出張旅費や日当などに消費税はかかる?インボイスは必要?

出張 旅行

従業員が企業から支給される給与は所得税の課税対象になりますが、出張したときの出張旅費や宿泊費、出張手当(日当)などには原則、所得税はかかりません。

しかし、消費税においては、出張旅費や宿泊費や交通費は原則、課税仕入れの対象となり、仕入税額控除できます。その場合に、インボイスは必要なのでしょうか?

この記事では、出張旅費や日当などに、消費税が課税されるのか?インボイスは必要なのか?について、詳しく解説します。また海外出張のような例外事例についても紹介します。

1.国内の出張旅費は課税仕入れ

まずは、国内出張旅費の消費税・所得税の課税について、基本知識と原則を押さえておきます。

(1)出張旅費の消費税は課税

企業が商品やサービスを販売すると、消費税が課されます。この消費税の納付税額は、「課税売上げにかかる消費税額」から「課税仕入れにかかる消費税額」を差し引いて算出します。
課税仕入れにかかる消費税額を差し引くことを、仕入税額控除といいます。

企業が商品や製造設備などを購入したり借りたりした場合は課税仕入れの対象になりますが、社員などに支払った給与は課税仕入れの対象外となります。

ところが、出張した会社員に支給される出張旅費や宿泊費、出張手当(日当)は、通常認められる範囲であれば、課税仕入れになります(消費税がかかっています)。

また、通常の通勤手当も、課税仕入れになります。通勤手当については、所得税法上非課税とされる金額を超えても、全額課税仕入れです。

(2)出張旅費の所得税は非課税

従業員に支払われる給与、賞与、各種手当(残業手当、住宅手当、家族手当、皆勤手当、報奨金)などは、すべて給与所得となり、所得税がかかります。

ただし、出張旅費や日当は、「通常必要である」範囲であれば、所得税はかかりません。社会保険料の計算にも算入されません。

通勤手当については、上限額(公共交通機関利用の場合、1ヶ月当り15万円)を超えない限りは、所得税はかかりませんが、社会保険料の計算には算入されます。

(3)出張旅費規程を作成しよう

出張旅費や日当は「通常必要である」範囲であれば、会社としては消費税を課税仕入れにでき、さらに従業員に所得税はかかりません。

しかし、その範囲を超えると、給与扱いになってしまい、会社は消費税を控除できず、従業員は所得税(+住民税)が増えて、どちらも損をしてしまいます。

そうならないためには、出張旅費規程を作成するのが望ましいです。

たとえば、次のように、社内の役職、同業他社の金額などと比較して、常識的な範囲内であれば、大丈夫でしょう。

<日当(例)>

  • 社長:10,000円
  • 役員:8,000円
  • 部長:6,000円
  • 課長:5,000円
  • 社員:4,000円

2.出張旅費のインボイス対応

出張旅費や宿泊費、出張手当(日当)などは原則、課税仕入れとなりますが、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、インボイスが必要な場合と不要な場合があります。

(1)出張旅費規程に従って支給する場合

会社で出張旅費規程を定めており、その規定に従って支給する場合は、原則、インボイス(適格請求書)は不要です。

出張旅費規程に従って出張旅費等を支給する場合、会社から従業員に対して支給しますので、会社は従業員から課税仕入れを行うことになりますが、従業員は、事業者ではありませんので、インボイスを発行することができません。

この場合、「出張旅費特例」により、インボイスがなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存するだけで、仕入税額控除が認められます。

  • 課税仕入の相手方の氏名または名称 → 従業員の氏名
  • 取引年月日 → 支給した日
  • 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨を記載) → 出張旅費の支給
  • 対価の額 → (例)10,000円
  • 特例の対象となる旨 → 出張旅費特例の対象

※課税仕入の相手方の住所または所在地の記載は不要

(2)立替払いで経費精算する場合

立替払いで経費精算する場合は、従業員は、会社と交通機関・ホテル・旅館等の間に入って代わりに金銭の支払いを行っただけで、会社が交通機関・ホテル・旅館等から課税仕入れを行ったことになります。

この場合、原則として会社宛てのインボイス(適格請求書)が必要ですが、インボイスに従業員の名前が記載されている場合には、立替精算書を作成することで、仕入税額控除を受けることができます

3万円未満の公共交通機関はインボイス不要

また、「公共交通機関特例」として、3万円未満の公共交通機関(電車・バス・船舶)の運賃については、インボイスは不要で、一定の事項を記載した帳簿保存のみで仕入税額控除を受けられます。

  • 課税仕入の相手方の氏名または名称 → 〇〇鉄道
  • 取引年月日 → 乗車日(または精算日)
  • 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨を記載) → 鉄道運賃の支払い
  • 対価の額 → (例)1,000円
  • 特例の対象となる旨 → 公共交通機関特例の対象

※課税仕入の相手方の住所または所在地の記載は不要

さらに、3万円以上の公共交通機関(電車・バス・船舶)でも、使用時に乗車券・切符が回収されて手元に残らない場合は、「入場券回収特例」として、インボイスは不要で、帳簿保存のみでOKです。

ただし、上記の交通交通機関とは、電車・バス・船舶のみを指しますので、飛行機やタクシーの運賃に対しては、インボイスが必要です。

3万円は取引の合計で判断

なお、3万円の基準についてですが、1件(切符1枚)当りの金額ではなく、取引の合計金額で判断します。

たとえば、1人当り10,000円の新幹線代の場合でも、3人分まとめて購入したら30,000円で、「3万円未満」には該当しませんので、インボイスが必要になります。

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3.海外の出張旅費は消費税対象外

出張であっても海外出張や転勤のときの出張旅費、宿泊費、日当は課税仕入れの対象外となります。そのため、インボイスは関係ありません。

また所得税の扱いですが、原則、海外出張の出張旅費や宿泊費や日当などは非課税です。

ちなみに、海外出張時の手土産は交際費に該当し、日本国内で購入した場合は課税仕入れに該当し、仕入税額控除にはインボイスが必要です。空港内の免税店や海外で購入した場合は課税仕入れに該当しません。

4.日当で食品を購入しても軽減税率の対象外

あまり問題にはならないかもしれませんが、軽減税率の取扱いについても触れておきます。

外食の税率は10%、飲食料品の税率は8%(軽減税率)です。

もし、出張旅費や日当のなかに「外食や飲食料品への支払いに充てるお金」が含まれている場合、出張旅費や日当を「10%対象分と8%対象分」にわけて課税仕入れの処理をしなければならないのでしょうか?

答えは、「出張旅費や宿泊費や日当などは全額10%対象」となります。つまり軽減税率の対象にはなりません。
これは、企業が従業員に「出張旅費や宿泊費や日当など」を渡すとき、「飲食料品の譲渡」の対価として支出していないからです。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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