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消費税の経理方式には、税込経理方式と税抜経理方式の2つの方法があります。
規模が小さい中小事業者では、特に深い考えも無く税込経理を採用しているところも多いはずです。
しかし、税込経理方式の日々の仕訳には注意すべき点がいくつかあります。
税抜経理方式の仕訳処理、決算処理、そして消費税の支払いまでの流れをわかりやすく解説します。
目次
冒頭で触れた通り、消費税の経理処理方法には税込経理方式と税抜経理方式があります。
事業者はどちらの経理方式を採用するかを自由に選択することができます。
この経理方式の選択は、簡易課税制度のような2年間の継続適用等の縛りもなく、完全に自由選択であると考えてください。
なぜ自由選択であるかというと、どちらの方法を採用しても最終的な利益、税額に差がほとんど生じないためです。
ただし、消費税の免税事業者は税務上、税込経理方式を採用しなければならないことになっています。
中小事業者には税込経理方式を採用している企業も多いのではないでしょうか。
理由はいくつか考えられますが、免税事業者の期間中は税込経理方式しか採用できないため、その流れのままずっと税込経理方式を採用している事業者が多いと考えられます。
税込経理方式は、その名の通り商品やサービスの本体価格と消費税額を区別せずに税込価格で計上する方法です。
一方、大企業の多くが税抜経理方式を採用しています。
特に上場企業はほぼ全ての企業で税抜経理方式を採用しています。
理由は後ほど説明しますが、上場企業は四半期ごとに決算報告をする義務があります。
その途中経過の数字を正確に表すためには税抜経理方式が適しているのです。
税抜経理方式は商品やサービスの本体価格と消費税額を区別し、税抜価格で計上する方法です。
税込経理方式のメリットとして考えられる点は3つあります。
本体価格と消費税額を分けて仕訳する税抜経理方式と違い、税込経理方式は1つの取引の仕訳が1行で済みます。
仕訳処理はもちろんのこと、後々帳簿をチェックする際など、仕訳の行数が少ない方が理解しやすいといったメリットもあるでしょう。
ただし、昨今では会計ソフトが自動で税抜処理を行ってくれるため、あまり大きなメリットとは言えなくなってきているかもしれません。
先ほど書いた通り、免税事業者は税込経理方式しか採用することができません。
多くの法人は設立1期目・2期目が免税事業者となるため、最初は税込経理方式から出発することになるのです。
例えば3期目から消費税の課税事業者になったとしても、それまで採用してきた税込経理方式のまま決算を行った方が統一性は維持できます。
前期との数字の比較を行う際も、経理方式が同じ方が当然比較はしやすいといったメリットも考えられるでしょう。
法人税上、機械の購入や設備投資した際に適用できる、特別償却や特別税額控除などの節税手法があります。
この特別償却は機械等の取得価格を元に算出するため、取得価格が大きければ大きいほど所得を圧縮することができます。
税込経理方式は税抜経理方式と比べて消費税分だけ有利に作用するということです。
一方、税込経理方式のデメリットとして以下の2点が考えられます。
税込経理方式の最大のデメリットは、進行期の途中経過の正確な数字が把握できないという点です。
なぜそうなってしまうのか、理由は後ほど詳しく解説します。
一方、税抜経理方式だとこのような不具合は生じません。
税込経理方式のこのデメリットはかなり大きく、「税抜経理方式の方を採用すべき」という意見が主流となっている原因とも言えるでしょう。
減価償却にはいくつかの特例判定があり、その特例判定は固定資産の取得価格が10万円未満、20万円未満、30万円未満の場合にそれぞれ適用できます。
前述の金額判定は税込経理方式を採用している場合は税込価格で判定することになります。
例えば税抜30万円の機械を購入した場合、税抜経理方式では特定の適用範囲内であるのに対し、税込経理方式では消費税込みの33万円が取得価格となるため、特例の適用ができないのです。
交際費の損金算入限度額も同様の理由で税込経理方式の方が不利に作用する可能性があります。
ここからは税込経理方式の仕訳処理と決算仕訳を具体例を参考に見ていきましょう。
例:税抜価格10,000円の商品を売り上げた
貸方科目 | 金額 | 借方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 11,000円 | 売上 | 11,000円 |
例:税抜価格5,000円の商品を仕入れた
