【2025最新版】医療費控除とは?税金が還付される仕組みと申請方法を解説
年間に10万円を超える医療費を支払った場合は、確定申告で「医療費控除」の適用を受けると、所得税・住民税の一部が還付さ…[続きを読む]
高額な医療費を支払った場合に、一部のお金が戻ってくる制度として、「高額療養費制度」と「医療費控除」の2つがあります。なんとなく混同しがちな制度ですが、まったく違うものです。
「高額療養費制度」と「医療費控除」の違いや、それぞれの申請方法、申請先などについて、詳しく解説します。
高額医療費の支給制度(「高額療養費制度」)と「医療費控除」は、どちらも個人が支払った医療費の負担を軽減するための制度ですが、その内容や必要な手続きは大きく異なります。
「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の額が1か月で上限額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた額が健康保険から支給される制度です。
高額療養費制度の重要なポイントは以下の4つです。
自己負担限度額は、69歳以下と70歳以上で異なりますが、ここでは、69歳以下の場合をあげておきます。
所得区分(※1) | 年収の目安(※2) | 一ヶ月の自己負担限度額 |
---|---|---|
標準報酬月額83万円以上 | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
標準報酬月額53万〜79万円 | 年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
標準報酬月額28万〜50万円 | 年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
標準報酬月額26万円以下 | 年収約100万円~約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 年収約100万円以下 | 35,400円 |
※1 会社員・公務員で健康保険に加入している人の標準報酬の区分のこと。実際の給与額とは異なります。
※2 年収は給与所得者の目安ですので、扶養家族や適用する控除の内容によって異なります。
たとえば、1か月に100万円の医療費がかかった場合、3割負担では、自己負担額は30万円です。そのうち、自己負担の上限額は、次のようになります。
戻ってくる金額は、
一方、「医療費控除」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の額が1年間で10万円(※)を超えた場合、その超えた額について所得税と住民税が安くなる制度です。
※総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%
医療費控除では、健康保険が適用できる医療費だけでなく、自由診療の医療費も対象です。
二つの制度の違いを表でまとめました。
高額療養費制度 | 医療費控除 | |
---|---|---|
申請方法 | 申請先へ書類提出 | 確定申告 |
申請先 | ・国民健康保険⇒市区町村の役所 ・健康保険⇒加入している健康保険組合 (協会けんぽなど) |
税務署 |
計算期間 | 1か月(月初~月末) | 1年(1月1日~12月31日) |
負担軽減 の仕組み |
上限額を超えて支払った医療費の額が 申請先から支給される |
年間10万円を超えて支払った医療費の額が 所得から控除されて所得税・住民税が減額される |
対象 | 健康保険適用対象の医療費のみ | 治療・療養が目的のすべての医療費 (美容・健康増進に関連するものは対象外) |
「高額療養費制度」と「医療費控除」はそれぞれ別の制度ですので、併用することが可能です。というより、併用すべきだといえるでしょう。
高額療養費制度は1か月の医療費が限度額を超えていたら申請できます。支給されるのは、上限額(自己負担限度額)を超えた部分ですので、超えない部分は戻ってきません。その戻ってこなかった分は、医療費控除を利用すれば、所得税と住民税が安くなります。
通常の手順としては、先に高額療養費制度の申請、そして、1年経過後に、医療費控除の申請となります。
まず、1か月の医療費が限度額を超えた時点で、高額療養費の申請をします。
「高額療養費支給申請書」と、医療機関の領収書のコピー等を、市区町村の窓口(国民健康保険)または健康保険組合の窓口に提出します。支給が決定されると、たとえば国民健康保険の場合は「国民健康保険高額療養費決定通知書」が郵送され、そこに支給額が記載されています。
申請から振込まで通常、3~5か月くらいはかかりますので、早めに申請しましょう。高額療養費の申請期限は、診療を受けた月の翌月1日から2年以内です。
1年経過したら、医療費控除の申請をします。医療費控除は翌年以降に税務署で確定申告を行います。インターネットでも電子申告(e-Tax)できます。
高額療養費制度で支給を受けた場合は、その受けた金額を引いて申請します。
たとえば、健康保険適用後(窓口負担)の医療費の額が50万円で、高額療養費制度によって30万円の支給を受けたときは、医療費控除で利用する医療費の額は50万円ではなく20万円です。
医療機関の窓口で支払った金額(医療機関の領収証に記載されています)から上記の「決定通知書」に書かれた支給額を引いた金額を、「医療費控除の明細書」に記入します。
具体的な記入方法や確定申告の方法については、こちらをご覧ください。
通常の確定申告の期間は、2月16日~3月15日ですが、医療費控除だけする場合は、5年後の12月31日まで大丈夫です(2024年分の申告については、2029年12月31日まで可能)。
高額療養費の申請には、医療機関から受け取った領収証の原本の提出が必要な場合があります。
ここでコピーを取っておかないと、医療費控除計算時に医療機関で支払った金額が分からず困ることになる可能性がありますので、原本を提出する場合は必ずコピーを取って提出するようにしましょう。
医療費控除の確定申告では、医療機関の領収証の添付は不要ですが、確定申告期限から5年間はコピーを保管する必要がありますので、確定申告が終わったからといってすぐにコピーを捨てないようにしてください。
高額療養費の支給が確定申告期限に間に合わない場合は、支給額の見積額を自分で計算して、窓口で支払った金額からその見積額を引いた金額を医療費控除の計算で使用します。
