ポイントを取得・利用した際の勘定科目と消費税の処理方法

キャッシュレス決済などで取得・利用するポイントについて、個人であれば巨額でないかぎり気にする必要はありませんが、個人事業主や法人の場合は、会計仕訳に反映させる必要があります。

ポイントについて会計上、明確な規定があるわけではありませんが、会社で会計処理を統一しておかなければ、会計・所得税・法人税・消費税などに影響を及ぼすことになります。

ポイントを取得・利用した際の仕訳方法、勘定科目と消費税の処理について、今回は会計・税務の視点で「望ましい会計処理方法」を、具体例をあげてわかりやすく紹介します。

1.事業でポイントを取得した時の仕訳は?

まずは、「購入者がポイントを取得した時」は、会計処理をする必要はありません。

ポイントを取得しただけでは、将来、そのポイントを使うかどうか分かりませんし、使う前に期限切れになってしまう可能性もあります。

では、ポイントについて会計処理が必要になるタイミングはいつでしょうか?
答えは、「ポイントを使用した時」です。

「ポイントを使用した時」の会計処理は、事業に関する物品を購入した場合に取得したポイントか、私的な物品を購入した場合に取得したポイントかで取扱いが異なります。

また、取得したポイントを事業に関する物品の購入に使用する場合と、私的な物品の購入に使用する場合とで取扱いが異なります。

2.事業でもらったポイントを事業で使う場合の仕訳方法

事業に関する物品の購入で付与されたポイントを、事業に関する物品の購入に使用した場合の会計処理を例とともにご紹介します。

例)個人事業主のAさんはオフィス用のパソコン30,000円(税込)をクレジットカードにより購入。購入額の10%にあたる3,000円分のポイントが付与された。その3,000円分のポイントを使用して10,000円(税込)のオフィス用デスクをクレジットカードで購入し、差引き7,000円を支払った場合。

オフィス用パソコンを購入した時の会計処理(税込経理)

借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 30,000円 未払金 30,000円

通常の消耗品を購入した場合の会計処理です。3,000円分のポイント取得については会計処理が必要ありません。

ポイント使用してオフィス用デスクを購入した時の会計処理(税込経理)

ポイントを使用する場合、以下の2つの方法があります。

  1. ポイントを「値引き」として捉える会計処理方法
  2. ポイントの権利行使による「収入」として捉える会計処理方法
①ポイントを「値引き」として捉える会計処理
借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 7,000円 未払金 7,000円

ポイントを「値引き」として捉える会計処理は、シンプルにポイント使用後の支払額を計上する方法です。

経理は簡単ですが、オフィス用デスクの実際の金額が反映されないというデメリットがあります。

②ポイントの権利行使による「収入」として捉える会計処理
借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 10,000円 未払金 10,000円
未払金 3,000円 雑収入(課税仕入返還等) 3,000円

ポイントの権利行使により「収入」として捉える会計処理は、オフィス用デスクの実際の金額を計上し、ポイントの使用額を「雑収入」として計上する方法です。

この「雑収入」の消費税は「仕入れに係る対価の返還等」に該当し、課税仕入のマイナスとして処理します。

オフィス用デスク10,000円から3,000円を差引いた7,000円が課税仕入となるため、結果的に①の方法と②の方法の課税仕入額は一致します。

3. ポイントの取得と同時にポイントを利用した場合の会計処理(税込経理)

ポイントの取得と利用を同時に行った場合の会計処理は以下のようになります。

例)個人事業主のAさんはオフィス用パソコン30,000円を購入。購入額の10%にあたる3,000円分のポイントが付与された。その3,000円分のポイントを即時利用し、差引き27,000円をクレジットカードにより支払った場合。
借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 30,000円 未払金 30,000円
未払金 3,000円 雑収入(課税仕入返還等) 3,000円

この「雑収入」の消費税は「仕入れに係る対価の返還等」に該当し、課税仕入のマイナスとして処理します。

4.事業でもらったポイントを個人で使う場合の仕訳方法

この章以降では、個人事業主向けの説明をします(法人の場合は、すべて事業に利用する想定ですので考慮しません)。

事業に関する物品の購入で付与されたポイントを、私的な物品の購入に使用した場合を見ていきましょう。

例)個人事業主のAさんはオフィス用パソコン30,000円をクレジットカードにより購入。購入額の10%にあたる3,000円分のポイントが付与された。その3,000円分のポイントを使用して私的に使用する10,000円のゴルフクラブをクレジットカードにより購入した場合。
私的な利用では、その分を、事業者から個人事業主本人にあげたという考え方をします。

オフィス用パソコンを購入した時の会計処理(税込経理)

借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 30,000円 未払金 30,000円

通常の会計処理です。3,000円分のポイント取得については会計処理が必要ありません。

ポイント使用して私的に使用するゴルフクラブを購入した時の会計処理(税込経理)

以下の2つの会計処理の方法があります。

  1. ポイントの使用をオフィス用パソコンと相殺する会計処理
  2. ポイントの使用をオフィス用パソコンと相殺しない会計処理
①ポイントの使用をオフィス用パソコンと相殺する会計処理
借方科目 金額 貸方科目 金額
事業主貸 3,000円 雑収入(課税仕入返還等) 3,000円
②ポイントの使用をオフィス用パソコンと相殺しない会計処理
借方科目 金額 貸方科目 金額
事業主貸 10,000円 事業主借 7,000円
    雑収入(課税仕入返還等) 3,000円

①と②どちらともポイントの権利行使により「収入」を得たという捉え方になります。

この「雑収入」の消費税は「仕入れに係る対価の返還等」に該当し、課税仕入のマイナスとして処理します。

5.個人でもらったポイントを事業で使う場合の会計処理

次は、私的な物品の購入により付与されたポイントを、事業に関する物品の購入に使用した場合の会計処理方法をみていきましょう。

例)個人事業主のAさんは私的に使用するゴルフクラブ30,000円を事業用のクレジットカードにより購入。購入額の10%にあたる3,000円分のポイントが付与された。その3,000円分のポイントを使用してオフィス用の椅子10,000円をクレジットカードにより購入した場合。
私的に使用するゴルフクラブを購入した時の会計処理
借方科目 金額 貸方科目 金額
事業主貸 30,000円 未払金 30,000円

私的に使用するゴルフクラブを購入する際に、事業用のクレジットカードを使用しているため、事業用貸の科目で会計処理します。

ポイントを使用してオフィスで使用する椅子を購入した時の会計処理(税込経理)

借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費(課税仕入) 10,000円 未払金 7,000円
    事業主借 3,000円

ポイントを使用していますが、このポイントは私的に使用する物品の購入により付与されたものなので、ポイントの権利行使による「収入」として計上されません。

6.個人でもらったポイントを個人で使う場合

私的な物品の購入により付与されたポイントを私的な物品の購入に使用する場合は、会計処理をする必要はありません。

事業用のクレジットカードを使用した場合は、事業主貸に振り替える仕訳が必要です。

まとめ

事業の買い物や仕入でポイントを取得・利用したときは、適切な会計処理が必要です。特に、個人事業主の場合は、事業と私的な個人でのポイントの行き来が発生することがありますので、仕訳処理には注意しましょう。

今回は、「買い手側」の会計処理をご紹介しましたが、「売り手側」の会計処理については「買い手側」より複雑ですので、次の記事で解説しています。

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服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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