【令和5年分】年末調整の扶養控除等申告書の書き方(記入例つき)
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、入社時や年末調整の時期に記入する書類です。 毎年ごとに、書類のフォーマッ…[続きを読む]
年末調整で提出する書類にはいくつか種類がありますが、とりわけ重要なのは「扶養控除申告書」でしょう。この記事では、扶養控除申告書に記入する「世帯主」とは誰なのか、どうやって記入すればよいのかケースごとに分かりやすく解説していきます!
年末調整の書類に出てくる「世帯主」とは誰でしょう? それを理解するにはまず「世帯」という言葉の意味を知る必要があります。
世帯とは「同じ家に住んでおり、生計を同一にしている集団」という意味です。
「生計を同一にしている」とは、生活費を共有しているという意味です。
多くの家庭では父親や母親の稼ぎで家族全員で生活していますよね? このような家庭は「生計を同一にしている」と言うことができます。一方、家族であっても住所が異なっていたり、同じ家に住んでいても生活費を分けている場合は「別世帯」となります。
では「世帯主」とは誰を指すのでしょうか?
世帯主の意味は法律で定義されており、簡単に説明すると「世帯の生活費をメインで負担している人」が「世帯主」とされています。とはいえ、誰が世帯主にならなければならないといった明確な決まりはありません。
多くの家庭では父親が世帯主となっているでしょうが、ある程度の収入がある母親や息子が世帯主になるケースもありますし、夫婦それぞれを世帯主とすることも可能です。当然、本人が世帯主となるケースもあります。
ただし、年末調整の申告書に記載する「世帯主」は、「家計をメインで支えている人」ではなく「住民票に世帯主として登録されている人」となることを頭に入れておきましょう。
年末調整では「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類を記入する際に世帯主が関係してきます。扶養控除等(異動)申告書には以下の世帯主に関する情報を記入して、勤務先に提出する必要があります。
これらの記入方法については次章で詳しく解説します。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、「あなたとの続柄」という欄があります。続柄とは、簡単に言えば「家族との関係性」という意味です。つまり、年末調整の申告書に記入するのは「世帯主との関係性」ということになります。
世帯主が父親や母親であれば続柄は「父」または「母」となり、世帯主が自分自身であれば続柄は「本人」と書けばOKです。年末調整の申告書に記入する続柄は「あなたから見た関係性」を記入するということです。
では、続けて世帯主が誰になるのか、具体的なケースについて解説していきます。
年末調整の申告書上、世帯主を「本人」と記入する方は次のようなケースに該当する方です。
住民票に世帯主として登録されている方が年末調整をする際は、世帯主は「本人」となります。
また、一人暮らしをしている方も本人が世帯主となります。「一人暮らしをしているが、生活費は親に送ってもらっている」という方もいるかと思いますが、この場合も世帯主は本人となります。
ただし、一人暮らしで経済的に独立している方でも、実家から住民票を移していなければ世帯主の続柄は「本人」とはなりません。この場合は住民票に記載されている世帯主、多くの場合は「父」か「母」と記入することになります。
年末調整の申告書上、世帯主を「父」と記入する方は次のようなケースに該当する方です。
学生でアルバイトをしている方の多くは世帯主が「父」となるでしょう。ただし母子家庭の方は「母」となりますし、母親の方が父親より稼ぎがいい家庭では住民票で母を世帯主として登録していることも考えられます。
また、実家暮らしの社会人の方は世帯主が「父」となるケースが多いでしょう。稼ぎが父より多かったり、家に生活費を入れている方も世帯主は父となっていることが多いと思われます。
年末調整の「世帯主」は住民票に記載されている世帯主となるため、自分を世帯主とした記憶がなければ世帯主は父となっていると考えるのが自然です。
年末調整の申告書上、世帯主を「夫」と記入する方は次のようなケースに該当する方です。
夫婦間で夫と妻のどちらが世帯主であるかは、どちらが住民票に世帯主として記載されているかによります。夫婦2人のことですし、このパターンは迷う方は少ないのではないでしょうか。
問題は別居や単身赴任等により、世帯主であった夫と別々に暮らしているケースです。別居にしろ単身赴任にしろ、住所が変わった際には住民票を移さなければなりません。例えば夫が単身赴任をして住民票を移した場合、夫と妻は別々の世帯ということになります。この場合、妻の世帯主は夫以外の人に変更します。
夫と別居していても何らかの事情により住民票を移していないというケースでは、世帯主は夫となります。年末調整の申告書に記載する世帯主は、あくまで住民票に記載されている世帯主です。これは婚姻関係以外の関係、例えば「親と別々に暮らしているが、住民票は移していない」という場合も同様です。
ここからはより具体的な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載方法について解説します。ご自身に該当するケースから読み進めてみてください。
世帯主が自分自身である場合には、年末調整の申告書に下記のように記載します。
あなたが実家暮らしである場合には、年末調整の申告書に記載する「世帯主」は下記のように記載します。
