基礎控除引き上げ「178万円の壁」で年金生活者の税金負担も大幅減!
先日行われた衆院選で議席数を4倍に増やした国民民主党が「基礎控除等の引き上げで年収の壁を178万円にする」提言を行っ…[続きを読む]
2024年10月27日に行われた衆議院選挙で自民・公明党が大敗するとともに、野党が議席数を伸ばしました。特に、国民民主党が7→28議席と4倍に議席数を増やしました。
その国民民主党が、所得税・住民税の基礎控除を75万円引き上げて、「103万円の壁」を「178万円の壁」にすることで、国民の税金負担を減らして経済を活性化する政策をうちだしています。
もし、基礎控除額が引き上げられたら、いくら減税されるのかを検証しました。
目次
所得税・住民税の基礎控除を75万円引き上げた場合と現状のままの場合で、税金負担がどのくらいで、いくら減税されるかを、年収別にシミュレーションしてみました。
給与年収 | 現在の税金負担 | 基礎控除 +75万円 での税金負担 |
減税額 | 年収に対する 減税割合 |
---|---|---|---|---|
2,000,000 | 88,800 | 5,000 | 83,800 | 4.19% |
3,000,000 | 170,600 | 57,300 | 113,300 | 3.78% |
4,000,000 | 261,000 | 147,700 | 113,300 | 2.83% |
5,000,000 | 383,500 | 249,600 | 133,900 | 2.68% |
6,000,000 | 513,200 | 361,600 | 151,600 | 2.53% |
7,000,000 | 689,100 | 499,100 | 190,000 | 2.71% |
8,000,000 | 924,900 | 696,700 | 228,200 | 2.85% |
9,000,000 | 1,199,300 | 971,100 | 228,200 | 2.54% |
10,000,000 | 1,487,000 | 1,258,900 | 228,100 | 2.28% |
12,000,000 | 2,102,600 | 1,851,500 | 251,100 | 2.09% |
15,000,000 | 3,247,600 | 2,919,900 | 327,700 | 2.18% |
20,000,000 | 5,387,600 | 5,059,900 | 327,700 | 1.64% |
給与年収 | 現在の税金負担 | 基礎控除 +75万円 での税金負担 |
減税額 | 年収に対する 減税割合 |
---|---|---|---|---|
2,000,000 | 86,300 | 5,000 | 81,300 | 4.07% |
3,000,000 | 166,800 | 53,500 | 113,300 | 3.78% |
4,000,000 | 256,000 | 142,700 | 113,300 | 2.83% |
5,000,000 | 375,500 | 243,600 | 131,900 | 2.64% |
6,000,000 | 503,400 | 351,800 | 151,600 | 2.53% |
7,000,000 | 672,200 | 487,900 | 184,300 | 2.63% |
8,000,000 | 904,900 | 676,700 | 228,200 | 2.85% |
9,000,000 | 1,177,400 | 949,200 | 228,200 | 2.54% |
10,000,000 | 1,462,700 | 1,234,500 | 228,200 | 2.28% |
12,000,000 | 2,071,100 | 1,820,000 | 251,100 | 2.09% |
15,000,000 | 3,194,200 | 2,866,500 | 327,700 | 2.18% |
20,000,000 | 5,329,600 | 5,001,900 | 327,700 | 1.64% |
2024年の平均年収は約450万円ですので、平均的に11~13万円くらい減税されることになります。
年収に対する減税割合で見ると、低所得者ほど減税割合が大きく、手取りの割合が増えることになります。
高所得者ほど優遇されているという意見がありますが、日本の所得税は累進課税制度で、高所得者はもともと多額の所得税を課されていますので、減税額が大きくなるのは当然といえます。
参考までに、年金受給者の減税額については、次の記事をご覧ください。
ご自身の年収や家族構成では、いくら減税されるのか、計算できるツールを用意しました。ご自由にご利用ください。
「基礎控除」とは「所得控除」の一つです。
所得税の計算では、次の図のように計算します。
「所得」から「所得控除」を引いて、課税される所得(税金がかかる所得)を計算します。
「所得控除」には、有名なものとして、配偶者控除、扶養控除、医療費控除などがありますが、基礎控除もこの仲間です。
