仕入れ10%、販売8%(軽減税率)では資金繰りに要注意!
消費増税が実施される前後では、税率10%で仕入れたものを税率8%で販売することもあるでしょう。この場合「損する」ような気がしますが、原則「損得」は発生しません。
ただ、資金繰りが悪化する可能性がありますので、経営者は警戒を怠らないようにする必要があります。
- 10%で仕入れて、8%で販売する場合
- 8%で仕入れて、10%で販売する場合
それぞれの消費税と資金繰りの関連について解説します。
目次
1.10%で仕入れて8%で販売する場合
1-1.【原則】損得は発生しない
小売店が消費税10%で仕入れた商品を、消費税8%で販売しても、損得は発生しません。
例えば小売店が、税込1,080円(税抜価格1,000円、税率8%)で仕入れた商品を、税込2,200円(税抜価格2,000円、税率10%)で販売したとします。
このとき、小売店は「消費税80円を支払い」「消費税200円を預かった」ことになります。したがってこの小売店は、消費税120円(=200円-80円)を税務署に納めます。
そして小売店の利益は、1,000円になります。計算式は次のとおりです。
- 小売店の利益1,000円=2,200円-1,080円-120円
では、同じ取引(税抜価格1,000円の商品を税抜価格2,000円で販売する)で、消費税10%で仕入れ、消費税10%で販売するケースをみてみましょう。
仕入れ価格は税込1,100円となり、販売価格は税込2,200円となります。このとき、小売店は「消費税100円を支払い」「消費税200円を預かった」ことになります。したがってこの小売店は、消費税100円(=200円-100円)を税務署に納めます。
このケースでも小売店の利益は、やはり1,000円になります。計算式は次のとおりです。
- 小売店の利益1,000円=2,200円-1,100円-100円
したがってどの税率で仕入れても「損得」はありません。
1-2.【例外】免税事業者は損
免税事業者は、10%で仕入れて8%で販売すると、例外的に「損」します。免税事業者のシミュレーションをしてみましょう。
免税事業者は、消費税を税務署に納めなくてもよい事業者のことです。ただ、免税事業者でも消費税込みの価格で販売することができます。客から受け取った消費税は、自身の売上に計上することができます。
先ほどと同じ「税抜価格1,000円の商品を税抜価格2,000円で販売する」ケースをみてみます。
消費税10%で仕入れるので、税込1,100円を支払います。それを消費税8%で販売するので、税込2,160円を売り上げます。
このときの利益は1,060円になります。
消費税10%で税込1,100円仕入れ、消費税10%で税込2,200円で販売すると、利益は1,100円になります。
つまり、「消費税10%で仕入れ、消費税8%で販売する」と、消費税10%で販売するときより、40円損(=1,100円-1,060円)します。
1-3.資金繰りは悪化する
消費税10%で仕入れて、8%で販売すると、損得は発生しませんが、資金繰りは悪化する可能性があります。これは課税事業者も免税事業者も同じです。
その理由は、単純に消費税10%で仕入れたほうが、消費税8%で仕入れるより、支払う金額が膨らむからです。
消費税10%で販売すれば売上高が増えますが、消費税8%で販売したのでは売上高は増えません。
支払いが増えて収入が同額なので、資金繰りが悪化するわけです。
2.8%で仕入れて、10%で販売する場合
消費税8%で仕入れて、10%で販売する場合を考えてみましょう。
2-1.やはり損得は発生しない
消費増税の実施前後では、消費税8%で仕入れた商品を10%で販売できますが、「10%で仕入れて、8%で販売する場合」と同じく損得は発生しません。シミュレーションは次のとおりです。
まずは、8%で仕入れて、10%で販売する場合です。
- 仕入れ8%:税抜1,000円の商品の仕入れに税込1,080円支払う
- 販売10%:税抜2,000円の商品を税込2,200円で販売する
- 税務署への消費税の納付額:120円(=200円-80円)
- 利益:1,000円(=2,200円-1,080円-120円)
次に、10%で仕入れて、10%で販売する場合です。
- 仕入れ10%:税抜1,000円の商品の仕入れに税込1,100円支払う
- 販売10%:税抜2,000円の商品を税込2,200円で販売する
- 税務署への消費税の納付額:100円(=200円-100円)
- 利益:1,000円(=2,200円-1,100円-100円)
利益は同じなので、損得は発生しません。
2-2.免税事業者は得する
免税事業者は、8%で仕入れて10%で販売すると、例外的に「得」します。
8%で仕入れて、10%で販売する場合
- 仕入れ8%:税抜1,000円の商品の仕入れに税込1,080円支払う
- 販売10%:税抜2,000円の商品を税込2,200円で販売する
- 利益:1,120円(=2,200円-1,080円)
10%で仕入れて、10%で販売する場合
- 仕入れ10%:税抜1,000円の商品の仕入れに税込1,100円支払う
- 販売10%:税抜2,000円の商品を税込2,200円で販売する
- 利益:1,100円(=2,200円-1,100円)
「仕入れ8%、販売10%」は「仕入れ10%、販売10%」より20円、利益が増えます。
2-3.資金繰りは改善する
消費税8%で仕入れて、10%で販売すると、損得は発生しませんが、資金繰りは改善する可能性があります。
消費税8%で仕入れたほうが、消費税10%で仕入れるより、支払い金額が減るからです。
しかも消費税10%で販売すれば、消費税8%で販売するより売上高が増えるので、手元の現金は増えます。
支払いが減り、収入が増えるので、資金繰りが改善するわけです。
3.テナント家賃、光熱費に注意
資金繰りでは、テナント家賃や光熱費にも注意してください。これらの支出は消費税10%が課されます。例えば税抜30万円のテナント家賃であれば、これまでの消費税は2万4,000円でしたが、3万円になります。
消費増税に関わる一時的な支出増と一時的な収入減にそなえて、予備的資金を確保しておくことをおすすめします。
まとめ
仕入れと販売の消費税額が異なっても、損得は発生しません。ただ例外的に免税事業者は損得が発生するので注意が必要です。
また消費税10%で仕入れて8%で販売する場合、想定以上に資金繰りが悪化することがあります。資金繰りに余裕を持たせておきましょう。
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