受取利息の消費税と仕訳処理
個人事業主や法人が、事業用の預貯金や有価証券などを保有していると、利子を得ることができます。
利子のことを、勘定科目では「受取利息」と呼びます。
受取利息の計上方法は、やや特殊です。また、個人事業主と法人でも、仕訳方法が異なります。
この記事では、受取利息の消費税や仕訳処理についてわかりやすく解説します。
目次
1.受取利息の消費税は非課税
受取利息は非課税売上に当たります。
ちなみに、受取利息に似た収入に受取配当金がありますが、こちらは不課税になります。
いずれも消費税はかかりません。
2.受取利息にかかる税金
受取利息を仕訳処理するとき、預金通帳に記載された金額をそのまま「受取利息」として計上することはできません。
例えば、預金通帳に「○○利子20,000円」と記載され、20,000円が振り込まれていたとします。
これを仕訳するときに、
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金 20,000円 | 受取利息 20,000円 |
と書くのはNGです。
なぜなら、預金通帳に書かれた「○○利子20,000円」は、各種税金が差し引かれたあとの金額だからです。
したがって仕訳処理をするときは各種税金を足した「本当の受取利息の額」を考慮する必要があります。
2-1.所得税・復興特別所得税と地方税
受取利息を受け取るとき、次の税金が差し引かれています。
- ①所得税および復興特別所得税(所得税等):15.315%
- ②地方税5%(個人事業主のみ)
法人は①のみで、受取利息から15.315%差し引かれて、口座に入金されます。
個人事業主は①+②で、受取利息から20.315%差し引かれて、口座に入金されます。
2015年までは、法人にも地方税5%がかかっていましたが、現在は廃止されています。
2-2.法人の受取利息の計算
法人の場合、15.315%が差し引かれて20,000円が振り込まれているので、「本当の受取利息の額」(所得税等を足した受取利息の額)は、23,616円になります。
計算式は次のとおりです。
- 受取利息:20,000円÷(1-15.315%)=23,616円(1円未満切り捨て)
- 所得税等:23,616円×15.315%=3,616円(1円未満切り捨て)
受取利息を支払った側は、23,616円を振り込む前に、税金計3,616円を差し引き、残りの20,000円を振り込んでいるわけです。
2-3.個人事業主の受取利息の計算
個人事業主の場合、20.315%が差し引かれて20,000円が振り込まれているので、「本当の受取利息の額」(所得税等を足した受取利息の額)は、25,098円になります。
計算式は次のとおりです。
- 受取利息:20,000円÷(1-20.315%)=25,098円(1円未満切り捨て)
- 所得税等:25,098円×15.315%=3,843円(1円未満切り捨て)
- 地方税 :25,098円×5%=1,254円(1円未満切り捨て)
所得税等と地方税を合計すると5,097円となりますが、計算の過程で端数を切り捨てたために、一番上の式の計算5,098円と1円ずれが生じています。この場合は、税金を合計した5,097円をとって、会計上は、受取利息25,097円とします。
3.受取利息の仕訳
受取利息の仕訳方法を紹介します。法人と個人事業主では仕訳方法が異なるので、別々に解説します。
3-1.法人の受取利息の仕訳
まず法人の仕訳方法を紹介します。先ほど算出した金額を記入するだけです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 20,000円 | 受取利息 | 23,616円 |
法人税等 | 3,616円 |
3-2.個人事業主の受取利息の仕訳
続いて、個人事業主の受取利息の仕訳方法を紹介します。
受取利息が23,616円で、預金通帳に「○○利子20,000円」と記載されていた場合、次のように仕訳してください。
総額で仕訳する方法
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 20,000円 | 事業主借 | 25,097円 |
事業主貸 | 5,097円 |
純額で仕訳する方法
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 20,000円 | 事業主借 | 20,000円 |
どちらの仕訳方法も、結果的には同じです。
個人事業主の場合は、受取利息は事業所得にならず、利子所得になります。そのため、「受取利息」勘定は使わず、「事業主借」勘定を使います。
さらに、「○○利子20,000円」として入金された段階で、さまざまな税が差し引かれているので、納税は終わっています。差し引かれた税金5,098円分を所得として確定申告する必要はありません。
4.個人事業主:預金利息以外の利息の受取の仕訳
上記の仕訳方法は、預金利息を受け取った場合の仕訳についてでした。
個人事業主が、それ以外の利息を受け取った場合、仕訳方法が異なります。
4-1.従業員への貸付金の利息
たとえば、従業員にお金を貸し付けて、元金20,000円とともに利息1,000円を受け取った場合、
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 21,000円 | 貸付金 | 20,000円 |
受取利息 | 1,000円 |
従業員に貸し付けた金銭に対する利息は、事業に付随する収入とみなされ、事業所得となります。
4-2.友人への貸付金の利息
たとえば、個人的に友人にお金を貸し付けて、元金20,000円とともに利息1,000円を受け取った場合、
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 21,000円 | 事業主借 | 21,000円 |
友人に貸し付けた金銭に対する利息は、事業所得にも利子所得にも該当しないため、雑所得となります。
この場合、全額を「事業主借」勘定で計上し、利息1,000円については、雑所得して申告します。
まとめ
法人や個人事業主が「利子」として受け取っている額は「税引き後」の額です。したがって「本当の受取利息」は、差し引かれた税金を足した額になります。
法人の仕訳では、「本当の受取利息」や各種の税金を、通帳に書かれてある金額から算出しなければなりません。
個人事業主の場合は、受取利子は事業所得ではないので、単純に、通帳に記載されている金額を「事業主借」にして記載するだけです。
受取利息に消費税はかかる?
受取利息は非課税売上に当たりますので消費税はかかりません。
受取利にかかる税金は?
所得税15.315%、地方税5%(個人事業主のみ)がかかります。
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