消費税の課税区分と不課税・非課税・免税の違い【図解】
消費税処理の基本である4つの税区分(課税・非課税・不課税・免税)と、それぞれの違いについて、図を使ってわかりやすく解…[続きを読む]
損害賠償金・弁償金・補償金・和解金・解決金・示談金などを支払ったとき、勘定科目にはどの科目を利用すればよいか?消費税の区分は何かを解説します。
目次
交通事故などで被害者が、損害賠償金や治療費、慰謝料などを受け取ることがあります。
事業者が損害賠償金を支払ったり受け取ったりした場合、原則、消費税は課されません(不課税)。それは損害賠償金の授受が「対価を得て行う資産の譲渡」ではないからです。
消費税は対価を得て行う資産の譲渡に課される税です。
弁償金や補償金、和解金、解決金、示談金、慰謝料も同様に不課税です。
ただ、名称は損害賠償金でも、物品の購入という形でお金を支払ったり受け取ったりした場合は、消費税が発生することになります。
損害賠償金と似たものに弁償金や補償金、慰謝料、修理代、治療費、違約金、和解金、示談金、原因者負担金などがありますが、名称が何であったとしても、賠償金と同じ性質を持つものであれば、消費税は課せられません。
消費税が課せられる条件は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡があったときです。対価を得て行う資産の譲渡とは「商品やサービスを渡して、お金を受け取ること」です。
損害賠償金などはお金の授受は発生していますが商品もサービスも売っていないので、消費税は課されません。
国税庁は、「心身または資産について加えられた損害の発生にともなって受ける損害賠償金は課税の対象とならない」と説明しています。
【外部サイト】国税庁:No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
損害賠償金などに消費税が課されないのは、不課税だからです。不課税取引とは、課税対象の取引に該当しない取引のことです。
参考までに、非課税取引とは、課税対象の取引に類似しているものの、課税になじまない、もしくは政策的配慮から課税対象にしない取引のことです。
損害賠償金の受け取りについては、消費税が不課税となるだけでなく、所得税・法人税も非課税となります。
ただし、その損害賠償金の中に、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、その補てんされた金額に相当する部分については、各種所得の収入金額とされます。
たとえば、心身に加えられた損害について支払われる慰謝料がありますが、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになります。
損害賠償金のすべてが不課税になるわけではありません。損害賠償金という名称で金銭の授受があり、それが「外形上」対価を得て行う資産の譲渡と変わらない場合、消費税が課されます。
外形上とは、外からみた様子、という意味です。
例えば次の3つの損害賠償金などは、消費税が課されます。
例えば、運送会社が荷物を輸送しているとき、衝撃などを受けて荷物を「少し」傷つけてしまったとします。ただ、その傷は小さいので、荷物のなかの商品は通常とおり使用できる状態だったとします。
このとき運送会社が、荷主に損害賠償金という名目でお金を支払って商品を引き取った場合、外形上は商品を購入したことになるので消費税が発生します。
例えば、企業がWebサイトに掲載されていたイラストを無断に使用してしまい、イラストの作者に損害賠償金を支払ったとします。このときのイラストの作者は、外形上、著作権を貸して対価を得たことになります。したがってこの損害賠償金はイラスト使用料と同じ意味を持つので、消費税が課税されます。
例えば、ビルのテナントを事務所として借りている会社が、ビルの大家と取り決めた日に退去せず、入居を延長しその後で退去したとします。このとき会社が大家に明け渡し、遅延の違約金を支払ったら、消費税が課税されます。それはこの違約金が外形上、入居の延長に対する家賃とみなすことができるからです。
ただ、途中解約の違約金には消費税が課税されないので注意してください。
例えば、テナントを2年借りる契約をしていたのに1年で退去したため、契約にしたがって、テナントを事務所にしていた会社が大家に途中解約の違約金として3カ月分の家賃を支払ったとします。
この違約金は得られたはずの利益の補填(逸失利益の補填)とみなされるので、対価を得て行う資産の譲渡ではないため不課税となります。
なお、アパートの家賃など住居のための家賃には元々消費税は課されません。住居の家賃は非課税です。
会社が損害賠償金を相手に支払ったとき、損害賠償金などの勘定科目は雑損失となります。会社が損害賠償金を相手から受け取ったときは、雑収入で処理します。
ただこのような処理を行うのは、実際に損害を与えた社員に、故意や重過失がない場合です。
もし社員が故意または重過失によって相手に損害を与えてしまい、会社が相手に損害賠償金を支払ったときは、その社員に対する貸付金として処理します。
その損害賠償金は本来、その社員が負担すべきものだからです。実際に相手に損害賠償金を支払った会社は、その社員に損害賠償金と同額のお金を請求する権利があります。
企業が損害賠償金や弁償金・補償金などを授受した場合、原則、消費税は課されません。また、所得税・法人税も非課税です。
損害賠償金を支払った場合の勘定科目は雑損失、受け取った場合は雑収入です。
しかし損害賠償金の名目でも、外形上、お金を支払って物やサービスを購入した取引になっている場合は、課税されます。課税取引として経理処理してください。
さらに社員が故意または重過失で損害を与えてしまい、会社が社員に代わって損害を受けた相手に損害賠償金を支払ったら、社員に対する貸付金として処理します。会社はその社員に、損害賠償金と同額のお金を請求する権利を有しているからです。