年収の壁「178万円」引き上げで、年金生活者はいくら減税される?

年収の壁 178万円の壁 年金

令和8年度税制改正大綱に、年収の壁を、現行の160万円から178万円へ引き上げることが盛り込まれました。

「178万円」という金額は、給与所得者の金額ですが、年金生活者の所得税の年収の壁も、205万円→214万円(65歳以上の場合)へ引き上げられます。

2026年は、年金生活者の、いろいろな年収の壁はいくらになるのか? いくら減税されるのか? わかりやすく解説します。

1.「178万円の壁」とは

「年収178万円の壁」とは、会社員・公務員など給与をもらっている人(給与所得者)が、所得税がかからない年収の金額です。

基礎控除が最大104万円に

基礎控除額(上限)と給与所得控除(最低ライン)を次のように引き上げます。

  • 基礎控除:95万円→104万円(9万円引き上げ)
  • 給与所得控除:65万円→74万円(9万円引き上げ)

両方足すと、178万円です。

年収の壁 178万円の壁

ここで、年金生活者の方は、給与所得控除は関係ありませんので、基礎控除だけ9万円上がることになります。

なお、基礎控除額が上がるのは、所得税だけです。住民税は同じままです(43万円)。

基礎控除:本来62万円+上乗せ最大42万円

ただ、細かく見ると、基礎控除には、本来分と上乗せ分があります。

2025年12月現在の、基礎控除額の上限95万円は、本来の58万円と特例の37万円上乗せの合計ですが、これをそれぞれ引き上げます。

  • 本来の基礎控除:58万円→62万円(4万円引き上げ、恒久的)
  • 特例の基礎控除:37万円→42万円(5万円引き上げ、2026年・2027年限定)

2.年金生活者の年収の壁はどうなる?

(1)年金の所得税の年収の壁は、205万円→214万円の壁に

2026年(令和8年)の改正で、年金生活者の方に影響するのが、基礎控除の引き上げの部分です。

基礎控除の上限は、次のように改正される予定です。

  • 2026年・2027年:95万円→104万円(2年間限定)
  • 2028年:95万円→99万円

公的年金には、年齢によって、次の公的年金等控除額があります。

  • 65歳以上:最低110万円
  • 65歳未満:最低60万円

年収の壁 年金 205万円の壁

その結果、所得税がかからない年収の壁は、次のように変わります。

年金生活者の所得税の年収の壁
  2025年 2026年
65歳以上 205万円 214万円
65歳未満 155万円 164万円

年収の壁 年金 214万円の壁

(2)所得制限:489万円

今まで給与年収200万円(所得132万円)だった所得制限が、給与年収665万円(所得489万円)に大幅に引き上げられます。

2026年・2027年の2年間限定ですが、給与年収665万円(所得489万円)以下の人は、基礎控除が104万円になります。

年金生活者の場合、所得489万円以下、つまり、年金収入が約655万8千以下の人は、基礎控除が104万円になります。これだけ年金をもらっている人はほとんどいませんので、年金生活者のほぼ全員が、今回は最大限の恩恵を受けると考えて良いでしょう。

年収の壁 178万円の壁 基礎控除

基礎控除額は以下のように改正されます。(公的年金以外に収入はないものとします)。

65歳以上

公的年金収入
(雑所得)
基礎控除額
2025年
基礎控除額
2026・2027年
~2,420,000円
(~1,320,000円)
95万円 104万円
2,420,000円~4,758,824円
(1,320,001円~3,360,000円)
88万円 104万円
(※2年間限定)
4,758,825円~6,558,824円
(3,360,001円~4,890,000円)
68万円 104万円
(※2年間限定)
6,558,825円~8,426,316円
(4,890,001円~6,550,000円)
63万円 67万円
(※2年間限定)
8,426,317円~
(6,550,001円~)
58万円 62万円

65歳未満

公的年金収入
(雑所得)
基礎控除額
2025年
基礎控除額
2026・2027年
~2,126,667円
(~1,320,000円)
95万円 104万円
2,126,667円~4,758,824円
(1,320,001円~3,360,000円)
88万円 104万円
(※2年間限定)
4,758,825円~6,558,824円
(3,360,001円~4,890,000円)
68万円 104万円
(※2年間限定)
6,558,825円~8,426,316円
(4,890,001円~6,550,000円)
63万円 67万円
(※2年間限定)
8,426,317円~
(6,550,001円~)
58万円 62万円

3.基礎控除引き上げで、年金生活者は、いくら減税額される?