その上で、見積額と実際の支給額との間に差があって、確定申告済みの所得税額が変動する場合は、それぞれ、次の手続きを行います。
ちなみに、税額が増える場合は、修正申告が必ず必要ですが、税額が減る場合は、更正の請求をするかどうかは任意です。納税した税金が少ないのは問題ですが、多すぎる分には誰も文句はないというわけです。
とはいっても、後で申告をし直すのは大変です。医療費控除だけであれば「還付申告」といい、確定申告を行う年の1月1日から5年以内であれば可能ですので、高額療養費の支給額が確定してから申告することをオススメします。
ここからは、高額療養費を受給するための申請方法を具体的に説明していきます。
支給の申請方法や手続きは、加入している健康保険・医療保険によって異なりますが、健康保険・医療保険の提出窓口に申請書を提出または郵送する方法によって申請するのが一般的です。以下では、例として「国民健康保険に加入している神戸市民の場合」における申請の方法などについて紹介します。
国民健康保険に加入している場合、自治体にもよりますが、たとえば神戸市の場合、高額療養費の支給額が1,000円以上あることが見込まれ、かつ保険料の未納がないときは、高額療養費の支給申請書が市から郵送されてきます(請求せずとも郵送されてきます)。
被保険者は、その郵送されてきた申請書に必要事項を記入して、同封の返信用封筒にて申請書を提出します。
一方、たとえば盛岡市では、自治体から申請書が送付がされてくるわけではないため、ご自身で役所の窓口に赴くか、自治体のHPで申請書をダウンロード・印刷して必要事項を記入したものを郵送します。なお、窓口で申請する際に必要な持ち物はお住まいの自治体のHPで確認する必要がありますが、最低限下記を持っていきましょう。
会社員の方は国民健康保険ではなく社会保険(健康保険)に加入しています。その場合は加入先の医療保険のHPで申請書をダウンロードして送付しましょう。
診療日の翌月1日から2年を過ぎると、時効により申請することができなくなります。
次の書類の提出が必要です。
「国民健康保険高額療養費支給申請書」において、申請者が記載するのは、「申請者記入欄」の欄です。記入が必要なのは次の事項です。
高額療養費制度では「自己負担額」を超える医療費を支払った時にその差額が支給されます。それではこの自己負担額とは実際いくらぐらいなのでしょう。支給される金額や時期はどうなっているのでしょうか、確認していきましょう。
高額療養費の支給は、病院などの窓口で医療費を支払った日から数えて概ね3~4か月後に行われます。
この間は、支給される分の医療費をいわば「立て替えている」状態になるので、その金銭的負担が苦しい方向けに、次の制度が用意されています。
「高額療養費貸付制度」は、高額療養費支給見込額の8割から9割程度を無利息で貸付する制度です。たとえば、国民健康保険に加入している永平寺町民の場合、永平寺町への申請によって高額療養費支給見込額の8割の貸付を受けることができます(高額療養費支給時に、残りの2割が支給されます)。
「限度額適用認定証」は、これを医療機関の窓口で提示すると、医療機関に支払う金額が高額療養費制度の支給額を控除した金額で済むようになるものです。この認定証の申請は、国民健康保険の場合お住まいの市役所・区役所で行います。
高額医療費の自己負担額は、次の要素で変動します。
国民健康保険の場合、被保険者の年齢が70歳未満の場合の自己負担額は次のとおりです。なお、「所得」とは、収入から必要経費を引き、更に基礎控除額(2020年は33万円、2021年以降は43万円)を控除した金額をいいます。
被保険者の所得 | 自己負担額の計算式 | 自己負担額の例 [月の医療費が10万だった場合] |
---|---|---|
901万円超 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 100,000円 (全額自己負担) |
600万円超 901万円以下 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 100,000円 (全額自己負担) |
210万円超 600万円以下 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 80,100円 (支給額は19,900円) |
210万円以下 | 57,600円 | 57,600円 (支給額は42,400円) |
市民税非課税世帯 | 35,400円 | 35,400円 (支給額は64,600円) |
被保険者の所得が大きくなるほど自己負担額が大きくなる(支給額が下がる)ことがお分かりいただけるかと思います。
自己負担額は世帯(被保険者と被扶養者)で合算することができます。また、自己負担額の計算は原則として医療機関ごとに行いますが、同じ医療機関でも入院(歯科以外)、外来(歯科以外)、入院(歯科)、外来(歯科)はそれぞれ別のものとして扱います。
なお、70歳未満の方は、上記の区分で算定した自己負担額が21,000円を超えるものについてのみ合算を行うことができますが、70歳以上の方は全て合算することができます。
上記を踏まえて、世帯合算の簡単な事例を紹介します。以下のような家族があったとしましょう。
家庭内に複数の被保険者がいる場合、扶養される者(たとえば子ども)はどちらの被扶養者となるかという問題があります。この点、健康保険が政府管掌であったときに出された通達によれば、原則としては年収の高い方の被扶養者となるとされているため、この事例もそのように設定しています。
高額療養費として支給を受けた月数が1年間(直近12ヵ月間)で3か月以上あったときは、4か月目から自己負担限度額がさらに引き下げられますが、この制度のことを「多数該当」といいます。
被保険者の年齢が70歳以上75歳未満の場合の自己負担額の計算は、70歳未満の場合と比べるとかなり複雑です。以下、概要だけを簡潔に紹介します。
世帯区分は、被保険者の収入に応じて以下の3グループに分かれます。
「一般」及び「低所得」では、外来と入院で自己負担額の計算が異なります。外来は個人単位、入院は世帯単位で計算します。
また、「現役並み」は更に以下の3グループに分かれます。
いかがでしたでしょうか。今回は高額療養費制度と医療費控除について解説しました。最後にこの記事のおさらいをしましょう。
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