交際費の消費税は課税/非課税? インボイスは必要?

交際費

交際費は法人税の計算上、損金算入限度額が設定されていたりと、考慮すべき点が多い科目です。

「交際費」と一口に言ってもその支出の内容は多岐に渡り、消費税の課税区分も、課税/非課税/不課税と様々です。

交際費の課税区分について要点を整理していきます。また、課税仕入れに該当する場合にインボイスが必要かどうかも確認していきます。

1.交際費の消費税の課税区分

最初に、日常的に交際費に計上される様々な取引の、消費税上の課税区分を見ていきましょう。

(1)接待飲食費・接待ゴルフ

最もオーソドックスな交際費として日常的に発生するのが、取引先の相手との接待飲食費や、接待ゴルフの費用ではないでしょうか。
これらの交際費の消費税は課税となります。

ただし、接待ゴルフ費用については1点だけ注意が必要です。
ゴルフプレー代に含まれるゴルフ場利用税は消費税が不課税となるため、領収書の「ゴルフ場利用税」の項目を見落とさないよう注意しましょう。

もし領収書にゴルフ場利用税の金額が明記されていない場合はどうすれば良いでしょうか?
この場合、ゴルフ場利用税の金額も含めてゴルフのプレー代として処理して良いこととなっています。
要するに全額課税仕入れにしてOKということです。

(2)ゴルフクラブの入会金、会費

まず、ゴルフクラブの会費は純粋に「サービスの提供」としての対価と見なされるため、問題なく課税仕入れとなります。

少し複雑なのがゴルフクラブの入会金です。
入会金は脱会時に返還されるかどうかで取り扱いが変わってきます。

  • 返還される…不課税
  • 返還されない…課税

入会金が返還される場合は単なる「預け金」という性格の支出であるため、対価性のない支出として消費税は不課税に区分されます。

(3)贈答品

お菓子類や酒類、雑貨、地方の特産品、生花、タオルなど、取引先に贈答品を購入するのも日常的に発生する交際費です。
これら贈答品は、購入時に消費税が課税されているものは問題なく課税仕入れとなります。

注意が必要なのは、商品券、ビール券などの物品切手等を贈答品として購入した場合です。
これら物品切手等は、購入時が非課税、自分で使用した時点で課税仕入れとして処理するのが原則です。

しかし、贈答した場合は自分で使用していないため、課税仕入れとなるタイミングがありません。
要するに贈答用の物品切手等は、非課税仕入として処理すると覚えておきましょう。

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(4)慶弔費

取引先の冠婚葬祭に出席した際などに支出するご祝儀や香典、その他様々な場面で祝金や見舞金などを支払うこともあるでしょう。
これら現金を直接支出する交際費は、消費税上、不課税取引とされます。

ただし、見舞いに持参する果物や葬式に出す花輪など、購入時に消費税がかかる物を購入して渡す場合は課税仕入れとなります。

(5)旅行の招待費用

取引先を旅行に招待した際に、航空券や宿泊費を負担した金額は交際費に計上されます。
これら旅行の立替費用は課税仕入れとなります。

ただし、旅行先が海外である場合には、国際線の航空券や海外の宿泊費などは国外取引となり、不課税仕入れになります。

なお、温泉旅行の場合、入湯税は不課税となる点に注意が必要です。
ただし、入湯税は自治体によっては徴収されないケースもありますので、領収書に入湯税の記載がなければ、全額、課税仕入れとなります。

(6)渡切交際費

渡切交際費とは、使途や金額を問わず、役員または従業員に現金で前渡しする交際費のことを言います。
渡切交際費は後日の精算も行いません。

渡切交際費を活用する具体例として、接待の相手方にタクシー代として現金を渡すようなケースが挙げられます。
このような場合領収書をもらうことができないため、渡切交際費として処理するしかありません。

こういった使途が明らかでない渡切交際費は給与と同様の性質と判断され、不課税取引に該当します。

(7)チップ

日本ではあまり一般的な習慣ではありませんが、ゴルフの際にキャディにチップを渡したり、運転手にチップを渡したりする方もいるかもしれません。

しかし、このチップの支払いを交際費に計上していたとしても、消費税上は不課税仕入れに該当します。
チップの支払いはキャディや運転手の「サービスの提供の対価」とは見なされず、サービスの提供とは別途で支払う対価性がない取引と見なされてしまうためです。

(8)野球場のシーズン予約席

接待用に野球場のシーズン予約席を購入した場合、「野球を観戦させるというサービスの提供」と捉えられるため、その費用は課税仕入れとなります。
試合観戦ごとに入場券が発行されますが、これは物品切手等には該当せず、シーズン予約者であることの証明としての整理券的な取扱いになります。

課税仕入れの計上時期は実際に観戦する日ごとに計上しても良いですし、開幕日に一括して計上することも認められています。

課税・非課税・不課税のまとめ

最後に、課税仕入れ・非課税仕入れ・不課税仕入れの区分を表にまとめておきます。

課税仕入れ ・接待飲食費
・接待ゴルフ費
・ゴルフクラブの会費
・ゴルフクラブの入会金(返還されない場合)
・通常の贈答品
・果物、生花、花輪などの慶弔費
・国内の旅券、航空券、宿泊券
・野球場のシーズン予約席
非課税仕入れ ・商品券、ビール券などの物品切手等の贈答品
不課税仕入れ ・ゴルフ場利用税
・ゴルフクラブの入会金(返還される場合)
・入湯税
・ご祝儀、香典、見舞金などの現金による慶弔費
・海外の旅券、航空券、宿泊券
・渡切交際費、使途不明金
・チップ

