一体資産とセット販売の違い、まぎらわしい軽減税率
軽減税率の導入はさまざまな混乱を引き起こしていますが、「一体資産」と「セット販売」の相違もそのひとつといえます。
両者は似たような印象を持たれますが、一体資産の一部は軽減税率8%の対象になることもありますが、セット販売の場合は構成するそれぞれの商品の税率で消費税を計算します。
何が一体資産に当たり、何がセット販売に当たるのかを整理しておきましょう。
目次
1.一体資産とセット販売の違い
飲食料品は軽減税率が適用され、消費税は8%です。飲食料品以外の商品は10%です。
一方、飲食料品とそれ以外の商品を組み合わせた商品は、8%になったり10%になったりします。
1-1.小売店がセットしているか、任意に選べるかの違い
組み合わせ商品には、一体資産とセット販売の2種類があります。
一体資産とは、小売店が飲食料品と飲食料品以外をセットにして、全体の価格のみを提示して販売している商品のことです。
一体資産のうち1万円以下で、飲食料品の価格が全体の2/3以上の場合、軽減税率8%が適用されます。この「1万円以下、2/3以上」という条件が適用税率判定の基準になります。
セット販売は、消費者が任意に商品を選べるセット商品を販売する方法です。また、小売店が飲食料品と飲食料品以外をセットにして販売していても、それぞれの商品の価格を表示している場合はセット販売とみなされます。
この場合、セット商品のなかの飲食料品は8%が課され、飲食料品以外には10%が課されます。
1-2.飲食料品と非課税資産を組み合わせた場合
切手やプリペイドカードのようなそもそも消費税が課せられない非課税資産と飲食料品を組み合わせる場合は、非課税資産を含めずに適用税率を判定します。
例外として、非課税資産の価格が僅少である場合(相当安い場合)は、非課税資産を含めた全体で適用税率判定を行ってもよいことになっています。
2.セット販売の価格配分方法
セット販売の価格配分方法をみていきます。
2-1.食品と非売品のおもちゃのセット販売について
食品と非売品のおもちゃのセット販売の価格配分方法を考えてみましょう。
次のようなハンバーガーセットがあったとします。
<ハンバーガーセット>
- セット料金:税抜500円
- 内訳
ハンバーガー:単体だと税抜300円
ドリンク :単体だと税抜250円
おもちゃ :価格なし、非売品
この場合、ハンバーガーとドリンクの単体価格だけで総額が550円となり、セット料金の500円を上回っています。そこで、おもちゃは無料とみなすことができます。
このハンバーガーセットを持ち帰った場合、税抜500円全体に軽減税率8%が適用されます。
2-2.複数の商品をまとめたセット販売について
「お菓子とおもちゃ、どれでもよりどり3品で500円」というように、いろいろな種類がある複数の商品を、消費者に選ばせてまとめて販売することがあります。これは、セット販売となります。
もともとの商品に別々の価格があれば、一体資産にはなりません。
また、別々の価格がないとしても、消費者に選ばせている場合も、一体資産にはなりません。
この場合、対価を合理的に按分し、それぞれの商品に該当した税率をかけて計算する必要があります。
例えば、次のような商品を販売したとします。
- 価格:まとめて3品で税抜500円
- 顧客が選んだ商品内容
お菓子:単体の通常価格は税抜300円
あめ :単体の通常価格は税抜150円
玩具 :単体の通常価格は税抜300円
それぞれの単体の通常価格で按分すると、それぞれの価格は次のようになります。
- お菓子:500円×300円/750円=200円
- あめ :500円×150円/750円=100円
- 玩具 :500円×300円/750円=200円
食品は軽減税率8%、玩具は標準税率10%ですので、消費税は、200円×8%+100円×8%+200円×10%=44円となり、税込価格は544円となります。
2-3.特定の飲食料品を購入した際にレジで配布される販促品について
例えばコンビニが、おにぎりを買った客に、レジで3種類の非売品のステッカーのなかから1枚選ばせてプレゼントするキャンペーンを行ったとします。
おにぎりの価格はキャンペーン期間外でも同額です。
この場合、「複数の食品や販促品のなかから、客や事業者が任意に、または無作為に選択する」ため、セット販売になります。一体資産ではありません。
価格配分方法は、おにぎりとステッカーのそれぞれの資産の価格に基づいて合理的に按分することになります。
ここではステッカーは無料と考えることができるので、おにぎりの価格に軽減税率8%が課せられます。
3.一体資産の価格配分方法
続いて、一体資産の価格配分方法をみていきます。
3-1.一般的な価格の按分方法
一般的な一体資産の場合、次の2つのルールによって価格配分をします。
- 一体資産の価格のうち、合理的に計算した食品の売価の占める割合
- 一体資産の価格のうち、合理的に計算した食品の原価の占める割合
例えば、次のような一体資産の商品を販売したとします。
- ティーカップと自家製ハーブティーのセット商品
- 価格:税抜1,500円
- 内訳(ただし販売時は内訳の金額は表示しない)
ティーカップ :単体だと税抜500円
自家製ハーブティー:単体では未販売、価格未設定
自家製ハーブティーは価格が設定されていないので、「飲食料品の価格が全体の2/3以上」かどうかを判定できません。そこで原価をチェックすることになります。
自家製ハーブティーのハーブの原価(仕入れ値)が1,000円であれば、「もし単体で売れば」その価格は1,000円以上になるはずです。したがって「飲食料品の価格が全体の2/3以上」になると合理的に判断できるので、この「ティーカップと自家製ハーブティーのセット商品」は軽減税率8%が適用されます。販売価格も1,500円なので、1万円以下になっています。
自家製ハーブティーの原価が数十円と安ければ「飲食料品の価格が全体の2/3以上」をクリアできないので、この「ティーカップと自家製ハーブティーのセット商品 価格:税抜1,500円」には10%が課されることになります。
3-2.仕入に共通して要した付随費用について
税抜1,500円の「ティーカップと自家製ハーブティーのセット商品」の原価に、配送料などの付随費用が含まれていたとします。
この場合の価格配分は、次の2とおりのいずれかの方法で行います。どちらを採用しても構いません。
- 商品の仕入れ価格(原価)のみで計算する方法
- 商品の仕入れ価格(原価)と付随費用の合計額で計算する方法
ただ付随費用の全額を飲食料品(ここでは自家製ハーブティー)の原価に加算することは認められていません。
まとめ
一体資産とは、あらかじめひとつの商品として販売されているもので、組み合わさった状態の価格のみが提示されているものに限ります。それ以外のセット商品は「セット販売」とみなされます。
また、一体資産の8%か10%かの適用税率判定では、飲食料品と飲食料品以外の売価または原価で按分計算します。