報酬の源泉徴収税額計算ツール【フリーランス・個人事業主向け】
フリーランス・個人事業主・副業の方向けの、報酬の源泉徴収の税額計算ツールです。[続きを読む]
フリーランス・個人事業主・副業会社員、特に、ライター・デザイナーなどにとって、源泉徴収の仕組みやルールは必須の知識です。
この記事では、フリーランスや副業の方向けに、源泉徴収について図解でわかりやすく解説します。
目次
フリーランスや副業で仕事をするとき、取引先から「源泉徴収税を差し引いてお支払いします」と言われて、何のこと、と思ったことありませんか?
また、クラウドワーカーがよく利用する、クラウドワークスのようなサイトでも、請求書には源泉徴収税というものが記載されています。
源泉徴収税とは、先払いの所得税のことです。フリーランスや副業で仕事をして納品すると、取引先の会社から報酬が支払われます。その際に、所得税を差し引いて支払われます。
このように、本来の報酬額から、所得税を引いて支払うことを「源泉徴収」といいます。引かれる金額は、報酬、つまり売上の約10%です。そして、取引先の会社は、預かった所得税を代わりに税務署に納税します。
「源泉徴収税」という税金があるわけではないのですが、この一連の流れが、源泉徴収の仕組みであり、それに、税をつけて、「源泉徴収税」と呼ばれたりしています。「源泉所得税」と呼ばれることもあります。
売上の10%も税金をとられるなんて、損をしているのかなと不安に思うかもしれませんね。でも、そんなことはありませんので、ご安心ください。
フリーランスや副業をやっている人は、1月1日から12月31日までの1年間の所得について、次の年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告をします。所得というのは、売上から経費を引いたものです。売上から経費をちゃんと引いて、確定申告をすることで、本来の所得税の金額が決まります。
そして、源泉徴収された金額、つまり、先払いした所得税が、本来の所得税の金額より多かったときは、所得税を払いすぎていますので戻ってきます。これを、還付といいます。一方、源泉徴収された金額が、本来の所得税の金額より少なかったときは、足りていませんので、追加で税金を支払います。
結果的に、支払う所得税は同じになりますので、損得はないことになります。
たいてい、多く払いすぎていますので、還付されることのほうが多いです。一概にはいえないのですが、売上の全部を源泉徴収された場合、所得600万円くらいが基準だと思ってもらえれば良いでしょう。
源泉徴収の制度は、どちらかというと、国が税金をとりやすくするためにあります。
源泉徴収の目的の1つ目は、確実に税金をとるためです。個人より、会社のほうが納税の事務処理に慣れているからです。また、毎月納税されたほうが、税収が安定するからです。会社は、個人から預かった所得税を、毎月ごとに納税します。国からすると、毎月、納税されるので、税金の取りのがしがないというわけです。
税金を毎月払うと、一回で払うより負担が減るので、税金をとられる個人にもメリットがあるという意見があるのですが、先払いすることを考えると、メリットにはならないと思います。
源泉徴収の目的の2つ目は、フリーランスや個人事業主などに、確定申告を促すためです。前もって税金を多めにとっておいて、確定申告をしないと還付されない制度であれば、みんな、還付をしてもらいたくて、積極的に確定申告をするようになります。そうすると、国としては、個人の所得を把握できます。
源泉徴収は必ずするわけではなく、支払う側の立場や、業務の内容によって、必要なケースと不要なケースがあります。
まず、支払う側の立場からみると、必要なケースは、法人から個人へ報酬を支払う場合です。
逆に、それ以外のケースでは不要です。個人から個人へ支払う場合は源泉徴収は不要です。ただし、給料の支払いをしていない場合です。ほか、法人から法人へ支払う場合、個人から法人へ支払う場合も不要です。
次に、源泉徴収が必要な業務は一部に限られています。
他にもありますが、一般的なのはだいたいあげています。
ここは重要ポイントですが、源泉徴収が必要かどうかは、職業ではなく、どんな業務をするかで決まります。たとえば、プログラマーがコーディングをするときは、源泉徴収は不要です。でも、プログラミングに関するブログ記事や書籍の執筆をするときは、原稿料として源泉徴収が必要になります。
源泉徴収の金額は、以下のとおりです。
※所得税10%に、東日本大震災の復興特別所得税0.21%がプラスされています。
※海外居住者など、一部例外があります。
それでは、ここで、実際に源泉徴収の税額を計算して、請求書に記載してみましょう。
税込みと税抜き、どちらをもとに、源泉徴収の金額の計算をするかですが、
税抜きの報酬が10,000円で、消費税が1,000円だとします。源泉徴収の所得税の金額は、税抜きの報酬10,000円に10.21%をかけて、1,021円です。1円未満の端数がある場合は切り捨てます。すると、支払われる金額は、9,979円となります。
請求書には、上記のように、報酬金額、消費税、源泉所得税の金額を記入します。合計が、最終的に支払われる金額です。
たとえば、報酬が税込みで11,000円とだけ記載されていれば、源泉徴収の所得税の金額は、税込みの報酬11,000円に10.21%をかけて、1,123円です。
