【手続きが簡単に】新型コロナウィルス対策、雇用調整助成金の特例
新型コロナウィルス感染症の影響により、売上が減少している企業が多くあります。業務量が減った場合には、従業員に休業を命…[続きを読む]
この記事では休業手当を国が助成する制度、『雇用調整助成金』について解説します。
・「休業手当」の捻出に苦心している雇用主の方
・「休業手当」を貰いたいけれど上が動いてくれない従業員の方
上記に当てはまる方に、「雇用調整助成金」の基礎から自分で申請する方法まで、詳しくお伝えしていきます。なおこの記事は従業員が概ね20人以下の小規模事業主の皆様向けの内容です。従業員数の多い中小企業の方はこちらから、申請方法をご確認ください。
【引用】厚生労働省:雇用調整助成金
目次
雇用調整助成金とは、一言でいうと「従業員に支払う休業手当を国が助成してくれる制度」です。
今回のコロナ禍のように、
という制度です。そして「雇用調整助成金の新型コロナウィルス感染症特例措置」とは、
という事業者が急増している状況に対応するために導入された、「条件の緩和」「助成率の引き上げ」を含む特例措置のことを言います。
コロナ特例措置は当初2020年9月末までの期限を予定していましたが、事態の収束が見えない中、延長が繰り返されてきました。
2021年5月からは助成率と支給の上限が引き下げられると発表されていますが、まん延防止等
重点措置、緊急事態宣言が出ている一部の地域では現在の水準が維持されます。
2021年4月末まで、雇用調整助成金の助成率は解雇ナシで最大10割、一日あたりの上限額は一人15,000円ですが、5月6月は助成率は解雇ナシで最大9割、一日あたりの上限額は一人13,5000円に引き下げられます。
引用元|厚生労働省HP
表の「地域特例」に該当するのは、感染拡大地域(まん延防止等重点措置実施地域)で時短営業などに協力している企業です。
また、「業況特例」に該当するのは平たく言うと直近の売り上げが厳しい※全国の個人事業主です。
※生産指標(後述)が最近3か月の月平均で前(々)年同期比30%以上減少
【コールセンター】
0120-60-3999(9:00~21:00/土日祝含む)
感染拡大地域で自治体の要請に応じている企業や業績の悪化が著しい個人事業主については5月6月も特例的に助成率・助成額を維持するとしていますが、特例の対象外でも三度目の緊急事態宣言でダメージを受けている方はいるでしょう。
5月以降の雇用調整助成金につき、新しい情報が発表され次第随時おしらせします。
一般に「雇用調整助成金」の申請は社労士に依頼することができますが、現在、社労士のもとに多くの助成金申請書作成代理依頼が殺到しており、新たな依頼を受け付けていない社労士事務所も多くあります。
この記事では、社労士に依頼せずに雇用調整助成金の申請手続きを自分で行う方法をご紹介します。
支給までに必要な大まかなステップは下記の通りで、記事内で順を追って説明していきます。なお、5/19の手続き簡素化による変更箇所は下記の赤字部分です。
「新型コロナウィルス雇用調整助成金」を貰うためには、小規模事業主の場合次のチェックポイントを7つ全て満たしていることが条件です。まずはこの条件を確認していきましょう。
申請できる | 申請できない | |
---|---|---|
1 | 事業者(全業種) | 労働者個人 |
2 | 従業員が雇用保険に加入している※1 | 従業員が雇用保険に加入していない※1 |
3 | 新型コロナウィルスの影響による休業 | コロナに関係ない業績悪化による休業 |
4 | 支給した休業手当が賃金の60%以上※2 | 支給した休業手当が賃金の60%未満 |
5 | 休業により生産指標が低下※3 | 生産指標の低下が基準に満たない |
6 | 原則丸1日間休業している※4 | 休業を行っていない |
7 | 休業規模が一定以上である※5 | 休業規模が基準に満たない |
アルバイト・パート等で雇用保険に加入していない従業員を休業させた場合は、「緊急雇用安定助成金」という制度で、助成金が支給されます。こちらは「雇用調整助成金」と似ていますが別の制度ですので、別途、申請が必要です。
休業するときに労働者に支払う休業手当の額は、通常支払っている賃金の60%以上である必要があります。
