いろいろな会費や入会金の消費税まとめ
いろいろな会費の経理処理で、戸惑うことが多いのではないでしょうか。
会費を徴収する企業や団体の性質によって、または「会」の主旨によって、消費税が課税されたりされなかったりします。
会費・年会費や入会金などの消費税については国税庁が消費税基本通達を出していますので、それを参考にしながら会費の種類ごとに詳しく解説していきます。
目次
1.会費・入会金に消費税はかかる?
会費・入会金などに消費税がかかるか(課税されるか)どうかは、消費税の課税の原則を知るとわかります。
消費税の課税対象は、
- 国内の取引
- 事業者が事業として対価を得て行う取引
- 資産の譲渡、貸付け、役務の提供を行う取引
の3条件すべてに当てはまる取引です。
したがって、ある会費が課税されるかどうかを判断するときは、その会費が上記の3つの条件をクリアしているかどうかを確認します。特に2番目の「事業者が事業として対価を得て行う取引」であるかがポイントです。
例えば、企業が地域の町内会に加入し町内会費を支払っているとき、その町内会費は課税されません。町内会は事業者ではなく、町内会費は事業の対価ではないからです。
それでは会費の種類ごとに消費税がかかる(課税)か消費税がかからない(不課税)かを見ていきます。そして、課税される理由、もしくは不課税になる理由も紹介します。
2.消費税がかかる場合(課税)
まずは消費税がかかる(課税される)ケースをみていきます。
(1)セミナーや講座などの会費
各種のセミナーや講座などの会費は、講演や講義の役務提供に対する対価であり、受講料としての性質がありますので、課税されます。
(2)ゴルフクラブや宿泊施設などの会費
企業が、ゴルフクラブや宿泊施設、レジャー施設、体育施設、遊戯施設など(以下、ゴルフクラブなど)の会員になり、福利厚生として社員に利用させているとき、企業がゴルフクラブなどに支払う会費や入会金などには課税されます。
企業はゴルフクラブなどから資産の譲渡などを受けているわけではなく、資産の譲渡などを受けているのは企業の社員たちです。それでも企業が消費税を負担しなければなりません。
それは、ゴルフクラブなどからすると、企業に資産の譲渡などを行った対価として会費などの支払いを受けているからです。
(3)クレジットカード年会費
クレジットカードなどの会員がカード会社に支払う年会費は課税されます。名目は年会費ですが、実質的に手数料の性質があるからです。
手数料はカード会社の事業収入になり、年会費とサービスの間に対価関係もあるので課税されます。
3.消費税がかからない場合(不課税)
続いて、消費税がかからない(不課税となる)場合です。
※「不課税」とは、つまり「消費税の対象外」という意味です。似たものに、「非課税」がありますが、こちらは、本来、課税取引ではあるが、課税になじまない、あるいは、社会政策的配慮から課税しないとしているものです。たとえば、土地の譲渡や、学校の授業料などです。
(1)同業者団体の会費
同業者団体に加盟している企業は、団体から会費を徴収されます。この場合、不課税になることが一般的です。
同業者団体は加盟企業に対してさまざまなサービスを提供しますが、会費がその対価になっていないからです。
たとえば、商工会議所・商工会の会費や、弁護士会・税理士会などの会費が該当します。
国税庁は、同業者団体に支払う会費を、その団体を運営するために必要な費用の分担金とみなしています。したがって資産の譲渡などの対価の性質がないわけです。
さらに国税庁は同業者団体に対し、加盟企業などに「会費は不課税である」との旨を通知するよう指導しています。
同業者団体への入会金も原則、不課税です。
ただ、「会費」という名目でありながらその実態が、同業者団体が発行する出版物の購入費や同業者団体が実施する講演の参加料の対価とみなされる場合は課税対象になります。
(2)同業者団体主催のゴルフコンペの参加費
企業の経営者や社員が、同業者団体主催のゴルフコンペに出場した場合、その参加費(会費)は不課税です。
一見すると、ゴルフコンペの参加費はイベントの入場料のようなもので、課税対象のように感じるかもしれません。しかし国税庁は、同業者団体主催のゴルフコンペは、同業者団体への会費(不課税)のような性質を持つと考えているのです。
ゴルフコンペで賞品を受け取ったとしても、それは参加費の対価ではありません。なぜなら参加費を支払っても賞品をもらえないこともあるからです。
またそもそも同業者団体主催のゴルフコンペには事業性がありません。
