不動産の売却による譲渡所得とは?取得費・譲渡費用の計算方法
譲渡所得の計算方法について、取得費・譲渡費用の計算方法を中心に、具体例を利用してわかりやすくご紹介します。取得費・譲…[続きを読む]
不動産や美術品などを売って出た利益を「譲渡所得」といいます。この記事では、資産を売却したときどんなケースで確定申告が必要なのか、どのような手続きが必要なのかお話しします。
目次
土地や建物などの不動産や株式、美術品等を売却して利益が生じた場合、「譲渡所得」として確定申告を行います。
ただし、不動産・株式・美術品等を売却したからといって必ず確定申告が必要となるわけではありません。何らかの資産を売却したとしても、売却益が生じなかった場合は確定申告をする必要はありません。
逆に売却益が生じている場合は譲渡所得が生じることになるため、確定申告が必要となります。譲渡所得は次の方法で計算します。
上記の方法で計算結果がマイナスとなった場合は確定申告不要ということです。
売却益がでなければ確定申告の義務はありませんが、売却で損失が生じた場合はその損失を他の所得と相殺したり、それでもマイナス分を相殺しきれない場合には翌年以降の所得とも相殺できる可能性があります。この特例にはいくつかの要件がありますので、売却で損をした方は調べてみることをおすすめします。
取得費用にはその売却した物の購入代金のほか、購入時にかかった費用も含めます。売却にかかった費用は、例えば不動産の場合は仲介手数料や印紙税などが該当します。
減価償却費は、購入してからの経過年数に応じて一定の計算を行って算出します。所得費用・減価償却費については下記の記事でより詳しく解説していますので、気になる方はそちらを参考にしてください。
「売却益が出なかった場合」以外に確定申告が不要となるケースの一例として、以下のケースが挙げられます。
「生活用動産」とは、家具や車、衣服など通常生活を送るために必要となる資産のことを指します。したがって自家用車を下取りに出したケースなどは譲渡所得は非課税となります。ただし、スポーツカーやクラシックカーなど、娯楽の要素が強い車を売却した場合には確定申告が必要となる場合があります。
また、美術品や骨とう品などは1点の価格が30万円以下であれば確定申告の必要はありません。
譲渡所得の確定申告には以下の5つのステップがあります。
「必要書類の準備⇒確定申告書の作成⇒税務署への提出」という確定申告の基本的な流れは変わりませんが、特別控除が受けられたり、内訳書の作成が必要な点がその他の所得の申告と異なるポイントです。次の章から各ポイントについて解説していきます。
譲渡所得がある場合、確定申告で「特別控除」を利用することで課税対象額を引き下げられる可能性があります。
土地・建物・株式以外の資産を売却した場合には最大50万円の特別控除を受けることができます。
マイホームを売却した場合の特別控除額は3,000万円となっており、その他、土地や建物を譲渡したケースでも1,000万円~5,000万円の特別控除が適用できる可能性があります。特別控除が利用できるかどうかの条件については国税庁のホームページを参考にしてください。
国税庁:譲渡所得の特別控除の種類
譲渡所得を得ていて確定申告が必要な場合、本人確認書類や控除の証明書といった共通書類に加えて下記の書類を税務署に提出する必要があります。
2022年まで、確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」の2種類がありました。
2023年からは確定申告書Bをベースにした様式に一本化されています。譲渡所得の申告はもともと確定申告書Bが必要でしたので、書き方に変更はありません。
また、今まで確定申告書Aしか使ってこなかったという方も、給料等の収入の記載方法はAとBで違わないのでご安心ください。
確定申告書を手書きしたい場合、国税庁のHPから印刷したり、税務署で貰うこともできます。ただし、スマホまたはパソコンをお持ちであれば、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」でオンライン作成するのがおすすめです。
確定申告書以外で税務署に提出する書類に「譲渡所得の内訳書」という書類があります。
なお、先ほど触れた「マイホームを売却した場合などの特別控除」を利用する方は、そのケースごとに追加書類の提出が必要となる場合があります。それぞれのケースで必要となる書類については以下の国税庁作成のPDFファイルを参考に、書類の準備を進めてください。
