年金受給者の医療費控除|確定申告が必要なケースとは?

老人夫婦

公的年金を受給している場合、基本的には確定申告が不要なケースも多いです。ただし、医療費控除を利用するには年金受給者でも確定申告が必要です。

この記事では、公的年金受給者の確定申告と医療費控除について解説します。

1.年金受給者の場合、いくらから医療費控除を利用できる?

(1)医療費控除の利用は医療費が10万円から?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の金額を超えた場合、その超えた医療費の金額を所得から控除し、所得税と住民税を減額することができる制度です。

医療費控除を受けることができる目安になる金額は「10万円以上」と言われていますが、この金額は「所得金額が200万円以上の人」の場合であり、所得金額が200万円未満の人の場合は「所得金額の5%を超える医療費」が対象になります。つまり、所得金額が少なければ、10万円以下の医療費の支払いであっても、医療費控除を受けることができるのです。

 

<医療費控除の計算式>

 

  • 所得金額が200万円以上の人
    ⇒1年間で支払った医療費の合計額-保険金などの補填額-10万円=医療費控除の額
  • 所得金額が200万円未満の人
    ⇒1年間で支払った医療費の合計額-保険金などの補填額-(所得の金額×5%)=医療費控除の額
    ※医療費控除の限度額は200万円

(2)年金受給者の所得金額の計算方法

医療費控除をいくら受けることができるかの判定には「その年の所得金額」が基準になります。公的年金受給者の場合の所得金額とは、受け取った年金額そのものではなく、受け取った年金から「公的年金等控除額」を差し引いた金額が所得金額になります。

 

<公的年金の所得金額の計算>

 

 

受け取った年金の金額-公的年金等控除額=公的年金等にかかる雑所得の金額

 

年金の額から差し引くことができる「公的年金等控除額」は、年金受給者の年齢が65歳以上なのか、それとも65歳未満なのかで計算式が異なります。

公的年金控除
(出典:日本年金機構 )

例えば、65歳以上の人で受け取る年金額が240万円であった場合、公的年金等控除額は110万円になり、公的年金等にかかる雑所得の金額は240万円-110万円=130万円になります。医療費控除の目安になる金額は130万円×5%=6万5,000円になりますので、医療費を6万5,000円超支払っている場合には医療費控除を受けることができます。

ただし、公的年金以外に所得がある場合には、年金と他の所得を合算しなければなりませんので医療費控除の金額が少なくなる場合があります。

(3)65歳以上の場合は310万円が境目

65歳以上の人の医療費控除の境目は「年金受給額310万円」です。

年金受給額が310万円以上の場合には、所得金額が200万円以上になるため、10万円以上の医療費が対象になります。年金受給額が310万円未満であれば、医療費の支出が10万円以下であっても医療費控除を受けることが可能です。

※65歳未満の人の場合は、年金受給額303万3,333円が医療費控除の境目です。

2.年金受給者が医療費控除を受けるメリットは?

年金受給者が医療費控除を受けるメリットは「税金の負担を減らせること」です。医療費控除を受けることより、所得税を少なくすることができ、年金から所得税が天引きされている場合は「所得税の還付」を受けることが可能です。

また、医療費控除は、所得税を少なくするだけではなく、所得をもとに税金を計算する住民税も少なくすることができます。

(1)医療費控除で軽減できる税金の目安

所得税額が発生する場合に医療費控除により軽減される税額は、少なくとも医療費控除の金額の15%(所得税率5%、住民税率10%)になります。(所得税の税率は所得金額により5%~45%になります。住民税は一律10%です。)

次のモデルケースをもとに医療費控除で軽減できる税金の目安を見てみましょう。

  • 65歳以上
  • 公的年金の受給額240万円(=所得は130万円)
  • 社会保険料15万円
  • 年間の医療費合計額20万円(保険金などはなし)

