年末調整|配偶者が扶養でない場合の書き方【記入例つき】

夫婦 カップル 配偶者

近年では、共働きの夫婦が増えています。配偶者にある程度の収入があると、扶養に入れることはできません。

配偶者が扶養ではない場合の、年末調整の書類の書き方を、記入例を使ってわかりやすく紹介します。

1.扶養でない配偶者のいる方が、年末調整で記入が必要な書類

扶養でない配偶者のいる方は、年末調整で以下の3つの書類を会社に提出します。

  • ①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(令和5年分・令和6年分)
  • ②給与所得者の基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)所得金額調整控除申告書
  • ③給与所得者の保険料控除申告書

①扶養控除等申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養している配偶者や家族の情報を記入する書類で、配偶者控除や扶養控除などを受けられます。

配偶者が扶養でなければ、ほとんど記入する箇所はありませんが、一部だけ配偶者の情報を記入する欄があります。

令和5年の年末調整で必要なのは、令和5年分の扶養控除等申告書です。
令和6年分の扶養控除等申告書は、令和6年の給与を初めてもらう前に提出しますが、令和5年分と一緒に提出することが多いです(会社の指示に従ってください)。

②基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書

「給与所得者の基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)所得金額調整控除申告書」は、名前が長いですが、「基礎控除」「配偶者控除」「所得金額調整控除」の3つが一緒になっています。

基礎控除」の部分は全員が記入します。
「配偶者控除」の部分は、配偶者が扶養でなければ、記入は不要です。
ただし、「所得金額調整控除」の部分は、該当する子供がいる場合は、記入します。

③保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険料や地震保険料を支払った場合に記入します。

配偶者が扶養でないかどうかは関係なく、保険料を支払っていれば記入する書類となります。支払った保険料がなければ、記入は不要です

本記事では、説明を省略しますので、書き方を知りたい方は、「年末調整の保険料控除申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。

一点、注意ですが、配偶者が契約している保険でも、自分が代わりにその保険料を払った場合には、保険料を控除できますので、記入します。詳しくは、こちらをご覧ください。

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2.扶養でない配偶者がいる方の「扶養控除等申告書」の書き方(記入例)

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」はこのような書式です(図はクリックすると拡大できます)。

扶養でない配偶者がいる方は、他に、扶養家族がいなければ、基本情報のみの記入でOKです。
もし扶養家族がいる方は、扶養家族の箇所にも記入します。

扶養控除等申告書 令和5年分

(1)基本情報:全員共通

この部分は、配偶者が扶養であってもなくても、共通で記入する部分です。

扶養控除等申告書 令和3年分

基本情報の左側の青字の部分は、会社のほうで、すでに記入済みであるか、後で記入しますので、基本的には記入不要です(会社から指示があれば記入してください)。

自分が住んでいる市区町村を記入します。

扶養控除等申告書 令和4年分

基本情報の右側の部分は、氏名・個人番号(マイナンバー)・住所・生年月日等を記入します。

個人番号(マイナンバー)は基本的には記入しますが、既に勤務先にマイナンバーを知らせている場合には、書かないように指示がある場合がありますので、勤務先の指示に従ってください。

住所は、今住んでいるところではなく、令和6年(2024年)1月1日時点の見込みの住所を記入します

世帯主の箇所は、自分が世帯主であれば、自分の氏名を書き、「あなたとの続柄」に「本人」と記入します。
実家に住んでいるなど、世帯主が別の方であれば、世帯主の方の氏名を書き、「あなたとの続柄」には、あなたから見た関係を記入します。たとえば、父親が世帯主であれば「父」と記入します。

「配偶者の有無」欄は「有」に丸をします

(2)配偶者と16歳以上の扶養家族

扶養でない配偶者がいる方は、配偶者の欄には記入不要です。空欄のままにしておきます。

令和5年12月31日時点で16歳以上の扶養親族(平成20年1月1日以前生まれ)がいる方は、その人の氏名・個人番号(マイナンバー)・住所・生年月日等を記入します(基本的な注意事項は、上記の本人の場合と同じです)。

扶養控除等申告書 令和5年分

扶養親族が19歳以上23歳未満(平成13年1月2日から平成17年1月1日までに生まれた人で)ある場合には、「特定扶養親族」にチェックを入れます。

70歳以上(昭和29年1月1日以前生まれ)の同居している両親や祖父母を扶養している場合は、「同居老親等」にチェックを入れます。

扶養親族がバイト等で収入がある場合は、令和5年(2023年)分の所得の見積額を書きます。収入の金額ではありませんので、ご注意ください。所得が48万円を超えると、扶養控除を受けることができません。

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扶養は、どちらか片方にしか入れることができません。そこで、夫と妻のどちらに、子供や親を扶養に入れたほうが得になるのか、よく考えて記入したほうが良いでしょう。一般的には、収入(所得)が高いほうの扶養に入れたほうが、扶養控除で減税される金額が大きくなります。

(3)16歳未満の扶養家族がいる場合

令和5年12月31日時点で16歳未満の扶養親族(平成20年1月2日以降生まれ)がいる方は、その人の氏名・個人番号(マイナンバー)・住所・生年月日等を記入します(基本的な注意事項は、上記の本人の場合と同じです)。

