医療費控除と通院の交通費|対象になるもの、ならないものは?
この記事では、医療費控除の対象になる交通費・対象外の交通費を整理して解説します。[続きを読む]
1年間で一定額以上の医療費を支払った場合、医療費控除を利用することで税金の還付を受けられる可能性があります。
医療費控除の計算には通院時の交通費も含めることができます。
この記事では、タクシー代は医療費控除の対象になるか、対象になる場合はどのように申請すればいいか詳しく解説していきます。
目次
通院や入院の際に利用したタクシー代は、医療費控除の対象となるのでしょうか?
通常、医療費控除の対象になるのは、
などです。
一方、通院や入院の際に利用するタクシー代は原則、医療費控除の対象にはなりません。
ただし、一定の条件を満たす場合にはタクシー代を医療費控除に含めることができます。
タクシー代のうち「一定の条件を満たし医療費控除の対象となるもの」とは、以下のようなケースです。
上記のケースはいずれもタクシー利用がやむを得ない状況であるため、医療費控除の対象となります。
なお、上記のようなタクシー利用で高速道路を利用した場合は、その高速道路代も医療費控除に含めることができます。
「緊急性が高い場合」や「やむを得ない場合」について具体的な例を挙げると、以下のようなケースが考えられます。
これらのケースはいずれも緊急性が高かったり、タクシーを利用するやむを得ない理由があると言えます。
本人だけでなく付き添いの場合でも、必要性があれば医療費控除の対象となるのは大きいですね。
ただ単に「電車よりタクシーの方が便利だから」といった個人的な理由でのタクシー利用は、医療費控除の対象にはならないので注意してください。
医療費控除の対象となる交通費については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方は参考にしてください。
医療費控除を利用する場合、領収書の保存は必須なのでしょうか?
領収書を紛失してしまった場合の対処法についても解説します。
タクシー代を医療費控除に含める場合、領収書を保管しておくことが必要となります。確定申告後5年間は領収書の保管が義務付けられているためです。
領収書を確定申告書に添付して税務署に提出する必要はありませんが、税務署に提出する必要がないからといって領収書を捨ててしまわないよう注意しましょう。
後日税務署から提出を求められる可能性もありますし、その際に領収書を提出できなければ控除が認められなくなる可能性があります。
ここからは「タクシー代の領収書をもらい忘れた・紛失してしまった」場合の3つの対処法を解説します。
なお、これらはあくまで「領収書が無い場合の臨時の対処法」です。領収書を保管しておくことが原則であることは頭に入れておきましょう。
領収書を紛失してしまった場合、タクシー会社に領収書の再発行が可能であるか問い合わせてみましょう。
緊急の場合は自宅まで配車を依頼している可能性も高いので、通話履歴などから調べることも可能です。
ただし、タクシー会社には領収書を再発行する義務はありません。
対応してくれるかどうかはタクシー会社によって異なりますが、まずは再発行の問い合わせをしてみることをおすすめします。
タクシー代をクレジットカードで支払っていれば、クレジットカード明細に「利用したタクシー会社」「日付」「金額」などが記載されているはずです。
領収書と同様の内容が記載されていれば、クレジットカード利用明細を領収書の代わりとすることも可能です。
Suicaなどの交通系ICカードや電子マネーなど、利用履歴をさかのぼって確認できる場合はその画面を保存しておきましょう。こちらも「利用したタクシー会社」「日付」「金額」などが確認できれば領収書の代わりとすることができます。
ただし、Suicaなどの利用履歴は遡れる期間や件数が限られているため、タクシー利用から時間が経っている場合は確認できない可能性があります。
①~③の方法で解決しない方は、出金伝票を作成して保管しておきましょう。
出金伝票は自分で作成したものであるため証明書としての効力は領収書より低いですが、何も情報を記録していないよりは控除を認められる可能性が高くなると思われます。
出金伝票には以下の内容を記録しておきましょう。
タクシー利用の内容は「骨折による〇〇病院通院のため」などとできるだけ詳細に記録しておきましょう。
ただし、出金伝票は必ずしも認められると断言はできません。後日税務署から領収書の提出を求められた場合、控除を認められない可能性もある点には留意してください。
確定申告書と医療費の明細書を作成して税務署に提出します。医療費の明細書を作成する際に、タクシーの領収書を見ながらいくらかかったか記入することになります。
「確定申告書等作成コーナー」で必要事項を入力し、オンラインで確定申告書を作成します。作成した確定申告書のデータはそのままオンラインで提出することになります。
この場合、自分で医療費の明細書を作成する必要はありませんが、医療費控除についての入力画面でタクシー代について入力することになります。
手書きで確定申告を行う場合、タクシー代を医療費控除に含めるためには「医療費控除の明細書」に必要事項を記入し、確定申告書とあわせて税務署に提出しなければなりません。
「医療費控除の明細書」には領収書に記載されている情報を記入する必要がありますので、領収書を手元に準備しておきましょう。
医療費控除の明細書の「2.医療費の明細」の欄に以下の事項を記入します。
タクシー代は領収書1枚ごとに記入する必要はありません。「医療を受けた人」「支払先のタクシー会社」が同じ場合はまとめて記入することが認められています。
例えば、「歩行が困難な方が同じタクシー会社のタクシーを4回利用した場合」は4回の合計額を記載して良いことになっています。
「医療費の区分」欄は「その他の医療費」にチェックを入れます。
明細書の書き方について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
複数のタクシー会社を利用した場合、医療費控除の明細書に書ききれない可能性があります。この場合、「医療費控除の明細書(次葉)」という書類に続きを記入しましょう。
また、「〇〇交通ほか」などと複数のタクシー会社をまとめて記入することも認められています。書ききれない場合はいずれかの方法で明細書を作成してください。
通院や入院の際に利用するタクシー代は、一定の条件を満たさない限り医療費控除の対象にはなりません。
病状から見て緊急性が高いケースや、公共交通機関が利用できないケース(深夜帯など)のように、タクシー利用がやむを得ない状況であればタクシー代も医療費控除の対象となりえます。
タクシー代は原則として医療費控除の対象外ですが、緊急を要する場合や、公共交通機関が利用できない何らかの理由がある場合は、医療費控除の対象として認められます。
内容をきちんと証明できれば税務署も柔軟に対応してくれます。
緊急を要する場合などは、領収書の発行等忘れがちですが後日再発行できる場合などもあります。
落ち着いてからで良いですが、確定申告書の提出までに領収書の整理等は忘れないようにしましょう。