一体資産とセット販売の違い、まぎらわしい軽減税率
軽減税率の導入はさまざまな混乱を引き起こしていますが、「一体資産」と「セット販売」の相違もそのひとつといえます。 両…[続きを読む]
一体資産の条件をうまく使いこなせば、本来10%の税率のものを、食品と組み合わせることで全体を8%にして販売することが可能です。これにより、消費者に対して、2%分低い価格で販売できることになり、価格優位になることができます。
たとえば、5000円のお米と、2500円の米びつのセット販売だと、実質米びつの税率は8%が適用されているのではないでしょうか?あるいは、全く関係ない商品を組み合わせて、5000円のお米と2500円の洋服の販売の場合にはどうなのでしょう?
現状、組み合わせるものに法的な制限はないものの、今後の動向が注目されます。
目次
一体資産の販売を希望する事業者のために、定義や該当する例などを紹介します。
一体資産とは、食べ物とそうでないものをセット販売し、一つの資産として販売することです。価格もセットの通算として表示されます。
2019年10月1日から消費税が原則10%に引き上げられましたが、一部の商品は条件付きで現行の8%のままとなっています。消費税が上がらないケースは主に飲食物が当てはまるため、スーパーや小売業界で一体資産が注目されているようです。商品にかかる消費税が8%のままの場合、軽減税率と呼ばれます。
しかし飲食物とそうでないものを単純に組み合わせただけでは、軽減税率8%になるわけではありません。正しい組み合わせを把握しないと軽減税率なしの10%でセット販売することになり、お得感を出せないので注意しましょう。
一体資産に当てはまる代表例に、おもちゃ付きのお菓子が挙げられます。事業者の多くも子供の頃に店舗を訪れ、お菓子に着いたおまけのおもちゃで遊んだ記憶があると考えられます。また、コーヒーとカップが一体になったコーヒーギフトセットなども一体資産と認められます。
しかしセット販売にしても一体資産と認められない例もあります。お菓子3パックにおもちゃ1個を組み合わせて1,000円というサービスを展開していたとしても、お菓子とおもちゃが別々に置かれ、それぞれの価格が公表されている場合は一体資産にできません。この場合はお菓子にのみ軽減税率が適用され、おもちゃは10%の消費税がかけられます。
また、一体資産に軽減税率8%が適用されるためには、次の条件を満たす必要があります。
家具にちょっとしたお菓子をつけるように食べ物以外の部分の方が高いケースでは軽減税率が適用されません。
子どものいるお客さんなどにお得感を提供したくても、上記の条件を無視しないことが大切です。
セット販売の中には、一体資産に当てはまるか分からない例も想定されます。たとえば、お菓子3パックとおもちゃ1個の組み合わせで1,000円というサービスを提供する店で、お菓子とおもちゃが別々に置いてあり、それぞれの価格が非公表になっている場合です。
「価格が公表されていない限り、おもちゃはお菓子と組み合わせても軽減税率が適用される」と主張する事業者もいるでしょう。しかし「別々に置いてある以上、一体資産にはならない」という意見も考えられます。ただ、セット商品の構成要素が個別価格もないまま別々にあると、揃えるのに余計な移動を強いられます。利便性の観点からなるべくセット商品の構成要素はまとめておいた方がいいでしょう。
セット販売の方法によっては、お菓子についているおもちゃなどが景品とみなされるケースもあります。一般的に食品に伴ったものが取引に付随する提供とみなされると景品規制に引っかかることがありますので注意しましょう。
景品とみなされないためには、「プレゼント」「○○を買えば××がついてくる」「○○無料」などと記載しないことです。このように表現してしまうと、事業者が組み合わせの一部だと思っていた商品は、ほかの構成商品から独立したものとみなされ、取引に付随する提供をしているだけとなり、景品規制対象となります。
商品は誰の目から見ても分かるように、組み合わせた状態で販売している必要があります。
軽減税率で一体資産が注目されている今、食品とそうでないものによる様々な組み合わせを試したい事業者が多いでしょう。しかし組み合わせがお客さんのニーズにかなうものでなければ売れる可能性は低いと考えられます。以下を参考に一体資産を具体的にイメージしましょう。
一体資産をお得に販売するには、対象の食べ物に関連したものを伴うことがセオリーです。お米に対する米びつ、粉ミルクとおむつのお試しセット、調味料セットと軽量カップ1つなどの組み合わせが考えられます。もちろんお米5,000円に対し米びつ2,400円という風に、食べ物が全体価格の2/3以上になるよう配慮しましょう。
このような一体資産を販売することにより、食べ物以外の商品を8%という軽減税率で売れます。消費者にとっては食べ物以外も軽減税率で買えるお得感を味わえます。競合商品や競合店よりも親しんでもらえる可能性があります。
しかしお得感を競うあまり一体資産をめぐる過剰なサービスを展開する業者が出てきたら、法律が改正され規制が厳しくなることも想定されます。
一体資産は別々の商品をひとまとめにする作業を伴います。一体資産が売れるからといって執着しすぎると、包装量や在庫管理の面でコストを多く取られ、かえって採算が合わなくなるケースも考えられます。
他社と提携して一体資産のサービスを始めても、契約や商品管理などの面で自身の側が余計なコスト負担を強いられる可能性もあるため、お得に一体資産を売れる方法の模索が重要です。
一体資産は消費者がお得と感じやすいだけでなく、事業者にとっても需要を取り込みやすいイメージがありますが、決まりを守らないとトラブルになるおそれがあります。一体資産を扱う上での注意点を4つ紹介します。
一体資産として軽減税率を適用してもらうには、セット販売の価格が税抜きで1万円以下である必要があります。すなわち8%の税込み価格で10,800円を超えてはいけません。
10,800円を超えた価格になると、一体資産としても軽減税率が適用されないため、消費者もお得に感じなくなることがあります。
一体資産を作ったり仕入れたりする事業者にありがちなミスが、組み合わせた飲食品がそもそも軽減税率の対象でないことです。
まず酒類は軽減税率の対象外なので一体資産に組み合わせられません。それ以外の飲食物でも、外食やケータリングを目的にした食品(実質、食品の譲渡ではなく料理として提供されるもの)、医薬品として扱われているドロップスなどは、別の商品を組み合わせても軽減税率対象の一体資産にならないので気をつけましょう。
一体資産を作るときは、飲食品とそうでないものの価格バランスに注意しましょう。飲食品が全体の2/3以上でないと軽減税率対象の一体資産と見なされないからです。
「食べものとそうでないものを組み合わせれば良い」と早合点して家具にお菓子をつけるなど、明らかに非飲食物が全体の2/3以上を占める組み合わせは軽減税率が適用されません。
一体資産では全体の価格のみ表示します。組み合わせ商品の個別価格は示す必要がありません。
ただし、別々の場所に売ってある商品を組み合わせていて、それぞれの個別価格も表示されていると一体資産と認められません。そのため一体資産の組み合わせのうち、最低でも1点は単品で売らないなどの配慮が必要です。
2019年10月1日に多くの商品の消費税が10%となり、8%のままの軽減税率が採用される商品も明らかになっています。これを利用して一体資産で利益を上げようとする事業者も見られます。一体資産はルールを守れば一定の節税が期待されるほか、消費者と事業者それぞれがお得を実感できます。
しかし一体資産によるセット販売を実践するなら、必要なルールを把握しておきましょう。そうしないと、軽減税率が適用されず、全体が10%となり、むしろ個別に販売するより高くなるおそれもあります。
一体資産が軽減税率となる条件をよく把握してから販売するようにしましょう。