年末調整で住宅ローン控除を受けるには?|必要書類・書き方まとめ
住宅ローンを組んで住宅を購入した人は、住宅ローン控除で大幅に節税できます。年末調整で住宅ローン控除を利用するための方…[続きを読む]
住宅ローンを組んでいる方の中には、ローンの見直しで借り換えをされる方も多いでしょう。ここで、ローンを借り換えをしても住宅ローン控除を受けられるのでしょうか?
この記事では、住宅ローンの借り換え後も住宅ローン控除を受けたいと考えている方に向けて、控除の条件と申請方法を解説します。
目次
住宅ローンをより金利の低い住宅ローンに借り換えた場合、住宅ローン控除は受けられるのでしょうか?
原則として、借り換え後の住宅ローンは控除を受けることができません。住宅ローン控除は住宅の取得のためのローンに対して適用される控除です。借り換え後の新しい住宅ローンは当初の住宅ローンを消滅させるためのローンであると見なされるため、控除の対象とはならないのです。
ただし、借り換え後の住宅ローンであっても、以下の要件を満たす場合には引き続き住宅ローン控除を受けることができます。
2の「住宅ローン控除の対象となる要件を満たしていること」とは、次の全ての要件を満たしている必要があります。
※コロナ特例で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅を取得する場合は、床面積40㎡以上50㎡未満、合計所得金額1,000万円でもOK
このように条件を羅列されてもちょっとピンと来ないですよね……簡単に言うと以下のようにまとめることができます。
まずは「借り換え後の住宅ローンは、当初の住宅ローンの返済に充てた」ということが前提です。さらに、「借り換え前は住宅ローン控除を利用していた」という方は、状況が変化していなければ借り換え後も引き続き住宅ローン控除を受けることができます。
一方、借り換え後に住宅ローン控除を利用できないパターンとして最も気を付けなければならないのが「借り換え後の住宅ローンの返済期間が10年以上」という条件です。借り換えた後の返済期間が10年未満であると控除を利用できなくなります。
それ以外には「住宅ローン借り換え後に、住宅ローンで取得した家から引っ越した」といった場合も住宅ローン控除を受けることができなくなります。
借り換え後に住宅ローン控除の適用を受ける際の手続き方法は、借り換え前と特に変更点はありません。また、添付書類が増えるということもありません。会社員の方は「初年度は確定申告」「2年目以降は年末調整」というルールも同じであるため、借り換えをした方のほとんどは借り換え初年度から年末調整で控除を受けることができるはずです。
ただし、控除額の計算方法が借り換え前とは異なる可能性があります。詳しくは3章で解説します(控除額の再計算について)。
また、そもそもの住宅ローン控除の手続き方法や添付書類について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご参照してください。
借り換え後に住宅ローン控除を利用する際、注意すべき点が2つあります。
住宅ローンの借り換えを行ったとしても、住宅ローン控除を利用できる年数は居住開始年から10年のままとなります。(2019年10月1日以降の購入では、13年 )
住宅ローンを組んだ際にかかった諸費用を元金に含めて借り換えた場合、住宅ローンの借入額が増加することになります。この場合は控除額を改めて計算する必要があります。この点についても3章で詳しく解説します(控除額の再計算について)。
借り換えをした住宅ローンについて年末調整で控除を受ける場合、提出する書類は借り換え前と変更点はありません。必要書類は下記の通りです。
これらの書類は借り換え前の年末調整で提出していたものと同様で、1つめは初年度に確定申告で住宅ローン控除を利用した方に税務署から送付される書類、2つめは住宅ローンを組んだ銀行等の金融機関から送付される書類です。
ただし、年末残高証明書は借り換え後の銀行から送付されてきたものを使用します。
また、「住宅借入金等特別控除申告書」の記載方法については「年末残高の再計算」が必要となるケースがあります。詳しくは次章で解説します。
住宅ローン控除の控除額は年末残高を元に計算します。借り換えを行った場合に注意しなければならないのは、住宅ローンの借入額が増減した場合です。
住宅ローンの借入額が増減する場合には下記のようなケースが該当します。
借り換えにより住宅ローン借入額が増減した場合、控除対象額の再計算が必要となります。計算方法は借入額が減少した場合と増加した場合の2パターンがあります。
判定 | 住宅ローン年末残高の金額 |
---|---|
①当初の住宅ローンの残高※ ≧ 新たな住宅ローンの借入額 | 新たな住宅ローンの年末残高 |
②当初の住宅ローンの残高※ < 新たな住宅ローンの借入額 | 新たな住宅ローンの年末残高×(当初の住宅ローンの残高/新たな住宅ローンの借入額) |
※「当初の住宅ローン残高」とは「借換え直前における当初の住宅ローン等の残高」をさします。借り換え前の契約の最終残高を確認しましょう。
