消費税増税に伴う契約書の変更の必要性、印紙税について

会社のやり取りに関して契約書は不可欠かと思いますが、消費税の改正・引き上げにより契約書の内容やその文言に対しどのような影響を与えるのでしょうか。
また、それに伴って印紙税はどれくらいかかるでしょうか。

実際の例を用いて、詳しく説明していきます。

1.定期的に生じるサービスに関する契約に注意!

この度消費税率が8%から10%に増税されるにあたって、契約書の見直し・変更が必要となるケースが考えられます。

「工事請負契約」や「業務委託契約」、「顧問契約」などの契約書には、消費税額の記載が含まれているものも多いです。

特に毎月定期的に生じるサービスに関する契約については注意が必要です。

2. 変更点を踏まえた記載例と書き方

ここからは請負契約に使用される一般的な契約書の例を用いて、契約書の書き方と記載例を解説します。

契約書の記載例としては、税抜金額を記載するパターンと、税込金額を記載するパターンとの2通りが考えられます。

どちらの記載方法でも契約上何ら問題はありませんが、長い目で見ると税抜表示の方がメリットが大きいことは間違いありません。

2-1.税抜表示

まずは税抜表示の記載例から見ていきましょう。

月50,000円 (消費税別)
金額50,000円 (税抜 別途消費税)

上記のように契約書に契約金額を「税抜表記」し、消費税は別途徴収する旨を盛り込んで記載します。

この記載方法であれば、消費税が増税される度に契約書を改定する必要がありません。

今回で言えば8%→10%の消費税増税にも、何ら問題なく増税後の金額を請求できます。

2-2.税込表示

続いて税込表示の記載例を見ていきましょう。

月54,000円 (消費税込)
月50,000円 (別途消費税額4,000円)

契約金額を「税込み」で表記し、総額が分かるように記載します。ここまで読んでいただければ分かると思いますが、契約金額を税込表示してしまうと、消費税の増税時に誤った金額が記載されてしまうことになります。

「消費税込」と記載している場合はもちろん、2つ目の例のように「消費税額4,000円」などと消費税額を明示している場合も同様です。

ここで気になるのは、「増税後も税込価格を改定しなかった場合、相手先に増税分の請求ができるかどうか」ではないでしょうか。

不透明な部分はありますが、契約書を税込で記載していても、増税後に10%の消費税額を請求できる可能性はあります。

基本的に消費税はその税率を課せられることを拒否したり、相手方に税率を強要したりすることはできないためです。

しかし、契約書に誤った内容を記載している点は事実ですし、取引先と係争に発展してしまう恐れもあります。

思わぬトラブルを避けるためにも、税込表示は避けた方が無難でしょう。

3.過去に税込表示で作成してしまった場合の対応は?

過去税込表示で契約書を作成していたり、やむを得ず税込表示の契約書を作らざるを得ない場合、考えられる対応策は2つあります。

1つは単純に契約書を税抜表示に変更することです。

最初は面倒でもいったん変更してしまえば、将来、再度消費増税が実施されても余計な手間がかからなくて済みます。

もう1つは税込表示の契約書に、増税時の対応をあらかじめ盛り込んでおく方法です。

例えば

「税法の改正により消費税等の税率が変動した場合には、当該改正税法施行日以降における上記消費税等相当額は変動後の税率により計算した額とする」

といった条項等を追記すれば、増税時にかかる手間が省けます。

いずれにしても、契約書を税込表示のままにしておくと不利益が生じる可能性があるため、上記のような対応を取ることをおすすめします。

4.印紙税

契約書を作成するうえで付いて回る印紙税。
こちらも増税に伴い注意すべき点があります。

4-1.変更契約書作成は課税対象

印紙税法では、契約上「重要な事項」を変更する際に作成する変更契約書が課税対象となります。

「重要な事項」には例えば次のようなものが該当します。

  • 請負の内容
  • 契約金額
  • 取扱数量等

4-2.いくらの印紙税が課されるか

契約書の消費税額のみを変更する場合、下記の要件を満たしていれば例外事項として一律200円の印紙税が課されます。

  • 消費税額が区分記載されていること
  • 増税分の金額を増額することのみの変更であること
  • 原契約書が不動産の譲渡、請負契約書、継続する運送・請負の基本となる契約書であり、かつその原契約書に記載された契約期間内であること

1つ目の要件である「区分記載」に該当するためには、下記のような記載方法であれば問題ありません。

「請負金額2,160万円、うち消費税額160万円
「請負金額2,160万円、税抜価格2,000万円」

なお、旧税額と新税額の消費税等の差額が1万円未満の場合は、非課税文書として印紙税はかかりません。

旧税額と新税額の差が1万円以上の場合のみ、一律200円の印紙税が課されると考えてください。

5.まとめ

消費税の引き上げに伴う契約書の注意点について解説してきました。

税抜表示の方が増税のたびに契約書を改定する必要がなく、印紙税の負担も軽くできるためメリットが多いと言えるでしょう。

よほど特殊な事情がない限り、契約書は税抜表示で書くことを心がけてください。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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