今回の基礎控除引き上げで、年金生活者の税金負担がどのくらい減るのか、配偶者なし/あり、年金収入別にシミュレーションしてみました。

[前提]
・年金収入のみ
・国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入
・控除は基礎控除・配偶者控除・社会保険料控除のみ
・配偶者は本人と同じ年齢
・税率・保険料率は2025年12月時点

▷単身者(独身者)の場合

65歳~74歳(国民健康保険加入)

年金収入
(月額)
年金収入
(年額)
2025年の
税金負担
2026年の
税金負担
減税額
50,000 600,000 0 0 0
60,000 720,000 0 0 0
70,625 847,500 0 0 0
80,000 960,000 0 0 0
90,000 1,080,000 0 0 0
100,000 1,200,000 0 0 0
110,000 1,320,000 0 0 0
120,000 1,440,000 0 0 0
130,000 1,560,000 5,000 5,000 0
140,000 1,680,000 6,300 6,300 0
150,000 1,800,000 14,600 14,600 0
160,000 1,920,000 25,500 25,500 0
170,000 2,040,000 34,200 34,200 0
180,000 2,160,000 45,000 45,000 0
190,000 2,280,000 54,500 54,500 0
200,000 2,400,000 69,600 65,000 4,600
220,000 2,640,000 105,600 97,400 8,200
240,000 2,880,000 138,100 129,900 8,200
260,000 3,120,000 170,600 162,400 8,200
280,000 3,360,000 201,000 192,800 8,200
300,000 3,600,000 225,300 217,100 8,200

実は、年金収入205万円以下の人は、2025年時点で、すでに所得税がかかっていないため、減税額はありません。

社会保険料控除も考慮すると、年金収入が月額19万円(年間228万円)前後を超える人から、減税額が発生します。最大で、約8000円くらいです。

75歳~(後期高齢者医療制度加入)

年金収入
(月額)
年金収入
(年額)
2025年の
税金負担
2026年の
税金負担
減税額
50,000 600,000 0 0 0
60,000 720,000 0 0 0
70,625 847,500 0 0 0
80,000 960,000 0 0 0
90,000 1,080,000 0 0 0
100,000 1,200,000 0 0 0
110,000 1,320,000 0 0 0
120,000 1,440,000 0 0 0
130,000 1,560,000 5,000 5,000 0
140,000 1,680,000 6,500 6,500 0
150,000 1,800,000 15,500 15,500 0
160,000 1,920,000 26,100 26,100 0
170,000 2,040,000 35,500 35,500 0
180,000 2,160,000 46,200 46,200 0
190,000 2,280,000 56,700 56,000 700
200,000 2,400,000 71,800 67,200 4,600
220,000 2,640,000 107,900 99,800 8,100
240,000 2,880,000 140,400 132,200 8,200
260,000 3,120,000 173,000 164,900 8,100
280,000 3,360,000 203,500 195,400 8,100
300,000 3,600,000 228,000 219,800 8,200

65歳~74歳の場合と傾向は同じです。

▷扶養している配偶者がいる場合

65歳~74歳(国民健康保険加入)

年金収入
(月額)
年金収入
(年額)
2025年の
税金負担
2026年の
税金負担
減税額
50,000 600,000 0 0 0
60,000 720,000 0 0 0
70,625 847,500 0 0 0
80,000 960,000 0 0 0
90,000 1,080,000 0 0 0
100,000 1,200,000 0 0 0
110,000 1,320,000 0 0 0
120,000 1,440,000 0 0 0
130,000 1,560,000 0 0 0
140,000 1,680,000 0 0 0
150,000 1,800,000 0 0 0
160,000 1,920,000 0 0 0
170,000 2,040,000 0 0 0
180,000 2,160,000 5,000 5,000 0
190,000 2,280,000 15,100 15,100 0
200,000 2,400,000 25,000 25,000 0
220,000 2,640,000 46,500 46,500 0
240,000 2,880,000 73,400 65,500 7,900
260,000 3,120,000 105,900 97,700 8,200
280,000 3,360,000 136,400 128,200 8,200
300,000 3,600,000 160,700 152,600 8,100

