固定資産税の延滞金はいつから、いくらかかる?

固定資産税の延滞金

固定資産税の支払い期限は自治体によって異なります。支払いが苦しくて期限までに支払いができなかったり、故意でなくてもうっかり支払い期限を過ぎてしまったり、どんな場合であれ支払いを滞納すると延滞金がかかります。この記事では固定資産税の延滞金がいつから、いくらかかるのか解説します。

1.固定資産税の延滞金はいつからかかる?

固定資産税の支払いが遅れた場合、いつから延滞金がかかるのでしょうか? まずは固定資産税の支払期限を把握したうえで、延滞金が発生する条件を確認しておきましょう。

(1)固定資産税の支払期限

まずは通常の固定資産税の支払いスケジュールについて解説します。固定資産税の納付書は毎年4月から5月初旬頃、自治体から送付されます。固定資産税の支払いは1年分を一括で支払う方法と、1年分を4回に分けて支払う方法とを選択することができます。

4回の分割で支払う場合の支払期限は自治体によって異なります。都道府県別の支払期限の一部を例に挙げると次のようになりますが、詳細は届いた納付書や自治体のホームページで確認してください。なお、一括払いの場合には第1期の納付期限までに支払う必要があります。

自治体 第1期分 第2期分 第3期分 第4期分
東京都 23区 6月末 9月末 12月末 翌2月末
神奈川県 横浜市 4月末 7月末 12月末 翌2月末
神奈川県 相模原市 5月末 7月末 9月末 翌2月末
埼玉県 さいたま市 5月末 7月末 12月末 翌2月末

※期限が土・日・祝日と重なる場合は、基本的に翌平日が納付期限となります。

(2)固定資産税の延滞金はいつからかかる?

納付期限を過ぎると、納付期限の翌日から納める日までの日数に応じて、法律で定められた割合で計算され「延滞金」が加算されます(延滞金の計算方法については後ほど詳しく解説します)。

ただし、延滞金が1,000円未満の場合は支払いが免除されます。したがって延滞金が発生するのは延滞金の金額が1,000円以上となった場合と言うことができます。

気になるのは「延滞金はどの程度支払いが遅れると発生するのか(どのくらい延滞すると延滞金が1,000円以上になってしまうのか)?」という点ではないでしょうか。これについては元の税額がいくらであるかによって変わるため、明確に「いつから延滞金が発生する」と明言することはできません。次で延滞金発生タイミングの具体例を挙げていますので、そちらを参考にしてください。

延滞金が発生するタイミングの具体例

所有している「土地・建物」の固定資産税を延滞してしまったと仮定していつから延滞金がかかるのか見ていきましょう。ここでは固定資産税の金額は「20万円」であるとします。

  • 30日の延滞……延滞金は発生しない
  • 43日の延滞……延滞金1,000円
  • 60日の延滞……延滞金1,800円

延滞金が1,000円未満の場合は延滞金はかかりません。したがってこの例では延滞発生~42日目までは延滞金はかからないこととなります。

ただし元の固定資産税の金額によって延滞金発生のタイミングは変わりますし、延滞金の利率は年によって変わるので必ずこの例の通りになるとは断言できません。延滞金の詳しい計算方法は後半で解説しますので、気になる方はそちらを参考にしてください。

(3)固定資産税を滞納するデメリット(延滞金以外)

固定資産税を滞納すると各自治体から納付期限を20日過ぎた頃に督促状が送られてきます。しかし、滞納には延滞金以外にも様々なデメリットがあります。

督促状が届いても滞納を続けると、滞納を解消するために財産調査や身辺調査が行われ、預貯金や給料の差し押さえが行われる可能性があります。

それでもなお解消できない場合には、家などの不動産が差し押さえられてしまう可能性もあります。さらには所有している宝石や絵画、装飾品など生活に支障がない贅沢品も差し押さえられ、競売によって現金化されて滞納分に充てられることも考えられます。

このような事態を避けるためには、支払う意思があることを示すことが肝心です。自治体に期限までの支払いが難しい旨を相談すれば分割払いなどの対応を認めてもらえる可能性があります。請求を無視すると事態が悪化してしまうと覚えておきましょう。

2.固定資産税の延滞金の支払い方法は?

固定資産税の支払いは納期限内であれば以下の方法により納付することが可能です。

  • 現金
  • 口座振替
  • ペイジー
  • クレジットカード
  • 電子マネー
  • スマホ決済アプリ

一方、延滞金の支払い方法にはどのようなものがあるのでしょうか。納期限を過ぎた場合には、コンビニエンスストアでは支払うことができなくなる場合があります。現金で支払う場合には、自治体の窓口もしくは金融機関で支払います。延滞金の支払方法は自治体によって異なりますので、詳細は自治体に確認してください。

3.固定資産税の延滞金が免除されることはある?

