葬儀での消費税、何が軽減税率の対象になる?

葬式 葬儀

2019年10月1日から消費税が8%から10%に上がりました。
さらに増税に付随して新しい制度として軽減税率制度も始まりました。

軽減税率によって、何が軽減税率の対象なのか戸惑っている葬儀社の方や喪主の方もいらっしゃるでしょう。

お葬式では、どういった場合に軽減税率が適用されるのかについて、主に葬儀社の視点からわかりやすく解説していきます。

1.葬祭の消費税と軽減税率

故人を最期に華々しく送り出してあげるために、葬儀社では様々な準備をします。

  • ご遺体の搬送
  • 式場から火葬場の手配
  • ご遺体の管理
  • 式場設営
  • 葬具のレンタル
  • 供物や供花の手配
  • 返礼品の手配
  • 料理の手配

様々なお店や会社に連絡をして式場の手配から供花等の手配を行っていますよね。

今まで消費税は一律8%で固定でしたが、軽減税率が導入されてから葬儀の税率も手配する内容によって10%と8%が混在しています。

そもそも標準税率と軽減税率はどのように区別されているのでしょうか?

標準税率はご存じの通り、ほぼすべての商品に適用される税率のことで現在は10%です。
しかし消費税が10%になったと同時に新しく軽減税率制度が追加されました。

下記に葬儀社で行うサービスでの税率の違いをまとめました。

標準税率(10%) 軽減税率(8%)
・ご遺体の搬送費用
・葬儀場利用料
・各種手続き代行
・飾り物全般
・お通夜の料理
・備え付けのお酒
・備え付けのお水
・お茶等の飲料水

このように分かれます。
それぞれの項目について詳しく説明していきます。

2.控室のジュースやお茶は軽減税率の対象

葬儀をする際に喪主の方等が待機する控室には飲み物を準備する葬儀社もありますが、これは全て軽減税率の対象となり、税率は8%になります。

しかし注意しなければいけないのは、お酒等のアルコール類です。
アルコール類は軽減税率の対象外となるので一律10%の課税になります。

控室で使用するものはこのように覚えておくと問題ありません。

標準税率(10%) 軽減税率(8%)
・お酒 ・お茶
・お水
・ジュース

3.お通夜の後のお夜食

葬儀前には、ほぼ必ずお通夜がありますが、その際に提供される食事の一部にも軽減税率は適用されます。
お通夜では葬儀社の方が共同で行う場合や、家族が個別に行い、葬儀社が介入しない場合との2種類があります。
ここから少し軽減税率の適用範囲がややこしくなってきますので、1つずつ丁寧に説明していきます。

【全て10%の場合】

これは「葬儀社の方が介入する場合」と覚えておいてください。
葬儀社の方が接客や飲食物の提供を行う場合は、飲み物に限らず全て一律で10%になります。飲食料理サービスをを提供していることになるからです。

【一部軽減税率が適用される場合】

葬儀社の方がいない場合、そして、飲み物が備え付けの場合は、飲み物(お酒は除く)は軽減税率が適用され8%になります。こちらは、単に、飲食料品を提供している形態になるからです。

デリバリー(配達)とケータリングの違い

喪主がお夜食を直接手配することもあると思いますが、その際、デリバリー(配達)、ケータリング、どちらの方式をとるかによって消費税率が異なります。

オードブルや飲み物、お惣菜等を頼みデリバリー(配達)をしてもらって、自分でその料理を並べるときは、軽減税率8%となります。

一方、各種の食材をデリバリー(配達)するだけでなく、葬儀会場で料理を並べてもらったり、調理をしてもらうときは、「ケータリング」に該当しますので、標準税率10%となります。

4.返礼品の軽減税率

返礼品、または、香典返しについて、果物・缶詰・飲み物等の飲食料品であれば軽減税率8%です。お酒や、タオル・漆器などの物は標準税率10%です。

ただ、少しややこしいものとして「一体資産」があります。
一体資産とは、代表的な商品でいうと、紅茶とティーカップのセットです。
それ以外にもギフトセット等の「食品とその他の商品が一体化」しているものを一体資産と呼びます。

一体資産に該当する返礼品は、標準税率が適用される場合と軽減税率が適用される場合があります。以下の2つの条件に当てはまれば、軽減税率が適用されます。

条件1:税抜き価格が1万円以下

文字通り一体資産の「税抜き」価格が1万円以下になっていることが軽減税率が適用される1つ目の条件です。

条件2:価格の内訳として食品は全体価格の2/3以上を占めていること

葬儀の返礼品で代表的なのは、お茶やお菓子のセットだったり、タオルセット等がありますが、お茶やお菓子等の食品の価格が全体の2/3以上を占めている場合は軽減税率の対象になります。

しかし、タオルセット等ではほぼすべて食品が入っていない、もしくは少ししか入っていない場合が多いので、その場合は軽減税率の対象外になります。

もし、返礼品のコストを下げようと思うのであれば上記の2つの条件を満たすような返礼品を選ぶようにしましょう。

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5.葬儀の生前契約を増税前に行っている場合

就活ならぬ終活という言葉を聞いたことがありますか?これは自分が亡くなった際に身の回りの整理や財産整理等を行うことで、簡単な終活といえば「遺言」です。

自分の死は予測できず、突然起こります。その際に残された家族が葬儀からお墓等を全て準備しなければならず、費用も高額なため満足がいく葬儀を行うことができないことも少なからずあります。

そのようなことが無いように最近では、自分自身が生きている内に葬儀を契約する「生前契約」というサービスもあります。このサービスは生前に契約を行い、葬儀費用を事前に負担しておくことで自分が亡くなった際にスムーズに相続や葬儀をすすめることができるというサービスです。
事前に亡くなった際にどのような葬儀プランが良いのか自分自身で決めることができ、さらに費用も一般的な費用と比べ半額近い金額になりますので、事前に準備を行いやすいというメリットがあります。

この生前契約は契約後、一括、分割で契約金を支払うシステムになっていますが、増税前に契約をしている場合はどうなるのでしょうか?

経過措置

増税が2019年10月1日からなのでそれ以前に契約をしていれば増税の対象外と思われるかもしれませんが、実は違います。

国税庁が消費税率に関する経過措置としてガイドラインを公開していますが、その中にはこのように書かれています。

26年指定日(平成25年10月1日)から31年指定日(平成31年4月1日)の前日までの間に締結した役務の提供に係る契約で当該契約の性質上役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないもので、当該役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割で支払われる契約(割賦販売法に規定する前払式特定取引に係る契約のうち、指定役務の提供※に係るものをいいます。)に基づき、31年施行日以後に当該役務の提供を行う場合において、当該役務の内容が一定の要件に該当する役務の提供
※ 「指定役務の提供」とは、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便益の提供に係る役務の提供をいいます。

【出典】国税庁:消費税率等に関する経過措置

簡単に説明すると、平成25年10月1日から平成31年3月31日までに契約を行っている場合は消費増税の対象外ということです。
現在も分割払いを行っている場合でも契約金額に増税の影響は出ることはなく増税前の8%が適用されます。

しかし、平成31年4月1日から増税前の平成31年9月30日までに契約したものは増税前でも消費税率10%が適用されますので注意しましょう。

まとめ

葬儀における軽減税率で注意すべき点は飲み物と返礼品です。
飲み物はケースバイケース、返礼品は2つの条件を覚えておくだけで葬儀にまつわる軽減税率をほぼ網羅できます。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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