので、これがインボイスの代わりになります。この領収書を保管することで、仕入税額控除の適用を受けることができます。

地方自治体 ごみ処理券 消費税 インボイス

②ごみ処理券のみの場合

自治体によっては、ごみ処理券のみで領収書部分がなく、ゴミを出したあと、手元に何の書類も残らない場合があります。

地方自治体 ごみ処理券 消費税 インボイス

この場合は、インボイスは不要で、次の事項が記載された帳簿を保存することで、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます(「回収特例」といいます。)

  • 課税仕入の相手方の氏名または名称 → (例)〇〇市
  • 課税仕入の相手方の住所または所在地 → (例)〇〇市〇〇町〇〇
  • 取引年月日 → 〇〇年〇〇月〇〇日
  • 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨を記載) → ごみ処理券の購入
  • 支払対価の額 → (例)1,100円
  • 特例の対象となる旨 → 帳簿のみ保存の特例対象

【参照】総務省:地方公共団体におけるインボイス対応Q&A【未定稿】

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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