今回のコロナ特措の場合、下記の基準が取り決められています。詳細は後の「生産指標とは?」で解説します。
部署・部門ごと等で、1時間以上の休業をさせても対象です。
休業規模とは「どのていどの人数・日数で休業したか」の指標で、詳細は後の「休業規模とは?」で解説します。
生産指標とは「雇用の変動と密接に結びつく指標」のことで、要するに「経営が厳しく従業員を一時休ませないといけない状態です」と主張する根拠となる数字です。
例えば「売上高」や「販売数」などが該当し、どの値をこの「根拠」とするかは申請者が自由に選ぶことができます。
この生産指標が、コロナによる影響で1ヶ月5%、あるいは10%低下していることを証明しなければいけません。
☑ポイント:新型コロナウィルス雇用調整助成金を貰う基準値
3月31日以前から休業 | 生産指標が1ヵ月10%以上低下 |
---|---|
4月1日~6月30日の間に休業 | 生産指標が1ヵ月5%以上低下 |
「生産指標が、コロナによる影響で1ヶ月5%、あるいは10%低下している」というのは、先月と今月を比べて出すものではありません。基本的には前年あるいは前々年の同月の生産指標と今年の生産指標を比べる必要があります。
以下の①②の2つのデータが必要です。
① 休業した月の生産指標(下表A)
② 過去の生産指標(下表B~Dのいずれか)
・休業した月が2020年5月の場合
A | 休業した月の生産指標 | 2020年5月の生産指標 |
---|---|---|
B | 前年(令和元年)同月の生産指標 | 2019年5月の生産指標 |
C | 前々年(平成30年)同月の生産指標 | 2018年5月の生産指標 |
D | 休業した月からさかのぼった1年間のうち任意の1ヶ月の生産指標 | 2019年6月~2020年4月の間のうち任意の1ヶ月の生産指標 |
Aの数字(マスト)と、B~Dの数字の内いずれか一つを用意する必要があるということです。原則としてBあるいはCが求められますが、経営難の証明が難しい場合はDも認められています。
休業規模とは、簡単にいうと、全従業員・全営業日のうち、どれくらいの割合で休業したかを示します。
今回の申請の場合、休業規模の規定を満たす条件は、「下記の質問にYESで答えられること」です。
今回の支給申請する1か月間(判定基礎期間)において、従業員2人あたり1日以上休業しましたか
下の式の計算結果が「1」以上になれば今回の規定を満たしているといえますので、申請書「支給申請書」の「休業の規模」欄で「はい」と答えましょう。
※休業延日数については申請書「休業実績一覧」の赤いセルに休業した従業員の勤務情報を記載すると自動で計算されます。
今回、助成額の算定や支給申請の方法が大幅に簡素化した「小規模事業主」とは、「従業員が概ね20人以下の事業主」といわれています。
ですが、雇用調整助成金の申請にあたり、ご自身が「小規模事業主」に当てはまるのか疑問に思われている事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚労省発行の資料によると、小規模事業主とは「常時雇用する労働者が概ね 20 人以下の事業主のことをいう」とあります。
厚生労働省東京労働局のHPによると「常時雇用する従業員」とは正社員だけを指すわけではないようです。正社員、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、下記のいずれかに当てはまる場合は「常時雇用する従業員」とみなされるようです。
5/29に発行された「雇用調整助成金 FAQ」に、下記の回答があります。
従業員が 20 人以下の事業主の方の利用を推奨しているところですが、これまでの方法を用いた助成額の算定が難しい場合などには柔軟に対応させていただきます。
基本的には従業員20人以下のケースを対象とした簡略措置であるものの、通常の算定や申請がどうしても難しい場合は小規模事業主として申請できるケースもあるということのようですので、従業員が20人を超える場合も、問い合わせや相談を行うことをお勧めいたします。
次に、「助成金額の上限」と「自分の場合の受給額」を確認しましょう。