上記は一例です。母親が世帯主である家庭では、上記の「父」を「母」に置き換えて記載してください。
一人暮らしをしている方は、年末調整の申告書に下記のように記載します。
ただし、一人暮らしでも住民票を実家から移していない方は、実家の世帯主の氏名を記載します。実家の世帯主が父親であれば、父親の氏名を記載してください。
夫婦、または両親が共働きである場合には、年末調整の申告書に下記のように記載します。
夫婦で共働きの方は、稼ぎの額等にかかわらず、住民票に世帯主として記載された人を年末調整の申告書に記載します。例えば夫を世帯主として登録した方は、世帯主に夫の氏名を記載します。
両親が共働きであるという方も考え方は同じです。住民票に父親が世帯主として登録されていれば、年末調整の申告書の世帯主には父親の氏名を記載してください。
同棲や事実婚など、正式に結婚していない場合の世帯主は以下の3つのパターンが考えられます。
同棲や事実婚の場合、それぞれを世帯主とするのが一般的と言えます。それぞれの年末調整の申告書では、世帯主は以下のように記載します。
同棲や事実婚状態にある方は、どちらか1人を世帯主として登録することが可能です。世帯主となった側は、世帯主を「本人」と記載すれば良いので分かりやすいと思います。
一方、世帯主とならなかった側は以下のように記載します。
続柄は同棲の状況を考えて記載しましょう。例えばまだ同棲して間もない場合は「同居人」としておくのがいいでしょう。「夫(未届)」と記載すると事実婚の状態であると見なされます。
いわゆる半同棲のような間柄では、どちらか1人だけが住民票を移したり、または元々彼氏が住んでいた家に彼女が引っ越したりといったことも考えられます。
住民票を移した側は、世帯主を「本人」と記載します。一方、住民票を移さなかった側は、以下のように世帯主を記載します。
住民票を移していない方はいくつかのパターンが考えられます。実家から同棲相手の家に移住したが住民票を移していないという方は、実家の世帯主を記載します。
元々一人暮らしをしていて、住民票を移さずに同棲を始めた場合は、住民票の世帯主は「本人」となります。この辺りはケースバイケースで考えましょう。
「世帯分離」とは、同居はしているが住民票上で世帯を分けている状態のことをいいます。例えば結婚した子どもが親と同居しているケース場合には、世帯を分けていることも多いでしょう。 こういった世帯分離をしている方は、年末調整の申告書に下記のように記載します。
世帯分離をすると、同じ世帯に「父」と「子」の2人の世帯主が存在することになります。あなたが父であっても子であっても、年末調整の申告書に記載する世帯主は「本人」となります。
妻または子どもが年末調整の申告書を提出する場合には、妻の場合には「夫」、子の場合には「父」が世帯主となることが多いでしょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容は、その年の12月31日時点の情報に基づいて記載します。その年中に世帯主が死亡した場合には、同居している家族の中から新たに世帯主を決めなくてはなりません。
年末調整の申告書には、世帯主が死亡後に新たに世帯主となった人の氏名を記載します。
例えば夫に働くことができない理由が生じた場合等、世帯主を変更するケースもあります。この場合、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に新たな世帯主を記載すればOKです。
年末調整の申告書の記入を間違えてしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか? 記入ミスを訂正する方法と、誤った情報を記載したまま提出してしまった場合の対処法、それぞれについて解説します。
年末調整の申告書の記入を間違えてしまった場合、ついつい修正液や修正テープを使ってしまいそうです。しかし、修正液等を使用することはNGです。
正しい訂正の方法は、以下の手順により行います。
このように訂正すれば何も問題ありませんので、焦らず対処しましょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入した内容を間違えたまま勤務先に提出してしまった場合、どのように対処すれば良いでしょうか?
実は、法的に年末調整の期限は翌年1月31日までとされています。したがってその期限までであれば年末調整の修正を行うことが可能です。勤務先の担当者に「記載内容を間違えた」旨を説明して訂正してもらいましょう。
もし1月31日以降に記載ミスに気付いた場合、通常は自分で確定申告を行う必要があります。しかし、「世帯主の記載間違い」のみであれば、わざわざ確定申告を行う必要はありません。
と言うのも、世帯主の情報はあなたの所得税の金額や年末調整の還付金額に全く影響を及ぼさないためです。さらに、源泉徴収票にも世帯主の情報は記載されません。したがって世帯主の情報の訂正だけのために確定申告を行う意味がないのです。
ただし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には正確な情報が記載されていることが望ましいことは事実です。1月31日以降に世帯主の記載ミスに気付いた方は、勤務先の担当者に「世帯主の部分のみ記載を誤った」旨を伝えておくと良いでしょう。
いかがでしたでしょうか? 今回は年末調整書類に記入する「世帯主」について解説しました。最後に、この記事のポイントをおさらいしましょう。
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