基礎控除は、所得2,500万円以下(給与収入2,695万円以下)の人であれば、誰でも利用できます。
金額は、所得によって少し異なりますが、所得2,400万円以下(給与収入2,595万円以下)の人は全員一律で、所得税は48万円、住民税は43万円です。
所得2,400万円を超える人の割合は、わずか0.3%程度ですので、日本で収入のある人のほぼ全員が、基礎控除を受けていると考えて良いでしょう。
基礎控除額は、物価の上昇とともに、少しずつ上がってきましたが、近年は、大幅な物価の上昇はなく、基礎控除額も一定でした。
期間 | 基礎控除額 |
---|---|
1970年(昭和45年) | 18万円 (17万7500円) |
1971年(昭和46年) ※同年に改正があり適用せず |
19万円 (18万7500円) |
1971年(昭和46年)~1972年(昭和47年) | 20万円 (19万5000円) |
1973年(昭和48年) | 21万円 (20万7500円) |
1974年(昭和49年) | 24万円 (23万2500円) |
1975年(昭和50年)~1976年(昭和51年) | 26万円 |
1977年(昭和52年)~1983年(昭和58年) | 29万円 |
1984年(昭和59年)~1988年(昭和63年) | 33万円 |
1989年(平成元年)~1994年(平成6年) | 35万円 |
1995年(平成7年)~2019年(令和元年) | 38万円 |
2020年(令和2年)~ | 48万円 |
※カッコ内の金額は法律施行の年度のみ適用
※2020年(令和2年)に基礎控除額が38万円→48万円に引き上げられたのは、物価の要因ではなく、給与所得控除額が10万円引き下げされたため、整合性をとるためです。
1970年代は、経済状況に対応するために、毎年のように基礎控除が改正されました。1971年(昭和46年)には2回も改正されました。
基礎控除について、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
国民民主党は、基礎控除額を75万円引き上げる政策を提言しています。
【拡散希望】
国民民主党の公約である所得税の控除(基礎控除+給与所得控除)を103万円→178万円に引き上げる政策は、学生アルバイトやパートの皆さんだけに恩恵のある政策ではありません。… pic.twitter.com/6t1gamdZBJ— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) October 22, 2024
具体的にどう引き上げるかは今後の検討だと思われますが、仮に、所得税も住民税も一律で引き上げるとしたら、このようになります。
今までは、所得48万円以下(給与年収103万円以下)の場合は所得税がかからず、これを超えると所得税が発生するため「103万円の壁」と呼ばれていました。
基礎控除額を75万円引き上げると、所得123万円以下であれば所得税がかからなくなります。
給与年収で考えた場合、現在の103万円に75万円を足すと178万円になるため、「178万円の壁」に移動すると言われているようです。
ちなみに、「178万円」は正確には正しくありません。
なぜかというと、「178万円」というのは給与年収のことを指していますが、「基礎控除75万円引き上げ」というのは、所得のことを指しています。所得を給与年収に換算するときは、単純に75万円を足すだけではダメだからです。
「給与収入」から「給与所得控除」を引くと「所得」になります。
ここで、「給与所得控除」は単純な数値ではなく、給与収入によって次のようになります。
給与収入額 (単位:円) |
給与所得控除額 |
---|---|
162.5万以下 | 55万 |
162.5万超 180万以下 | 給与収入額×40%-10万 |
180万超 360万以下 | 給与収入額×30%+8万 |
360万超 660万以下 | 給与収入額×20%+44万 |
660万超 850万以下 | 給与収入額×10%+110万 |
850万超 | 195万(上限) |
給与収入が103万円のときは、単純に55万円を引いて、給与所得=103万円-55万円=48万円という計算をすれば良かったのですが、給与収入が162.5万円を超えると計算方法が変わります。
さらに、途中計算での特殊な端数処理の影響を考慮すると、所得が123万円以下となる給与収入は187万1,999円以下となります。
187万2,000円だと、所得が123万円を超えてしまいますが、ここでは簡略化するため、「187.2万円の壁」または「187万円の壁」としておきます。
ただ、国民民主党は「基礎控除等の合計を103万円から178万円に引き上げます」と主張しています。
「基礎控除額を75万円引き上げます」とは言っていませんので、もしかすると、給与所得控除の金額も変更するのかもしれません。
それであれば、「178万円の壁」で問題なさそうです。
「178万円」という数字はどこから出てきたのでしょうか?