雇用調整助成金は本来、下表のように「中小企業」か「大企業」かで上限金額が異なります。申請する賃金締切期間は
解雇を行う | 解雇を行わない | |
---|---|---|
中小企業 | 助成率4/5 | 助成率9/10 |
大企業 | 助成率2/3 | 助成率3/4 |
更に、令和2年5月1日付けで特例措置が拡大し、次の要件を満たすことで休業手当の助成率が100%になります。
※雇用調整助成金の上限は6/12から1日1人当たり、1,5000円に引き上げられました。
5/14記者会見で安倍首相は雇用調整助成金の上限額について「日額1万5000円に特例的に引き上げる」と述べました。その後国会で予算が確定し、6/12に厚生労働省から15000円への上限額拡充の公表がありました。
5/11 | 参院予算会議で上限額引き上げを検討する考えを表明 |
---|---|
5/14 | 「日額1万5000円に特例的に引き上げる」と発言 第2次補正予算案の編成を政府・与党に指示 |
5/27 | 閣議決定(拡充に充てる予算4,519億円) |
6/12 | 引き上げ実施 |
4/1日から9/30までの期間を1日でも含む賃金締切期間(判定基礎期間)における支給額の上限が日額15000円となります。
【6/15更新情報】上限金額が無事15000円に引き上げられたところで気になるのは、上限8,330円の段階で既に申請を行った人は差額を貰うことができるのか、ということでしょう。
厚生労働省の発表によると、今回の上限増額は「すでに受給した方・申請済みの方にも適用」とのことです。
早い段階で支給申請を行った企業の場合、既に「8330円」の基準で従業員への休業手当を支払っているケースもあるでしょう。そうした場合も下記の書類を提出することで、国がさかのぼって追加の助成金を支給してくれます。
☑従業員に休業手当を追加支給する場合の必要書類
従業員に対して追加で休業手当の増額分を支給する場合、再申請に必要な書類はこちらからダウンロードが可能です。提出期限は9月30日となっています。
雇用調整助成金の制度についての詳細は、こちらをご覧ください。(制度は日々変更されていますので、最新情報をご確認ください。)
この「雇用調整助成金」には現状、上限金額の問題以外にも
などの「難しさ」があることをふまえ、新たに「休業者給付金」という制度を策定することが発表されました。事業者向けの制度はなく、また詳細についても現状未定ではありますが、概要としては下記のとおりです。
申請者 | 中小企業の労働者 |
---|---|
給付額 | 平均賃金の8割 |
上限額 | 1日8330円※ |
備考 | 週20時間未満の労働者 パート勤務 アルバイト勤務の労働者も申請可能 |
※お気づきのとおり「休業者給付金」の上限額も雇用調整助成金と同額であり、同様に「15000円への引き上げ」が検討されています。
それでは、実際の受給額を計算していきましょう。
【5/19更新情報】厚生労働省より「助成額の算定方法を大幅に簡略化」についての詳細が発表されました。受給額の計算手順も簡素化しましたので、まずは簡略化版の試算方法をお伝えします。
まず、小規模事業主の方の場合、「平均賃金額」を使わず、実際の休業手当額による助成額の算定が可能となります。
☑小規模事業主の場合の新しい助成額算定方法
「助成額」= 「実際に支払った休業手当額」×「助成率」
なお、小規模事業主の場合は支給申請の方法も簡略化されましたので合わせてご確認ください。
従業員5名を5日間休業
失業手当として1人1日10,000円支払い、休業手当率100%、解雇者なし(助成率100%)のとき
助成額=「失業手当10,000円×5人」×「助成率100%」=50,000円
受給額の試算が完了したら、実際に休業を行い、助成金の申請手続きに移ります。
雇用調整助成金の申請手続きは、5つのパートに分かれています。順番に見ていきましょう。
従業員を休業させることは、その従業員の生活に大きく影響します。まずは、
などを従業員に説明し、従業員に納得してもらうことが一番重要です。
説明と同時に従業員の中から代表者(労働代表者)の選出を行いましょう。休業実施後、「事前の約束通りの形で休業したのか」「約束通りの形で休業手当を支払ったのか」を申請書に記載し、従業員の代表者に確認してもらう必要があります。(従業員代表の方の直筆による氏名の記入、あるいは押印が必要です)