(3)公共施設への負担金
国や自治体などは、公共施設を新設したり改良したりして費用が必要になるとき、企業に負担金を求めることがあります。このときの負担金は不課税です。
仮にその公共施設が完成したり改良されたりして、負担金を拠出した企業にメリットが生じたとしても、負担金とメリットの間に対価関係が認められないからです。
したがって、公共施設への負担金に、明白な対価関係が認められる場合は課税されます。例えば、公共施設が完成したり改良されたりすることで、専用側線利用権や電気ガス供給施設利用権、水道施設利用権、電気通信施設利用権などが、負担金を拠出した企業に設定される場合などが、それに該当します。
この場合「負担金」=「これらの権利の獲得目的の出費」=「対価関係」とみなされるからです。
(4)町内会費、自治会費、サークル会費など
企業や個人が町内会や自治会やサークルに加入する場合の会費は、消費税がかかりません(不課税)。
ただ「サークル」という名称でありながら、その団体が収益事業を営んでいて、会費とサービスの提供に対価関係があれば課税されます。
町内会や自治会も同じルールが適用されますが、町内会と自治会が収益事業を営むことはまれでしょう。
(5)生協の出資金(会費ではない)
生協のスーパーマーケットを利用するときは原則、生協への加入が求められ、そのとき出資金の拠出が必要になります。出資金は不課税です。
スーパーマーケットは収益事業ですが、出資金は加入を取りやめるときに戻ってくるからです。つまり出資金とスーパーマーケットでのサービスの間に対価関係はありません。したがって課税されないのです。
4.その都度の判断が必要な場合
同じ団体が実施していても、ケースによって、消費税がかかる(課税)、消費税がかからない(不課税)がわかれる場合があります。
その都度判断が必要な場合をみていきます。
(1)後援会への会費や寄付金
後援会への会費や寄付金は、一概に課税・不課税の判断ができません。会費や寄付金という名目ではなく、事業性や対価関係などの実態をみます。
企業が自社の事業に関係しない後援会などの団体に金銭を寄付したり、物品を寄贈したりして、なおかつ対価を得なければ不課税の寄付金とみなされます。
一方で、政党の党費や、政治家の後援会の会費や、政治資金パーティー券の課税・不課税のルールは複雑です。
政党の党費や政治家の後援会の会費は、不課税の寄付金には該当しません。それはいずれも定期的に納入する金銭であり、政党の規約などに基づいた債務の履行として行うものだからです。政党の党費や政治家の後援会の会費は交際費に該当し課税対象となります。
政治資金パーティー券はさらに複雑です。例えば企業が10枚(10人分)買って、実際に参加した人が3人だったとします。この場合、3人分のパーティー券(3枚)の費用はパーティーでの飲食などの対価なので課税されますが、残りの7枚分の費用は不課税の寄付金に該当します。
(2)新年会、忘年会、祝賀会、同窓会、結婚披露宴などの会費
プライベートで催される新年会、祝賀会、同窓会、結婚披露宴の会費は、事業性も対価関係もないので不課税となります。
ただ、例えばある企業が新年会を開き、取引先企業の社員を会費制で招待したとします。その会費を支払った場合は、課税されます。それは会費とパーティーでの飲食に明白な対価関係があり、なおかつ事業性があるからです。
(3)不明な場合は主催者に確認を
消費税が課税か不課税か不明な場合は、主催者の事務局などに確認してください。
本来、不課税であるのに、誤って課税対象にして、消費税を控除していると、税務調査で指摘されかねませんので、ご注意ください。
まとめ
会費に消費税が課税されるかどうかは、事業性と対価関係で決まります。
「会」を催す団体が町内会や同業者団体などの場合、事業性がないので会費も不課税となります。
事業性や対価関係があれば、名目が会費となっていても課税されます。
後援会への支払いは、不課税の寄付金とみなされるかどうかで課税・不課税が決まります。
よくある質問
会費に消費税はかかる?
会費に消費税がかかるかどうかは、事業性があるか、対価関係があるかどうかで決まります。
「会費」という名称だけでは判断できませんので、会費の支払いで得られる対価があるのかどうか注目する必要があります。
会費の消費税の仕訳を間違えるとどうなる?
本来は不課税のものを、誤って課税として控除した場合、税務調査で発覚すると追徴課税を受けます。
本来は課税のものを、誤って不課税として控除しなかった場合、特に問題はありませんが、事業者が損をすることになります。