貸方科目 | 金額 | 借方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 5,500円 | 買掛金 | 5,500円 |
このように、税込経理方式の仕訳はぱっと見で分かりやすく、非常に簡便であることが分かると思います。
上記の売上の仕訳を税抜経理方式で行うと下記のようになります。
貸方科目 | 金額 | 借方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 11,000円 | 売上 | 10,000円 |
仮受消費税等 | 1,000円 |
これは元々の仕訳が単純なのであまり差を感じないかもしれませんが、一取引の仕訳数が何行にもわたるような取引では、税込経理方式の方が圧倒的に理解しやすいといえるでしょう。
例:当期の消費税額が500,000円に確定した
貸方科目 | 金額 | 借方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 500,000円 | 未払消費税等 | 500,000円 |
税込経理方式を採用している場合、期末に確定した消費税額を租税公課に計上し経費処理します。
一方、税抜経理方式では期末の消費税額を損益に反映させることはありません。
最終的な数字はどちらの方式を採用しても同じ数字になるため損得があるわけではありませんが、期末に多額の経費を計上しなければならない点には注意が必要です。
例:消費税額500,000円を納付した
貸方科目 | 金額 | 借方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
未払消費税等 | 500,000円 | 現金預金 | 500,000円 |
納付時は税抜・税込方式ともに同様の仕訳処理を行います。
前期末に計上した未払消費税等の残高を打ち消せばOKです。
税込経理方式による消費税の計上時期には、下記の通り原則と容認の2つの基準が存在します。
なお、前章②で紹介した仕訳例は容認による方法となります。
この2つの処理方法の違いは、支払った時点で費用計上するのか、期末で未払計上した時点で費用計上するのかの違いだけです。
したがってトータルで見れば損得はほぼないと言えます。
ただし細かいことを言えば、税務上は支払った時点での経費計上を原則としています。
しかし、会計的には未払い計上する容認の処理の方が自然とも考えられるため、どちらでも好きな方法を選んで問題ないとされています。
ただし、毎年のように計上方法を変えるのはあまり良くはないでしょう。
実際に不利益があるかどうかは不透明ですが、利益調整と捉えられる可能性も考えられます。
記事の前半で税込経理方式を採用した場合のデメリットを挙げましたが、その中でも最も大きなマイナス面が「期中に正確な数字が把握しづらい」という点です。
税込経理方式は消費税額確定時に租税公課に計上することで初めて正しい利益となります。
したがって期中の時点ではその消費税額が反映されていない数字を見ていることとなり、正確な利益が確認できないのです。
最後の最後に決算仕訳で消費税額を租税公課に計上することにより、それまで見えていた数字から大幅に利益が変わる可能性があるとも言えます。
逆に消費税が還付になる場合は、期末に突然大幅な利益が生じてしまい、税金面の負担に頭を悩ませる可能性もあるでしょう。
このデメリットは経営者にとっては意外と大きなマイナスであり、税抜経理方式が推奨される理由と言えます。
税込経理方式から税抜経理方式に変更したい場合、どのような手続きが必要となるでしょうか?
実は消費税の経理方式の変更には特に要件はなく、税務署への事前の届出も必要ありません。
要するに事業者の決断次第でいつでも変更可能ですので、気になる方は顧問税理士に相談してみることをおすすめします。
消費税の税込経理方式の仕訳処理と決算処理について解説してきました。
中小企業の中には設立以来ずっと税込経理方式を採用している企業も多いかと思いますが、最後まで正確な利益が確認できないというデメリットは税抜経理方式に変更することにより簡単に解消できる問題です。
思い当たる節がある方はまずは税理士に相談してみてください。
まだ法人カードを持っていないのであれば、あなたは損をしている可能性が高いです!
法人カードを持っていれば、経費精算が楽になる、経費の仮払いや立て替えなどの小口現金精算が必要なくなる、経費の計上漏れや請求漏れをなくすことができるなどのたくさんのメリットがあります。
今よりもっと事業に時間を使いたいと考えている経営者・個人事業主に法人カードは必須です。
こちらの記事が参考になりますので、ぜひ一読ください!