セルフメディケーション税制とは?通常の医療費控除との違い
この記事では、セルフメディケーション税制の基本から、従来の医療費控除とどちらがお得なのか等、わかりやすく解説していき…[続きを読む]
気温が下がり乾燥が気になる季節になると、インフルエンザの予防接種を受ける方も多いでしょう。子供や赤ちゃんの予防接種も定期的に行われています。
このような「予防接種・ワクチン接種」は「医療費控除」の対象となるのでしょうか? この記事では医療費控除と予防接種について解説します。
目次
予防接種やワクチン接種は確定申告で医療費控除として利用できるのでしょうか? 様々なケースについて解説します。
インフルエンザやロタウイルスなどの予防接種代は医療費控除には含まれません。そもそも、医療費控除とは「医師の診断や治療に必要な費用」について控除を受けられる制度です。予防接種はあくまで「予防のための費用」であり、治療にかかわる費用ではないため、医療費控除の対象とはならないのです。
ただし例外もあります。医者の勧めにより予防接種を受けた場合には医療費控除の対象となる場合もあります。
例えば親族が感染の危険性が高い病にかかり、その感染を予防するため医師の勧めにより予防接種を受ける場合には、その費用は医療費控除の対象となります。この場合には医師の診断書をもらう必要があります。
ワクチンの接種には医療費控除の対象となるものとならないものとがあります。先ほど述べた通りインフルエンザワクチンやロタウイルスワクチンなどは対象とはなりませんが、例えば医師の勧めにより接種するB型肺炎ワクチンなどは医療費控除の対象となります。
これも先ほど触れましたが、B型肺炎のような「介護を行う家族が感染する危険性が高い病気」を医師の勧めにより接種する場合は医療費控除の対象となります。控除を受けるためには領収書のほか、医師の診断書をもらう必要があります。
また、がん治療に使用される丸山ワクチンも医療保険料の対象になります。丸山ワクチンは予防のためのワクチンではなく、医師による治療のために接種するワクチンです。このような性質のワクチンは医療費控除が利用できるのです。
コロナワクチンは予防のためのワクチンであるため医療費控除の対象となりません。
また、2024年3月まで、コロナワクチン接種は公費であり自己負担ではありませんので、そもそも医療費控除の対象外です(令和6年度からは有料となりますが、その場合も医療費控除の対象にはなりません)。
予防接種の費用は医療費控除の対象とはなりませんが「セルフメディケーション税制」を受けることができます。セルフメディケーション税制は確定申告で利用できる控除の一種で、医療費控除とどちらか1つを選択して受けることができます。
セルフメディケーション税制はインフルエンザの予防接種など、健康の保持増進や疫病の予防への取り組みにかかった費用が該当となります。予防接種の他には人間ドックや健康診断、ドラッグストアで購入する対象の医薬品などが該当します。
年間の支払額が12,000円を超えていれば確定申告で控除を利用できますので、該当しそうな方は領収書を保管しておきましょう。
もし医療費控除に予防接種を入れて確定申告をしてしまったらどうなるのでしょうか?
まず、悪意を持って(わざと)事実と異なる申告をしたわけではなく、単純なミスによる誤りであれば、脱税として罰せられることはないと考えて良いでしょう。けれど、「悪意のないミスならばれてもペナルティがない」というわけではありません。
確定申告の期限が過ぎてからミスが発覚し税務署から問い合わせが来た場合、「過少申告加算税」が課されてしまうため、申告の間違いに気づいたら確定申告の期限までに正しい内容で申告しなおしましょう。
もし誤って確定申告をしてしまった場合、税務署に対して誤った申告をしてしまったことになります。確定申告期限(例年3/15頃)までであれば何度でも確定申告のやり直しが可能なので、正しい申告内容で確定申告書を再提出しましょう。再提出する場合は当初の確定申告と同じ手順で確定申告書を出しなおします。
この場合、ペナルティは発生しません。
もし確定申告期限後に訂正を行う場合には「修正申告」を行う必要があります。修正申告は「確定申告書の第一表・第二表」の上部に「修正」と記入して行います。修正申告に期限はありませんが、なるべく早く行うことをおすすめします。
もし税務署から「確定申告が間違っている」という指摘を受けてから修正申告を行うと、追加で支払う税金の10~15%の過少申告加算税がかかってしまうため注意しましょう。
医療費控除の対象となるもの・ならないものの判断は難しいものです。予防接種以外にも「うっかり医療費控除に含めてしまった」というミスや、逆に「うっかり医療費控除に入れ忘れてしまった」というミスも考えられます。
医療費控除に入れてしまいがちなものとしては以下のものが挙げられます。
うっかり医療費控除に入れてしまうもののうち代表的なものは、予防接種のほか健康診断費用やマッサージ費用などが挙げられます。ただし、予防接種や健康診断費用はセルフメディケーション税制の対象には含まれます。
一方、医療費控除に入れ忘れてしまいがちなものとしては以下のものが挙げられます。
この中でも特に忘れやすいのが「通院にかかった交通費」です。これは例えば「一人では行動できない状態の親族の付き添い」でタクシーを利用した場合にも医療費控除の対象となります。控除を受けるためには領収書が必要となりますので、しっかり保管しておきましょう。
その他、医療費控除の対象になるもの、ならないものについては別記事で詳細を解説しているので参考にしてください。
「予防接種を医療費控除に含めてもバレないんじゃ?」と考えている方もいるかもしれません。確定申告では医療費の領収書を提出する必要はなく、自分で作成した「医療費控除の明細書」を提出します。明細書は自分で作成するものですから、虚偽の記載をすることもできてしまうわけです。
バレるかバレないかの話で言うと、それは運でしかありません。ばれる可能性もあるし、ばれない可能性もあります。「金額も少ないし、税務署もそこまでしっかり見ないだろう」という考え方をする方もいるでしょう。
ただし、故意に虚偽の記載をすることは先ほどの「うっかりミス」により誤りとは全く事情が異なります。故意の仮装・隠蔽によって追加の税金が出た場合には、その追加の税金の35%の「重加算税」が課されます。ばれてしまった場合のペナルティはかなり重いものです。
最終的には個人の良心次第ということになりますが、リスクを冒して予防接種の費用を医療費に含めたところで、医療費控除による還付額が大幅にあがることにはなりません※。予防接種費用を医療費控除に含めて申告しようか悩んでいる方は考え直すことをおすすめします。
※医療費控除による所得税の還付額は[自己負担分の医療費の合計-10万(あるいは所得の5%)] × [所得税率]です。所得税率は所得の金額によりますが例えば所得が600万なら所得税率は20%。予防接種代が3500円だったとしたらそれを医療費控除に含めても還付額は700円(3500円の20%)しか変わりません。
最後にこの記事の重要ポイントをおさらいしましょう。
記事内でも解説していますが、予防接種は医療費控除の対象にはなりませんがセルフメディケーション税制の対象です。子供や赤ちゃんの予防接種などで一定の金額を使った方やご家庭用のお薬などを購入された方はこちらも検討されることをおすすめします。