16歳未満の扶養親族は、扶養控除の対象ではありませんが、住民税が非課税になるかどうかの判定で利用します

扶養控除等申告書 令和5年分

住民税でも、扶養はどちらか片方にしか入れませんので、ここも、夫と妻、どちらか片方のみ記入します。

(4)障害者控除

結婚されている方は、「寡婦」「ひとり親」の部分は、関係ありませんが、本人や扶養家族が障害者の場合は、障害者控除を受けられます。

障害者控除の書き方について詳しくはこちらをご覧ください。

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扶養控除等申告書の書き方をさらに詳しく知りたい方は「年末調整の扶養控除等申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。

3.扶養でない配偶者がいる方の「基礎控除申告書」の書き方(記入例)

「給与所得者の基礎控除申告書(兼)給与所得者の配偶者控除等申告書(兼)所得金額調整控除申告書」はこのような書式です(図はクリックすると拡大できます)。

扶養でない配偶者がいる方は、通常は、基本情報と「基礎控除申告書」のみの記入でOKです。
給与収入が850万円を超えて、かつ、23歳未満の扶養家族がいる方は、「所得金額調整控除」の箇所にも記入します。

基礎控除申告書 令和5年分

(1)基本情報:全員共通

この部分は、共通で記入する部分です。

基礎控除申告書 令和2年度

基本情報の左側の青字の部分は、会社のほうで、すでに記入済みであるか、後で記入しますので、基本的には記入不要です(会社から指示があれば記入してください)。

基礎控除申告書 令和3年度

基本情報の右側の部分は、氏名・住所を記入します。

(2)基礎控除申告書

この部分も、共通で記入する部分です。

基礎控除申告書 令和2年度

給与収入の金額は、まだ、その年が終わっておらず収入がいくらか確定していませんので、見積額を記入します。

給与所得の金額も記入します。給与所得とは、給与収入から経費(給与所得控除)を引いたものです。

給与等収入額(A) 給与所得の金額(C)
551,000円未満 0円
551,000円以上1,619,000円未満 (A)-550,000円
1,619,000円以上1,620,000円未満 1,069,000円
1,620,000円以上1,622,000円未満 1,070,000円
1,622,000円以上1,624,000円未満 1,072,000円
1,624,000円以上1,628,000円未満 1,074,000円
1,628,000円以上1,800,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×2.4+100,000円
1,800,000円以上3,600,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×2.8-80,000円
3,600,000円以上6,600,000円未満 (A)÷4(千円未満切捨て)=(B)
(B)×3.2-440,000円
6,600,000円以上8,500,000円未満 (A)×90%-1,100,000円
8,500,000円以上 (A)-1,950,000円

給与収入以外に、副業での収入がある場合や、株や不動産による収入がある場合などには、「給与所得以外の所得」欄に、その所得の合計額も記入します。
特に他に収入がなければ、「0」と記入します。

「給与所得」と「給与所得以外の所得」の合計額を記入します。

上記で記入した金額が該当する□にチェックをします(✓マークを書きます)。

チェックした項目が(A)~(C)に該当する場合は、「区分Ⅰ」蘭にその区分を記入します。

でチェックした項目の金額を記入します。

合計所得金額の見積額 基礎控除額 区分Ⅰ
900万円以下 48万円 A
900万円超950万円以下 B
950万円超1,000万円以下 C
1,000万円超2,400万円以下 (なし)
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,500万円超2,500万円以下 16万円
給与所得・基礎控除額を計算し、区分Ⅰを表示するツールを用意していますので、ご自由にご利用ください。

【給与所得・基礎控除額 計算ツール】

(3)配偶者控除申告書

扶養でない配偶者がいる方は、この部分の記入は不要です。

ただし、「扶養=103万円以下」と認識している人は、配偶者の収入が103万円を超えても、記入が必要なケースがありますので、注意してください。

配偶者の年収が103万円超えでも、約201万円以下であれば、配偶者特別控除を受けられます。特に、配偶者の年収が150万円以下であれば、配偶者控除と同額の控除を受けられます(通常は38万円の控除、本人の年収によって異なる)。

配偶者の年収が103万円を超えていても、年収が少ない場合には、記入漏れがないように気をつけましょう。具体的な書き方は、こちらをご覧ください。

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(4)所得金額調整控除申告書

給与収入が850万円を超えて、かつ、23歳未満(平成13年1月2日以降生まれ)の子どもを扶養しているか、本人または扶養親族(親・子ども等)に障害者がいる場合に記入します。

ここで、要注意事項ですが、所得金額調整控除は、夫婦両方に適用できます。
先ほどの、扶養控除の部分は、夫と妻のどちらか片方しか記入できませんでしたが、ここだけは、夫と妻の両方で記入して大丈夫です。意外と記入漏れが多い箇所ですので、気をつけましょう。

基礎控除申告書 令和5年分

「要件」欄に該当する□にチェックをします(✓マークを書きます)。

扶養親族が23歳未満など、2,3,4行目にチェックを入れたときは、その扶養親族の、氏名・個人番号(マイナンバー)・住所・生年月日・続柄・所得の見積額を記入します。

所得金額調整控除の詳細については、こちらをご覧ください。

所得金額調整控除の制度の概要から控除額の計算方法まで、具体例を交えて、わかりやすく解説します。[続きを読む]

書き方をさらに詳しく知りたい方は「基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書の書き方」をご覧ください。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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