ひとり親控除・寡婦(寡夫)控除とは?年末調整・確定申告の方法

シングルマザー 寡婦

「ひとり親」は、いわゆるシングルマザー・シングルファザーのことですが、離婚や未婚、死別といった様々な原因があります。

これまでは、同じ「ひとり親」でも原因や性別によって年末調整や確定申告の控除額が異なっていました。
2020年度(令和2年度)の改正では、原因や性別による違いを撤廃する改正が行われました。

ここでは、ひとり親控除・寡婦(寡夫)控除の改正内容と控除額についてご紹介します。
また、年末調整・確定申告の方法もお伝えします。

1.寡婦(寡夫)控除の改正【令和2年度】

1-1.未婚のひとり親も控除対象に

未婚のひとり親とは、婚姻歴がなく子供を扶養している単身者のことです。

これまでは未婚のひとり親は、控除対象ではありませんでした。
一方、配偶者と離婚や死別が原因でひとり親となった人に対しては、寡婦控除・寡夫控除が確定申告や年末調整で適用されていました。また、ひとり親の性別の違い(寡婦と寡夫)で控除額が異なっていました。

今回の改正は「婚姻歴の有無」と「ひとり親の性別」についての不公平感を解消し、全てのひとり親家庭に対して公平な取扱いを行うための改正です。
この「ひとり親控除」は、半世紀以上前に創設された寡婦控除(1951年創設)では想定されていなかった「未婚の親」を現代の家族の多様化に合わせて新設されることになった制度です。

1-2.寡婦控除・寡夫控除の見直し

従来の寡婦(寡夫)控除では、性別により適用基準が異なりました。

女性の場合は、離婚または死別により1人で子供や親族を扶養している場合、もしくは子供や親族がいない場合で夫と死別しており合計所得が500万円以下の場合に寡婦控除を適用することができました。一方、男性は、離婚や死別により1人で子供を扶養しており、かつ合計所得が500万円以下の場合にのみ寡夫控除を適用することができました。

今回の見直しでシングルマザーには所得制限が設けられ、合計所得が500万円超の場合には寡婦控除の適用がなくなります。
また、男女平等の観点から、シングルファザーの寡夫控除が廃止されて、ひとり親控除に一本化されます。その結果、所得控除額は27万円から35万円に引き上げられます。

寡婦控除⇒ひとり親控除と寡婦控除へ
  死別 離別 未婚の
ひとり親
合計所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~ ~500万
扶養親族
あり
○⇒✕ ○⇒✕ ✕⇒○
子以外 ○⇒✕ ○⇒✕
扶養親族なし
寡夫控除⇒ひとり親控除へ
  死別 離別 未婚の
ひとり親
合計所得 ~500万 500万~ ~500万 500万~ ~500万
扶養親族
あり
✕⇒○
子以外
扶養親族なし
  ひとり親控除
  寡婦控除

1-3.適用時期

寡婦(寡夫)控除の見直しは、2020年(令和2年)の年末調整または確定申告から適用になります。
住民税については、2021年(令和3年)から適用されます。

2020年(令和2年)中の給料から天引きされる源泉所得税には寡婦(寡夫)控除が考慮されていないため、寡婦(寡夫)控除の対象になる人は年末調整または確定申告での申告を忘れないようにしましょう。

2.ひとり親控除の要件

今回新設される「ひとり親控除」は、次の3つの要件に当てはまる人が対象になります。要件は、その年の12月31日現在で判断します。

  • ①その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと(事実婚と判断される人がいないこと)。
  • ②生計を共にする子どもがいること(子どもの合計所得金額48万円以下)。
  • ③ひとり親の合計所得金額が500万円以下(年収換算で約678万円)であること。

ひとり親控除の適用要件に当てはまる場合、所得税は35万円の所得控除、住民税は30万円の所得控除の適用を受けることができます。

ひとり親控除の適用時期は、寡婦(寡夫)控除の見直しと同様に2020年(令和2年)の年末調整または確定申告から適用になります。
住民税については、2021年(令和3年)から適用されます。

ひとり親控除の適用を受ける場合には、令和元年の年末調整時に勤務先へ提出した「令和2年分の扶養控除申告書」を訂正する必要がありますので、勤務先に問い合わせてみた方がいいでしょう。

3.改正後の寡婦とは?寡婦控除の要件

改正後の寡婦とは、ひとり親に該当しない人で、次の寡婦控除の要件に当てはまる場合のことを言います。改正後は、従来の寡婦控除の要件に一部要件が追加されています。

要件の追加により、これまで寡婦でなかった人が寡婦に該当することはありませんが、これまで寡婦に該当していた人が控除を受けられなくなる場合があります。

また、これまで「特別の寡婦」に該当し寡婦控除を受けている人については、改正後は「ひとり親控除」で所得控除を受けることになります。控除額は35万円のままで変更はありません。

<寡婦控除の要件>

①夫と離婚した後、婚姻をしていない人
  • 扶養親族がいること(子以外)。
  • 合計所得金額が500万円以下であること。
  • その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと(事実婚と判断される人がいないこと)。
②夫と死別した後、婚姻をしていない人
  • 合計所得金額が500万円以下であること。
  • その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと(事実婚と判断される人がいないこと)。

寡婦控除の所得税の控除額については、従来は、特定の寡婦が35万円、一般の寡婦は27万円でしたが、改正後は離婚や死別に関わらず一律27万円になります。住民税の所得控除については26万円になります。

4.ひとり親控除と寡婦控除の控除額の変更まとめ

未婚のひとり親の追加とこれまでの寡婦控除の改正により、改正後の所得控除額をまとめると以下のようになります(単位:万円)。

令和2年度税制改正 ひとり親

【出典】財務省:令和2年度税制改正

5.年末調整の方法

改正により「ひとり親」に該当することになった場合、年末調整で「ひとり親」に該当することを申告しなければなりません。

通常「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載することにより勤務先へ申告することになりますが、新しい改正のため、令和2年分の扶養控除申告書には「ひとり親」の欄が設けられていません。そのため、「寡婦」や「寡夫」、「特別の寡婦」の欄を訂正して「ひとり親」ということが分かるようにしなければなりません

今まで寡婦(寡夫)控除の対象になっていなかった「未婚のひとり親」に該当する方は、記載しなければひとり親控除が適用になりませんので特に注意が必要です。扶養控除申告書の記載例は、次の通りです。

扶養控除等申告書 令和2年分 ひとり親

6.確定申告の方法

確定申告で「ひとり親控除」の適用を受ける場合は「確定申告書第二表」の「本人に関する事項」の「ひとり親」を丸で囲み、確定申告書第一表の「寡婦、ひとり親控除」に控除金額(35万円)を書き込みます。寡婦に該当する場合は27万円の所得控除額になります。

確定申告書 ひとり親控除

【参考】寡婦控除のみなし適用は不要に

2013年以降、地方自治体では「寡婦(夫)控除のみなし適用」を行う動きが広まりました。

「寡婦(夫)控除のみなし適用」とは、今回のひとり親控除と同様に「未婚の親」が地方自治体に申請することにより「寡婦(夫)控除」を適用したとみなして所得の金額を算定し、各種の行政サービス利用料の減額を行うものです。

令和2年度の税制改正でひとり親控除が新設されたことにより、この寡婦(寡夫)控除のみなし適用は不要になりました。

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