配偶者がいる場合でも、独身の人と、大きな違いはありません。

75歳~(後期高齢者医療制度加入)

年金収入
(月額)
年金収入
(年額)
2025年の
税金負担
2026年の
税金負担
減税額
50,000 600,000 0 0 0
60,000 720,000 0 0 0
70,625 847,500 0 0 0
80,000 960,000 0 0 0
90,000 1,080,000 0 0 0
100,000 1,200,000 0 0 0
110,000 1,320,000 0 0 0
120,000 1,440,000 0 0 0
130,000 1,560,000 0 0 0
140,000 1,680,000 0 0 0
150,000 1,800,000 0 0 0
160,000 1,920,000 0 0 0
170,000 2,040,000 0 0 0
180,000 2,160,000 5,000 5,000 0
190,000 2,280,000 14,000 14,000 0
200,000 2,400,000 24,000 24,000 0
220,000 2,640,000 45,500 45,500 0
240,000 2,880,000 72,900 66,000 6,900
260,000 3,120,000 105,500 97,400 8,100
280,000 3,360,000 136,000 127,900 8,100
300,000 3,600,000 160,500 152,300 8,200

4.住民税非課税の、155万円の壁・211万円の壁はどうなる?

住民税非課税の年収の壁である「155万円の壁」「211万円の壁」がどうなるのか気になるところでしょう。

残念ながら、今回、基礎控除額を引き上げても、年金受給者の住民税非課税の壁は変わりません

今回は、住民税の基礎控除額も、公的年金等控除額も変わらないからです。

年齢ごとに、それぞれ住民税非課税となる年収の壁は、次のようになります。

65歳以上の場合

65歳以上の方の住民税非課税の基準
  雑所得 年金収入
独身の方 45万円 155万円
扶養している配偶者がいる方 101万円 211万円

65歳未満の場合

60歳~64歳の方の住民税非課税の基準
  雑所得 年金収入
独身の方 45万円 105万円
扶養している配偶者がいる方 101万円 161万円

5.基礎控除の引き上げで年金は減るのか?

基礎控除を引き上げると、約6,500億円の税収減になると、政府が発表しました。税収が減ると、社会保障費等の財源の確保が大変になります。

もしかしたら、年金受給額も減らされるのでは?と心配になるかもしれませんね。
ただ、その心配は不要です。

年金は、税金ではなく、現役世代の年金保険料と、積立金の取り崩しで賄われています。国民年金は2分の1の国庫負担(2024年時点で11兆円程度)がありますが、保険料収入41兆円と比較すると、4分の1程度です。

また、過去からずっと積み立ててきた年金積立金が2024年時点で250兆円を超えています。年間の年金支払額は約52兆円ですから、約5倍も積み上がっていることになります。全世界の株式・債権の好調により、この積立金は今もなお増えています。

そういう意味では、国の財政が厳しくなったとしても、年金受給額が減らされることはありません。

現役世代の税金負担が減って、どんどんお金を使うようになり、経済が活性化して現役世代の給料が増えれば、保険料収入もますます増えますので、年金財政もさらにうるおいます

逆に、現役世代が苦しくてお金を使わず子どもも生まれなければ、経済は停滞して保険料収入が減り、やがて年金財政は危機に陥ります

将来にわたって十分な金額の年金をもらえるかどうかは、今の高齢の国会議員や政治家ではなく、働いている現役世代にかかっていると言って良いでしょう。

東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP®(日本FP協会認定)、日商簿記検定1級。
税理士試験 財務諸表論 科目合格。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
著書「届け出だけでもらえるお金大全
服部 貞昭 プロフィール この監修者の記事一覧
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