請求書は、上記のように、報酬金額、源泉所得税の金額、合計を記入します。さきほどの、税抜き金額をもとに計算したときよりも、合計(手取り)が102円少なくなりました。
税込み、税抜き、どちらの報酬金額をもとに源泉徴収を計算しても、確定申告すれば、最終的に所得税の金額は同じになります。ただ、経営的な観点では、手取り額を多く残せる、税抜きの報酬額をもとにした計算のほうが有利だと思います。
経営の格言として、「支払は遅く・回収は早く」というものがあります。税金は、早く払ってもまったくメリットがありませんので、なるべく後に回しましょう。
源泉徴収計算ツールを公開していますので、ご自由にご利用ください。
一般的なフリーランス・個人事業主は、あまりないと思いますが、1回で支払われる報酬金額が100万円を超えるときは、次のような計算になります。
源泉徴収について、フリーランス・個人事業主、副業の人がやることです。
納品したタイミング、または毎月一回、取引先に請求書を送付すると思いますが、源泉徴収税を自分で計算して請求書に記入しましょう。はじめての取引のとき、取引先から言われる前に、源泉徴収を記載できると、この人はよくわかっている人だなと思われて、信頼が増すかもしれません。
次に、請求書を送付したら、源泉徴収税額を記録します。取引先ごとにわけて、日付、報酬の金額、源泉徴収の税額を記入します。確定申告で必要になりますので、必ず記録するようにしましょう。紙の帳簿につけてもいいのですが、Excelか、会計ソフトを使うと、非常に便利です。
そして、確定申告のとき、申告書に源泉徴収税額という欄がありますので、ここに、すべての源泉徴収の税額を合計した金額を記入します。これで、所得税が還付されるか、追加で支払うか決まります。
ちなみに、取引先から支払調書をもらうので、それを写せば良くないですか?と考える人もいるかもしれません。支払調書とは、下図のようななもので、報酬を支払った会社が作成するものです。
ただ、支払調書は、取引先が税務署に提出するもので、支払先の個人に対して発行義務はありません。支払調書をもらえないこともあります。
また、支払調書の金額が間違っていることもあります。所得税の正確な申告と納税の責任は本人にあります。源泉徴収税額は必ず自分で記録するようにしましょう。
源泉徴収について、よくある質問をいくつかあげておきます。
Q.手取りを増やしたいので、源泉徴収をしないで欲しいと取引先に依頼することはできますか?
A.源泉徴収は、支払う会社側の義務ですので、源泉徴収をしないことはできません。源泉徴収をしないと、取引先が税務調査で追徴課税を受けることになります。あなたが、正確に確定申告をして納税したとしても、取引先の源泉徴収の義務は別に発生しています。実際、ある会社では、税務調査で源泉徴収漏れを指摘され、追徴課税されています。
Q.源泉徴収が必要な業務をしていますが、取引先からは源泉徴収をされていません。大丈夫でしょうか?
A.源泉徴収は、支払う会社側の義務ですが、仮に源泉徴収されていなくても、あなたが確定申告を正しくすれば、あなた自身には問題はありません。ただ、後日、取引先が追徴課税をされる可能性がありますので、取引先に連絡して源泉徴収をする形にしてもらったほうが良いでしょう。あなたのせいで、損をしたといわれて、トラブルになるのは避けたいものです。
Q.確定申告をするのですが、取引先が支払調書を発行してくれないので、いくら源泉徴収されたかわかりません。
A.残念ながら、取引先には支払調書を発行する義務はありません。発行してくれる会社も多いですが、税務署宛てに発行したものを、善意でそのまま送ってくれているだけです。年間5万円以下の原稿料やデザイン料については、支払調書を発行する必要もありません。解決策としては、過去の請求書を見て合計するか、口座の振込額から逆算するとかでしょう。最悪、税務署に相談すれば、なんとかなる可能性もあります。
Q.クラウドワークスを利用しています。報酬はクラウドワークスから振り込まれ、システム利用料も引かれていますので、発注者に源泉徴収してもらう必要はないと思うのですが、どうなのでしょうか?
A.クラウドワークスは、発注者と受注者、ワーカーを仲介しているだけであり、業務の契約は、発注者と受注者の間で直接されています。よって、発注者側に源泉徴収の義務があります。システム利用料は、仲介手数料のようなものであり、源泉徴収とはまったく別の内容です。
ちょっとややこしいので、図で見てみましょう。クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトでは、発注者とクラウドワーカーを仲介しているだけです。
ですので、業務契約は、発注者とクラウドワーカーの間で、直接されます。となると、発注者は支払い時に、源泉徴収の義務があります。
ちなみに、振り込まれるときに引かれるシステム利用料というのは、クラウドワーカーがシステム会社に、仲介手数料を払っているのと同じです。
A.フリーランスや副業で仕事をして納品すると、取引先の会社から報酬が支払われる際に、所得税を差し引いて支払われます。
このように、本来の報酬額から、所得税を引いて支払うことを「源泉徴収」といいます。
A.1回の支払いが100万円以下の場合、一律で10.21%。1回の支払いが100万円を超えた場合、100万円を超えた部分は、20.42%になります。
本記事と同じ内容を動画でも解説しています。