製作物供給契約(飲食料品)は軽減税率が適用されるか?

食品工場

製作物供給契約とは、取引先から注文を受けて、自社の所有する材料や労働力を用いて完成品を提供する契約のことを言います。

果たしてこうした取引は、どういった場合に、軽減税率が適用されるのでしょうか?確認してみましょう。

1.製作物供給契約とは?

まずは、「製作物供給契約」の概要について解説していきます。似たような言葉でもある「製造物委託契約」との違いについても触れていくので、言葉の意味を明確にしていきましょう。

1-1.製作物供給契約

「製作物供給契約」は、当事者と取引先との間で締結されます。
取引先からの注文に対して、当事者は主に自社が所有する材料を用いて製作したものを供給、取引先はそれに対して報酬を支払うという契約です。

この契約には「請負」と「売買」という二重の性質を抱えています。取引先からの注文に対して製作を行うという観点では「請負」に該当しますが、製作物を報酬と引き換えに所有権を移転させている点では「売買」の性質を有します。

自社の所有する材料を用いて製作を行う」というのがポイントになります。

1-2.製造物委託契約との違い

「製作物供給契約」と似たような言葉に「製造物委託契約」があります。混同しやすい言葉ではありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

「製造物委託契約」は、取引先から製作物の注文を受ける点では変わりませんが、材料などに関しては、委託者(取引先)が供給を行います。
注文を受けた側は製作とその材料などの供給を受け、製作物を納品、報酬を受けるという仕組みになります。
この「委託者が材料などを供給する」というのがポイントで、製造物委託契約では製作物の所有権は原始的に委託者に帰属することになります。

製作物供給契約では、製作を請け負った側が自社の材料を用いて製作を行うため、製作物に関する所有権は製作を行なった側に帰属し、報酬と引き換えに所有権を移転させます。
製造物委託契約では、委託者(注文者)が材料なども含めて供給した上で、製作を依頼していることで、所有権は委託者(注文者)に帰属するという違いがあります。

「材料をどちらが用意するのか」「製作物が所有権が注文者/受注者のどちらに帰属するのか」という点が主なポイントになります。

2.製造販売と賃加工

飲食料品などを製作物供給契約によって注文/受注が行われた場合、製作物の所有権の移転は注文者からの報酬と引き換えに行われるため「売買」の性質を持ちます。
この場合に、軽減税率の適用はどのように判断されるのでしょうか?
飲食料品の売買に対して軽減税率が適用されるのは明らかですが、製作物供給契約ではどうなのかみていきましょう。

2-1.適用税率の違い

飲食料品が製作物供給契約によって作られた場合、適用される税率の違いとなるのは、製作物が「製造販売」or「賃加工」によって判断されます。

受注者が材料など自社で調達する際、材料などを売買によって調達し、製作を行うのを「製造販売」。
「賃加工」は要は下請け工場という意味で、材料などが無償で供給され、加工した製作物を納品することで加工賃を対価として受け取る形態になっています。

製作物供給契約が「製造販売」に当たる場合、これは飲食料品の譲渡に該当するため、軽減税率が適用されます。
また、「賃加工」に当たる場合、これは飲食料品の譲渡ではなく、役務の提供に該当するため軽減税率の適用外となります。

同じ製作物供給契約でも取引形態が「製造販売」「賃加工」なのかによって、軽減税率の適用可否が異なってきます。

2-2.判別方法

「製造販売」と「賃加工」のどちらに該当するかを判別するには、いくつかの基準が考えられます。
例えば、完成した製作物の所有権がどちらに帰属しているのかというのはわかりやすいです。所有権が受注した側に帰属しているのであれば、注文者は報酬と引き換えに所有権を移転させるため、これは「飲食料品の譲渡」に該当し、「製造販売」と判断できます。

この他にも製作物に日々などがあった場合の製造物責任を注文者と受注者のどちらかが取るのかといった観点からも判断することができます。

3.製造販売の場合

飲食料品の製作物供給契約を例に考えると、受注者が注文を受けた飲用水を製作するケースにて、製作に必要な材料(添加物など)や包装資材(キャップなど)を受注者が売買によって調達した場合、「製造販売」に該当します。
これによって「飲食料品の譲渡」に含まれることになるので軽減税率の対象となります。

4.賃加工の場合

受注者が製作に必要な材料(添加物など)や包装資材(キャップなど)を注文者などから無償支給されている場合、注文者から受け取る報酬は「加工料」になるため、「賃加工」に該当します。
この場合は、軽減税率の適用外となります。

まとめ

軽減税率は消費者だけの問題ではなく、製造者や小売店なども含めてあらゆる範囲に影響が及ぶ制度でもあります。契約形態によって軽減税率の適用範囲が変わるのも押さえておきたいポイントです。

今回の内容では製作物供給契約における「製造販売」には軽減税率が適用され、「賃加工」は適用外というのがまとめになります。
複雑なルールではありますが、よく理解しておきましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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