2.交際費の課税仕入れのインボイス対応

交際費のうち、「課税仕入れ」に分類されるものについては、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができますが、その際に、原則的にインボイスが必要になります。

支払先からインボイス(適格請求書)を発行してもらうようにしますが、一部のケースではインボイスの発行が困難なケースもあるでしょう。

インボイス制度では、インボイスがなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存するのみで、仕入税額控除を適用できる、いくつかの特例があります。

(1)3万円未満の公共交通機関の特例

交際費でもっともよく利用するインボイス特例が、こちらの「3万円未満の公共交通機関の特例」です。

電車・バス・船舶の切符・旅券の購入について、1回の取引の金額が税込み3万円未満であれば、インボイスは不要です。その代わり、帳簿に、交通機関の名称と、「公共交通機関の特例対象」であることを記載します。

1回の取引で3万円未満が対象

「税込み3万円未満」という基準について、1回の取引で判断します。たとえば、東京から名古屋までの新幹線代14,000円の切符を、3人分まとめて購入した場合は、合計42,000円となりますので、公共交通機関特例の対象外です。

(2)1万円未満の少額特例

2年前(2期前)の課税売上高が1億円以下の場合に利用できる特例が、「少額特例」です。

対象は特に限定せず、1回の取引の金額が税込み1万円未満であれば、インボイスは不要です。その代わり、帳簿に、取引先の氏名・名称と住所・所在地を記載します。

適用対象者は、正確には、次のいずれかに当てはまる場合です。

  • 2年前(2期前)の課税売上高が1億円以下
  • 1年前(前期)の上半期の課税売上高が5,000万円以下

適用できる期間が決まっていて、2023年10月1日~2029年9月30日の6年間です。

1回の取引で1万円未満が対象

「税込み1万円未満」という基準について、1回の取引で判断します。たとえば、税込み6,600円と税込み7,700円の商品について別々の時期に購入しても、一回の請求で合計額を支払っているのであれば、1万円以上ですので、適用できません。

3.交際費の課税仕入れの区分判定

課税売上高が5億円を超えるか、もしくは課税売上割合が95%に満たない場合、課税仕入れを「課税売上対応」「非課税売上対応」「共通対応」に区分する必要が生じます。

交際費についてまずは原則からお伝えすると、通常は共通課税仕入に区分することになります。
ただし、その交際費が建設現場で支出した交際費など、使徒が明確に特定できる場合は、課税売上対応として支出して良いとされています。

判断が難しいケース

取引先の相手との接待飲みは、課税売上対応と共通対応、どちらに計上するケースも有り得ます。
例えば会社の取締役同士がより関係性を深めるために行った接待交際費は、共通対応となると考えられます。

しかし、例えば商品の営業担当者が、その商品の販売向上を目的として取引先の担当者と行う接待交際費については、課税売上対応と区分するものと考えるのが自然です。

このように接待の相手や目的に応じてどちらの区分になることも考えられるため、安易に決めつけずにケースバイケースで考えた方が良いでしょう。

4.法人税の交際費損金不算入と消費税の関係

法人税では、交際費の損金算入ラインは800万円を上限と規定されています。

このような上限規定は消費税には設けられていないため、その点は何も考慮する必要はありません。
消費税はあくまで「課税」「非課税」「不課税」等の区分を気にすれば良く、勘定科目はあまり意味を成さないのです。

ただし、法人税上の800万円の上限判定の際に、消費税の税込経理、税抜経理による差が生じる点には留意してください。
この場合、税込経理方式の場合は税込金額で、税抜経理方式の場合には税抜金額で判定します。

要するに税抜経理方式の方が多少有利に働くと覚えておきましょう。

5.飲食費の5,000円ラインと消費税の関係

先ほど解説した通り、消費税の計算上は勘定科目の違いを意識する必要はありません。

しかし、やはり法人税の交際費損金算入限度額800万円の関係で、消費税の税抜・税込を意識すべき部分があります。
それは飲食費の一人当たりの金額の判定です。

飲食費のうち、一人あたりの金額が5,000円以下の場合は交際費に計上しなくてよいという通達が出されています。
この5,000円の判定についても、税込経理方式を採用しているか、税抜経理方式を採用しているかで損得が生じます。

こちらも税抜経理方式を採用している方がやや得に作用すると覚えておいてください。

まとめ

日常的に交際費に計上する費用の消費税の課税区分について、課税/非課税/不課税のどれに当たるのか、しっかり押さえておきましょう。

課税仕入れに当たる場合、仕入税額控除を受けるためにインボイスが必要です。ただし、3万円未満の公共交通機関特例、1万円未満の少額特例を適用すると、インボイスは不要で、帳簿保存のみで、消費税を控除できます。

仕入区分については原則共通対応ですが、場合によっては課税売上対応となるケースもあります。
接待交際費一つ一つの仕入区分を現実に即して判断するのは現実的ではないかもしれませんが、「交際費=共通対応」と思い込まないことが大切です。

最後に、消費税法上は損金算入限度額などの規定はありません。
しかし、法人税における交際費の損金算入限度額の計算上は税込経理方式・税抜経理方式の差で損得が生じる点は意識しておく必要があるでしょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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