国民民主党の説明によると、「ここ30年くらいで、最低賃金が1.73倍に上がっているので、壁も1.73倍に引き上げる必要がある。103万円×1.73=178万円」とのことです。
「基礎控除」には、最低限行きていくのに必要な収入には税金をかけないという意味合いもありますので、最低賃金があがったのであれば、それに比例して、基礎控除を引き上げるのも当然という考え方です。
基礎控除75万円の引き上げで、住民税非課税のボーダーライン(基準)も変わるかどうかですが、残念ながら、この基準は変わらないと考えられます。
所得税の「103万円の壁」とは別に、住民税非課税のラインは100万円(※)であり「100万円の壁」と呼ばれたりしています。
※東京都23区など1級地の場合。地域によって、93万円、96.5万円など、金額が異なります。詳細は「93万円の壁・96.5万円の壁・97万円の壁」をご参照ください。
この「100万円の壁」というのは、扶養家族がいない人の場合で、扶養家族の人数によって、次のようになります。
世帯の人数 | 所得 | 給与収入(年収) |
---|---|---|
1人(単身) | 45万円 | 100万円 |
2人(扶養1人) | 101万円 | 156万円 |
3人(扶養2人) | 136万円 | 205万円 |
4人(扶養3人) | 171万円 | 255万円 |
5人(扶養4人) | 206万円 | 305万円 |
基準となっている「所得」は、基礎控除を差し引く前の金額です。基礎控除の金額を引き上げても、「所得」には影響がありませんので、住民税非課税のラインも変わりません。
ただ、インフレが続く状況では、今まで住民税非課税の基準を満たしていない人でも、生活がますます厳しくなっていますので、住民税非課税のラインも変更すべきであるといえるでしょう。
学生を中心に、家族の扶養に入るために、年収103万円以内に抑えて働いている人も多いです。
実は、基礎控除を引き上げただけでは、扶養控除のボーダーラインは変わりません。
なぜなら、扶養控除のボーダーラインは「所得48万円」ですが、「住民税非課税」のところで説明したように、基礎控除の金額を引き上げても「所得」には影響しないからです。
ただ、これでは、「年収103万円の壁」を引き上げる意味がほとんどありませんので、実際には、基礎控除だけなく、扶養控除のボーダーラインも引き上げる可能性が高いと予想されます。
以降は、扶養控除のボーダーラインも引き上げる前提で話をします。
103万円の壁→178万円の壁にするメリットを紹介します。
しばらく前から「103万円の壁」と呼ばれてきましたが、この壁が壁たる理由は、「所得税がかかる」ことだけでなく、「配偶者控除・扶養控除の対象から外れる」ことがあります。特に、後者の理由が大きいです。
「扶養」には
の2種類があります。
「103万円の壁」は、このうち「税金の扶養」に関係します。
配偶者の給与収入が103万円を超えると、パートナーの配偶者控除(上限38万円)がなくなりますが、一方で、配偶者特別控除(上限38万円)があります。
2017年までは、配偶者特別控除の金額は、配偶者控除よりも減額されましたので、夫婦世帯の手取り収入が思ったより伸びないことになります。そのため、「103万円の壁」が意識されてきました。
ところが、2018年の税制改正で、配偶者の給与収入が150万円になるまでは、配偶者控除と同じ38万円の配偶者特別控除を受けられるようになりましたので、配偶者については、事実上、「103万円の壁」は消滅しました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
子供・親などの扶養家族の給与収入が103万円を超えると、扶養控除(38~63万円)がなくなりますが、これは大きな影響です。特に、19~22歳の大学生の年齢については、63万円の扶養控除が受けられますので、これがなくなると、親の手取り収入が一気に減ります。
たとえば、年収600万円の方で子供が大学生の場合、扶養控除を受けられなくなると、税金が約11万円も増えます。年収1,000万円の方であれば、なんと約17万円も増えてしまいます。