①は借り換えによって住宅ローン借入額が減少した場合を指します。この場合、住宅ローン年末残高は「借り換え後の住宅ローンの年末残高」となります。要するに金融機関から送付される年末残高証明書に記載されている金額をそのまま計算に使用すればOKです。
②は借り換えによって住宅ローン借入額が増加した場合で、按分計算が必要となるためやや複雑です。以下に計算の具体例を挙げて解説しますので参考にしてください。
先ほども少し触れましたが、住宅ローンの借り換えを行った場合確定申告をしなければならないケースがあります。それは「10月以降に借り換えを行った場合」です。
住宅ローン控除を受けるためには、金融機関が発行する「年末残高証明書」が必要となります。しかし、年末残高証明書は9月末時点で作成されるため、それ以降に借り換えを行った場合、送付されてくるのが遅れる可能性があります。
勤務先での年末調整までにその年末残高証明書が届かなかった場合、年末調整では控除を利用することができません。その場合は自分自身で確定申告を行うことで控除を受けることができます。
この記事では住宅ローンの借り換えを行った場合の年末調整について解説してきました。しかし、そもそも借り換えのメリット・デメリットが分からずに迷っている方のために、最後に住宅ローンの借り換えをすべきかどうかの判断基準について解説します。
住宅ローンの借り換えは、新たに住宅ローンを組んで、返済中の住宅ローンを一括返済するために行うものです。では、なぜ借り換えを行う必要があるのでしょうか? それは下記のようなメリットがあるためです。
このように住宅ローンの金利を下げ、月々の返済額や金利部分を含めた総返済金額を軽減できるのが借り換えのメリットです。
一方、借り換えのデメリットとして各種手数料が生じる点が挙げられます。当初の住宅ローンを繰り上げ返済する際の手数料や、住宅ローン新規手続きの際に保証料や事務手数料が発生します。これらのメリット・デメリットを考慮して借り換えを行う必要があります。
実際に住宅ローンを返済していく際、少しでも金利や返済条件を有利にしたいものです。「でも借り換えは面倒」と感じている方は以下の方法を検討してみてはいかがでしょうか。
「繰り上げ返済」を行えば、住宅ローンの利息総額を圧縮することができます。ただし、繰り上げ返済には大金が必要となるため、金銭面に余裕がある人しか取れない方法と言えます。
もう一つの「金利交渉」とは、住宅ローンを借りている金融機関に金利の割引を交渉する方法です。そんなことが可能なのかと思われている方もいるかもしれませんが、交渉するだけなら費用は発生しないため試してみる価値はあります。
例えばあなたが「より金利の低い住宅ローンに借り換えを検討している」と伝えれば、銀行の担当者も相談に乗ってくれる可能性があります。その場合、実際に借り換えを検討している住宅ローンの金利を伝え、交渉の基準にすると良いでしょう。
住宅ローンの借り換えを行うべきかどうかの判断基準として、以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
借り換えをする場合は「金利がより低い住宅ローン」に借り換えるため、無条件で得をした気になってしまうかもしれません。しかし、金利の差が少なかったり、返済期間が残りわずかだった場合、金利の差による得は微々たるものとなってしまう可能性もあります。その場合、借り換え時に要した各種手数料を考慮すると損をしてしまう可能性もあります。
また「返済期間を短縮する」という目的で住宅ローンの借り換えを検討している方もいるかもしれません。確かに、返済期間を短縮すればその分利息の負担は軽減されるため、総返済額を少なくすることができます。
しかし、返済期間を短縮するということは月々の返済額は増えるということです。毎月の支払いが無理のない範囲であるかどうか、慎重に検討する必要があるでしょう。
最後に、この記事の重要ポイントをおさらいしましょう。借り換え後も住宅ローン控除を利用するための重要な条件は以下の二つ。
なお、住宅ローン控除は初年度に確定申告が必要ですが、借り換えを行うことで再度確定申告が必要になるという事はありません(残高証明書の発行が遅れる場合を除く)ので、住宅ローン控除の利用が2年目以降で引き続き控除の対象になる方は年末調整で申請を行うことができます。
さらに、借り換え後に年末調整で住宅ローン控除を申請するうえでの重要ポイントもおさらいしましょう。
年末調整や住宅ローンについてまだ解決していない疑問がある方は以下の記事もおすすめです。ぜひ併せてチェックしてみてくださいね。
2022年から住宅ローン控除の税制が改正され、最大の控除率は従来の1%から0.7%に減少しました。
ただし、新しい税制が適用されるのは、2022年以降の入居の場合です。2021年以前の入居で、住宅ローンを借り換えた場合は、引き続き、改正以前の税制が適用されますので、控除率は最大1%になります。
住宅ローンを借り換えても、住宅ローン控除の適用期間は延長されません。
入居して住宅ローン控除を最初に受け始めたときの適用年数(10年または13年)がそのまま引き継がれますので、残りの年数だけ住宅ローン控除を受けられます。