※給与明細の写しなど休業手当の額が確定した書類があれば、賃金支払日の前でも申請することができます。
実際に休業の実施を行います。労働者代表に事前に確約したとおり休業を行い、従業員に休業手当の支払いを行います。
休業の実施後に雇用調整助成金の支給申請をハローワーク等に行います。申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内になっています。
※ 支給対象期間の初日が1/24~5/31の休業の申請期限は、特例により8/31までとなります。
支給申請後は、労働局で審査が行われ、書類に不備がない場合は、申請後約1ヵ月で支給が決定します。支払いまでのタイムラインは下図をご覧ください。
休業を実施したら、必要な書類をハローワーク等に提出し、支給申請を行います。
☑雇用調整助成金 支給申請先
助成金申請先のご案内
☑雇用調整助成金 コールセンター
0120-60-3999
受付時間:9:00~21:00(土日・祝日含む)
※5/27時点では比較的繋がりやすい印象がありました。
☑雇用調整助成金 オンライン申請
【8/25更新情報】6/5(金)に不具合が発生し受付を停止していた雇用調整助成金のオンライン申請ですが、8/25(火)12時に運用を再開しました。
今回発生した不具合は、1つの事業者が添付した申請資料(銀行口座や給与明細等を含む)がほかの事業者に閲覧されたというもの。直接の原因としては「ブラウザで前の画面に戻る操作を行った場合に、適切なデータを参照せず、特定の1社のデータを表示するプログラムミス」と発表していて、デバッグ不足でミスの検出ができなかったとしています。
外部の専門家による調査がはいり、8/25に運用再開となりました。なお、今回の件で外部からの不正なアクセス記録はないとのことです。
オンライン申請の詳細手順はこちらの記事でご紹介します。
☑オンライン申請の方法
5/19の手続き簡略化で、小規模事業主(従業員がおおむね20名以下)の支給申請が簡素化されました。申請様式は6種類から3種類に半減し、申請のマニュアルも公表されています。
エクセル版はこのページで、PDF版はこのページでまとめてDLできます。
申請書類のうち「特小第2号」の「休業実績一覧表」に休業の実績を記入します。(休業の実績を記入し、従業員との取り決め通りに休業を行えたのか労働者代表の方に確認・押印してもらう書類です)
申請書類のうち「特小第1号(別紙)」の「助成率確認票」でご自身の場合どの助成率に該当するか確認します。(休業手当支払い率により助成率が異なるため、ご自身の助成率を確認します)
申請書類のうち「特小第1号」の「支給申請書」に、売り上げの減少や休業の規模、助成額を記載します。
申請書類のうち「特小第3号」の「支給要件確認申立書(雇用調整助成金)」に記載されている事業活動等についての質問に「はい・いいえ」で答えて署名します。
手順2~5について、詳しくは厚生労働省のマニュアルからご確認いただけます。
窓口・郵送あるいは助成金オンラインシステムで必要書類を提出しましょう。
今回は、小規模事業主の雇用調整助成金の申請手続きの流れをご紹介しました。
雇用調整助成金制度を利用することは、会社の資金繰り、従業員の生活に大きく関係します。大切な会社、従業員の生活を守るために対象になる事業者は積極的に申請を行いましょう。
また、従業員を守るためには、雇用している従業員が公的医療保険に加入している場合は傷病手当金の受給を勧めるなどの方法もあります。さらに、経営が厳しい際は税金等の支払い猶予を利用したり、雇用調整助成金以外の支援策を随時確認することも重要です。
雇用調整金に関し、「助成対象になるのかわからない」「申請方法がわからない」という場合は、近くの都道府県労働局またはハローワークに相談をされてください。
生産性要件や、休業させた労働者の数と日数などは正確に記載する必要があります。
助成金の水増しや虚偽の申請が疑われる場合、労働局による立ち入り検査が行われます。実際に不正受給が発覚した場合は、事業所名の公表など厳しい措置が取られます。