国税庁:申告書添付書類チェックシート
譲渡所得の確定申告を行う際には、上記の添付書類以外にも以下の書類を準備しておく必要があります。税務署に提出する必要はありませんが、譲渡所得の内訳書と確定申告書の作成には欠かせない書類です。
確定申告書の作成時には売買に関する細かい情報を記入する必要があります。その記入する内容が確認できる書類であれば上記以外の書類でもOKです。
なお、株式の売却について譲渡所得の申告をしようとする方のうち、特定口座を利用して株取引を行っている方は「年間取引報告書」という証券会社が発行する書類を手元に準備しておきましょう。
これも税務署に提出する必要はありませんが、確定申告書の作成の際に参照する必要があります。一般口座や非上場株式の売買を行っている方は参照できる書類は発行されませんので、自分自身で取引の内容を記録しておく必要があります。
確定申告書と内訳書は、以下いずれかの方法で作成できます。先に譲渡の内訳書を作成してから申告書を作成しましょう。
詳しい作成方法は下記の記事で解説していますので併せてご活用ください。
土地・建物などの高額な資産を売却した場合、譲渡所得と給与などのその他の所得とをあわせると例年と比べて所得が跳ね上がる可能性があります。所得の合計額が1,000万円を超えてしまうと配偶者控除は利用できなくなりますので注意が必要です。
ここからは譲渡所得について、より具体的なケースやよくある質問について解説していきます。
ここまでの内容を読んでみて、譲渡所得の確定申告が難しいと感じる方もいるかと思います。譲渡所得は準備する書類も多く、さまざまな特例が規定されていることもあり、税金の知識がない方が自力で申告するのは苦労する可能性があります。
あまり自信がない方は、税理士に依頼してしまった方が確実でしょう。税理士に依頼すれば利用できる特別控除などの判断も間違いなく行ってもらえますし、結果的に節税につながるケースもあります。税理士費用の相場はピンキリなので一概には言えませんが、おおむね「10万円~20万円」ほどの費用を設定している税理士が多いようです。
株式を売却したことによる譲渡所得の申告は、一般口座を利用して株式の売買を行っている場合や、非上場株式を譲渡した場合に必要となります。通常、特定口座を利用している場合は確定申告の必要はありません。
ただし、特定口座を利用している方の中には確定申告をした方が良いケースがあります。それは譲渡所得がマイナスとなる場合です。特定口座の株取引で損失が生じた場合、その損失をその他の口座の株取引の譲渡益や配当利益と相殺することが可能です。
さらに、上記の所得と相殺しても相殺しきれない金額がある場合、翌年から3年間にわたってその損失を繰り越すことができます。節税効果が見込めるため、該当する方はぜひ確定申告を検討してください。
なお、特定口座の株取引について確定申告する場合、証券会社から発行される「年間取引報告書」という書類を手元に準備しておくと作成がスムーズに進みます。
換価分割とは、相続した土地・建物、株式などの財産を売却して現金に換え、相続人間で分割する方法のことを言います。この換価分割によって生じた売却益は譲渡所得として確定申告を行う必要があります。換価分割を行った場合、各相続人がそれぞれの持分に応じて所得税の確定申告を行います。
換価分割を行った場合の確定申告では、遺産分割協議書の添付をすることをおすすめします。遺産分割協議書を税務署に提出することで、相続人それぞれの持ち分を証明することができます。
専業主婦でも不動産や株式などの譲渡所得が生じた場合は確定申告が必要となります。専業主婦が譲渡所得を得た場合、注意すべき点は配偶者控除・配偶者特別控除への影響です。
例年は妻の年収が0円であるため配偶者控除を利用していたものと思われますが、譲渡所得が生じた年は配偶者控除を利用できない可能性があります。配偶者の所得金額に注意して確定申告書を作成しましょう。
家族など複数人の共有名義となっている不動産を譲渡した場合、売却金額や取得費などをそれぞれの持ち分で按分して譲渡所得を計算します。
譲渡所得の内訳書の2面に共有している不動産の持ち分を記載する欄があります。もしここに書ききれない場合は別の書類に持ち分を記載し、譲渡所得の内訳書に添付して税務署に提出しましょう。