軽減税率の対象になる一体資産とは

一体資産

お菓子とおもちゃ、紅茶とティーカップなど、飲食料品とそれ以外の商品がセットで販売されていることがありますよね。このような商品は軽減税率の対象になるのでしょうか?

実は、これらの商品は「一体資産」と呼ばれ、ある条件を満たすと、軽減税率の対象になります。
いくつか例をあげながら詳しく解説します。

1.一体資産とは

1-1.食品と食品以外のものがセットで一つの商品であるもの

セット販売を行う場合に軽減税率の対象となるのが「一体資産」という考え方です。
一体資産とは食品と食品以外のものが一体(セット)で販売されている商品を指します。例えば、お茶と食器のセットなど、食品売り場にも雑貨売り場にも置かれるような商品のことです。
また、「ビックリマンチョコ」や「プロ野球チップス」の軽減税率で話題になった食玩の問題も、この一体資産の一例です。

食品と食品以外のものを個別に販売できないことも一体資産の条件です。
逆に、1つの商品ではなく、別々に販売しているものを組み合わせるようなセット販売は一体資産には当てはまりません。

一体資産のポイントは、個別に課税することができないという点です。セット商品は食品以外のものでも食品と一つの商品の中に含まれており、セットでの価格が設定されています。すると、どちらにどの程度の課税が行われるのか、小売店では判断ができません。

したがって、食品が含まれていることから、食品以外のものも軽減税率の対象として、一律で課税を行うように定められているのです。

1-2.一体資産の例

実際に一体資産として認められる例をいくつか挙げていきます。まず挙げるのは、上記の解説でも触れたお茶と食器のセットです。ギフト品などで多く見られるこのようなセットは一体資産となります。

お茶と食器のどちらも通常の店舗で別々に購入することができる商品ですが、ギフトセットの場合、中の茶葉や食器の柄が固定されてセットとして販売されています。顧客はそれぞれ自由に選んで購入することはできませんので、一体資産として認められています。

また、食品が含まれることが条件となることから、お茶と食器のように食品と食器、食品と調理器具のようなセット販売が対象になります。例えば、バターとバターナイフ、お茶と急須などは一体資産として認められます。

今後、食器や調理器具などを販売する際には、一体資産としての軽減税率を狙ったセット商品が増えていくことが予想されます。

2.軽減税率の対象になる一体資産の条件

上記で例としてあげた一体資産のすべてが軽減税率8%の対象となるわけではなく、いくつかの要件があります。

①税抜で1万円以下

一体資産に軽減税率が適用される1つ目の条件が一体資産の金額です。軽減税率として認められるには、税抜価格が1万円以下になることが求められます。

②一体資産のうち食品価格が全体価格の3分の2以上である

もう一つの条件は、食品価格が全体価格の2/3以上という条件です。例えば、3,000円のカップと6,000円のお茶がセットで9,000円で販売されている場合には、軽減税率が適用されます。

なぜこうした条件が定められているかというと、一体資産の全体を食品として扱う制度だからです。もし、食品以外のものが主となるのであれば、食品として販売することは制度として適さないことになります。

また、①の条件と合わさることで、食品以外のものに上限価格を設けることが可能です。軽減税率制度が始まったとしても、ありえないほどお得になるような一体資産は販売されません。

もし、事業者として一体資産の販売を考えている際には、各商品の原価や仕入れ値をきちんと踏まえた価格設定を行いましょう。

3.セット販売の具体例

セット販売されている商品にはいろいろありますが、軽減税率の対象になるもの/そうでないものがありますので、細かく確認してみます。

3-1.菓子と玩具(食玩)

セット販売の中で馴染み深い商品が、お菓子と玩具がセットになった「食玩」です。これは食品と食品以外のものがセットになっており、それぞれが個別に販売されていません。そのため、一体資産として認められます。
そして、上記の①と②の条件に適合すれば、軽減税率8%が適用されます。

「ビックリマンチョコ」が軽減税率対象で8%なのは食品価格の割合が2/3以上で、「プロ野球チップス」が対象外で10%なのは食品価格が2/3未満だから、ということです。

また、食玩を仕入れて販売する小売店は、細かな原価割合を知ることができません。この場合には、卸売業者が適用した税率で販売することが認められています。つまり、販売価格が1万円(税抜)以下であれば、詳細を調べなくても軽減税率を適用するかどうか判断が可能です。
この場合でも、例えば、DVDに少しのラムネ菓子が付属している食玩などは、「②食品価格が全体価格の3分の2以上」の条件を満たさないため軽減税率には該当しません。

3-2.ケーキと高価な容器

ケーキをより魅力的に見せるため、専用の容器に入れて販売することがあります。このような場合、ケーキよりも容器のほうが高額になる事があり、「②食品価格が全体価格の3分の2以上」の条件を満たしません。
すると、食品として扱われず、全体が軽減税率の対象外となります。

しかし、ケーキの価格と専用容器の価格を分けて明示することで全体が軽減税率対象外になるのを防ぐことができます。ケーキ本体には軽減税率8%が適用され、専用容器は標準税率10%となります。

3-3.ビールと惣菜のセット購入による値引き

スーパーなどでよく見かけるビールと惣菜のセット購入による値引き。これは、それぞれ単体で販売されているものを組み合わせてセットにしています。つまり、もともと1つの商品として販売されていないため、一体資産として認められません。

セットに対して値引きすることは可能ですが、惣菜には軽減税率8%が適用され、ビールには標準税率10%が適用されます。そのため、セットで値引きをした場合でも、値引き前の価格によって価格をあん分し、その割合に応じた課税がそれぞれ行われます。

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3-4.販促品付きペットボトル

特定のペットボトル飲料に非売品のおもちゃを付けた状態で販売されていることはよくあります。

おもちゃが非売品で、かつ、おもちゃが付かない場合でも価格が変わらない場合、当該おもちゃの価格は0円として認められるため、おもちゃ自体には消費税がかかりません。

すると、消費税の計算上は、おもちゃが付いていないペットボトルと同じであり、この場合は、非売品のおもちゃ付きペットボトルに軽減税率8%が適用されます。

3-5.選択可能なもの

もともとセット販売されているものでも、その中身を自由に選択可能な場合には「一括譲渡(セット販売)」という扱いになり、一体資産としては認められません。

例えば、食品と玩具がセットになった子供用メニューが飲食店によくあります。このようなメニューでは単品で売っているものを自由に組み合わせ、さらに玩具も好きなものを選べるようになっています。この場合は、一体資産とはならず玩具分には軽減税率が適用されません。

仮に、あらかじめセットのメニューや玩具の内容が決められており、それが複数のパターン用意されている場合には一体資産として扱われます。

セットとしてパッケージ化されていても、その中身が選択可能であるなら別々の商品として扱われることに注意が必要です。

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まとめ

軽減税率の対象となる一体資産と認められるには、次の条件を満たす必要があります。

  • 税抜で1万円以下
  • 一体資産のうち食品の価格が全体の価格の3分の2以上である

一体資産を商品として販売する目的がある事業者は、これらの条件を満たすように注意しましょう。特に、食品と容器をセットで販売する場合は、容器の価格が高価だと認められないため十分な対策が必要です。

また、消費者はセット販売という言葉に惑わされず、自由に選べる場合には一体資産にはならないことを覚えておいてください。一体資産だと勘違いして、軽減税率が適用されず困惑しないよう注意しながら買い物を行いましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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