商標登録や特許出願をする際の消費税に注意

特許 商標

企業が、製品やコンテンツの商標登録や特許を出願するとき、特許事務所に手続きを依頼すると思います。
このとき、特許事務所への報酬支払いの処理に注意してください。課税と非課税が混在するからです。

「登録商標の出願などは役務の提供だから、当然、消費税が課税される」と覚えているだけでは、正しい経理処理はできません。特許庁に支払う分は非課税になるからです。

もし特許事務所から届いた請求書に総額しか書かれていない場合、経理担当者が特許事務所に内訳を尋ねたうえで、課税と非課税に分けることになります。

1.印紙代は課税されないが、特許事務所への報酬は課税される

商標登録や特許などの出願の報酬に関する消費税のルールは次の2つです。

  • 印紙代(特許庁への支払い分)は課税されない
  • 特許事務所への報酬は課税される

したがって特許事務所から届いた請求書に課税・非課税が書きわけられていなかったら、経理担当者が特許事務所に請求代金の内訳を照会しなければなりません。そのうえで、課税仕入れと非課税仕入にわけることになります。

2.商標登録の流れを追って課税/非課税を解説

それでは企業が活用することが多い商標登録の出願の流れを追いながら、そこで発生する経費をみてみます。

(1)ステップ1:出願

商標登録をすると、商標権を得ることができます。商標登録した出願人は商標権を独占でき、そこから経済的な利益を得ることができます。
商標登録のステップ1は出願です。出願とは、必要書類を特許庁に提出することです。

出願時に発生する費用のうち、「出願基本手数料」として印紙代がかかりますが、これは非課税です。
その他の費用には「出願の手数料」「調査手数料」「電子化手数料」「追加検討費用」などがありますが、これらはすべて課税されます。

(2)ステップ2:意見書や補正書の作成

商標登録の出願を受けた特許庁は、出願内容の公開や方式審査、実体審査などを行います。
出願内容を公開することで、第三者が同じ商標登録をしないで済むようになります。

方式審査とは、手続きや形式に不備がないかどうか調べるもので、不備があれば特許庁から出願人に補正命令が下されます。
実体審査は、方式審査をクリアしたものについて、商標登録できるかどうかを審査します。実体審査が拒絶理由に該当すると、特許庁は出願人に拒絶理由通知を送ります。

補正命令や拒絶を受けると、そのままでは商標登録されません。そこで補正命令が出されたら「手続補正書」を作成して提出します。拒絶には「意見書」を提出します。これらの書類で特許庁に再考してもらうわけです。

特許事務所が手続補正書や意見書を作成した場合、その手数料を出願人の企業に請求します。そのいずれも課税されます。

(3)ステップ3:登録

実体審査をクリアした商標登録出願については、審査官が登録査定をします。登録査定をパスすると、次は審判官が登録審決を行い、それをパスすると登録することができます。
この段階ではまだ「登録することができる」だけで「登録はまだ完了していません」。

登録できるようなった段階で出願人が登録料を支払うことで登録が完了し、商標権を獲得できます。
このとき登録料として印紙代がかかり、これは非課税です。

登録料を支払うと同時に、特許事務所は成功報酬や納付手数料などを出願人の企業に請求します。これらはいずれも課税されます。

(4)ステップ4:更新

商標権の存続期間(有効期限)は10年です。ただ更新手続きをすれば、継続して商標権を独占できます。更新料として印紙代がかかり、これは非課税です。

特許事務所に更新手続きを依頼すると、更新料の納付手数料を請求され、これは課税されます。

(5)ステップ5:譲渡

商標権は他者に譲渡することができます。商標権の売買は課税されます。

3.そのほかの特許事務所関連の経費

企業が特許事務所に依頼する業務には、商標登録のほかに、特許、実用新案登録、意匠登録の各出願があります。

3-1.原則は商標登録と同じ

それぞれに「出願時料金」や「審査請求」「登録時料金」があります。

ただここでも非課税は印紙代(特許庁への支払い分)だけなので、例えば商標登録関連の経理処理さえ覚えてしまえば応用できます。

3-2.特許出願40万~50万円、商標登録5万~6万円が目安

特許事務所への報酬は、最も手間がかかる特許出願が大体1件40万~50万円ほどです。商標登録は最も安く、5万~6万円ほどです。
実用新案登録は15万円程度、意匠登録は10万円程度です。

ただしこれらの金額はあくまで目安ですので、特許事務所によって異なります。

まとめ

商標登録出願から更新までの内容を箇条書きでまとめるとこうなります。

  課税 非課税
ステップ1:
出願
・出願の手数料
・調査手数料
・電子化手数料
・追加検討費用
・出願基本手数料の印紙代
ステップ2:
意見書や補正書の作成
・意見書や補正書を作成する費用  
ステップ3:
登録
・成功報酬
・納付手数料
・登録料の印紙代
ステップ4:
更新
・納付手数料 ・更新料の印紙代
ステップ5:
譲渡
・商標権の売買  

商標登録や特許などの出願の流れ頭に入れておくと、費用の種類も覚えやすいでしょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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