医療費控除を受けない場合

医療費控除を受けない場合、所得金額・所得控除額・課税所得金額はそれぞれ次のようになります。

  • 所得金額 年金受給額240万円-公的年金等控除額110万円=130万円
  • 所得控除額 社会保険料15万円+基礎控除48万円(住民税43万円)=63万円(住民税58万円)
  • 課税所得金額 130万円-63万円=67万円(住民税の課税所得金額72万円)

これをふまえて所得税・住民税の金額を計算すると以下のようになります。

  • 所得税額 67万円×所得税率(復興税を含む)5.105%=3万4,200円(百円未満切り捨て)
  • 住民税額 (72万円×住民税率10%)-調整控除2,500円+均等割り5,000円=7万4,500円
    ⇒合計額 10万8,700円

医療費控除を受けた場合

医療費控除を受ける場合、所得金額・医療費控除の金額・所得控除額・課税所得金額はそれぞれ次のようになります。

  • 所得金額 年金受給額240万円-公的年金等控除額110万円=130万円
  • 医療費控除の金額 医療費20万円-(130万円×5%)=13万5,000円
  • 所得控除額 社会保険料15万円+13万5,000円+基礎控除48万円(住民税43万円)=76万5,000円(住民税71万5,000円)
  • 課税所得金額 130万円-76万5,000円=53万5,000円(住民税の課税所得金額58万5,000円)

これをふまえて所得税・住民税の金額を計算すると以下のようになります。

  • 所得税額 53万5,000円×所得税率(復興税を含む)5.105%=2万7,300円(百円未満切り捨て)
  • 住民税額 (58万5,000円×住民税率10%)-調整控除2,500円+均等割り5,000円=6万1,000円
    ⇒合計額 8万8,300円

モデルケースでは、医療費控除を行うことで所得税と住民税の合計で2万400円減額できます。

所得税については、年金受給額が65歳未満の方は108万円、65歳以上の方は158万円を超えた場合に年金から所得税が天引きされます。毎月の年金から天引きされている金額の合計額が所得税額よりも多い場合に還付を受けられます。住民税については、課税と納付に差があるため、翌年の住民税の納付額が少なくなります。

3.年金受給者の医療費控除で所得税の還付を受けられないケース

医療費の支払いがあったとしても、ケースによっては医療費控除により所得税の還付が受けられないことがあります。

(1)保険金などをもらった場合

医療費控除の対象になるものは、支払った医療費から「保険金などの補填額」を差し引いた金額です。入院などで支払った医療費よりも受け取った保険金が多いケースについては、その医療費の支払いは医療費控除の対象になりません。また、高額療養費を受け取った分は支払った医療費から控除しなければなりません。

(2)年金から源泉徴収されていない

年金受給額が65歳未満の方は108万円、65歳以上の方は158万円を超えた場合に年金から所得税が天引き(源泉徴収)されることになります。

医療費控除を受けることで、源泉徴収された税金の還付を受けることができますが、そもそも年金から源泉徴収されていない場合は還付される所得税がないため、所得税が還付されることはありません。

4.年金受給者が確定申告で医療費控除を受ける方法・必要書類

医療費控除を受けるためには「確定申告」が必要です。確定申告には、所得の種類や受ける控除によって必要書類が異なりますので、ご自身の申告に必要な書類を見極めなければなりません。

収入が年金のみの方の場合には、一般的に次のような書類を準備し、確定申告書を提出する必要があります。

(1)確定申告に必要な書類

  • 確定申告書
  • 年金の源泉徴収票
  • 国民健康保険、国民年金の支払証明書
  • 生命保険・地震保険等の控除証明書等
  • 支払った医療費の領収書、健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」、受け取った保険金がある場合は通知書
  • マイナンバーカード(ない場合は、通知カードや住民票+運転免許証などの本人確認書類)
  • 還付先の金融機関名と口座番号が分かるもの

(2)確定申告の期限

確定申告の提出期間は2月16日から3月15日までになっています。医療費控除を受ける場合は、3月15日までに確定申告書を提出しなければなりません。ただし、医療費控除を行うことで所得税が還付になる「還付申告」を行う場合は、その年の翌年1月1日から5年間、確定申告書を提出することができます。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2023年時点)。
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