税金を支払うことができない「やむを得ない事情」がある場合には、延滞金の免除・減免が認められる可能性があります。具体的には以下のケースです。

  1. その資産が震災・風水害・火災などの災害によって被害を受けた、またはその資産が盗難にあった場合
  2. 本人または同一生計の親族が病気やケガをした場合
  3. 事業を廃止または休止した場合
  4. 事業について著しい損失を受けた場合
  5. 失業し、生活が困難であると認められる場合
  6. 税金等の減額・免除をしなければ、事業の継続や生活の維持が著しく困難になると認められた場合
  7. 事業または生活の状況により、その延滞金の納付が困難であるやむを得ない理由があると認められた場合

これらのケースに当てはまる場合には「延滞金減免申請書」という書類と上記の状況を証明できる書類を自治体に提出しましょう。必ず認められるとは限りませんが、審査が通れば延滞金の免除や減免を受けることができる可能性があります。詳しい申請方法は各自治体に問い合わせてください。

4.固定資産税の延滞金の計算方法は?

固定資産税の延滞金の計算方法は下記の計算式の通りです。

延滞金=滞納税額×延滞日数×延滞金率÷365

※滞納税額の1,000円未満の端数は切り捨て

延滞金率は納期の翌日から1ヶ月までと1ヶ月を超えた日からで利率が変わります。

期間 納期限1ヶ月以内 納期限1ヶ月経過後
令和2年1月1日~12月31日 2.6% 8.9%
令和3年1月1日~12月31日 2.5% 8.8%

なお、滞納税額が2,000円未満の場合は延滞金はかかりません。さらに、計算した延滞金が1,000円未満の場合には、納付する必要はありません。また、延滞金の100円未満の端数は切り捨ます。これらを元に延滞金計算シミュレーションを見ていきましょう。

滞納税額が5万円の場合の延滞金シミュレーション

令和4年4月30日が納期限で、5月31日(31日延滞)に支払った場合

50,000(滞納税額)×31(延滞日数)×2.5%(延滞金率)÷365=106.16...→106円

延滞金が106円と1,000円未満なので、延滞金は発生しません。

令和4年4月30日が納期限で、6月30日(61日延滞)に支払った場合

①~5月31日までの延滞金の計算
50,000(滞納税額)×31(延滞日数)×2.5%(延滞金率)÷365=106.16...→106円
②6月1日~6月30日までの延滞金の計算
50,000(滞納金額)×30(延滞日数)×8.8%(延滞金率)÷365=361.64...→361円
③合計
①106円+②361円=467円

滞納期間が1か月を超えるため、1か月以内の利率と1か月超の利率に分けて計算します。ただし、この場合も延滞金額(467円)が1,000円未満であるため、延滞金の支払いは生じません。

令和4年4月30日が納期限で、翌年の4月30日(365日延滞)に支払った場合

①~5月31日までの延滞金の計算
50,000(滞納税額)×31(延滞日数)×2.5%(延滞金率)÷365=106.16...→106円
②令和4年6月1日~令和5年4月30日までの延滞金の計算
50,000(滞納金額)×334(延滞日数)×8.8%(延滞金率)÷365=4,023.30...→4,026円
③合計
①106円+②4,026円=4,132円(4,100円の延滞金)
滞納期間が1年超の場合も、先ほどの例と同様に1か月以内と1カ月超に分けて計算します。このケースでは延滞金が1,000円以上であるため延滞金の支払いが生じます。なお、延滞金の100円未満の金額は切り捨てます。

滞納税額5万円の場合、延滞金はいつから発生する?

上記のケースでは、延滞金はいつから発生するのでしょうか?上記と同様に計算していくと、8月14日の時点(106日間滞納)で1,010円と延滞金が1,000円を超え、支払いが生じます。延滞金が発生するタイミングは元の税額と延滞日数によって異なるため、気になる方は上記の計算式を参考に計算してみましょう。

5.固定資産税の延滞金に関するよくある質問

ここからは固定資産税の延滞金に関するよくある質問と回答をまとめました。

(1)固定資産税の延滞金は損金に算入できますか?仕訳はどうすればよいですか?

固定資産税そのものの支払いは租税公課として経費計上が可能で、さらに損金算入も認められています。では、延滞金の支払は損金算入されるのでしょうか?

延滞金は「納期限に遅れた」という罰則的な性格を持つ支払いであるため、損金にはなりません。ただし会計上は経費として租税公課に計上する必要があります。

(2)固定資産税の延滞金に時効はありますか?

固定資産税も延滞金も時効は5年と定められています。しかし、督促状による請求や差し押さえなどが行われるとその時点で時効が中断しリセットされます。したがって事実上は時効は存在しないと言えます。

(3)固定資産税を滞納したまま家族に相続すると延滞金の支払い義務などはどうなりますか?

相続の際には「資産」だけでなく「負債」も相続の対象となるため、延滞金も相続されます。したがって相続人は延滞金を支払う必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は固定資産税の延滞金についてお伝えしました。固定資産税の延滞金は支払い期限を過ぎた一日目から発生し毎日加算されていきますが、延滞金が1,000円になるまでは支払い義務が発生しません。

うっかり滞納してしまった場合はできるだけ早く対応することをおすすめします。

【関連記事】固定資産税についてもっと詳しく!

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
服部 貞昭 プロフィール この監修者の記事一覧
\この記事が役に立った方は是非シェアをお願いします/
  • Pocket