そのため、学生の方がアルバイトをするとき、親と相談して、年間の給料が103万円を超えないように働くケースが多くあります。
現状、学生バイトの場合、親が扶養控除を受けられるように、年収103万円以下に抑えるケースも多くあります。
また、配偶者のパートについては、現在は103万円の影響はないのですが、それが影響した期間が長かっため、今も意識して抑制する方が多いようです。
ほか、大企業を中心に一部の企業では、年収103万円以下の配偶者・子供には「配偶者手当」「子供手当」などを給料に上乗せして支給することがあり、それも影響しています。
2022年以降、物価上昇に伴い、特にアルバイト・パートの平均時給が急増しています。2024年時点では、アルバイト・パートの平均時給は全国平均は1,250円を超えています。
仮に、年収103万円以下に抑えようとすると、毎月8万5千円程度以下ということになり、68時間しか働けません。毎日勤務のパートだと1日当たり3.4時間です。
特に、年末の忙しい時期になると、労働時間を制限する人が多く、人手不足が深刻になりつつあります。
もし、この「103万円の壁」の金額が増えるなら、労働時間を抑制する人が減って、人手不足が解消することが見込まれます。
「103万円の壁」だけでなく「130万円の壁」を解消しないと意味がないという声もあります。
こちらは、「社会保険の扶養」に関係します。
社会保険の壁は「106万円の壁」「130万円の壁」の2種類あります。
「130万円の壁」は「103万円の壁」に次いでよく知られています。
年収130万円以上になると、パートナーや親の社会保険の扶養から外れ、自分で国民健康保険料を払わなければならなくなります。配偶者の場合は、さらに、国民年金保険料の支払いも新たに発生します。
実は、税金よりも、社会保険の扶養から外れる影響が大きいです。年収130万円を少し超えた状態の場合、国民健康保険料は年間約11万円(新宿区の場合、自治体によって異なる)、国民年金保険料は年間約20万円、合計で最大約31万円の負担増加となります。
もし、勤務先で社会保険に加入した場合でも、年間約19万円の社会保険料を支払います。世帯の手取りが元に戻るには、年収150~160万円以上必要になります。
そのため、多くの人が「130万円の壁」を意識して、労働時間を抑えています。
「106万円の壁」は「130万円の壁」と似ていますが、従業員数51人以上の会社で働くパートは、年収106万円以上になると、社会保険に加入する義務があり、パートナーの扶養から外れて社会保険料がかかります。ただし、学生は対象外です。
主婦パートがよく働く、スーパーや事務員などは、たいてい従業員51人以上の会社ですので、この「106万円の壁」が大きな壁となります。「103万円の壁」とほとんど金額に差がないので、これが事実上、一番厳しい壁かもしれません。
基礎控除の引き上げを歓迎する意見がある一方で、政府の財政が苦しくなるため否定的な意見もあります。
基礎控除引き上げの背景や、デメリットはあるのかについて解説します。
こちらは、財務省が発表している、過去約40年間の国民負担率の推移のグラフです。
青い線が国民負担率(税金と社会保障の負担)です。
これを見ると、国民負担率は1975年は25.7%でしたが、2022年は48.4%となり、ほぼ倍増しています。
(2023年は見込み、2024年は見通しの数値のため、ここでは、確定値である2022年の値を利用しています。)
また、このグラフには含まれていませんが、1989年に消費税が導入され、2024年現在では税率10%です(食品・新聞は8%)。
消費税は、家賃にはかかりませんが、その他のほぼすべての生活費に対してかかります。
収入と支出がほぼ同じくらいの低所得・中所得層からすると、国民負担率は50~60%程度にあがったともいえます。
これでは、少しくらい給料があがったとしても、生活はまったく楽になりません。国民負担を大幅に減らす政策が必要です。
基礎控除額を引き上げ、所得税の課税基準を103万円→178万円に引き上げることで、国民の負担はどのくらい減るのでしょうか?
減税額は平均的に11~13万円くらいですので、平均年収450万円(所得316万円)に対する比率で考えると、3~5%程度です。
実際には、国民負担率の計算はもっと複雑ですが、どんなに多く見積もったとしても、数%程度の改善にしかならないでしょう。
所得税の非課税の壁が75万円も移動すると、ものすごく大きいように聞こえますが、実際には、国民負担は少し改善する程度なのです。
それなら、意味がないかというと、そうでもありません。
そもそも経済対策とは関係なく、インフレ時には、基礎控除をはじめとして、各種の控除額を引き上げる必要があります。
さきほど、「基礎控除の歴史」の箇所で「基礎控除額は、物価の上昇とともに、少しずつ上がってきました」と説明しました。なぜなら、物価と賃金が上昇しても、基礎控除額などの控除額が同じままだったら、実質、増税となるからです。
たとえば、ここに年収ごとに賃金が3%あがった場合の手取り増加率を検証してみました(40歳未満、基礎控除のみ)。年収400万円までの場合は、手取り額が3%以上増加しますが、年収500万円以上では手取りは3%増加しません。
現在の年収 | 手取り額 | 年収増加額 | 手取り増加額 | 手取り増加率 |
---|---|---|---|---|
2,000,000 | 1,594,776 | 60,000 | 53,440 | 3.35% |
3,000,000 | 2,345,828 | 90,000 | 80,260 | 3.42% |
4,000,000 | 3,106,352 | 120,000 | 104,880 | 3.38% |
5,000,000 | 3,854,548 | 150,000 | 82,184 | 2.13% |
6,000,000 | 4,558,300 | 180,000 | 106,804 | 2.34% |
7,000,000 | 5,222,452 | 210,000 | 151,540 | 2.90% |
8,000,000 | 5,877,184 | 240,000 | 173,160 | 2.95% |
9,000,000 | 6,549,340 | 270,000 | 166,912 | 2.55% |
10,000,000 | 7,201,404 | 300,000 | 182,840 | 2.54% |
11,000,000 | 7,837,284 | 330,000 | 218,220 | 2.78% |
12,000,000 | 8,474,724 | 360,000 | 214,580 | 2.53% |
13,000,000 | 9,080,112 | 390,000 | 194,408 | 2.14% |
14,000,000 | 9,616,060 | 420,000 | 211,128 | 2.20% |
15,000,000 | 10,127,756 | 450,000 | 251,900 | 2.49% |
16,000,000 | 10,663,204 | 480,000 | 245,068 | 2.30% |
17,000,000 | 11,199,252 | 510,000 | 285,340 | 2.55% |
18,000,000 | 11,758,852 | 540,000 | 302,160 | 2.57% |
19,000,000 | 12,318,552 | 570,000 | 318,880 | 2.59% |
20,000,000 | 12,878,252 | 600,000 | 336,000 | 2.61% |
ここ30年くらい各種の控除額の変更がなかったのは、2021年までデフレで物価上昇が止まっていたからです。
ところが、2022年から海外の物価高の影響で日本の物価も大幅に上昇し始めました。この状況では、随時、基礎控除額等を引き上げないと、賃金があがっても、実質増税される状態が続きます。
今後もインフレが収まる見通しはありませんので、このタイミングで基礎控除額の引き上げを検討することは、正しい政策といえます。
国民民主党が主張する基礎控除額の引き上げに対して、2024年10月30日、政府が試算したところ、国と地方で7.6兆円の税収減となることがわかりました。
2024年の税収の見通しは、国が約72.7兆円、地方が44.9兆円、合計117.6兆円ですので、このうち約6%程度の税収減になります。あえていうなら、これがデメリットということになります。
【出典】総務省:国税・地方税の税収内訳(令和6年度地方財政計画額)
この税収減を補う財源をどうするかという議論になっているようですが、そもそも、国民負担率を減らせば国(+地方)の収入が減るのは当たり前です。
国民(家計)と政府の収入はトレードオフの関係にあります。国民の収入を増やせば政府の収入は減りますし、国民の収入を減らせば政府の収入は増えます。税収減のデメリットは、国民ではなく政府のデメリットです。
国民の活動と政府の活動のどちらに重きを置くかによって選択が変わります。
2021年以降、国の税収は大幅に増加し、2023年には72.1兆円と過去最高を記録していますが、一方で、国民の生活は苦しくなっているわけですから、今度は、税収を減らして国民の負担を軽減するという政策があっても良いのではと思います。
【出典】財務省:一般会計税収の推移